元イギリス海軍中佐デニス・レイナーの体験談と”大西洋の戦い”をベースにした著書を参考に製作された作品。 第二次大戦下、アメリカの駆逐艦とドイツ軍のUボートの艦長の誇りを懸けた戦いを描く、製作、監督ディック・パウエル、主演ロバート・ミッチャム、クルト・ユルゲンスによる戦争ドラマの秀作。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ディック・パウエル
製作:ディック・パウエル
原作:デニス・レイナー
脚色:ウェンデル・メイス
撮影:ハロルド・ロッソン
編集:スチュアート・ギルモア
音楽:リー・ハーライン
出演
ロバート・ミッチャム:マーレル艦長
クルト・ユルゲンス:フォン・ストルバーグ艦長
デヴィッド・ヘディソン: ウェアー大尉
セオドア・ビケル:”ハイニー”スクワッファー
ラッセル・コリンズ:ドク/軍医
カート・クルーガー:フォン・ホーレム
ダグ・マクルーア:メリー少尉
アメリカ 映画
配給 20世紀FOX
1957年製作 97分
公開
北米:1957年12月25日
日本:1958年1月8日
■ アカデミー賞 ■
第30回アカデミー賞
・受賞
特殊効果賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
第二次大戦下の南大西洋。
アメリカ海軍駆逐艦”ヘインズ”のマーレル艦長(ロバート・ミッチャム)は、着任以来艦長室に閉じ篭っていた。
ヘインズの乗組員の中には、民間人の艦長に不信感を抱く者もいた。
副官ウェア大尉(デヴィッド・ヘディソン)らも同じ意見だったのだが、貨物船に乗っていたマーレルは、魚雷攻撃で船を失い、25日間も漂流していた体での復帰が早過ぎると、ドク/軍医(ラッセル・コリンズ)は指摘する。
平穏な日々が続く中、突然、レーダーで、ドイツ軍のUボートを発見すると、マーレル艦長は、陣頭指揮を執り始める。
しかし、艦内には依然マーレルを信用しきれない雰囲気が漂う。
その頃、Uボート内では、フォン・ストルバーグ艦長(クルト・ユルゲンス)が、ヒトラーが進めるこの無益な戦いに栄誉がないことを、副官”ハイニー”スクワッファー(セオドア・ビケル)に、嘆きながら語る。 夜が明け、指揮を執るマーレルに、ドクが体を案じて質問をする。 マーレルは、三等航海士として貨物船に乗船していた際、魚雷で船は大破し、同乗していた妻が死んだことを彼は語り始める。 新婚の妻を目の前で亡くしたマーレルが、Uボートを追う任務に就いたことをドクは理解するが、マーレルは、私情を捨てた任務遂行だといういうことを強調する。 実は、ストルバーグも二人の息子をこの大戦で亡くしていて、彼は、ヒトラーの野望の犠牲と化す戦いを怨むものの、自らの誇りや任務のために行動している人物だった。 その後、潜行しようとするUボートを発見したマーレルは、低速でのジグザグ航行をあえてせずに、敵の様子を伺い、魚雷発射時間を予知してそれを難なくかわす。 敵の進路を知ったマーレルはそれを追い、Uボート艦長ストルバーグは、駆逐艦の艦長が只者ではないことを知る。 ソナーでUボートをキャッチしたマーレルは、爆雷を発射するが、今回は、ストルバーグが駆逐艦に急接近して、逆に行方をくらます方法でそれを振り切る。 迅速かつ明確なマーレルの指示で、ヘインズは危機を回避し、艦長の、指揮官としての指導力を部下達は評価し始める。 一方、Uボートのストルバーグ艦長も、間違いなく撃沈できるはずの魚雷攻撃を回避した、敵の艦長に一目置く。 マーレルは、Uボートが、味方の商船襲撃艦との合流を目的にしている情報をつかみ、それを追撃する指示をだす。 相手の動きを読んだマーレルは、爆雷を投下し、それから逃れるために、ストルバーグは海底に向かおうとする。 副官ハイニーは、水深310メートルの水圧には艦が耐えられないとストルバーグに指摘するが、彼は、かまわず海底に向かうよう指示する。 Uボートは海底に到着し、それを察知したマーレルは、敵が長くは潜れないだろうと予測する。 海上と海底での行き詰る展開が続き、Uボートが潜行を始めたことに気づいたマーレルは、距離を保ちながらそれを追う。 爆雷攻撃を仕掛け、浮上を阻止しようとするマーレルの作戦にはまったUボート内では、若い兵士が恐怖に怯えて騒ぎを起こしてしまう。 しかし、冷静なストルバーグは兵士をなだめ、部下の士気を高めるために、敵に聞かれるのを承知で歌を歌わせる。 攻撃を受けて損傷したUボートだったが、ストルバーグは持ち堪えて反撃のチャンスを伺う。 夜になり、敵を見失うことを恐れたマーレルは、最後の爆雷攻撃にでる。 その時、ストルバーグも魚雷発射命令を出し、それが駆逐艦に命中する。 艦の損傷から、長くは持たないだろうと判断したマーレルは、甲板でマットレスを燃やし、火災に見せかけて敵を誘き出そうとする。 マーレルは必要要員を残して総員離艦の命令を出し、敵が浮上してくるのを待つ。 そして、ストルバーグは潜望鏡で駆逐艦のダメージを確認し、止めを刺すために浮上命令を出し、海上で、攻撃の予告信号を送る。 思い通りになったマーレルは、タイミングを見計らって艦を進め、Uボートに体当たりする。 その後、駆逐艦の乗組員は、離艦したUボートの兵士らを救命ボートに引き上げる。 面識もない両艦長には、互いを尊敬し合う気持ちが生まれ、激突した両艦上で二人は敬礼する。 マーレルは救命ボートに向かうが、負傷したハイニーを助けて甲板に残っていたストルバーグにロープを投げ、二人を救いだす。 それを見た駆逐艦の兵士達は、引き返してマーレルらを助け、残された爆弾が爆破する寸前で艦を離れる。 アメリカ軍の駆逐艦に救助された両乗組員は、敵味方なく犠牲者の死を悼む。 そして、甲板の上でマーレルとストルバーグは、互いの健闘を称え合いながら語り合う。 ”何度も死ぬ運命に逆らってきた、今回は君のせいだ” ”それなら、今度はロープを投げないでおこう” ”いや、投げるね” そして二人には、敵味方の立場を越えた友情が芽生える。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
第二次大戦下の南大西洋、アメリカの駆逐艦”ヘインズ”の艦長マーレルは、貨物船乗組員時代に、魚雷攻撃により目の前で新妻を亡くし、心に傷を負っていた。
そこに、同じく二人の息子をこの戦争で亡くした、フォン・ストルバーグ艦長の率いるドイツ軍のUボートがレーダーで発見される。
二人の艦長は、私情は捨て、自らの誇りを胸に戦いに挑む。
そして、姿の見えない二人は、互いの戦いぶりに敬意を表しながら、捨て身の作戦に打って出る・・・。
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第二次大戦下、アメリカ海軍駆逐鑑とUボートの戦いを、まるで質の高いスポーツの試合を見てるかのように描き、主人公の二人の艦長の体験談などで、戦争の悲惨さや虚しさも表現する、ディック・パウエルの見応えある演出が光る、戦争ドラマの秀作。
第30回アカデミー賞では、特殊効果賞を受賞した。
両艦長共に、肉親をこの戦争で失っているにも拘らず、任務や部下の命を預かる使命感で行動する姿とフェアな戦いぶりは実に清々しい。
ほとんど笑顔も見せずに、的確な指示を出し、任務を遂行していくロバート・ミッチャムと、戦争に対し、哲学的な奥深い考えを持つクルト・ユルゲンス、両艦長の男らしさには惚れ惚れする。
アメリカ海軍全面協力による海上のオール・ロケは、逞しい男達の映画に相応しく、迫力ある映像でドラマを盛り上げる。
勇ましいリー・ハーラインの音楽も非常に印象的だ。
本作には、女性が一人も登場しないどころか、主人公ロバート・ミッチャムが一瞬、妻のことを語るだけで、セリフでも女性が語られない、正に男のドラマと言える。
駆逐艦副官デヴィッド・ヘディソン、軍医ラッセル・コリンズ、Uボート副官セオドア・ビケル、そして、これがデビュー作のダグ・マクルーアなどが共演している。