第二次大戦下、その巧みな戦術で北アフリカでの驚異的な戦果が敵国イギリス等にも賞賛されたドイツの軍人にして国家的英雄エルヴィン・ロンメルの活躍と晩年を描く、監督ヘンリー・ハサウェイ、製作、脚本ナナリー・ジョンソン、主演ジェームズ・メイソン、セドリック・ハードウィック、ジェシカ・タンディ、レオ・G・キャロル、リチャード・ブーン他共演による戦争映画の秀作。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ヘンリー・ハサウェイ
製作:ナナリー・ジョンソン
原作:デスモンド・ヤング
脚本:ナナリー・ジョンソン
撮影:ノーバート・ブロダイン
編集:ジェームズ・B・クラーク
音楽:ダニエル・アンフィシアトロフ
出演
エルヴィン・ヨハネス・オイゲン・ロンメル:ジェームズ・メイソン
カール・シュトローリン博士:セドリック・ハードウィック
フラウ・ルーシー・ロンメル:ジェシカ・タンディ
ゲルト・フォン・ルントシュテット:レオ・G・キャロル
アドルフ・ヒトラー:ルーサー・アドラー
ヴィルヘルム・ブルクドルフ:エヴェレット・スローン
エルンスト・マイゼル:ドン・デレオ
ヴィルヘルム・カイテル:ジョン・ホイト
フリッツ・バイエルライン:ジョージ・マクレディ
ヘルマン・オドリンガー:リチャード・ブーン
クラウス・フォン・シュタウフェンベルク:エドゥアード・フランツ
マンフレート・ロンメル:ウィリアム・レイノルズ
本人:デスモンド・ヤング
ナレーター:マイケル・レニー
アメリカ 映画
配給 20世紀FOX
1951年製作 88分
公開
北米:1951年10月17日
日本:1952年7月15日
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1941年11月10日、北アフリカ、リビア。
イギリスのコマンド部隊による、ドイツ・アフリカ軍団総司令官エルヴィン・ロンメル大将(ジェームズ・メイソン)の司令部奇襲作戦が実行される。
難なく司令部に侵入した部隊は、敵兵を次々と倒すものの、ロンメル暗殺は失敗に終わる。
イギリス陸軍司令部では、戦果を上げ続けるロンメルの快進撃で、彼を”超人”のように思い込むことを払拭するよう、中東軍司令官クルード・オーキンレック将軍からの指令を各指揮官に徹底させる。
1942年6月。
ドイツ軍に捕らえられたイギリス軍の先任将校デスモンド・ヤング中佐は、敵士官から味方の砲撃を止めさせるよう強要される。
ドイツ側の士官は、ヤング中佐の命をも奪いかねない態度で彼に迫るが、国際協定に違反する、その強引な方法を見た司令官はそれを制止する。
その司令官こそ、第一次大戦以後、ドイツ国防軍最高の指揮官と言われた伝説の男、”砂漠の狐”の異名を持つ陸軍元帥”エルヴィン・ヨハネス・オイゲン・ロンメル”だった。 ロンメルの戦術、戦法は、敵であるイギリス軍からも賞賛されるほどで、命を助けられたヤング中佐は、元帥に向かい最敬礼をする。 1944年10月にロンメルは死亡し、ナチス・ドイツは彼の死を”戦場における名誉の死”と発表する。 その発表を怪しんだヤング中佐は、戦後、ロンメルの死の真相を探る旅に出る。 ヤング中佐は、ロンメルの家族や軍関係者に会い、そしてイギリスやドイツの公式記録などを調べ上げた。 1942年10月23日。 この時、ロンメルはアフリカを離れ、持病の”ジフテリア”治療のため本国に戻っていた。 奇襲を受けたドイツ軍は、急遽アフリカに戻ったロンメルの指揮の下、部隊の立て直しを図る。 しかし、装備や燃料の補給が十分でないことに加えて、敵イギリス軍司令官バーナード・モントゴメリー将軍の巧みな戦術に遭い、ドイツ軍は劣勢となる。 戦闘開始から10日目、全滅を避けるために撤退を余儀なくされたロンメルは、それを決意する。 しかしロンメルは、ベルリンの総統ヒトラーから、最後の一兵まで戦えとの電文を受ける。 電文を破り捨てたロンメルは、ヒトラーの命令を無視して部隊に撤退を命ずる。 11月4日、ロンメルは全軍に撤退命令を出し、連戦連勝を誇ったドイツ・アフリカ軍団は初めて敗北を味わう。 帰国後、入院していたロンメルは、妻ルーシー(ジェシカ・タンディ)と息子のマンフレート(ウィリアム・レイノルズ)、そしてナチスの監視リストに名を連ねるシュツットガルト市長のカール・シュトローリン博士(セドリック・ハードウィック)の訪問を受ける。 ロンメルは、命の限りを尽くした戦地での任務に対する、ヒトラーの非情な態度を批判し、総統が勝利に否定的だということをシュトローリン博士に伝える。 博士は、国家の破滅を阻止するには、ヒトラーの退陣が不可欠だということと、英雄ではあるが総統の側近には嫌われているロンメルの身を案じ、警戒するよう忠告する。 その後、ゲシュタポはシュトローリン博士の尾行を開始する。 1943年11月。 1ヵ月後、ロンメルは、西方軍総司令官・ゲルト・フォン・ルントシュテット元帥(レオ・G・キャロル)を訪ねる。 ルントシュテットに、”大西洋の壁”の甘い防御を指摘したロンメルは、水際で敵を撃滅することの重要性を語る。 ボヘミア出身の、伍長としての軍歴しかないヒトラーに従わなければならないもどかしさを、ルントシュテットは皮肉を込めてロンメルに伝え、自分達の思うようにはならない現実を語る。 さらにルントシュテットは、自分も含めて、ナチスの監視下に置かれていることをロンメルに伝える。 1944年2月。 博士は、軍関係者や各方面の有識者などが、ヒトラーの退陣と、ナチスの恐怖の排除を願っていることをロンメルに伝える。 ヒトラーに従った報いを受けられると考えるロンメルに対し、シュトローリン博士は、愛国者達が妻子達を含め守ってくれると、本気で信じているのかを問う。 上官に従うのが務めの一軍人に過ぎないことを強調して、自分に政治家の心を動かせるはずの無いことをロンメルは強調する。 シュトローリン博士は、ヒトラーやその側近らを嫌う気持ちがありながら、操り人形に成り下がったロンメルを臆病者呼ばわりする。 声を荒げる博士だったが、ロンメルを根気よく説得し助力を求める。 ヒトラーを、強引に失脚させるしか方法がないのか思い悩むロンメルは、妻ルーシーの励ましを受けて任地に向かう。 1944年6月6日。 司令部に戻ったロンメルは、侵攻が始まったにも拘らず、カレーが上陸地点だと断言し部隊を配備させるヒトラーから、軍の支配権を手に入れられないことを、司令官のルントシュテットから聞かされる。 そしてロンメルは、意を決してヒトラーを失脚させる計画への賛同をルントシュテットに求める。 しかしルントシュテットは、革命には年をとり過ぎたと言ってそれを拒む。 ベルリン。 そしてルントシュテットは、自分が罷免されるだろうということと、”計画”に対しての幸運を祈り、ロンメルに別れを告げる。 その後、連合軍は内陸に進軍し、ライン川に迫りドイツ軍は敗走を続ける。 ”ヒトラー暗殺計画”に参加するカール=ハインリヒ・フォン・シュテュルプナーゲル将軍の使者から、準備が整ったことをロンメルは知らされる。 最後の行動に出たロンメルは、面会したヒトラー(ルーサー・アドラー)に、戦況の圧倒的不利を訴える。 ヒトラーは、革命的新兵器”V2ロケット”でロンドンを攻撃して反撃に出て、戦況を一変させるという狂言的な意見で自信を見せる。 そして、ロンメルは”暗殺計画”の実行を決め、同時に前線の立て直しも図った。 7月17日。 7月20日。 その会議に参加したクラウス・フォン・シュタウフェンベルク大佐(エドゥアード・フランツ)は、現れたヒトラーに挨拶して、爆弾を仕掛けた鞄を机の下に設置する。 その後、シュタウフェンベルクは電話で呼ばれ、会議室を離れる。 会議室の爆破は成功して、数名の人名が奪われるが、ヒトラーは奇跡的に軽傷で済む。 ”暗殺計画”は失敗し、それに加担した容疑者5000名が処刑され、傷の癒えたロンメルは、世間から無視され孤立してしまう。 1944年10月13日。 ヒトラーの代理だと伝えたブルクドルフは、ロンメルの輝かしい軍歴と武勲を称える。 その後ブルクドルフは、反逆罪に問われたロンメルへの起訴状を渡す。 ロンメルは、その件に関しては法廷で答えることを、ブルクドルフに伝える。 ブルクドルフは、総統が裁判を望まず、判決は既に決まっていることと、ロンメル自身の名誉と家族も守ることを保障して自決を促す。 ロンメルは尚且つ裁判を望むが、妻ルーシーとマンフレートの安全を確保するため自決を決意する。 ルーシーにそれを知らせたロンメルは、副官のヘルマン・オドリンガー大尉(リチャード・ブーン)に、武力での抵抗を提案されるが、既に親衛隊が自宅周辺を包囲していた。 ロンメルは、オドリンガーに妻子を託し、マンフレートを抱きしめ、ルーシーに別れを告げる。 死に向かう車中で、ロンメルの脳裏に浮かんだのは何だったのか。 遅すぎた行動への悔恨、または、めざましい戦果を上げた北アフリカの戦場だったのか。 ロンメルの最強の敵ウィンストン・チャーチルは語った。
...全てを見る(結末あり)
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エジプト北部エル・アラメインのイギリス軍が、3ヶ月前の第一次会戦に続く第二次攻撃を開始しする。
連合軍のヨーロッパ侵攻は時間の問題とないり、ロンメルは療養後、大西洋防衛線(大西洋の壁)を視察をする。
自宅に帰宅していたロンメルを、旧友シュトローリン博士が訪ねる。
連合軍はついにヨーロッパ侵攻を開始し、ノルマンディー上陸作戦が実行される。
国防軍最高司令部総長ヴィルヘルム・カイテル元帥(ジョン・ホイト)から連絡を受けたルントシュテットは、部隊の指揮は認めずに吉報を出せという指示に対し、”講和を結べ、愚か者!”と吐き捨てるようにカイテルに答える。
ロンメルは田舎道を移動中、敵機スピットファイアの攻撃を受けて頭部に重傷を負ってしまう。
東プロイセンのラシュテンブルク。
ヒトラーと参謀は、総統大本営”ヴォルフスシャンツェ”で会議を開く。
カイテル元帥からの連絡を受けたロンメルは、翌日、新しい任務に就くためにヴィルヘルム・ブルクドルフ(エヴェレット・スローン)とエルンスト・マイゼル(ドン・デレオ)両将軍の訪問を受ける。
”自分達を苦しめはしたが、彼は賞賛に値する”(1942年の下院)
”また、尊敬するのは、国家への忠誠心を貫く軍人でありながらヒトラーを憎み、その暴虐を阻止し、祖国ドイツを救うための計画に加担し、命を捨てたことだ。”
*(簡略ストー リー)
1942年。
北アフリカ戦線で大きな功績を挙げたドイツ国防軍のエルヴィン・ロンメル陸軍元帥は、その後、敵の攻勢に遭い帰国する。
ロンメルは、ナチスの圧政に半旗を掲げる分子が計画する、ヒトラー暗殺計画への参加を要請される。
一軍人として、任務に従うことが務めだという信念を持つロンメルは、上層部にも”革命”を起こそうとする意思だけはあることを知る。
1944年6月6日。
ノルマンディー上陸作戦による連合軍のヨーロッパ侵攻作戦が開始されるも、後方の司令部から指揮権を手に入れられない事実を知ったロンメルは、意を決しヒトラーを失脚させる計画に身を投ずる・・・。
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本作に本人役で登場するイギリス軍将校デスモンド・ヤングが、当時、名誉の戦死と発表されたエルヴィン・ロンメルの死に疑問を持ち、戦後、その死の真相を追究した記録を基に製作された作品。
公開が終戦間もなかったこともあり、実際にロンメルに間近で接したデスモンド・ヤングの回想で進行する展開が実にリアルだ。
*ナレーターはマイケル・レニー。
また、各文献などを参考にしてみると、かなり史実に忠実に描かれ、要所要所の場面やセリフに重みがある。
ニュース・フィルムなどを使った戦闘場面や、ドイツ国防軍軍人、特に将官達の凛々しい軍服姿などは、美しささえ感じる。
ゲルト・フォン・ルントシュテット元帥の襟章だけが他の将官達と違う細かい演出など手抜きが無い。
ロンメルの宿敵とまでは言えないのだが、ヨーロッパ侵攻後のニュース・フィルムを使った場面で、有名なアメリカ陸軍の猛将”ジョージ・S・パットン”の姿なども一瞬登場する。
ルントシュテット(レオ・G・キャロル)が、皮肉を込めヒトラーを非難する場面が何度か登場するが、ドイツ国防軍の軍人としてのプライドや政党ナチスとの違いを強調する演出も興味深い。
*ルントシュテットを演ずるレオ・G・キャロルの、人を食ったような演技は見ものだ。
製作も兼ねた、ナナリー・ジョンソンの見事な脚本を活かした、監督ヘンリー・ハサウェイのアクションとしての醍醐味と”ヒトラー暗殺計画”を絡めた、サスペンス・タッチの演出も見応え十分だ。
ダニエル・アンフィシアトロフの、戦争映画らしい勇ましくも軽快な音楽も印象に残る。
気骨ある軍人、愛国者、そして良き夫であり父として理想の人物像を見事に演じ切るロンメルを熱演するジェームズ・メイソンは、2年後の「砂漠の鼠」(1953)でも同じ役を演じている。
ロンメルをヒトラー失脚計画に誘い込む、シュツットガルト市長のセドリック・ハードウィック、夫の国葬の際、ヘルマン・ゲーリングの敬礼を無視し、自決に追いやったエルンスト・マイゼルの握手を拒否したという、ロンメル夫人の人柄を意識してか、毅然とした態度が印象的なジェシカ・タンディ、息子マンフレート(2013年84歳没)ウィリアム・レイノルズ、ルントシュテット元帥のレオ・G・キャロル、アドルフ・ヒトラー、ルーサー・アドラー、ロンメルへの死の通達役ブルクドルフ将軍役のエヴェレット・スローンとマイゼル将軍ドン・デレオ、カイテル元帥ジョン・ホイト、ロンメルの忠実な部下役、若き日のリチャード・ブーン、アフリカ戦線の参謀であるフリッツ・バイエルライン将軍のジョージ・マクレディ、そして、”ヒトラー暗殺計画”実行犯クラウス・フォン・シュタウフェンベルク大佐のエドゥアード・フランツなどが共演している。