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手錠のまゝの脱獄 The Defiant Ones (1958)

鎖でつながれた囚人の争いと友情を人種問題と共に描く、製作、監督スタンリー・クレイマートニー・カーティスシドニー・ポワチエ共演の異色作。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ


スタッフ キャスト ■
監督:スタンリー・クレイマー

製作:スタンリー・クレイマー
原作:ネドリック・ヤング
脚本
ネドリック・ヤング

ハロルド・ジェイコブ・スミス
撮影:サム・リーヴィット
編集:フレデリック・ナドソン
音楽:アーネスト・ゴールド

出演
ジョン”ジョーカー”ジャクソン:トニー・カーティス

ノア・カレン:シドニー・ポワチエ
マックス・ミュラー保安官:セオドア・ビケル
ビッグ・サム:ロン・チェイニーJr.
フランク・ギボンズ警部:チャールズ・マッグロー
ビリーの母:カーラ・ウィリアムズ
ビリー:ケヴィン・コーリン
マック:クロード・エイキンス

記者:ローレンス・ドブキン

アメリカ 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ

1958年製作 96分
公開
北米:1958年9月24日
日本:1958年10月14日


アカデミー賞 ■
第31回アカデミー賞

・受賞
脚本・撮影賞(白黒)
・ノミネート
作品・監督
主演男優((トニー・カーティス/シドニー・ポワチエ
助演男優(セオドア・ビケル
助演女優(カーラ・ウィリアムズ
編集賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
街道を走る囚人護送車が、豪雨の中ハンドルを取られて土手から転落する。

現場に駆けつけたマックス・ミュラー保安官(セオドア・ビケル)は、手錠を鎖でつながれた白人ジョン”ジョーカー”ジャクソン(トニー・カーティス)と、黒人のノア・カレン(シドニー・ポワチエ)が逃亡したことを知る。

非常線を張ったミュラーは、到着したフランク・ギボンズ警部(チャールズ・マッグロー)に、署長が二人の捜索はするまでもなく、直に殺し合うだろうという見解を示したことを伝える。

一方、ジョーカーとカレンは、鎖を切ろうとするのだが、それができずにいた。

南部に向かうというジョーカーに対して、黒人のカレンは迫害を恐れてそれを拒否する。

カレンは、100キロ先の輸送列車に乗ることを提案するのだが、ジョーカーは当てにならない話に怒りを露にする。
...全てを見る(結末あり)

争っても得にならないことをジョーカーに悟らせたカレンは、彼に北に向かうことに同意させる。

猟犬のドーベルマンと、それを扱う民間人の猟師を伴い、警察犬も引き連れてギボンス警部は山林の捜索を始め、それに同意したミュラー保安官も同行する。

川の激流に流されかけながら、かえるを食料に火を焚いて夜を過ごしたジョーカーとカレンは、翌朝の雨で目覚めて先を急ぐ。

背後に突然、馬車が現れ、二人は気付かれないようにと粘土を掘る深い穴に飛び込むものの、なかなか這い上がることが出来ず、助け合いながらようやく穴から脱出する。

ミュラーとギボンズは、川を渡る前の二人の足跡などを見つけるが、次第に追跡は遅れ始めていた。

憎しみ合いながらも協力して行動するしかないジョーカーとカレンは、ある村落にたどり着き、互いの身の上を語り合う。

住民が寝静まった頃、食料を求めて商店に侵入した二人だったが、ジョーカーが、粘土の穴で痛めていた手首を、さらに痛めて物音を立ててしまう。

二人は、あえなく村人マック(クロード・エイキンス)らに捕らえられてしまう。

捜査が思うようにいかず苛立つギボンズは、援軍を断ったミュラーに責任を取らせようとする。

ミュラーは、薄給の保安官職を辞め弁護士に戻ることも考えていたが、同行していた記者(ローレンス・ドブキン)に、戻れば稼ぎは良くなるのかを聞かれる。

痛いところをつかれたミュラーは、ジョーカーとカレンを恨み必ず逮捕することを誓う。

マックを先頭に、村人は二人をリンチにかけようとするが、ビッグ・サム(ロン・チェイニーJr.)という男が、翌日、警察に二人を引き渡すと言いだし、それを力ずくで制止する。

翌朝、自分も刑務所暮らしの経験があるサムは、二人を解放して逃亡を助ける。

夢中で村から遠ざかったジョーカーとカレンだったが、二人は言い争い殴り合いの喧嘩を始めてしまう。

そこに、銃を持った少年ビリー(ケヴィン・コーリン)が現れ、二人はビリーから銃を奪い彼の家に案内させる。

ビリーは母(カーラ・ウィリアムズ)と二人暮しで、彼女は黒人のカレンに警戒しながら二人に食事を与える。

ビリーが持ってきたハンマーで、二人は手錠をはずすが、手首からばい菌が入ったジョーカーは気を失ってしまう。

村にたどり着いたミュラーらは、サムやマックを尋問するが、彼らは二人に逃げられたと言うだけだった。

ミュラーは、愚痴ばかりこぼす猟師を怒鳴り、ギボンズに指示を出し、指揮官として自分流の捜査を開始する。

夫が蒸発したビリーの母は、ジョーカーの看病をするうちに次第に彼に惹かれていく。

翌朝、回復したジョーカーは、カレンが寝ている間に、納屋に故障している車があることをビリーの母に知らされる。

エンジンがかかることを確認したジョーカーは、ビリーを兄に預けて同行したいと、母親に頼まれる。

そこにカレンが現れ、ジョーカーと彼女の関係を知り、食料を持ち単独で逃亡しようとする。

ジョーカーとカレンは、互いの無事を祈り、簡単な言葉を交わして別れるのだった。

ビリーの母は、ジョーカーと共に旅立つため、カレンにわざと危険地帯に向かわせ、彼を囮に使って二人で逃げようと考えていた。

それを知ったジョーカーは激怒し、彼女を捨ててカレンの元に向かおうとする。

辺鄙な場所から逃れたいと、ジョーカーにすがる彼女だったが、彼はそれを振り切り家を出ようとする。

ジョーカーの、母に対する乱暴な態度を見たビリーは銃弾を浴びせ、彼はそのまま走り去っていく。

ビリーの家に着いたミュラーらは、親子から事情を聞き二人の後を追う。

沼地でカレンを捜したジョーカーは、彼を見つけて、口封じに利用されたことを知らせる。

ドーベルマンを放とうとするギボンズを制止し、ミュラーは単独で二人を追い詰めようとする。

傷を負ったジョーカーを励ましながら、鉄橋にたどり着いたカレンは、速度が落ちた列車に飛び乗る。

カレンはジョーカーの手を掴かもうとするのだが、力尽きたジョーカーの手が離れた時、カレンも一緒に列車から落ちてしまう。

ジョーカーを抱きかかえ、タバコを吸わせたカレンは、警察犬の吠える声を聞きながら、民謡”ロング・ゴーン”を口ずさむ。

二人を見つけたミュラーだったが、カレンは動ずることなく歌い続け、ジョーカーも、ふてぶてしい笑みを浮かべる。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
囚人護送車が豪雨の事故を起こし、駆けつけたミュラー保安官は、手錠を鎖でつながれた白人ジョーカーと、黒人のカレンが逃亡したことを知る。
お互い人種的偏見を持ち合わせる二人は、激しく憎み合いながらも逃亡を続ける。
南部に向かおうとするジョーカーに対して、迫害を恐れるカレンはそれに同意できない。
ジョーカーは、100キロ先の輸送列車に乗ることを提案する、カレンの話に聞く耳を持たない。
やがて、逃亡を続けるために、二人は協力し合わなければならない状況に陥る。
その頃、ミュラー保安官は、ギボンズ警部と共に捜査を始めていた。
その後、ジョーカーとカレンはある村の商店に侵入して、あえなく捕らえられてしまい、村人にリンチにかけられそうになる。
しかし、刑務所生活の経験がある、ビッグ・サムという男に二人は助けられ、そして再び逃亡を続けるのだが・・・。
__________

ハリウッド・テン”を含む、赤狩りブラックリストに載った、脚本家のネドリック・ヤングの原案を基に製作された作品。

売り出し中の若手スター、トニー・カーティスシドニー・ポワチエの、躍動感ある個性を生かした、スタンリー・クレイマーの力強く骨太の演出は冴え渡る。

鎖が解かれた直後から友情が芽生え、クライマックスでは感動と痛快さも感じる。

音楽は、その後、活躍するアーネスト・ゴールドの担当ではあるが、バック・ミュージックは一切なく、ラジオの音楽と主演のシドニー・ポワチエの歌う”ロング・ゴーン”しか登場しないところや、作品全体の殆どを占める緊迫感溢れる野外ロケ、カットの無駄を極力省いた編集手法なども実に興味深い。

第31回アカデミー賞では作品賞以下8部門にノミネートされ、脚本と撮影賞(白黒)を受賞した。
・ノミネート
作品、監督
主演男優(トニー・カーティス/シドニー・ポワチエ
助演男優(セオドア・ビケル
助演女優(カーラ・ウィリアムズ
編集賞

子供時代に初めて観た時には、主人公達の対立ばかりが強烈なインパクトとしてイメージに残ったのだが、数十年間を通して何度か観直しているうちに、友情を描いた場面の方が多いことに気づき、常に新鮮さを感じる作品でもある。

共にアカデミー主演賞にノミネートされた二人、トニー・カーティスシドニー・ポワチエは、色男と人種的偏見の目で見られる者という設定が、いかにもという感じなのだが、両者の鬼気迫る熱演は、映画史上に残る名演として記憶に残る。

どこか内に秘めたものがある、人間味も感じさせる保安官のセオドア・ビケル、豪傑的雰囲気と苦い過去の持ち主として、中盤で存在感を発揮する村人ロン・チェイニーJr.、先走る警部のチャールズ・マッグロー、ジョーカー(T・カーティス)に惹かれ、共に逃げようとするカーラ・ウィリアムズと息子ケヴィン・コーリン、捜査に同行する記者のローレンス・ドブキン、主人公らをリンチにかけようとする村人クロード・エイキンスも共演している。


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