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農夫の妻 The Farmer’s Wife (1928)

1916年に初演された、イーデン・フィルポッツの舞台劇”The Farmer’s Wife”を基に製作された作品。
妻に先立たれ再婚を決意した農場主の相手探しを描く、監督、脚本アルフレッド・ヒッチコック、主演ジェームソン・トーマスリリアン・ホール=デイヴィスゴードン・ハーカー他共演のロマンチック・コメディであるサイレント作品。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ロマンチック・コメディ

アルフレッド・ヒッチコック Alfred Hitchcock 作品一覧
アルフレッド・ヒッチコック / Alfred Hitchcock / Pinterest


スタッフ キャスト ■
監督:アルフレッド・ヒッチコック

製作:British International Pictures
原作:イーデン・フィルポッツThe Farmer’s Wife
脚本
エリオット・スタンナード

アルフレッド・ヒッチコック
撮影:ジョン・J・コックス
編集:アルフレッド・ブース

出演
サミュエル・スイートランド:ジェームソン・トーマス
アラミンタ”ミンタ”デンチ:リリアン・ホール=デイヴィス
チェードルス・アッシュ:ゴードン・ハーカー
サーザ・タッパー:モード・ギル
ルイーザ・ウィンデット:ルイーズ・ハウンズ

メアリー・ハーン:オルガ・スレード
マーシー・バセット:ルース・メイトランド

スーザン:アントニア・ブロウ

イギリス 映画
配給 Wardour Films

1928年製作 98分
公開
イギリス:1928年3月2日
北米:1930年1月4日
日本:未公開


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
”アップルガース農場”
農場主サミュエル・スイートランド(ジェームソン・トーマス)は、妻を亡くす。

その後、スイートランドの娘が結婚することになり、家政婦アラミンタ”ミンタ”デンチ(リリアン・ホール=デイヴィス)は使用人チェードルス・アッシュ(ゴードン・ハーカー)から、主人が再婚するのかを聞かれる。

素敵なことだと答えるミンタは、アッシュに結婚式で使う馬車の準備をさせる。

教会で結婚式を済ませた新郎新婦とスイートランドら家族が戻り、和やかな食事が始まる。

招待客のサーザ・タッパー(モード・ギル)からパーティーに誘われたスイートランドは、アッシュの手も借りたいと言われてそれを承知する。
...全てを見る(結末あり)

娘を送り出したスイートランドは、招待客も帰った後で亡き妻のことを思う。

ミンタを呼んだスイートランドは、妻も再婚するようにと言い残したことを話し、機会を逃さないようにと考えるが、誰を相手にしたらいいか、彼女に助言を求める。

思い当たる女性が何人かいると言うスイートランドは、それをリストにしてみることをミンタに伝える。

未亡人のルイーザ・ウィンデット(ルイーズ・ハウンズ)、サーザ、郵便局長のメアリー・ハーン(オルガ・スレード)、ロイヤル・オークのマーシー・バセット(ルース・メイトランド)の名も書いておくようミンタに指示したスイートランドは、暖炉の前でそのメモを見つめる。

ミンタに身だしなみを整えてもらったスイートランドは、馬に乗ってルイーザの家に向かう。

途中で乗馬をしていたルイーザに出くわしたスイートランドは、彼女の家に向かい歓迎される。

再婚することをルイーザに伝えたスイートランドは、承知してくれることを確認する。

しかし、自分が自立した女だと言うルイーザは、釣り合わないことをスイートランドに伝える。

説得も聞き入れられないスイートランドは憤慨し、ルイーザを非難してその場を去る。

帰宅したスイートランドはアッシュに八つ当たりして、ルイーザには二度と会わないと言ってメモの名前を消してしまう。

次にサーザに会おうとしたスイートランドは、彼女からのパーティーの招待状を確認する。

パーティー当日、ミンタとアッシュが手伝いをしていたが、スイートランドが早く来たために、化粧や身支度が終っていないサーザは焦ってしまう。

ようやく現れたサーザが、食事の準備などをしてばかりいてまともに話ができないため、スイートランドは苛立つ。

結婚の相談をしようとしているのだから落ち着いて話を聞くようにと伝えたスイートランドだったが、動揺するサーザは気を失いそうになる。

プロポーズしようとするスイートランドに、男性に庇護されれたくないとサーザは答える。

納得いかないスイートランドに責められてサーザは混乱し、家政婦がアイスクリームを溶かしてしまったと言って泣き始める。

その場は混乱してスイートランドは再び憤慨し、メモのサーザの名前を消して立ち去る。

ズボンのサイズが合わないアッシュは、サーザから薄汚れた似合わないコートも渡される。

アッシュのズボンを直そうとしたサーザだったが、他の招待客が来てしまう。

客を迎え入れたアッシュだったが、ズボンがずり落ちてしまうため、握手を求められてもそれに応じられない。

次々と訪れる客に対応するアッシュは、ズボンが気になる。

家の外をうろついていたスイートランドは、ルイーザに続きメアリーが現れたためにパーティーに参加しようとする。

気を遣うサーザに声もかけず、スイートランドはメアリーの横に座る。

牧師に連れられた妻が車いすのまま現れたので、アッシュがズボンを気にしながら二人を招き入れる。

その後、合唱隊が現れ、サーザは来客に声をかけて庭に移動してもらう。

メアリーに言い寄るスイートランドは、敬遠されながらミンタの顔色を窺い庭に向かう。

一休みしていたアッシュは、果物を運ぶようサーザに指示され、嫌々それに従う。

メアリーがプラムを手にし、それを勧められたスイートランドは、自分が持参したものだと伝える。

合唱団の歌が始まったところで席を立ったスイートランドは、家の中に向いメアリーを誘い再婚しようと考えていることを伝える。

占い師に1年以内に結婚すると言われたと話すメアリーに、その相手を当てると伝えるスイートランドは、それが自分であることを知らせる。

若者と結婚すると言って嘲り笑うメアリーに、散りかけた花だと侮辱したスイートランドは彼女を罵倒する。

メアリーは取り乱し、それに気づいたサーザと来客は、興奮して正気を失いかけるメアリーを落ち着かせる。

その様子を見ていたサーザは気を失い、その場は混乱する。

自宅に戻ったスイートランドは、妻探しを諦めることをミンタに伝え、自分を安売りする主人の不甲斐なさをアッシュは嘆く。

それを聞いたスイートランドは、アッシュに馬を用意させて上着を替え、ロイヤル・オークのマーシーの元に向かう。

実はスイートランドに心を寄せていたミンタは、彼のことを想う。

パブで働くマーシーに話しかけるスイートランドだったが、なかなか本題に入れない。

その頃、郵便局に向かったサーザは、パーティーを台無しにされたと言ってメアリーを批判し、自分がプロポーズされたと伝えるが信じてもらえない。

マーシーに相手にされなかったスイートランドは帰宅し、自分のことを心配するミンタとアッシュの様子を気にしながら家に入る。

悠然としているスイートランドの様子にミンタは動揺し、アッシュは席を外すよう主人に指示される。

もう終わりだと言うスイートランドはリストのメモをテーブルの上に置き、女性達に自尊心を傷つけられたことをミンタに伝える。

それを否定するミンタから、強くて立派だと言われたスイートランドは、最近の女性の考えが間違っていることを指摘する彼女の考えに同意する。

亡き妻を想いながら考えこむスイートランドは、妻の椅子に座ったミンタを見て理想の女性だと感じる。

他の女性の名前をあげるミンタに、一人いたと答えるスイートランドは、メモにその名前を書き彼女に渡す。

自分の名前を見て動揺するミンタに、無理にとは言わないと語るスイートランドは、隠し事はしないし自分は子供のように素直な男だと伝える。

突然の話なのでと言って戸惑うミンタだったが、それを受け入れることをスイートランドに伝える。

ミンタを抱き寄せるスイートランドは、彼女を気遣いながら皆に知らせる準備を始めようとする。

スイートランドは、妻から譲られたドレスを着るようミンタに指示する。

ミンタから、スイートランドと結婚することになったと知らされたアッシュは驚き、自分は味方であるため給料が安いと言ってほしいと伝える。

そこにサーザと共にメアリーが現れ、結婚することを決めたとスイートランドに伝える。

ミンタのことを口にしないスイートランドは、現れた長老が女性を紹介してくれると言う申し出に、もう決めたと答えてメアリーの様子を窺う。

三人を居間に案内したスイートランドは、妻から譲られたドレスを着て二階から現れたミンタと結婚することを伝える。

メアリーは取り乱してしまい、サーザと長老はミンタを祝福する。

ミンタが手にするジャケットに着替えたスイートランドは、彼女よりも優しくて素晴らしい女性がいるのなら会ってみたいと言って祝杯を挙げる。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
農場主サミュエル・スイートランドは妻を亡くし、娘も結婚して家を出たために寂しい日々を送ることになる。
妻から再婚するようにと言われていたスイートランドは、家政婦ミンタの助言されながら結婚相手のリストを作る。
未亡人のルイーザ、オールド・ミスのサーザ、郵便局長メアリー、パブで働くマーシーを候補にあげたスイートランドは、意気揚々と妻探しを始める。
ところが、自立していると言うルイーザ、男性の庇護を嫌うサーザ、年をとった中年を嫌うメアリーにことごとく求婚を断られ、スイートランドは意気消沈してしまう・・・。
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妻に先立たれて娘を嫁がせた農場主の、再婚相手を探すための騒動を描く単純なコメディなのだが、その後のアルフレッド・ヒッチコック作品につながる要素が窺えるシーンに注目したい。

どう見ても美しいとは言えない花嫁候補は、悪く言えば”女性蔑視”をイデオロギー的に捉えて作品作りをしたとも言える、ヒッチコックの根底にある考えを映し出したとも言える。

サイレント作品ということもあるが、その女性達のオーバー・アクション的な演技と表情などは、異様であり気味の悪さを感じるほどだ。

主人公自身がパーティーに持参したプラムを、拒絶しながら仕方なく口にして顔をしかめるシーンなども、食べ物を粗末に描写する、その後のヒッチコックの手法が垣間見れる。

時に悪魔のような表情をする主人公を演ずるジェームソン・トーマスが、身近にいた理想の女性と共に幸せを実感する、安堵の表情で締めくくられるラストが印象的だ。

主人公の結婚相手を探すことに協力しながら、結局は自分が妻となり幸せを手に入れる家政婦のリリアン・ホール=デイヴィス、農場の使用人を愉快に演ずるゴードン・ハーカー、主人公の結婚相手候補モード・ギル、ルイーズ・ハウンズ、オルガ・スレード、ルース・メイトランドなどが共演している。


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