1940年に発表された、ハリー・ベイツのSF短編小説”Farewell to the Master”を基に製作された作品。 宇宙の平和維持のために現れた友好的な宇宙人が地球人に警告を発する姿を描く、監督ロバート・ワイズ、主演マイケル・レニー、パトリシア・ニール、ヒュー・マーロウ、サム・ジャフェ他共演によるSF映画の古典的名作。 |
・SF
■ スタッフ キャスト ■
監督:ロバート・ワイズ
製作:ジュリアン・ブロースタイン
原作:ハリー・ベイツ”Farewell to the Master”
脚本:エドムンド・H・ノース
撮影:レオ・トーヴァー
編集:ウィリアム・H・レイノルズ
音楽:バーナード・ハーマン
出演
クラトゥ:マイケル・レニー
ヘレン・ベンソン:パトリシア・ニール
トム・スティーブンス:ヒュー・マーロウ
ジェイコブ・バーンハート博士:サム・ジャフェ
ゴート:ロック・マーティン
ボビー・ベンソン:ビリー・グレイ
ハーリー大統領補佐官:フランク・コンロイ
バーリー夫人:フランセス・バヴィア
ブレディ:テイラー・マクヴェイ
アメリカ 映画
配給 20世紀FOX
1951年製作 92分
公開
北米:1951年9月28日
日本:1952年3月28日
製作費 $1,200,000
北米興行収入 $1,850,000
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
高度6万メートルを、時速6400キロの速さで飛行する物体が、世界中で確認される。
飛行物体は速度を落とし、アメリカのワシントンD.C.に飛来し、”President’s Park”の”The Ellipse”に着陸する。
即刻、軍隊が出動して謎の物体を取り囲み警戒するのだが、内部から人間に似た男(マイケル・レニー)が現れる。
男は、平和を願って訪れたことを英語で伝え、軍隊に何かを差し出すが、ある兵士が彼に発砲してしまう。
男は傷を負い、その後、飛行物体の内部からロボットのようなものが現れ、兵士の銃や戦車などををレーザーで消滅させる。 男は、ロボットの”ゴート”(ロック・マーティン)を制止し、渡そうとした物が、他の惑星に関しての情報が入った大統領への贈り物だったことを告げる。 傷の手当てのために、病院に連れて行かれた男は、大統領補佐官ハーリー(フランク・コンロイ)の訪問を受ける。 ハーリーは、”クラトゥ”と名乗る男に対して、大統領からの謝罪を告げる。 クラトゥは、4億キロ彼方の惑星から来たことと、地球存続に関わる重大事項を、全人類に伝えたい考えをハーリーに告げる。 その間、ゴートはクラトゥの指示に従い静止状態を保ち、軍は宇宙船を調べるが、その構造に科学者は驚きを隠せない。 クラトゥの人体構造は、人間と同じだということがわかるが、彼の受けた銃弾の傷は、所持していた薬で1日で完治してしまう。 大統領やハーリーは、クラトゥの要求で各国首脳を集めようと努力するが、国家間の複雑な問題を考慮すると、それは不可能に近かった。 ”愚かさ”を克服できない地球人に接しようと、クラトゥはハーリーに市民に接触する許可を取ろうとする。 しかし、ハーリーはそれを許可せず、クラトゥに病院から出ないようにと警告する。 その夜、鍵のかかった部屋からクラトゥの姿は消えてしまい、直ちに走査線が引かれる。 マスコミの報道で、市民は街に逃れた”宇宙人”(クラトゥ)を警戒する。 市民が自分を恐れていると知りながら、クラトゥは街をさ迷い、貸部屋を見つけて”カーペンター”と名乗り潜伏する。 クラトゥは、同じ貸家のヘレン・ベンソン(パトリシア・ニール)と息子のボビー(ビリー・グレイ)や、バーリー夫人(フランセス・バヴィア)と知り合いになる。 同じ家の住人になった人々を、興味深く観察するクラトゥは、ヘレンが、恋人トム・スティーブンス(ヒュー・マーロウ)と出かけると聞き、ボビーの面倒を見ることを買って出る。 ボビーと市内見物に出かけたクラトゥは、”アーリントン墓地”や”リンカーン記念館”などを見て回る。 クラトゥは、ボビーが言うところの”最も偉い人”、科学者のジェイコブ・バーンハート博士(サム・ジャフェ)に会うことを考える。 宇宙船を見に行ったクラトゥは、それに驚くボビーを連れてバーンハート博士の自宅に向かう。 博士が留守だったため、クラトゥは博士の家に侵入し、彼が解こうとしている天体力学の計算式に手を加え、メモを残して立ち去る。 クラトゥの思惑通り、バーンハート博士は、彼に興味を持ち自宅に招く。 そしてクラトゥは、数式の通りに宇宙の彼方から飛行して来たことを、バーンハート博士に伝える。 バーンハート博士はクラトゥを歓迎して、彼は博士に、地球の危機を救う重大な問題を知らせる橋渡しとして、協力を要請する。 クラトゥは、原爆を持った地球人が、いずれそれを宇宙船に乗せて宇宙に発射することで、他の惑星が危険にさらされるだろうと博士に説明する。 さらにクラトゥは、博士の協力が得られなければ、最終手段として、破壊行為にでると警告する。 そこでバーンハート博士は、召集している世界各国の科学者や各界の有識者の前でクラトゥに話をさせ、彼らが自国民に、それを告げるという方法を提案をする。 それがかなわない場合は、地球が消滅することをクラトゥはバーンハート博士に伝える。 博士は、それに信憑性を持たせるために、あえてクラトゥに刺激的な工作をさせることを考える。 そしてクラトゥは、破壊により人を傷つけないことを博士に約束し、それを実行しようとする。 ヘレンは、宇宙人騒動にも、全く無関心に思えるクラトゥの存在が気になり始め、トムにそれを嫉妬されてしまう。 クラトゥが博士の数式を解いたことを、ボビーから聞いたヘレンは、、息子が彼と親しくなり過ぎるのを心配する。 そんなボビーは、外出するクラトゥの後をつけて、宇宙船に向かった彼がゴートに指令を出し、見張りの兵士を気絶させて、船内に入っていくのを目撃してしまう。 母ヘレンとトムを自宅で待ったボビーは、二人にクラトゥの行動を話し、トムは彼の部屋でダイヤを見つける。 翌日、クラトゥは、ボビーの様子がおかしかったのに気づき、商務省で秘書をしているヘレンを訪ねる。 ヘレンに真実を告げようとしたクラトゥだったが、その時、バーンハート博士と約束した工作が実行され、世界中の電力と動力が止まってしまう。 ボビーが言ったことが真実だとヘレンは知るが、世界中が混乱する中、病院と飛行中の飛行機などは機能を失われることはなかった。 その頃アメリカ国内では、大統領が非常事態宣言を発令しようとしていた。 クラトゥを怪しんだトムはダイヤを調べ、それが地球には存在しないものだということを知る。 ヘレンはクラトゥの話を理解し、トムの暴走を止めようとするが、軍部は、クラトゥの抹殺を含めた強行手段を進めようとしていた。 トムは、ペンタゴンの宇宙人捜査本部に連絡を入れることを考え、ヘレンはそれを必死に止めようとする。 しかしトムは、英雄になろうとしてヘレンの忠告を無視して、軍部とコンタクトを取り、クラトゥの居場所を知らせてしまう。 トムを見限ったヘレンは、クラトゥを下宿から連れ出すが、街に配備された軍隊を見た彼は、自分の身に何かがあった場合の、ゴートの破壊的な行動を気にかける。 クラトゥはその時のために、”クラトゥ・バラタ・ニクト”という言葉をゴートに語りかけるように、ヘレンにそれを伝える。 そして、軍隊に包囲されて逃走したクラトゥは、銃撃されてしまい、彼はヘレンにゴートの元に向かうよう指示する。 クラトゥは死亡し、隔離されていたゴートは、ついに人命を脅かす破壊行動を始める。 ヘレンは恐怖に怯えながら、ゴートの目の前で”クラトゥ・バラタ・ニクト”と語りかける。 ゴートは破壊行為を止め、ヘレンを抱きかかえて宇宙船内に運び、クラトゥの遺体の元に向かう。 遺体を盗み出したゴートは、宇宙船に戻りクラトゥの蘇生を始める。 バーンハート博士は、各国の有識者と共に宇宙船を前に演説を始める。 その時、息を吹き返したクラトゥが、ゴートとヘレンを連れて人々の前に姿を現し、地球人に宇宙の安全保障と平和の維持を約束させる。 そしてクラトゥは、ヘレンに別れを告げて、ゴートと共に船内に戻り、大空へと飛び立って行く。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
アメリカの首都ワシントンD.C.に飛来した宇宙船から、”クラトゥ”という友好的な宇宙人が現れる。
しかし、クラトゥが何かを差し出そうとした時に、軍の兵士が発砲してしまう。
宇宙船から現れたロボット”ゴート”は、兵士の銃や戦車などををレーザーで消滅させてしまう。
クラトゥはゴートを制止し、渡そうとした物が、地球及び他の惑星存続にかかわる重大事項だったことを伝える。
傷を負ったクラトゥは病院に収容され、大統領補佐官ハーリーの訪問を受け、大統領から謝罪される。
クラトゥの要求を受け、大統領は各国首脳を集めようと努力するが、現在の国家間の複雑な問題を考慮すると、それは不可能に近かった。
驚くべき回復力で完治したクラトゥは、病院を抜け出して、市民に扮して人々と接触しようとする。
その後、クラトゥは科学者バーンハート博士に会い、地球人の暴走が、やがて他の惑星を危険にさらすことを警告するのだが・・・。
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2008年に、キアヌ・リーヴス主演のSF大作としてリメイクされた。
・「地球が静止する日」
1995年、アメリカ議会図書館が国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。
”空飛ぶ円盤”や”ロボット”が登場する映像は、現在の進歩した技術や特撮からすると、当然のごとく見劣りするが、当時ののどかな社会生活と最先端技術(宇宙船など)のミスマッチが、ファンタジックな感覚で描かれているところも注目。
平穏に見える社会だが、世界では第二次大戦後の冷戦下、一触即発の核戦争の危険性もある生活を送らざるを得ない。
そんな、自分達の愚かさに気づかない人類への警鐘もきっちりと描くロバート・ワイズの演出も見ものだ。
多くのB級作品の演出に甘んじていたロバート・ワイズだが、下積み生活の中でその後、才能を開花させる布石となる、彼の若き日の代表作でもある。
特撮が・・とは言ったものの、宇宙船から現れるタラップや継ぎ目のない開閉式ハッチ、そして、”抑圧”の象徴的な存在の巨大ロボットの”ゴート”、また、ホワイトハウスの正面にある円形の巨大運動広場”The Ellipse”に宇宙船が飛来するという、絵になる舞台設定などは、当時の人々には驚きだったことが、容易に想像できる、今見てもわくわくする映像の連続だ。
新鋭及び、実力派ベテラン俳優などのキャスティングも魅力的で、既に「悪魔の金」(1941)でアカデミー作曲賞を受賞していたヒッチコック作品でもお馴染みであるバーナード・ハーマンの、神秘的で恐怖感を煽る音楽なども抜群の効果を上げている。
当初の企画では、主人公の”クラトゥ”役にはスペンサー・トレイシーやクロード・レインズも予定されていたというのだから、本作の期待が大きかったことが分かる。
ワシントンD.C.在住の少年(ビリー・グレイ)が、当時の地元のフランチャイズであるメジャー・リーグ・チームの”ワシントン・セネタース”(現ミネソタ・ツインズ)ではなく、”ニューヨーク・ヤンキース”の野球帽を被っていたことが気になった。
沈着冷静で全く隙のない異星人ながら、地球人的な感情や人間味も兼ね備えた人物を好演するマイケル・レニーは、英知の結集した未知の世界から来た使者の雰囲気を見事に表現している。
20代半ばには見えない落ち着いた女性を、清潔感ある美しさで演ずるパトリシア・ニール、その息子のビリー・グレイ、恋人で英雄願望と”クラトゥ”への嫉妬で、彼を救おうとしないヒュー・マーロウ、一方、協力する科学者役のサム・ジャフェ、大統領補佐官役のフランク・コンロイ、そして、頑強なロボット”ゴート”を演ずる身長231cmのロック・マーティンなどが共演している。