ベトナム戦争での過酷な体験により心に傷を負いながら現実と直面し生きる青年たちを描く、製作、監督マイケル・チミノ、主演ロバート・デ・ニーロ、クリストファー・ウォーケン、ジョン・カザール、メリル・ストリープ共演によるドラマ。 |
・ドラマ
■ スタッフ キャスト ■
監督:マイケル・チミノ
製作
マイケル・チミノ
バリー・スパイキングス
マイケル・ディーリー
ジョン・ペヴェラル
脚本
デリック・ウォッシュバーン
クィン・レデカー
マイケル・チミノ
撮影:ヴィルモス・スィグモンド
編集:ピーター・ジナー
音楽
スタンリー・マイヤーズ
ジョン・ウィリアムズ(メインテーマ)
出演
マイケル・ヴォロンスキー:ロバート・デ・ニーロ
ニコナー”ニック”チェヴォタレヴィッチ:クリストファー・ウォーケン
スタンリー/スタン:ジョン・カザール
スティーヴン・プシュコフ:ジョン・サヴェージ
ピーター”アクセル”アクセルロッド:チャック・アスペグレン
リンダ:メリル・ストリープ
アンジェラ・プシュコフ:ルターニャ・アルダ
ジョン・ウェルシュ:ジョージ・ズンザ
アメリカ 映画
配給 ユニバーサル・ピクチャーズ
1978年製作 183分
公開
北米:1978年12月8日
日本:1979年3月24日
製作費 $15,000,000
北米興行収入 $48,979,330
■ アカデミー賞 ■
第51回アカデミー賞
・受賞
作品・監督
助演男優(クリストファー・ウォーケン)
編集・録音賞
・ノミネート
主演男優(ロバート・デ・ニーロ)
助演女優(メリル・ストリープ)
脚本・撮影賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1960年代後半、ペンシルベニア、クレアトン。
製鉄所で働く労働者である、ロシア系アメリカ人マイケル・ヴォロンスキー(ロバート・デ・ニーロ)、ニック・チェヴォタレヴィッチ(クリストファー・ウォーケン)、スティーヴン・プシュコフ(ジョン・サヴェージ)、スタンリー/スタン(ジョン・カザール)、ピーター・アクセルロッド(チャック・アスペグレン)は、夜勤の仕事を終えて、ジョン・ウェルシュ(ジョージ・ズンザ)のバーに向かう。
町では、スティーヴンと恋人アンジェラ(ルタニア・アルダ)の結婚式と、マイケル、ニック、スティーヴンの、ベトナム戦争出征の歓送会の準備が進んでいた。
マイケルらは、式の後の鹿狩りの準備をしていたが、ニックの恋人で、アル中の父の面倒を見ているリンダ(メリル・ストリープ)が、父に殴られニックの元に現れる。
リンダは、ニックが出征した後に、彼のアパートに越したいことを伝え、彼もそれを了承する。 スティーヴンとアンジェラの結婚式は、ロシア正教会で行われ、その後、マイケル、ニック、スティーヴンの送別会を兼ねたパーティーが始まる。 出征前に酔って浮かれるマイケルは、会場のバーにいた”グリーン・ベレー”隊員に、早く戦場に出てみたいと言って絡む。 マイケルを相手にしない隊員は、戦場は酷いとだけ言って彼を無視する。 そんな中、スティーヴンとアンジェラの誓いの儀式を見たニックは、リンダに求婚し、彼女もそれを受け入れる。 式典の後、会場を後にしたマイケルらは山に出かけ、出征前の最後の鹿狩りに向かう。 山小屋に向かう前に、マイケルは、スタンの準備不足を非難する彼と口論になるが、ニックがそれをなだめる。 そしてマイケルは、”一撃で仕留める”という、彼の鹿狩りの鉄則通り鹿を撃ち、ジョンの店へと戻る。 大騒ぎをして店に入ったマイケルらだったが、ジョンのピアノの演奏に神妙に聴き入る。 泥沼化を辿っていた、先の見えないベトナム戦争の激戦地で、マイケルは敵に向かい銃弾を浴びせていた。 マイケルは、そこで偶然,ニックとスティーヴンに出くわすが、三人は捕虜になってしまい悲惨な状況下に置かれる。 捕虜達は,順番にロシアンルーレットというゲームをさせられて、賭けの道具に使われていた。 スティーヴンとマイケルの順番がきて、精神的に極限に達したスティーブンは引きずり出され、水かさの増す川に放置される。 マイケルは、一か八かで拳銃に弾丸を多く装填し、ニックと対決すると見せかけ、隙を見てベトコンを撃ち殺す。 その場を脱出した三人は、流木にしがみつき川の流れに身を任せ、現れた味方のヘリコプターに発見されるものの、マイケルとスティーヴンは取り残されてしまう。 その後マイケルは、足に重傷を負ったスティーヴンを友軍に任せ、別行動をとる。 先に病院に収容されたニックは精神を病み、記憶も一部しか戻らなかった。 その後、ニックは帰国することになるが、軍病院は退院するものの、故郷に帰る気になれなかった。 そんなニックは、サイゴン(現ホーチミン)市内の裏町で、ロシアンルーレットを見せられ、勝負を邪魔してしまう。 偶然にも、マイケルはそこでニックを見かけて後を追うが、彼は勝負師に身を投じてしまう。 時は経ち、マイケルはアメリカに帰還するが、戦争を体験し、心に傷を受けた彼は、以前とは変わっていた。 マイケルは、彼を歓迎しようとする仲間達の元に向かわず、ニックのことを考えつつ、実は心を寄せるリンダを想うのだった。 そしてマイケルは、翌朝、仲間達が引き上げた後、リンダの元に向かう。 マイケルは、ニックの帰りを待つリンダを慰め、職場であるマーケーットに彼女を送る。 製鉄所で、スタンとアクセルに会ったマイケルは、ジョンの店に向かい、仲間達に歓迎される。 マイケルは、スティーヴンが復員していることを知らされ、彼の帰国以来、塞ぎ込んでいるアンジェらに会いに行く。 アンジェラから、スティーヴンの居場所を知らされたマイケルは、ニックと共同生活をしていた家をリンダに譲り出て行こうとする。 マイケルをベッドに誘ったリンダだったが、彼はそれを断り家を出る。 しかし、リンダはマイケルを追い、二人はモーテルで一夜を過ごす。 マイケルは、仲間と鹿狩りに行っても、以前のように鹿を撃つことができなかった。 護身用の銃を、おもちゃのように扱うスタンを見たマイケルは、自分の生死をかけた体験や、ニックを想い激怒する。 やがてマイケルとリンダは、ニックの生存も諦め、互いに惹かれ合うようになり、二人で暮らすようになる。 ようやくスティーヴンに会う気になったマイケルは、彼に電話をかける。 しかし、スティーヴンは、言葉少なく電話を切ってしまう。 退役陸軍病院に向かったマイケルは、両足を失ったスティーヴンと再会する。 スティーヴンは、陥落寸前のサイゴンから、毎月大金が送られてきていることをマイケルに告げる。 ニックが生存していると確信したマイケルは、スティーヴンを町に連れ帰り、その後サイゴンに向かう。 混乱するサイゴンに着いたマイケルは、ニックを捜すために、大金をはたいて、ロシアンルーレットの勝負をしようとする。 マイケルは、勝負師になっていたニックを見つけるが、彼は何も思い出せない。 仕方なくマイケルはニックと勝負し、彼に自分を思い出させようとする。 自ら拳銃を握り、ニックに正気を取り戻させようとするマイケルは引き金を引く。 マイケルの必死の呼びかけに、何かを思い出しかけたように見えたニックだったが、その時、放った弾丸が、彼のこめかみを貫く。 やがて戦争も終息を迎え、マイケルは、ニックの遺体を故郷に運び仲間達によって埋葬される。 葬儀の後、ジョンの店に集まった仲間達は、祖国のために戦い命を落としたニックのために、”God Bless America”を歌い捧げる。
...全てを見る(結末あり)
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*(簡略ストー リー)
1960年代後半、ペンシルベニア、クレアトン。
製鉄所で働くロシア系アメリカ人の仲間マイケル・ヴォロンスキー、ニック、スティーヴン、スタン、ピーターは、仕事を終えて、いつものように友人ジョンのバーに向かう。
その後、町では、スティーヴンと恋人アンジェラの結婚式と、マイケル、ニック、スティーヴンの、ベトナム戦争出征の歓送会が行われる。
マイケルらの、送別会を兼ねたパーティーも始まり、出征前に酔って浮かれる彼は、会場のバーにいた”グリーン・ベレー”隊員に、早く戦場に出てみたいと言って絡むが、隊員は、戦場は酷いとだけ言ってそれを無視する。
そんな中、結婚する二人の誓いの儀式を見ていたニックは、恋人リンダに求婚して、彼女もそれを受け入れる。
式典の後、会場を後にしたマイケルらは、出征前の最後の鹿狩りのため山へ出かけ、マイケルは、”一撃で仕留める”という、彼の鹿狩りの鉄則通り鹿を撃ち、ジョンの店へと戻る。
そして、泥沼化を辿っていた、先の見えない戦地で戦っていたマイケルは、ニックとスティーヴンに偶然、出くわすものの、三人は捕虜になり、悲惨な状況下に置かれてしまう・・・。
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鹿狩りを楽しめる、のどかな田舎町の雰囲気から、突然、激しい戦場へと替わる衝撃的なシーンや、ロシアンルーレットの異常なまでの緊迫感と残酷さ、また、多くを語らずに、友情や愛情を表現する描写など(特にラスト)も見事で、映画史の中でも非情に高い評価を受けている作品。
1996年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。
しかし、反戦映画として位置づけられている、明確なメッセージは伝わらず、ベトナム人に対し差別的な作品と見た人々も多く、賛否両論があるのも事実。
マイケル・チミノは、膨大な製作費をかけた次回作「天国の門」(1980)で大失敗し、製作会社であるユナイテッド・アーティスツを倒産にまで追い込み、ハリウッドを事実上追放されてしまう。
第51回アカデミー賞では9部門にノミネートされ、作品、監督、助演男優(クリストファー・ウォーケン)、編集、録音賞を受賞した。
・ノミネート
主演男優(ロバート・デ・ニーロ)
助演女優(メリル・ストリープ)
脚本、撮影賞
個人的には、翌年のアカデミー賞授賞式後に亡くなるジョン・ウェインが、痛々しい姿で本作の作品賞受賞を発表したシーンが印象に残る。
スタンリー・マイヤーズの”Cavatina”を、ジョン・ウィリアムズのギター演奏による哀愁漂うメインテーマが実に効果的に使われている。
出征し、ただ一人以前と変わらぬ様子に見える主人公マイケルだが、陽気な男は寡黙になり、鹿も撃てなくなってしまう・・・
そんな男の心理を、言葉少なく見事に演じ切ったロバート・デ・ニーロの、代表作と言っていい作品。
見かけは若く見えるものの、既にこの時期キャリア十分のクリストファー・ウォーケン(35歳))は、本作が出世作となる。
ベトナムの軍病院に収容されてから、それ以降のクライマックスまで、何事も思い通りにならないもどかしさ、その感情表現は素晴しく、見事にアカデミー助演賞を受賞した。
作品の公開を待たずに、癌で亡くなるジョン・カザールは、病をおしての熱演だが、さすがに痛々しくも見える。
彼の実生活での婚約者だったメリル・ストリープも、本作がきっかけで、大スターの道を歩み始めることになり、まだ20代だが、心揺れ動く女性を好演している。
その後、期待以上の活躍が出来なかったのが残念なジョン・サヴェージや、ジョージ・ズンザも重要な役を演じている。
主人公の仲間チャック・アスペグレン、スティーヴン(J・サヴェージ)の痛々しい姿を見て自閉症になってしまう妻役ルタニア・アルダなどが共演している。