1902年に発表された、A・E・W・マイソンの冒険小説”The Four Feathers”を基に製作された4度目の映画化作品。 出征を拒み卑怯者と思われた青年の汚名を晴らすための戦いを描く、監督ゾルタン・コルダ、主演ジョン・クレメンツ、ラルフ・リチャードソン、C・オーブリー・スミス、ジューン・デュプレ他共演のドラマ。 |
・ドラマ
■ スタッフ キャスト ■
監督:ゾルタン・コルダ
製作:アレクサンダー・コルダ
原作:A・E・W・マイソン”The Four Feathers”
脚本
R・C・シェリフ
ラヨス・ビロ
アーサー・ウィンペリス
撮影
オスモンド・H・ボーラディル
ジョージ・ペリナル
編集:ヘンリー・コーネリアス
音楽:ミクロス・ローザ
出演
ハリー・フェヴァーシャム中尉:ジョン・クレメンツ
ジョン・ダランス大尉:ラルフ・リチャードソン
バロウズ将軍:C・オーブリー・スミス
エスネ・バロウズ:ジューン・デュプレ
フェヴァーシャム将軍:アラン・ジェイズ
トーマス・ウィロビー中尉:ジャック・アレン
ピーター・バロウズ中尉:ドナルド・グレイ
サットン医師:フレデリック・カリー
カリフ:ジョン・ローリー
ハリー・フェヴァーシャム(少年期):クライヴ・バクスター
イギリス 映画
配給
ユナイテッド・アーティスツ
London Films
1939年製作 115分
公開
イギリス:1939年4月20日
北米:1939年8月3日
日本:1952年1月10日
■ アカデミー賞 ■
第12回アカデミー賞
・ノミネート
撮影賞(カラー)
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1885年、エジプト領スーダン。
回教徒の反乱軍”ダルヴィーシュ”はハルツームのチャールズ・ゴードン率いるイギリス陸軍を包囲し、援軍が到着する前にイギリス軍は全滅した。
フェヴァーシャム将軍(アラン・ジェイズ)は、訪れた戦友でもある軍医サットン(フレデリック・カリー)と共に、ゴードンとイギリス軍の敗戦を嘆き軍を立て直す必要があることを話す。
自分の跡を継ぐであろう息子ハリー(クライヴ・バクスター)についてを語るフェヴァーシャムは、代々軍人の家系である士官学校には入ったハリーが、詩などを愛していることを気にする。
フェヴァーシャムは息子を鍛え直すことを考え、それをサットンに任せる。
誕生日を祝う食事会が開かれ、ハリーは、父やサットン、そして退役司令官のバロウズ将軍(C・オーブリー・スミス)らと席を共にする。 自分の武勲を語り始めるバロウズは、クリミア戦争の”バラクラヴァの戦い”の話をする。 軍人としての将来を決められているハリーは、それを不満に思いつつも従わざるを得なかった。 そんなハリーの考えを悟るサットンは、彼の相談相手になろうとする。 10年後。 ピーターは、妹エスネ(ジューン・デュプレ)と密かに交際していたハリーとの婚約が発表されることを話し、彼女に惹かれていたジョンは驚く。 パーティーが開かれ、バロウズ将軍は昨年に亡くなったフェヴァーシャム将軍の死を悼みながら、ハリーと娘エスネの婚約を祝福する。 ジョンに気を遣うエスネだったが、彼はハリーを支えるようにと伝える。 その後、連隊に出動命令が下るが、司令官の元に向かったハリーは除隊願いを提出する。 父親の意向に沿って入隊したものの義務は果たしたと言うハリーは、司令官に非難されながらも決意は変わらなかった。 司令官は、出動命令が下ったことを部下に伝えると共に、ハリーの除隊を知らせる。 ポーツマス。 訪ねて来たハリーに会ったエスネは、馬鹿げた戦争よりも自分といることが大切だと言う彼の言葉を聞き驚く。 そこに小包が届き、ジョン、ウィロビー、ピーターから送られてきた、卑怯者を意味する三枚の白い羽をハリーは確認する。 帰宅したバロウズは、息子ピーターらが立派だったことをエスネに伝えるが、話があると言うハリーを無視して席を外す。 愛はあっても今回のことは受け入れられないと言うエスネの気持ちを確認したハリーは、羽が一枚足りないと言って、自分を卑怯者と思うならそれを渡すよう伝えてその場を去る。 エジプト。 サットンに会ったハリーは羽を見せて、ジョンやエスネらの考えは正しいと伝え自分が臆病者だったことを認める。 力になるとサットンに言われたハリーは旅立つことを伝え、連絡のための手紙を書くことを約束し、1年の間に便りがなければ死んだものと思ってほしいと伝える。 ハリーは、汚名を返上するために最善を尽くすというエスネへの伝言をサットンに頼む。 どこに行くかとサットンに聞かれたハリーは、エジプトだと答える。 スーダン、スアキン。 水路を確保するため敵を砂漠に誘き寄せる計画を知らされ出撃を命ぜられたジョンは、連隊を率いて出発する。 その後ハリーは、サンガリ族に扮して移動を始める。 岩山に登り監視をしていたジョンは、誤ってヘルメットを落してしまう。 炎天下で気を失いそうになったジョンは山を下り、ヘルメットを手にする寸前で気を失ってしまう。 軍曹に発見されたジョンは、野営地に運ばれ手当てを受ける。 ナイル川。 意識を回復したジョンだったが、視力を失ったことに気づきながら、ピーターらの野営地に向かい危険を知らせる。 敵はその場を攻撃しようとするが、それに加わっていたハリーが叫び声をあげる。 ハリーは殴られてしまい、イギリス軍は敵を迎え撃ち激しい戦いが始まる。 意識の戻ったハリーは襲われているジョンを助けるものの、兵士に殴られてしまう。 ピーターとウィロビーらは捕らえられ、捕虜となり連行される。 敵が川を離れたことを知ったイギリス軍は、船を出航させて移動し始める。 戦場で生き残ったハリーは、倒れていたジョンを助けてテントに運ぶ。 気がついたジョンはピーターらを捜すものの、誰もその場にいないため怯える。 日射病で視力を失ったことを嘆くジョンは、ハリーに手を差し伸べられながら相手が口がきけないことを悟る。 ジョンが拳銃自殺するのを阻止したハリーは、彼の頭にターバンを巻きその場を離れる。 正気を失いかけながらもエスネへの思いを口にするジョンを気遣いながら、ハリーは彼を連れて歩き続ける。 1年が経ち、エスネと話したサットンは、旅立ったものの便りがないため亡くなったと思われるハリーからの、最善を尽くすという伝言を伝える。 ハリーを見捨てたと言って後悔するエスネに、彼のためにも幸せになるようにとサットンは助言する。 砂漠を渡りナイル川にたどり着いたハリーとジョンは、筏で川を下りイギリス軍の駐屯地にたどり着く。 ジョンに羽を返したハリーはその場から逃れようとするが、兵士に見つかり捕えられる。 医師の診察を受けたジョンは助かるが、視力の回復は見込めなかった。 6か月後。 父バロウズに後悔しないかと聞かれながら、エスネはジョンとの結婚を決意する。 自分を救ってくれた現地人が、最後には盗みを働こうとしたことをエスネらに話すジョンは、彼女からの手紙を奪われるところだったと伝える。 それを読んでほしいと頼まれたエスネは、その中にジョンがハリーに渡した羽が入っていることを知り驚く。 その場にいたサットンとバロウズは羽を確認し、現地人がハリーだったことに気づく。 現地人のことを尋ねたサットンは、留置場から逃げたとジョンから知らされる。 生きていたハリーが汚名を晴らしたと言うサットンの言葉を聞き、エスネは涙する。 スーダン、オムドゥルマン。 その頃、キッチナー率いるイギリス軍は、オムドゥルマンに向けて陸路と水路による進軍を続けていた。 ウィロビーとピーターに鎖を切るためのやすりを渡したハリーは、二人が泳げることを確認し翌日に船が出ることを伝える。 イギリスのスパイだと疑われて鞭打たれたハリーは牢屋に入れられ、鎖を切ったウィロビーとピーターは彼を介抱する。 ウィロビーとピーターは男がハリーだと気づき、戦いが迫ることを語るはりーから、武器庫を狙う計画に変更すると言われる。 通訳できる者を探したハリーは、全員でこの場から逃げることを伝える。 敵の総攻撃は始まり、イギリス軍はそれを迎え撃ち退却させる。 ハリーらは看守に襲いかかり武器を奪い、その場から脱出する。 その後、イギリス軍は反撃してきた敵の大群を撃退する。 オムドゥルマンへのイギリス軍の総攻撃が始まり、ハリーらは攻撃目標となっていた場所にユニオンジャックを掲げる。 キッチナー率いるイギリス軍は、ナイル川を挟んで東側に位置するハルツームを奪還し、それが本国にも知らされる。 それをジョンと共に祝ったサットンは、ドイツの医師の診察の結果、視力の回復は見込めないことを伝える。 悲観せずに現実を受け止めるジョンは、捕虜となっていたウィロビーとピーターが無事だったことを、サットンが読む新聞記事で知り喜ぶ。 そしてジョンは、二人に協力したのが、現地人に扮していたハリーであったことを知り、自分を助けたのも彼だったことに気づく。 手紙の中の羽を確認したジョンは、エスネへの手紙の代筆をサットンに頼む。 ”ドイツの名医の診察で目が治ることが分かり、現地に出発し、視力が回復した後に軍に復帰する。 その後バロウズは、帰還したハリー、ウィロビー、ピーター、そしてエスネとサットンと共に食事の席に着く。 羽を返したハリーとエスネがいよいよ結婚だという話をしたバロウズだったが、彼女はまだ羽は返してもらっていないことを伝える。 今度はどんな危険を冒すのかを聞くエスネに、もうごめんだとハリーは答える。 その程度では武勲とは言えないと意見するバロウズは、いつものようにクリミア戦争の”バラクラヴァの戦い”の話を始めようとする。 それを制止したハリーは、バロウズの話が正確でないことを指摘して彼に認めさせる。 ハリーは、もうこの話ができないと言うバロウズの言葉に納得する。 そしてハリーは、寄り添うエスネに羽を渡してキスする。
...全てを見る(結末あり)
スーダン奪還を目的にして出動命令を受けた連隊だったが、ハリー(ジョン・クレメンツ)は、同僚のジョン・ダランス大尉(ラルフ・リチャードソン)、ピーター・バロウズ中尉(ドナルド・グレイ)、トーマス・ウィロビー中尉(ジャック・アレン)らのように喜ぶ気になれなかった。
バロウズや兵士の家族は、出動する連隊の船を見守る。
連隊は、司令官キッチナー将軍配下の部隊と合流し駐屯する。
現地人に扮するために顔に焼印をしたハリーは、イギリス軍と合流する旅に出る。
カリフ(ジョン・ローリー)率いるダルヴィーシュは、砂漠のイギリス軍を確認して戦いに備える。
帰国したジョンは、献身的に尽くすエスネの元で療養していた。
捕えられていたウィロビーとピーターに近づいたハリーは、彼らを助けようと考える。
君のお蔭で立ち直ることができたことを感謝している。
追伸、
ピーターとウィロビーの活躍を新聞で知り、ハリーの消息も分かった今、現地人から受け取ったものを同封する。
その男を誤解していたが勇敢だった。”
参考:
「サハラに舞う羽根」 The Four Feathers (2002)
*(簡略ストー リー)
1895年。
10年前にスーダンで敗れたイギリス軍は、その地を奪還するために派兵を決める。
代々軍人の家系であるハリー・フェヴァーシャム中尉(ジョン・クレメンツ)は、連隊の同僚ジョン、ウィロビー、ピーターが出動命令を喜ぶ中、除隊を決意する。
意味のないや戦いに参加する気のないハリーは、それを婚約者のエスネに伝えるが理解してもらえない。
ジョン、ウィロビー、ピーターから卑怯者を意味する白い羽を受け取ったハリーは、エスネも同じ気持ちであることを確認する。
司令官だった父の友人である軍医サットンに、自分が臆病者であることを認めたハリーは、汚名を返上するためエジプトに向かうことを伝える。
そして、現地でサンガリ族に扮したハリーは、イギリス軍に合流し三人に羽を返すために旅立つのだが・・・。
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何度も映画化されている有名な物語であり、汚名返上のために命を懸けて戦う主人公の勇気を激しい砂漠の戦いなどをまじえて描く、ゾルタン・コルダのスケール感のある小気味よい演出が見所の作品。
友情云々よりも、まず、使命として決めた汚名を晴らすための行動に専念する主人公の意志の強さが強調されている。
結局はそれが、勝利と輝かしい戦功の支えとなり、望んではいなかった軍人の血筋を受け継いでいると思わせる展開により、国に尽くす男としての役割と生き様を丹念に描く、ゾルタン・コルダの演出手腕が光る。
この時代にして見事な総天然色で撮影された映像は素晴らしく、第12回アカデミー賞では撮影賞(カラー)にノミネートされた。
ミクロス・ローザらしい、勇壮かつ軽快な音楽も印象に残る。
自分を臆病者と認めつつ、現地に向い勇敢に戦う主人公を熱演するジョン・クレメンツ、その同僚であり友人で、失明しながら羽を送った主人公に救われるラルフ・リチャードソン、退役軍人である元司令官C・オーブリー・スミス、その娘で主人公の婚約者ジューン・デュプレ、厳格な軍人である主人公の父アラン・ジェイズ、主人公に羽を送る同僚である友人ジャック・アレンとドナルド・グレイ、主人公を支える軍医フレデリック・カリー、回教徒の反乱軍の指導者カリフのジョン・ローリーなどが共演している。