利益優先のため組合を潰そうとする経営者に反発する息子が組合のオルグに協力して潰し屋を壊滅させようとする命を懸けの戦いを描く、監督ヴィンセント・シャーマン、ロバート・アルドリッチ、主演リー・J・コッブ、カーウィン・マシューズ、ジア・スカラ、ロバート・ロッジア、リチャード・ブーン他共演の社会派ドラマ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督
ヴィンセント・シャーマン
ロバート・アルドリッチ
製作:ハリー・クライナー
脚本:ハリー・クライナー
撮影:ジョゼフ・バイロック
編集:ウィリアム・A・ライオン
音楽:リース・スティーヴンス
出演
ウォルター・ミッチェル:リー・J・コッブ
アラン・ミッチェル:カーウィン・マシューズ
テレサ・レナタ:ジア・スカラ
トゥーリオ・レナタ:ロバート・ロッジア
アーティ・ラヴェジ:リチャード・ブーン
リー・ハケット:ヴァレリー・フレンチ
ジョージ・コヴァン:ジョセフ・ワイズマン
トニー:ハロルド・J・ストーン
ポール:ウェズリー・アディ
フレッド・ケナー:ロバート・エルンシュタイン
アメリカ 映画
配給 コロンビア・ピクチャーズ
1957年製作 87分
公開
北米:1957年4月25日
日本:未公開
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
ニューヨーク、マンハッタン。
ガーメント地区は、アメリカ国内の衣料品の殆どを製造しているのだが、その裏側は、争いや競争がひしめく恐怖のジャングルだった。
衣料品製造会社を営むウォルター・ミッチェル(リー・J・コッブ)は、労働組合を容認する共同経営者フレッド・ケナー(ロバート・エルンシュタイン)と対立する。
しかし、ミッチェルは、経営パートナーとしてはケナーを評価していた。
その直後、ケナーは整備員(ウェズリー・アディ)が点検していたエレベーターの落下事故で死亡する。
ミッチェルは、直前に言い争いはしたものの、友人の死に心を痛める。
そんなミッチェルの元に、ヨーロッパから戻った息子アラン(カーウィン・マシューズ)が現れる。 アランは父親の事業を継ぐことを考えるが、ミッチェルは苦労の多い業界の厳しさからそれを歓迎はしなかった。 そこに、バイヤーでミッチェルの恋人でもあるリー・ハケット(ヴァレリー・フレンチ)が顔を出し、3人は食事をすることになる。 アランはケナーの死を知らされ、リーは彼の死が殺人ではなかったかと疑う。 ケナーの話に加われないアランは、父ミッチェルに不満を訴えるが、リーが割って入り彼をなだめる。 ミッチェルは仕方なくアランの要望を聞き入れ、会社に出社するよう指示するが、甘やかす気は全くなかった。 翌日、ミッチェルはアランを職長トニー(ハロルド・J・ストーン)に任せる。 トニーに社内を案内されたアランは、いきなり、会社側と激しく意見を交わす作業場を見せられる。 会社の条件を不服とする作業員に、厳しい言葉をぶつけるトニーの前に、ILG(国際婦人服労働組合)のオルグであるトゥーリオ・レナタ(ロバート・ロッジア)が立ちはだかる。 そこにミッチェルが現れ、作業員の不満を押さえつけようとするが、レナタは、経営者が荒っぽい手段で組合潰しをしていることを非難する。 さらに、ケナーの死も仕組まれたものだと言い放ち、その場を立ち去る。 ミッチェルは、”潰し屋”アーティ・ラヴェジ(リチャード・ブーン)のエレベータ事故への関与を確認するが、彼はそれを否定する。 しかし、ラヴェジの傍らには、エレベーターの点検をしていた男ポール(ウェズリー・アディ)がいた。 父ミッチェルに組合のことを問い質したアランは、まともに答えない父に不満を抱き、単身、組合に向かう。 レナタに会ったアランは、彼の妻テレサ(ジア・スカラ)が、夫の組合活動への入れ込み過ぎを、心配していることを知る。 アランは帰国したばかりで、業界や組合そして潰し屋のことが全く理解できないことを、正直にレナタに話す。 レナタはアランの気持ちを察し、自分の知る会社の実態を話し始める。 ミッチェルが、組合ができた場合の賃金上乗せ分50万ドルを、ラヴェジを使い、組み合い潰しに当てていることをレナタはアランに話して聞かせる。 アランはそれを信じることが出来ないが、その時テレサが、夫に手を引かせろという脅迫電話を受ける。 しかしレナタは、自分の身を案ずるテレサを振り切り、組合の集会に向かってしまう。 アランは、信念を貫くレナタとそれを支えるテレサの生き方に感銘を受け、礼を言いその場を立ち去る。 レナタは、集会でジョージ・コヴァン(ジョセフ・ワイズマン)らと合流するが、そこに潰し屋のポールらが乱入し、集会参加者を痛めつける。 翌日、アランは、傷を負ったレナタをミッチェルのオフィスに連れて行く。 しかし、居合わせたラヴェシとレナタが、一触即発になる。 それを制止したミッチェルに、必ず組合を作ると言い放ち、レナタはその場を立ち去る。 善悪の問題は業界にはないと断言したミッチェルに、アランも愛想を尽かしオフィスを出る。 ピケを張っていたレナタやコヴァンに、危険を知らせに行ったアランだったが、そこにテレサが現れる。 テレサに危険を知らせて帰そうとするレナタに頼まれ、アランは彼女を自宅に送る。 アランは、途中テレサとバーに寄り、父を裏切るか善悪を選ぶかで悩む自分の胸の内を彼女に話す。 その頃、レナタはポールらに襲われ、買収された仲間に裏切られた彼は、ナイフで刺されてしまう。 コヴァンはそれを目撃するが、報復を恐れてレナタを置き去りにして逃げてしまう。 レナタを裏切った者達は、何食わぬ顔でバーにいたアランとテレサに、彼が傷つけられたことを知らせる。 そしてレナタは、駆けつけたテレサの腕の中で息を引き取り、アランもその死を見届ける。 警察に呼ばれたミッチェルは、レナタがナイフを持ち暴れたために、ラヴェジの部下が正当防衛で彼を殺したと聞かされる。 レナタの葬儀は、各企業の組合員またはミッチェルの会社の従業員にも大きな影響を与える。 アランも大きなショックを受け、レナタの母親の元で暮らすことになったテレサを送り届ける。 そこにコヴァンが現れ、レナタを助けなかったための苦しみと、他の三人は裏切ったことをテレサに告白する。 テレサは動転してコヴァンを責めるが、その後、彼の証言により、組合員の3人が、レナタ刺殺に関与したことが明らかになる。 しかし、家族を脅されたコヴァンが証言を取り消したため、大陪審は証拠不十分で容疑者を不起訴とする。 これで全てが終わったと判断したミッチェルだが、アランは、真実を告白しなければ、殺人者のラヴェジと同罪だと父に言い寄る。 アランは会社に戻るが、容疑者3人をラヴェジが働かせているのを知り、彼らを追い出してしまう。 ラヴェシが、容疑者を会社に送ったと知ったミッチェルは、彼が嘘をつき、コヴァンが正しかったことを理解する。 尚も強引なラヴェシは、容疑者達を会社に戻して、アランを解雇するようミッチェルに要求する。 ミッチェルはラヴェシと縁を切ることを決心し、彼を刑務所送りにすることを誓う。 アランにそれを告げたミッチェルは、自分も共犯になることを覚悟し、ラヴェシへの支払い記録が記録されている帳簿を、地方検事に渡す決断をする。 そしてミッチェルは、会社に組合を作ることを許可するとアランに告げる。 仕事に没頭する人生を送り続けていたミッチェルは、本来の人間らしい自分を取り戻し、ついにアランと心が通じ合う。 清々しい気持ちでリーに電話したミッチェルは、彼女と結婚を約束し、アランが誘うテレサとの食事に向かうことになる。 しかし、ラヴェジに指示されたポールの銃弾で、ミッチェルは命を落してしまう。 失意のアランは、ラヴェジを陥れる帳簿を捜し、それをリーが持っていることを知る。 そして、ラヴェジはテレサや子供、さらにリーにまで脅しをかける。 共に惹かれ合うようになっていたアランとテレサは、彼女のアパートでポールらの監視を徹夜で見張る。 リーはポールらに気づかれぬよう、牛乳配達を使いテレサのアパートのアランに帳簿を届ける。 地方検事を呼ぶことにしたアランは、電話をかけにアパートを出るが、彼はポールに捕まり、ラヴェジの元に連れて行かれる。 帳簿を持ったテレサは、ラヴェジの監視の目を盗み、屋上に脱出する。 ミッチェルのオフィスを奪ったラヴェジは、組合排除の条件として会社の利益の50%をアランに要求する。 アランは、ラヴェジを電気椅子に送れる帳簿の存在を仄めかし、ラヴェジは、その在り処を吐かせようとしてアランを痛めつける。 アランも応戦し、警察に帳簿を届けたテレサが、警官を連れて現れ、ラヴェジは逮捕される。 そして、ラヴェジは殺人罪で起訴され、検事は死刑を求める。 その後、父ミッチェルの後を継ぎ社長となったアランは、テレサとの新しい生活を始め、精力的に仕事をこなす。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
ニューヨーク、マンハッタン。
ガーメント地区は、国内の衣料品の殆どを製造し、裏では争いや競争がひしめく場所だった。
衣料品メーカー社長ウォルター・ミッチェルは、利益追求を第一優先に考え、組合活動を潰そうとしていた。
ミッチェルは、労働組合を容認する共同経営者ケナーと対立するものの、彼の経営手腕については彼を評価していた。
そんな時、ケナーがエレベーターの落下事故で死亡する。
対立はあったものの、ミッチェルは、友人の死にショックを受ける。
そこに、ミッチェルの息子アランがヨーロッパから帰国する。
アランは父親の事業を継ぐことを考えるが、その厳しさを知るミッチェルは、それを歓迎はしなかった。
その後、仕方なくミッチェルは、アランの意見を尊重し要望を聞き入れる。
しかしアランは、ILG(国際婦人服労働組合)のオルグ、レナタから、会社の裏の顔を知らされて愕然とする・・・。
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ロバート・アルドリッチの演出内容の激しさが原因で、監督がヴィンセント・シャーマンに交代したという曰く付きの作品。
組合活動を阻止しようとする会社側と従業員を活動に引き込もうとする、オルグとのせめぎ合いを描いた序盤から一転、中盤からは暗躍する殺人組織との戦いを描いた、サスペンス・タッチの緊迫した展開は見応え十分だ。
しかし、全編がロバート・アルドリッチの演出であれば、更にスケールアップできただろうことを思うとやや残念でもある。
主演のリー・J・コッブは、立場は違うものの、労働者を支配する裏社会のボスを演ずる「波止場」(1954)の役柄を髣髴させる彼らしい力感溢れる熱演を見せる。
また、人間らしさを取り戻しながら、安堵の表情を見せて命を落す、終盤の穏やかな演技も見逃せない。
その息子カーウィン・マシューズは、厳しい世界ではあるが、将来を約束されているにも拘らず、あえて父と対立し、”善”の味方に付き、正義感を発揮する青年を好演している。
組合のオルグである夫の死を乗り越え、健気に悪と戦うジア・スカラ、夫で組合結成の使命感に燃えるロバート・ロッジア、会社及び業界も牛耳ろうとする、”潰し屋”のリーダーである凄みのあるリチャード・ブーン、バイヤーでる主人公の恋人役のヴァレリー・フレンチ、仲間を見捨てしまう組合員ジョセフ・ワイズマン、会社の職長ハロルド・J・ストーン、潰し屋の一味役のウェズリー・アディ、共同経営者ロバート・エルンシュタインなどが共演している。