サイトアイコン That's Movie Talk!

エジプト人 The Egyptian (1954)

1945年に発表された、フィンランドの作家ミカ・ワルタリによる同名歴史小説の映画化。
孤児として成長し医師になった青年が幾多の試練や体験を得て王家の権力闘争などに翻弄されながら生きるべき道を探る姿を描く、製作ダリル・F・ザナック、監督マイケル・カーティス、主演ジーン・シモンズヴィクター・マチュアマイケル・ワイルディングジーン・ティアニーピーター・ユスティノフ他共演の歴史ドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(歴史劇)


スタッフ キャスト ■
監督:マイケル・カーティス

製作:ダリル・F・ザナック
原作:ミカ・ワルタリ
脚本
フィリップ・ダン

ケイシー・ロビンソン
撮影:レオン・シャムロイ
編集:バーバラ・マクリーン
音楽
バーナード・ハーマン

アルフレッド・ニューマン

出演
メリト:ジーン・シモンズ

ホレムヘブヴィクター・マチュア
イクナートンマイケル・ワイルディング
バケタモン:ジーン・ティアニー
ネフェル:ベラ・ダーヴィ
カプタ:ピーター・ユスティノフ
シヌヘ:エドマンド・パードム
ティイジュディス・イヴリン
メケレ:ヘンリー・ダニエル
墓泥棒:ジョン・キャラダイン
センムト:カール・ベントン・リード
トート:トミー・レティグ
ネフェルティティ:アニタ・スティーヴンス
死者の家の監督官:マイク・マズルキ

アメリカ 映画
配給 20世紀FOX

1954年製作 139分
公開
北米:1954年8月24日
日本:1955年1月29日
製作費 $5,000,000


アカデミー賞 ■
第27回アカデミー賞

・ノミネート
撮影賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
辺境の地で、自由を失い余生を過ごす老人シヌヘ(エドマンド・パードム)は、人生を振り返る。

33世紀前、エジプト第18王朝テーベ
ナイル川で拾われた捨て子のシヌヘは、川岸の町で成長する。

養父センムト(カール・ベントン・リード)は医師で、貧しい者のために尽くし、テーベでの開頭手術は彼にしかできなかった。

その後、シヌヘ(エドマンド・パードム)は、”生者の家”に入り、軍人志望の親友ホレムヘブ(ヴィクター・マチュア)らと勉学に励み、彼はやがて医師の資格を得た。

”生者の家”を卒業し、テーベの開業医となったシムへは、患者を求め町に出る。

シヌヘは、町で片目の男カプタ(ピーター・ユスティノフ)と出会い、酒場の女メリト(ジーン・シモンズ)とは、お互いが気になる存在であった。

ホレムヘブとライオン狩りに出かけたシヌヘは、その場にいた預言者(マイケル・ワイルディング)を助けようとするが、現われた神官メケレ(ヘンリー・ダニエル)に捕らえられてしまう。
...全てを見る(結末あり)

2日間監禁された2人は、王宮に連れて行かれ、ファラオを待つ。

そのファラオこそ、自分達が救った預言者イクナートン(マイケル・ワイルディング)だということを、ホレムヘブとシヌヘは知ることになる。

イクナートンは二人を許し、シヌヘを王家の専属医にしようとするが、彼は貧民のために尽くす誓いを立てたことを伝えてそれを断る。

同じく王を救ったホレムヘブは、近衛兵の将校になることを許される。

シヌヘは、王女バケタモン(ジーン・ティアニー)に呼ばれ、母ティイ(ジュディス・イヴリン)の様態を診るように命ぜられる。

シヌヘは、自分が捨てられていた時のかごと同じ、猟師結びで編み物をするティイに、酒を断つことを勧めてその場を下がる。

その後、ホレムヘブバビロンの宴に向かったシヌヘは、ネフェル(ベラ・ダーヴィ)の美しさに魅了される。

シヌヘは、唯一の財産である王から贈られた装飾品をネフェルに渡してしまう。

ネフェルに心を奪われ、王に仕えようとしないシヌヘを、彼女から引き離そうとしたバケタモンは、兵士として頭角を現していたホレムヘブに、2人を引き離させようとする。

ホレムヘブは、ネフェルを誘惑したと見せかけ、シヌヘの怒りを買うが、彼は、女の正体を知らせるための友情からした行為だと伝える。

それを理解しないシヌヘは、ホレムヘブを罵倒し、二人は仲違いする。

シヌヘは、家の証書と医療器具までをネフェルに貢ぐが、彼女はそれでも満足せず、養父センムトの財産のことを口に出す。

心乱れるシヌヘは、帰宅して、自分に思いを寄せるメリトの気持を聞きながらも、父親の財産の権利書をネフェルに渡してしまうかで思い悩む。

それを見たメリトは、その場から立ち去り、シヌヘは、ついにその権利書までネフェルに渡し、彼女の究極の愛を求める。

しかし、ネフェルはシヌヘを追い払おうとしたため、怒った彼に殺されそうになえる。

シヌヘはネフェルの召使に叩きのめされ、屋敷から放り出されて両親の家に向かう。

その場にいたカプタに、両親が自殺したことを知らされたシヌヘは、自分の行いを許す父の遺書に涙する。

”死者の家”に両親の遺体を運んだシヌヘは、払えるものがないために、その場で労働することになる。

両親を”王家の谷”に埋めようとしたシヌヘは、それに手を貸してくれた墓泥棒(ジョン・キャラダイン)から、来世や永遠の命のことなどを考えるのは無意味だと言われる。

そこにメリトが現われ、町に戻るというシヌヘに、医者が見つからずにティイが亡くなり、ファラオから死刑宣告を受けていることを伝える。

失うものはないシヌヘはそれを恐れず、メリトの愛も受け入れ、二人は固く抱き合う。

町に戻ったシヌヘは、カプタの協力で逃亡の旅に出ることになり、メリトに別れを告げる。

その後、カプタと共に各地をさ迷ったシヌヘは、やがて名医となり、その名は広く伝わることになる。

財産を築いたシヌヘは、ヒッタイトの武将の治療の代償として、ある金属製の剣を譲られ、テーベに戻り、大胆にも王宮に向かう。

司令官となっていた、ホレムヘブと再会したシヌヘは、ヒッタイトの剣を彼に見せる。

”鉄”という、新しい金属製のその剣に驚いたホレムヘブは、ファラオの元に向かい、シヌヘの恩赦は受け入れられる。

ホレムヘブファラオに剣を見せ、ヒッタイトの脅威を王に伝え先制攻撃の許可を求める。

しかし王は、太陽神アテンへの信仰などによる融和的解決に活路を求め、ホレムヘブの意見を聞き入れない。

貧民を無視し金持ちだけを診ていたシヌヘは、ある日、ネフェルの訪問を受ける。

財産をなくしたネフェルは、病により美しさも失っていたが、ネフェルは彼女の治療を約束する。

10年間、ネフェルへの復讐を考えていたシヌヘだったが、今の彼女を見て、哀れみを感じるだけだった。

その後シヌヘは、自分の両親の家を買取り、養子トート(トミー・レティグ)と暮らしていたメリトに再会する。

医者になりたいと言うトートは、かつて自分が手放した医療器具をシヌヘに見せる。

シヌヘは、トートに医療の心得を教えるが、彼が貧しい者だけを治療すると聞き驚いてしまう。

青年期から常に疑問を抱いていたシヌヘは、ついに探していたものを見つけ、メリトが心の支えであったことにも気づき、彼女とトートと共に暮すことを決意する。

王宮に呼ばれたシヌヘは、ホレムヘブの国土防衛策を実行させるよう王に提言する。

しかし、国内を混乱させ、全てを失いかけて苦しむ王は、安らぎと平穏を求めるだけであり、シヌヘは、体の病でない王の治療をしようとしない。

自らがファラオになるつもりのホレムヘブは、神官メケレらと共に、ついに王の抹殺を決意し、シヌヘにその役目をさせようとするが、彼はそれを拒む。

王女バケタモンは、兄王を殺しファラオになるホレムヘブと結婚する計画を、シヌヘに伝える。

さらにバケタモンは、実はホレムヘブも殺し、シヌヘを自分の元に向い入れ、彼に王座を与えることを告げる。

バケタモンは、自分がシヌヘとは異母兄妹で、王家を継ぐ血筋であることを彼に知らせる。

王家の谷”にシヌヘを連れて行ったバケタモンは、父王アメンホテプ3世の墓で、その証拠を彼に見せる。

それを信じたシヌヘだったが、ホレムヘブによる、王が崇めるアテンの信者抹殺計画が始まっていた。

メリトの危険を知ったシヌヘは町に戻り、カプタと共にいたトートに、彼女と逸れたことを知らされる。

シヌヘは、二人を逃がしメリトを捜すものの、彼女はアテンの神殿で、信者達と共に兵士の矢を受ける。

そこにシヌヘが現われるが、メリトは彼の腕の中で息を引き取る。

ホレムヘブは、神殿を破壊するよう部下に命じ、シヌヘに謝罪する。

シヌヘは、王と彼の唯一の神アテンを信じたからメリトが死んだと答え、ファラオの暗殺を決意する。

妹バケタモンの前で、3つの杯に毒を盛ったシヌヘは、ホレムヘブと共にファラオの元に向かう。

ファラオは杯を取り、毒入りだと承知でそれを飲み、全てを許し最後まで神を崇めながら息を引き取る。

シヌヘは、祝杯を挙げようとするホレムヘブを制止して、バケタモンの企みを知らせ、愚か者である王が、自分達を救ったことを伝える。

その後、ホレムヘブは、バケタモンを后としてファラオとなり、罪人となったシヌヘに自分を弁護させる。

シヌヘは、自分が抱いていた疑問に答えてくれた、消し去られた先王イクナートンやメリトのために、人の平等や正しき行いの尊さを語り、ファラオの権力欲などを率直に非難する。

そして、主は唯一、自分達を創造した神であり、人間は独りでないこともシヌヘは付け加える。

それを聞いたホレムヘブは、シヌヘに国外追放を言い渡す。

時は流れ、辺境の地で余生を送るシヌヘは、自らの知識の全てなどを回顧録に残す日々を送り、それを終えて生涯を閉じる。


解説 評価 感想

*(簡略ストー リー)
古代エジプト

ナイル川に捨てられていた子供は医師であるセンムトの養子となる。
やがて成長したシヌヘは、軍人を志す親友のホレムヘブと共に勉学に励み、医師の資格を得る。
その後、開業医となったシヌヘは、ホレムヘブと共にライオン狩りをしている際、ある預言者を助ける。
神官に捕らえられた二人は王宮に連行されて、その預言者が、ファラオイクナートンだったことを知る。
二人は解放され、シヌヘは王に王家の専属医を命ぜられるが、彼は貧民に尽くす誓いを立てていたためにそれを断る。
その後、バビロンの宴で美しいネフェルに魅了されたシヌヘは、我を忘れて彼女に財産の全てを貢いでしまう。
王女バケタモンやシヌヘに心を寄せる酒場の女メリトに、彼とネフェルの仲を裂くよう命ぜられたホレムヘブの心配を余所に、シヌヘは心の闇に身を投じてしまう・・・。
__________

当時としては破格の製作費500万ドルをかけた超大作であり、名匠マイケル・カーティスの晩年の力作でもある。

古代エジプトの”シヌヘの物語”の主人公の名前を付けられた孤児の物語であるが、それを演ずるエドマンド・パードムは、好演はするものの、作品のイメージに、インパクトを与えるにはやや重荷だったようにも感じる。

この役は当初マーロン・ブランドであったために、彼が演じていれば・・・と、多くの人が思ってしまっただろうと予想されるところが、何ともエドマンド・パードムには気の毒なような気もする。

ホレムヘブを演ずるヴィクター・マチュアは、まずまず存在感を発揮するが、アップが少ないせいか、ジーン・シモンズジーン・ティアニーの役柄に物足りなさも感じる。

因みに、魔性の女ネフェル役をマリリン・モンローが切望したのだが、本作の製作者ダリル・F・ザナックの愛人であった、ポーランド出身のベラ・ダーヴィを、彼が起用したのは有名な話だ。
こちらは、モンローよりも、彼女の方が適役だったようにも思える。

グラスペイントなどを駆使した、当時の特撮技術を楽しむこともできるが、スペクタクル作品ではなく、人間が生きていくために必要なこと、その正しき道を行く人物を描く歴史物語となっている。

音楽を、バーナード・ハーマンアルフレッド・ニューマンという、ビッグネームが組んでいるところにも注目したい。

第27回アカデミー賞では、レオン・シャムロイが撮影賞にノミネートされた。

主人公の心の支えとなる酒場の女ジーン・シモンズ、軍人からファラオになるホレムヘブを演ずるヴィクター・マチュア、国策を信仰に頼り暗殺される王イクナートンマイケル・ワイルディング、その妹である王女ジーン・ティアニー、女の魅力で主人公の財産を奪うベラ・ダーヴィ、主人公の召使役ピーター・ユスティノフ、主人公の義母であったティイジュディス・イヴリン、神官ヘンリー・ダニエル、墓泥棒ジョン・キャラダイン、主人公の養父カール・ベントン・リード、メリト(J・シモンズ)の養子トミー・レティグ、王妃ネフェルティティ役のアニタ・スティーヴンス、死者の家の監督官のマイク・マズルキなどが共演している。


モバイルバージョンを終了