1954年に発表された、ジョセフ・ヘイズの小説”The Desperate Hours”を基に、1955年にブロードウェイで上演された舞台劇の映画化。 3人の脱獄囚に襲われ恐怖に怯えながら立ち向かう家族を描く、製作、監督ウィリアム・ワイラー、主演ハンフリー・ボガート、フレドリック・マーチ、アーサー・ケネディ、マーサ・スコット、ギグ・ヤング他共演のドラマ。 |
・ハンフリー・ボガート / Humphrey Bogart / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:ウィリアム・ワイラー
製作:ウィリアム・ワイラー
原作:ジョセフ・ヘイズ
脚本:ジョセフ・ヘイズ
撮影:リー・ガームス
編集:ロバート・スウィンク
音楽:ゲイル・キュービック
出演
グレン・グリフィン:ハンフリー・ボガート
ダン・ヒリアード:フレドリック・マーチ
ジェス・バード:アーサー・ケネディ
エレノア”エリー”ヒリアード:マーサ・スコット
ハル・グリフィン:デューイ・マーティン
サム・コビッシュ:ロバート・ミドルトン
シンディ・ヒリアード:メアリー・マーフィ
ラルフ・ヒリアード:リチャード・アイアー
チャック・ライト:ギグ・ヤング
カーソン:ウィット・ビッセル
マスターズ保安官:レイ・コリンズ
パターソン:ウォルター・ボールドウィン
アメリカ 映画
配給 パラマウント・ピクチャーズ
1955年製作 112分
公開
北米:1955年10月5日
日本:1956年3月16日
製作費 $2,388,000
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
インディアナ州、インディアナポリス。
郊外の住宅地に住むダン・ヒリアード(フレドリック・マーチ)は、妻エレノア(マーサ・スコット)、娘シンディ(メアリー・マーフィ)、息子ラルフ(リチャード・ アイアー)とで平凡な暮らしをしていた。
ある朝、グレン・グリフィン(ハンフリー・ボガート)と弟ハル(デューイ・マーティン)、そしてサム・コビッシュ(ロバート・ミドルトン)が脱獄したという報せが、保安官補ジェス・バード(アーサー・ケネディ)の元に入る。
バードは、かつてグレンを殴り倒したことがあり、彼に恨みを持たれていたため警戒する。
その後、三人の脱獄囚は、庭に自転車が放置されていたことで、子供がいると判断したヒリアード家に目をつける。
グレンは道に迷ったと言って、入り口に現れたエレノアに銃を向け家に押し入り、三人はその場に留まる準備を始め、車をガレージに隠す。 バードは直ちに非常線を張り、検問で逃走車をチャックし始めるが、三人の足取りは掴めない。 ピッツバーグに電話をしたグレンは、愛人から逃走資金を調達する手はずを整える。 そこに、ダンとシンディが帰宅するが、彼らは、エレノアに銃を向けるグレンらに驚いてしまう。 ダンはラジオの速報を聞いていたので、グレンらが脱獄囚だと気づき、冷静に対応する。 グレンは、金が届く夜中まで居座るとダンに伝えるが、毅然とした態度で怯まず、重役面する彼の態度が気に食わなかった。 巨漢で粗暴な男サムは、生意気なラルフに襲い掛かり、それを止めようとしたダンと揉み合いになり、グレンに制止される。 FBIのカーソン(ウィット・ビッセル)からの連絡で、グレンの女を確認したバードは、彼女を泳がせ三人の居場所を捜し出そうとする。 その後グレンは、逃走のため車にガソリンを入れてくることをダンに命じ、家族を人質に取られている彼はそれに従う。 恋人の弁護士のチャック・ライト(ギグ・ヤング)に誘われていたシンディも、怪しまれないように出かけてくるようグレンに指示される。 三人が出て行くのではなく、自分達も連れ去られるのではという恐怖に駆られるエレノアを、ダンは落ち着かせる。 やがてシンディは帰宅し、チャックは彼女の様子がおかしいことに気づきながらもその場を去る。 そんな時、サムが身勝手な行動を始めて外に出たため、グレンは彼を殴り倒してしまう。 シンディは気絶した振りをして、その様子を見たハルの手に噛み付き、ダンが彼に襲い掛かり銃を奪い、家から追い出し鍵をかける。 しかし、グレンがラルフを人質に取ったため、仕方なくダンは銃を捨てて彼を家の中に入れる。 そしてグレンは、懲らしめるためにダンを殴り倒し、彼は意識を失う。 その頃、保安官事務所に姿を現したカーソンは、パトロール警官が、交通違反でグレンの女を逮捕してしまいったことをバードに伝える。 ダンは意識を取り戻してエレノアに介抱され、グレンに女から電話が入り、彼が金を送金させたため、結局、三人はその後も居座ることになる。 金はダンの会社に届くことになっていて、彼は出勤することになり、ラルフは学校を休ませる。 ダンは、出かける際にグレンに向かって、家族に何かあったら必ず殺すと伝える。 その後、廃品回収業者パターソン(ウォルター・ボールドウィン)が現れ、ガレージの不審な車に気づく。 パターソンは、サムに後をつけられて殺されてしまう。 出社したダンは、郵便物を調べるが現金が届いていないことを確認し、外出した彼は、メモをホテルのボーイに渡して警察に届けさせる。 社に戻ったダンは、郊外にいたサムに、迎えに来るよう呼び出される。 チャックは、シンディのことでダンを訪ねるのだが、それどろではない彼に相手にされない。 殺人現場に向かい、パターソンの遺体を調べたバードは、彼が廃品回収に回った地域を調べさせる。 サムを迎えに行ったダンは自宅に戻り、ラルフの担任が来ていることに気づく。 ラルフが、宿題に隠して家の様子を教師に知らせようとしたため、ダンがそれを取り上げる。 それを知ったグレンは、届いた現金だというダンの金を受け取り、女からの金は届いていないことを察し、翌日まで居座ろうとする。 ダンは、自分を人質にして、家族は連れて行かないことでグレンと合意する。 しかし、グレンがシンディを連れて行くことをハルに告げたため、家族に同情する彼は不満を漏らす。 ダンが警察に届けさせた、匿名のメモを受け取ったバードは、特定した地域からパトカーや警官を遠ざけ、犯人達を刺激しないようにする。 夜になり、ダンが、どこかに外泊するようにと言い聞かせていたシンディが、チャックに送られて帰宅してしまう。 チャックが引き返してきたため、危険を感じたハルは、独りで逃亡すると言い出し、グレンはそれを止めるものの、仕方なく彼に金を渡して逃がす。 通りがかりの車に押し入ったハルは、グレンらが居る地域が、捜査の対象になっていることをラジオで知り、ダイナーに寄り電話でそれを知らせようとする。 しかしハルは、居合わせた警官に見つかってしまい、発砲して逃げるものの、銃弾を受けトラックに轢かれて死亡する。 その頃、夜警からダンに書留が届いたという連絡が入り、彼はそれを受け取りに会社に向かう。 警戒地域に居たチャックが、バードの元に連れてこられるが、新聞記事を見せられ、脱獄囚がどこかの家に潜んでいることを知らされる。 挙動がおかしかったシンディの様子から、彼女の家に犯人達が居ることを察したチャックは、それに気づいたバードには何も語らなかった。 そこに、ハルの死亡と、彼の所持していた拳銃が、ダンの物だという連絡が入る。 バードらはヒリアード家に急行し、チャックはシンディに電話して彼女を誘い出そうとする。 チャックはシンディを連れ出し、その後、警察はヒリアード家を包囲する。 金を受け取ったダンは、家に戻る途中に警官に呼び止められ、近所の家を拠点にしていたバードの元に連れて行かれる。 その場で、保護されたシンディの無事を確認したダンは、家族の命を第一に考えるが、マスターズ保安官(レイ・コリンズ)は、強行突入を考える。 拳銃を受け取ったダンは弾丸を抜き、10分の猶予をもらい家に向かう。 グレンは、戻ったダンから金を奪い、隠し持っていた拳銃も見つけ、家族を連れて逃げ去ろうとする。 エレノアが部屋に閉じこもったため、グレンがドアを蹴破ろうとしている隙に、ダンはサムに表の異変を知らせ、彼を外に追い出してしまう。 サムは射殺され、ダンは、部屋から飛び出したエレノアを逃がす。 グレンはラルフに銃を向けるが、ダンは息子に逃げろと命令し、彼は表に飛び出す。 拳銃に弾が入っていないことに気づいたグレンに、ダンはサムから奪った銃を向ける。 ハルが死んだことをグレンに伝えたダンは、彼に自分の家から出て行くように命ずる。 バードは、拡声器でグレンに家から出るように指示するが、サーチライトに拳銃を投げつけた彼は射殺される。 そして、家族と無事を喜び合ったダンは、チャックを家に招き入れる。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
平凡な家庭ヒリアード家に3人の脱獄囚が押し入り、犯人のグレン・グリフィンは、女に逃亡資金を届けさせる手はずを整えて立て篭もる。
帰宅した主人のダンは、怯える妻エレノアや娘シンディ、そして息子のラルフを落ち着かせて、犯人らが出て行くのを待つ。
グレンに恨まれていた保安官補のバードは、彼らを逮捕するために、非常線を張るが手がかりを掴めない。
そんな時、泳がせていたグレンの女が逮捕されてしまい、バードの捜査は行き詰ってしまう。
その後、グレンの女がダンの会社に送金することになり、彼は出社して、警察に危険を知らせるメモを届けさせる。
一方、犯人の一人サムは、廃品業者が不審車に気づいたため、彼を追い殺害してしまう。
それがきっかけで、関連を調べたバードは、犯人らが潜伏する地域を限定して捜査を続ける。
金が届かないまま帰宅したダンだったが、犯人達は出て行くのではなく、自分達が人質として連れ去られる危険性に気づき始める・・・。
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パラマウント・ピクチャーズが新開発した、”ビスタビジョン”方式で製作された最初のモノクロ作品。
*カラー作品は、前年に公開された「ホワイト・クリスマス」(1954)。
1990年に、製作、監督マイケル・チミノ、ミッキー・ローク主演で、リメイク作「逃亡者」が公開された。
実際に起きた事件を基にした、ウィリアム・ワイラーらしい、繊細な人物描写が際立つ作品に仕上げられている。
小さな子供から、 わずかな出番の廃品回収業者までもが、心に刻み込まれるような表情や仕草を見せる演出は見ものだ。
ラストで、事件を解決した主人公が、娘の恋人を家に招き入れるシーン以外は、息を抜ける間がほとんどなく、苛立つ犯人と、緊張感が続いてヒステリックになる女性達に、ややストレスがたまってしまう感じを受けないでもない。
閑静な住宅街、平穏な家庭に突如として訪れる危機、それに直面した、家族を守る責任のある家長の正義感と勇気も、いかにもアメリカ的に表現されている。
汚れ役を演じても、人間味を見せる場合が多いハンフリー・ボガートが、非情な男に徹していて、彼が悪役を演ずる最後の作品でもある。
その悪に毅然として立ち向かい、堂々たる演技を見せるフレドリック・マーチの戦いぶりが見所でもある。
犯人を追う保安官補のアーサー・ケネディ、ダン(F・マーチ)の妻マーサ・スコット、娘のメアリー・マーフィ、息子リチャード・アイアー、家族に同情する犯人デューイ・マーティンと巨漢で粗暴なロバート・ミドルトン、シンディ(M・マーフィ)の恋人ギグ・ヤング、FBI捜査官ウィット・ビッセル、保安官レイ・コリンズ、廃品回収業者ウォルター・ボールドウィンなどが共演している。