看護師志望の田舎娘がひょんなことから政治家の家政婦となり自ら政治家を目指すまでを描く、監督H・C・ポッター、主演ロレッタ・ヤング、ジョゼフ・コットン、エセル・バリモア、チャールズ・ビックフォード他共演のコメディ・ドラマ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:H・C・ポッター
製作:ドア・シャリー
原作:ヘッラ・ヴオリヨキ”Juurakon Hulda”(戯曲)
脚本
アレン・リフキン
ローラ・カー
編集:ハリー・マーカー
撮影:ミルトン・R・クラスナー
音楽:リー・ハーライン
出演
カトリン”ケイティ”ホルストロム:ロレッタ・ヤング
グレン・モーリー:ジョゼフ・コットン
アガサ・モーリー:エセル・バリモア
ジョセフ・クランシー:チャールズ・ビックフォード
ヴァージニア・サッチャー:ローズ・ホバート
アドルフ・ペトゥリー:リス・ウィリアムズ
マシュー・スルヴェン医師:ハリー・ダベンポート
ハイ・ノーディック:トム・パワーズ
ウォード・ヒューズ:ウィリアム・ハリガン
オラフ・ホルストロム:レックス・バーカー
スヴェン・ホルストロム:キース・アンデス
ピーター・ホルストロム:ジェームズ・アーネス
ホルストロム:ハリー・シャノン
ホルストロム夫人:アンナ・Q・ニルソン
ウィルバー・ジョンソン:サーストン・ホール
アンダース・J・フィンリー:アート・ベイカー
アイナー:ドン・ベドー
ヴァン:ジョン・ガローデット
エッカーズ:ウィリアム・B・デビッドソン
スウィーニー:サイ・ケンドール
マティナン:フランク・ファーガソン
ウィンダー:ウィリアム・ベイクウェル
ジャクソン:チャールズ・レイン
アメリカ 映画
配給 RKO
1947年製作 97分
公開
北米:1947年3月25日
日本:1948年4月6日
■ アカデミー賞 ■
第20回アカデミー賞
・受賞
主演女優賞(ロレッタ・ヤング)
・ノミネート
助演男優賞(チャールズ・ビックフォード)
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
スウェーデン系アメリカ人のカトリン”ケイティ”ホルストロム(ロレッタ・ヤング)は、キャピトル・シティの看護学校に通うために、実家の農場を離れる決心をする。
両親(ハリー・シャノン/アンナ・Q・ニルソン)と3人の弟オラフ(レックス・バーカー)、スヴェン(キース・アンデス)、ピーター(ジェームズ・アーネス)に別れを告げて見送られたケイティは、世話になったマットセン医師の車でバス停に向かう。
ホルストロムの納屋の壁に絵を描いたペンキ屋のアドルフ・ペトゥリー(リス・ウィリアムズ)はケイティを追い、バス停で声をかけて彼女をキャピトル・シティまで送ることにする。
夜になり、ケイティをモーテルに連れ込もうとしたアドルフは、それに失敗して事故を起こしてしまう。
事故の相手とアドルフの車の修理代を払ったケイティは、仕方なくモーテルに泊まる。
翌朝、アドルフが去ったことに気づいたケイティは、キャピトル・シティまでヒッチハイクする。 キャピトル・シティに着いたケイティは所持金がなくなってしまい、アドルフを見つけて、貸した金を返してもらおうとする。 それを拒まれたケイティは警察に通報しようとするが、アドルフは、事故に遭いモーテルで一夜を過ごしたと家族と看護学校に電話すると言って、彼女を脅す。 諦めたケイティは、とりあえず稼ぐために、職業斡旋所で家政婦の仕事を見つける。 紹介されたモーリー邸に向かったケイティは、40年間、執事として仕えるジョセフ・クランシー(チャールズ・ビックフォード)に迎えられ、早速、仕事を始める。 下院議員であるグレン・モーリー(ジョゼフ・コットン)は、記者たちを集めて選挙戦について話し合っていた。 グレンらは、給仕をするケイティが、常識があり聡明であることに感心する。 帰宅したグレンの母親アガサ(エセル・バリモア)は、臨時のメイドであるケイティを紹介される。 グレンから話を聞いていたアガサは、屋敷で働くことをケイティに勧める。 看護学校に行くために長くは働けないと言うケイティは、実家では何でもしていたことをアガサとグレンに話す。 夜はパーティーが開かれ、ケイティはジョセフと共に手際よく仕事をする。 翌朝、グレンに朝食を運んだケイティは、当選したウィルバー・ジョンソン(サーストン・ホール)について意見を求められ、民衆の側に立っていないと言って彼を批判する。 その後ケイティは、アガサに制服を買いに行くよう指示され、街に向かうグレンの車に乗せてもらう。 雪が降り、風邪で体調を崩したアガサは、マシュー・スルヴェン医師(ハリー・ダベンポート)の診察を受ける。 資金が貯まったケイティが辞めることを知ったグレンは、引き留めようとするものの、彼女の考えは変わらなかった。 休日のケイティが池でスケートをすることを知ったグレンは、一緒に楽しもうとする。 電報を受け取ったグレンは、国連の経済企画委員会に出席するためロンドンに向かうことになり、それをアガサに知らせる。 ケイティと共に池の周りを走り始めたグレンはバテてしまい、その後、彼女とスケートをしながらヨーロッパ行きのことを話す。 グレンが、帰るまで自分にいてほしいことを知ったケイティは、そうすると言って、いる口実を考えていたと彼に伝える。 アガサとジョセフは、仲良く滑る2人の様子を見守る。 薄い氷が割れて水に落ちてしまったグレンは、発熱してヨーロッパ行きが中止になる。 ケイティが作ったクリスマスの飲み物”グロッグ”を飲んだグレンは、急に元気になり彼女がマッサージを始める。 苦手なことを訊かれたケイティは、グレンと親しい記者のヴァージニア・サッチャー(ローズ・ホバート)と話をする自信がないと伝える。 ヴァージニアとは人種が違うと思っているケイティに、ジョセフは大学に行くことを勧める。 グレンはマッサージを受けながらそれに賛成し、ケイティは、現れたヴァージニアから、彼を看病してくれたことを感謝される。 回復したグレンは、アガサ、ジョセフ、ヴァージニアそしてケイティに見送られて旅立つ。 その後ジョセフは、大学に通い始めたケイティが政治家に向いていると考え、亡くなったアガサの夫の演説書を読ませてみる。 それに気づいたアガサは、ジョセフと共に、亡くなったウィルソン大統領について語った夫の演説を読むケイティに関心する。 グレンが帰る日、彼が戻るのを待ち望んでいたケイティは、彼に会いに来たヴァージニアを迎える。 そこに、政党のリーダー、ハイ・ノーディック(トム・パワーズ)、エッカーズ(ウィリアム・B・デビッドソン)、スウィーニー(サイ・ケンドール)、マティナン(フランク・ファーガソン)らが慌てて訪ねて来る。 アガサは、ノーディックからジョンソンが急死したことを知らされる。 誰かが亡くなったことを知ったケイティはグレンだと思い、ショックを受けて記を失う。 そこに戻ったグレンは、自分が亡くなったと思い倒れたケイティのことを気遣う。 意識が戻ったケイティは、グレンの顔を見て安心し、ジョセフが彼女を休ませる。 グレンらは早速、補欠選挙の候補について話し合い、アンダース・J・フィンリー(アート・ベイカー)の名前が出る。 元気になったケイティは、フィンリーについて意見しようとするが、ジョセフから政治には口出しするなと言われていたために思い留まる。 ノーディックはその場で評決をとり、首を振るケイティを無視してフィンリーを候補にすることを決める。 皆が帰った後でグレンは、フィンリーを嫌いな様子のケイティに理由を訊く。 評判が悪いことなどを率直に話すケイティは、同意できないグレンから、直接本人に話せばいいと言われ、彼を怒らせてしまったために謝罪する。 翌日、フィンリーを支持する演説会が開かれ、ケイティもジョセフと共に会場に向かう。 グレンに紹介されたフィンリーは、スピーチして参加者からの質問を受ける。 席を立ったケイティは指名され、立候補する理由をフィンリーに尋ねたために、会場は爆笑とともにブーイングで騒然となる。 経歴を誇っていたフィンリーは、それに疑問があると言うケイティの発言に不満を示す。 ケイティは、数々の問題があったフィンリーの経歴を暴露してしまい、それが問題となり報道されてしまう。 騒動の責任を取って出て行こうとするケイティだったが、グレンは頭を抱えながらも、言論の自由を奪うわけにはいかないと言って彼女に留まるよう指示する。 ジョセフも、選挙が終わるまで口を慎むよう、ケイティに忠告する。 翌日ケイティは、敵陣営のリーダー、ウォード・ヒューズ(ウィリアム・ハリガン)からの電話を受ける。 弁護士であるヒューズは、男性票が期待できるケイティを利用しようと考えて事務所に呼ぶ。 ケイティにどんな候補者を望むか尋ねたヒューズは、彼女こそそれに相応しい人物だと考え、立候補を勧める。 ケイティは、それをアガサに話して理解してもらい屋敷から去ろうとするが、グレンから立候補する権利はないと言われて戸惑う。 アガサはケイティに立候補を勧めて、こちら側は勝つために全力で戦うと伝え、グレンと共に健闘を祈る。 アガサは、グレンが必死に引き留めようとする姿を見て、彼がケイティを愛していると考える。 涙しながらジョセフと別れるケイティは、40年間モーリー家に投票したが、今回は自分に入れると言われてその場を去る。 その後、ケイティを訪ねたグレンは、専門家のウィンダー(ウィリアム・ベイクウェル)からスピーチの方法を学んでいる彼女と話し、応援に駆け付けた弟たちを紹介される。 意見を求められたグレンはケイティの話し方に不満を感じ、同じ考えの弟たちはワインダーを追い出してしまう。 弟たちに協力を求められたグレンは、感じたことを素直に訴えるようケイティに助言し、小細工する必要はない、父の演説を読んだ時を思い出すようにと彼女に伝える。 納得した弟たちに感謝されたグレンは、ケイティの自然な演説に満足しながらその場を去る。 フィンリーの圧倒的有利で選挙戦は始まるが、その後、五分五分の支持率までケイティは追い上げる。 焦りが見えるフィンリー陣営だったが、そこに現れたアドルフは、ケイティとの関係を話し、スキャンダル・ネタを提供しようとする。 その場にいたアガサは、アドルフが謝礼目的だと気づき、ノーディックらは彼を追い出す。 しかし、それをチャンスと考えたフィンリーは、アドルフに金を渡して、ケイティのスキャンダル情報を入手してアガサらに知らせる。 投票が翌日に迫る中、ヴァージニアはケイティのスキャンダルを記事にする気があり、アガサは仕方なくフィンリーの勝利を優先する。 新聞社に電話をしたヴァージニアは印刷を指示し、グレンは、記事が掲載されるなら手を引くと皆に伝える。 ケイティのスキャンダルは暴露され、彼女の元に向かったグレンは、弟たちと共に農場に戻ったことを知る。 農場に向かったグレンは、弟たちに声をかけるものの無視され、鶏に餌をやるケイティを見つけて、傷ついた彼女を抱きしめてキスする。 プロポーズされたケイティは、父にグレンを紹介する。 今回の件にグレンが関与していないことを知っているホルストロムは、結婚の話しよりも、途中で選挙を諦めたケイティを批判する。 グレンは人々の批判を浴びるケイティのことを気遣うが、ホルストロムは、真実のために闘ってこそ議員になる資格があると娘に伝える。 ケイティは父に感謝し、グレンと共に闘う決心をする。 アガサとジョセフは、グレンがケイティと結婚することを電話で知り喜ぶ。 フィンリーを疑うアガサは、ジョセフと共に彼を酔わせて、アドルフに500ドル払い、選挙が終わるまで、彼を湖畔の別荘に監視下で監禁していることを聞き出す。 アガサは、フィンリーが組織を結成し、外国人も排除する白人至上主義者だと知る。 その話を聞き憤慨したジョセフは、フィンリーを追い出す。 連絡を受けたグレンは、ケイティと弟たちと共に湖に向かう。 フィンリーの別荘に着いたグレンらは、監視の男たちに気づかれないようにして、アドルフを連れ出そうとする。 そこに他の男たちが戻り、乱闘になったグレンらは相手を叩きのめし、ケイティは逃げようとしたアドルフを殴り倒す。 街に戻ったグレンは、ケイティの名誉回復記事の号外を出し、彼女を党の公認にする。 アドルフの告白はラジオ放送で流され、フィンリーの買収は暴露され、ケイティはラジオで演説をする。 投票は始まり、アガサはフィンリーを指示しないことを発表し、彼の組織の実態も分かる。 ワシントンD.C.。 グレンは、ケイティを抱きかかえて入り口に向かう。
...全てを見る(結末あり)
当選したケイティは、アガサとジョセフに見守られながら、グレンと共に国会議事堂の階段を上がる。
*(簡略ストーリー)
農夫の娘でスウェーデン系アメリカ人のカトリン”ケイティ”ホルストロムは、看護学校に通うために、家族に別れを告げて農場を去る。
街まで送ってくれると言うペンキ屋アドルフに騙されたケイティは、所持金がなくなってしまい、仕方なく家政婦をすることになる。
ケイティは、下院議員グレン・モーリーの邸宅に雇われ、40年務める執事ジョセフと共に働き始める。
母のアガサと共に、聡明で常識があるケイティに感心したグレンは彼女に惹かれる。
そんな時、党の議員の急死で補欠選挙が行われることになり、グレンやアガサが支持する候補フィンリーを、ケイティが公然と批判してしまい問題になる・・・。
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1937年に上演された、ヘッラ・ヴオリヨキの戯曲”Juurakon Hulda”を基に製作された作品。
看護師志望のスウェーデン系の農家の娘が、ひょんなことから政治家の邸宅の家政婦となり、自ら政治家を目指すまでを描くコメディ・ドラマの秀作。
舞台でも活躍し、コメディ、ミュージカル、サスペンスなど様々な作品を手掛けていたH・C・ポッターが監督した作品。
スウェーデン移民の農夫の娘の奮闘が愉快に描かれ、厳しいアメリカ社会を生き抜いた逞しさを感じさせる、彼女と家族の力強さが印象的だ。
その一家を含めた正義感と勇気が、陰湿な詐欺行為や悪徳政治家を倒す内容も実に痛快だ。
主演のロレッタ・ヤングは、聡明で快活そして純真な心の持ち主である農家育ちの女性を見事に演じ、第20回アカデミー賞で主演女優賞を受賞した。
この年は、”Mourning Becomes Electra”(1947)のロザリンド・ラッセルの受賞が確実視されていたものの、スウェーデン系でありながらも、愛国心あふれる女性を演じたロレッタ・ヤングに軍配が上がった。
また、本作のヒロインとしてイングリッド・バーグマンのキャスティングが予定されていたが、ジョゼフ・コットンとの浮気が噂されていたために出演は実現しなかった。
ヒロインを見守りながら次第に惹かれていく下院議員を好演するジョゼフ・コットン、その母親で、主人公の雇い主であり、彼女を人間として高く評価するエセル・バリモア、同じく主人公の良き理解者である執事を味のある演技で印象的に演じ、アカデミー助演賞にノミネートされたずるチャールズ・ビックフォード、グレン(ジョゼフ・コットン)に惹かれる記者ローズ・ホバート、主人公を騙すペンキ屋のリス・ウィリアムズ、モーリー家の主治医ハリー・ダベンポート、グレンの党のリーダー、トム・パワーズとその参謀ウィリアム・B・デビッドソン、サイ・ケンドール、フランク・ファーガソン、対抗政党のリーダーである弁護士のウィリアム・ハリガン、主人公の弟である大柄で逞しい3人レックス・バーカー、キース・アンデス、ジェームズ・アーネス、その両親ハリー・シャノンとアンナ・Q・ニルソン、急死する議員サーストン・ホール、悪徳政治家だったグレンらの支持候補アート・ベイカー、記者のドン・ベドー、チャールズ・レイン、ジョン・ガローデット、スピーチの専門家ウィリアム・ベイクウェルなどが共演している。