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死者にかかってきた電話 The Deadly Affair (1966)

1961年に発表された、イギリスのスパイ小説家ジョン・ル・カレのデビュー作である”Call for the Dead”の映画化。
共産党員の疑いがある高級官僚自殺事件を調べるイギリス諜報員の捜査を描く、製作、脚本シドニー・ルメット、主演ジェームズ・メイソンマクシミリアン・シェルシモーヌ・シニョレ他共演のサスペンス。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(サスペンス/犯罪)


スタッフ キャスト ■
監督:シドニー・ルメット

製作:シドニー・ルメット
原作:ジョン・ル・カレ
脚本:ポール・デーン
撮影:フレディ・ヤング
編集:セルマ・コネル
音楽:クインシー・ジョーンズ

出演
ジェームズ・メイソン:チャールズ・ドブス
マクシミリアン・シェル:ディーター・フライ
シモーヌ・シニョレ:エルザ・フェナン
ハリエット・アンデルセン:アン・ドブス
ハリー・アンドリュース:メンデル警部
ケネス・ヘイ:ビル・アップルビー
マックス・エイドリアン:顧問
リン・レッドグレーヴ:ヴァージン
ロイ・キニア:アダム・スカー
レス・ホワイト:カール・ハレック/ブロンディ
コリン・レッドグレーヴ:デヴィッド
ロバート・フレミング:サミュエル・フェナン
デヴィッド・ワーナー:エドワード国王(役者)

イギリス 映画
配給
コロンビア・ピクチャーズ(北米)
British Lion Films Corporation(イギリス)
1967年製作 107分
公開
イギリス:1966年10月
北米:1967年1月26日
日本:未公開


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
イギリス諜報員チャールズ・ドブス(ジェームズ・メイソン)は、外務省の官僚サミュエル・フェナン(ロバート・フレミング)がかつて共産党員で、現在もシンパとして活動しているという情報を得て調査を始める。

フェナンと会ったその夜、ドブスは同僚のビル・アップルビー(ケネス・ヘイ)から、フェナンが自殺したことを知らされ驚いてしまう。

ドブスの報告から、フェナンの疑いは晴れていたのだが、顧問(マックス・エイドリアン)に呼び出されたドブスは、彼を自殺に追いやったと、非難されかねない立場に立たされていることを忠告される。

若い妻アン(ハリエット・アンデルセン)の愛に答えられないドブスは、彼女に手を焼きながら、フェナンの死の真相を探ろうとする。

フェナンの妻エルザ(シモーヌ・シニョレ)の元に向かったドブスは、フェナンが、自分と会っていた時には冷静であったにも拘らず、その後、妻の前で取り乱していたと聞かされる。
...全てを見る(結末あり)

ドブスは、フェナンの自殺の裏には何かが隠されていると睨み、警察のメンデル警部(ハリー・アンドリュース)の協力で、フェナンが自殺する前に、モーニング・コールを頼んでいた事実を突き止める。

さらに、フェナンの密告状と遺書が同じオリヴェッティのタイプライターを使っていることに気づいたドブスは、彼が自殺ではなく他殺だと考え始める。

あくまで自殺として事件を片付けようとする顧問に愛想を尽かし、ドブスは辞職してしまう。

そんな時、ドブスの前にオーストリア人の旧友のディーター・フライ(マクシミリアン・シェル)が現れ、2人は久し振りの再会を喜ぶ。

しかしドブスは、妻アンがディーターと浮気をしていることを直感で察し、それを彼女に問い詰める。

アンはそれを否定せず、やり切れない思いをドブスにぶつける。

職を失ったドブスだったが、彼は独自に自分が関る事件の捜査を続ける。

メンデル警部の元に向かったドブスは、自分を尾行した車の所有者アダム・スカー(ロイ・キニア)を訪ねる。

スカーをメンデルが尋問している間、ドブスは尾行していた車を発見するが、何者かに襲われて傷を負い、病院に運ばれてしまう。

メンデルは、スカーを痛めつけて脅し、彼が車を貸した男が”ブロンディ”ということと、”東欧鉄鋼派遣団”なる団体が絡んでいることをドブスに伝える。

アンはチューリッヒに行くことになり、ディーターもそれを追うことを知ったドブスはショックを受ける。

そして、自分の情報を流したスカーを、”ブロンディ”は抹殺する。

メンデルは、フェナンの妻エルザが、事件当日に行った観劇の予約係ヴァージン(リン・レッドグレーヴ)に会い、エルザが毎週、夫ではない男性と劇場に来ていたことを知る。

退院したドブスはディーターと会うが、彼が、愛が長続きしないアンと付き合っていけるのか心配してしまう。

エルザの観劇のお供が、”ブロンディ”だと気づいたメンデルは、事件の夜は彼がエルザに同行していないことを知り、”ブロンディ”がフェナンを殺したものと推理する。

ドブスとメンデルは、アップルビーの協力で”ブロンディ”がハンガリー人のカール・ハレック(レス・ホワイト)という男で、”東欧鉄鋼派遣団”の一員だということを知る。

東欧鉄鋼派遣団”のオフィスを調べたドブス達は、そこで、フェナンの密告状と遺言を打った、オリヴェッティのタイプライターを見つけ、さらにハレックが殺されているのを知る。

再びエルザを訪ねたドブスは、フェナンが共産党に情報を流して彼女が連絡係として報酬を受け取り、それを貧しい人々に与えていたことと、その影には黒幕がいることを知らされる。

やがて、密告状と遺言のタイプが同じで、ハレックは絞殺されていたことがメンデルの調査で分かる。

ドブスは、大戦中、ユダヤ人であるエルザが、ナチスからの迫害を受けて苦しみに耐え生き抜いたにも拘らず、平和が訪れてもそれが無駄だったとわかり、共産主義者になったのではないかと考える。

黒幕を誘き出すため、エルザを罠にかけたドブス達は、彼女の動きを追う。

ドブスとメンデルそしてアップルビーは、劇場のエルザを監視するが、黒幕はなかなか現れない。

ようやく現れた黒幕が、ディーターだと知ったドブスは動転してしまう。

自分達の存在が知られたことに気づいたエルザとディーターは、動揺しながら芝居を観続けるが、ディーターはエルザを殺害して逃亡する。

メンデルはディーターの居場所を突き止め、ドブスを呼び寄せる。

ディーターは2人を待ち受けて、メンデルを銃撃し、ドブスに銃を向ける。

ドブスは、事前に、裏でうごめく不穏な動きを察知し手を打っていたが、ターゲットがディーターでないことを願っていた。

しかし、ディーターがアンを利用して自分の動向を探ろうとしていたことに気づいたのだった。

ディーターは、目的を果たしたために、国外に逃亡することをドブスに告げる。

その時、瀕死のメンデルが叫び声をあげたため、ディーターは彼に再び銃撃を加える。

ドブスはディーターに襲い掛かり、彼を激寒の水路に突き落とす。

旧友をこの手で殺してしまったドブスは、全てを捨ててアンのいるチューリッヒに向かう。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
共産党員に疑われている、イギリス高級官僚フェナンが自殺する。
その調査に関わっていた諜報員チャールズ・ドブスは、フェナンの死を他殺と判断するのだが、それを聞き入れない上司に愛想を尽かし、彼は辞表を突きつけてしまう。
やがて、ドブスの前に、旧友のオーストリア人ディーターが姿を現す。
ドブスは直感で、ディーターと妻のアンが浮気をしていることに気づく。
その後、ドブスは警官メンデルらの協力を得て、事件の真相を突き止めようとする。
しかし、ドブスは、事件を操る黒幕が、意外な人物であったことに気づく・・・。
__________

冷戦下のイギリスに潜む東側のスパイと、老練の諜報員との戦いを描いた、シドニー・ルメットが得意とする、リアリズムを追求した映像と、ヒューマン・ドラマの要素も兼ね備えた、スパイ・サスペンスの秀作。

演技派、個性派の実力者が揃ったキャストの見応えある演技に加え、臨場感溢れるロンドン・ロケも、純粋なスパイ劇に見事な効果を上げている。

クインシー・ジョーンズの、パンチの効いた音楽も印象に残る。

ジェームズ・メイソン演ずる役人的な諜報員は、スーパーマン的な”ジェームズ・ボンド”とはいかにも対照的で、地道な働きも報われず、不幸な夫婦生活と秘密任務の狭間で苦悩する姿が実にリアルだ。
しかし、クライマックスで、黒幕(M・シェル)を殴り倒す、彼にしては珍しい暴力シーンには驚かされる。

その主人公の弟子的な存在で、終盤黒幕として存在感を示すマクシミリアン・シェル、不幸な身の上を語る、陰りのある表情が素晴らしい、官僚の未亡人シモーヌ・シニョレ、年の差がある夫との、満たされない生活に不満を抱く、主人公の妻役ハリエット・アンデルセン、豪快で迫力ある演技、出色の好演を見せる警部ハリー・アンドリュース、主人公の同僚ケネス・ヘイ、上司のマックス・エイドリアン、劇場の予約係役リン・レッドグレーヴコリン・レッドグレーヴ兄妹、そして、劇団員として役者で登場するデヴィッド・ワーナーなどが共演している。


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