世界初の性別適合手術を受けたリリー・エルベの人世を基に2000年に発表された、デヴィッド・エバーショフの小説”The Danish Girl”を原作とした作品。 製作、監督トム・フーパー、主演エディ・レッドメイン、アリシア・ヴィキャンデル、マティアス・スーナールツ、ベン・ウィショー、アンバー・ハード、セバスチャン・コッホ他共演の伝記ドラマ。 |
・ドラマ
・エディ・レッドメイン / Eddie Redmayne / Pinterest
・アンバー・ハード / Amber Heard / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:トム・フーパー
製作:
ゲイル・マトラックス
アン・ハリソン
ティム・ビーヴァン
エリック・フェルナー
トム・フーパー
製作総指揮
リンダ・レイズマン
ウルフ・イスラエル
キャシー・モーガン
ライザ・チェイシン
原作:デヴィッド・エバーショフ”The Danish Girl”
脚本:ルシンダ・コクソン
撮影:ダニー・コーエン
衣装デザイン:パコ・デルガド
美術・装置
イヴ・スチュワート
マイケル・スタンディッシュ
編集:メラニー・アン・オリヴァー
音楽:アレクサンドル・デスプラ
出演
アイナー・ヴィーグナー / リリー・エルベ:エディ・レッドメイン
ゲルダ・ヴィーグナー:アリシア・ヴィキャンデル
ハンス・アクスギル:マティアス・スーナールツ
ヘンリク・サンダール:ベン・ウィショー
ウラ・ポールソン:アンバー・ハード
クルト・ヴァルネクロス医師:セバスチャン・コッホ
ブッソン医師:ニコラス・ウッドソン
エルサ:エメラルド・フェネル
ラスムッセン:エイドリアン・シラー
イギリス/アメリカ 映画
配給
ユニバーサル・ピクチャーズ(世界)
フォーカス・フィーチャーズ(北米)
2015年製作 119分
公開
イギリス:2016年1月1日
北米:2015年11月27日
日本:2016年3月18日
製作費 $15,000,000
北米興行収入 $11,114,020
世界 $64,191,520
■ アカデミー賞 ■
第88回アカデミー賞
・受賞
助演女優賞(アリシア・ヴィキャンデル)
・ノミネート
主演男優(エディ・レッドメイン)
衣装デザイン・美術賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1926年、デンマーク、コペンハーゲン。
風景画家アイナー・ヴィーグナー(エディ・レッドメイン)と肖像画家の妻ゲルダ(アリシア・ヴィキャンデル)は、幸せな日々を送っていた。
ゲルダが絵を描くために外出したアイナーは、友人のダンサー、ウラ・ポールソン(アンバー・ハード)の元に向い、子供ができないことで冷やかされる。
家に戻ったアイナーを残し、画商ラスムッセン(エイドリアン・シラー)を訪ねたゲルダは、才能は評価されるものの、個展を開いても作品が売れるとは思えないと言われる。
帰宅したゲルダは、不機嫌のまま生理がきたことをアイナーに伝え、残念だと彼から言われる。 ウラが稽古のため絵が仕上がらないということで、ゲルダからモデルを頼まれたアイナーは、協力すると言ってタイツを履く。 シューズも履いたアイナーは、ゲルダからドレスを渡されてポーズをとる。 その瞬間アイナーは、自分自身の中に女性を感じてしまう。 そこに現れたウラはアイナーの姿を見てキスし、彼を”リリー”と呼ぶ。 数日後、パーティーから帰ったゲルダは、ベッドに入ろうとするアイナーが、シャツの下に自分の下着を着けていることに気づく。 ゲルダは動揺することなく、アイナーの行為を受け入れて愛し合う。 ウラに誘われた舞踏会に行く気がなかったアイナーは、皆を騙すために、女装して出席することをゲルダから提案される。 その気になったアイナーは、ゲルダに化粧してもらい、女性の歩き方や仕草を身につける。 舞踏会当日、ドレスを着たアイナーは、ゲルダに付き添い会場に向かうものの、流石に動揺してしまう。 ウラは、現れた”リリー”が、ヴァイレから来た従妹だとゲルダから言われる。 ゲルダが友人に呼ばれたため一人になり、人目を気にするアイナー/リリーは、ヘンリク・サンダール(ベン・ウィショー)に話しかけられるものの、その場を離れてしまう。 それでも話しかけて来るヘンリクに自己紹介されるものの、彼を避けるアイナーは、”君も自分と同じだと思った・・・”と言われて場所を変える。 アイナーと話したヘンリクは紳士的に振る舞い、彼にキスしてしまう。 それを目撃してしまったゲルダは、動揺して鼻血が出てしまったアイナーを連れてその場を去る。 翌日、もうリリーは現れない方がいいと言うゲルダは、ヘンリクとキスしていたことに関してアイナーに説明を求める。 リリーだった瞬間をヘンリクが見抜いたと言うアイナーに、ゲルダは、存在しないリリーは創造物だと伝える。 分かってはいるが変化を感じたと言うアイナーの考えを、ゲルダは受け入れられない。 動揺するゲルダだったが、冷静に答えるアイナーは努力すると伝える。 その後、自分の様子を気にするゲルダから医者に診てもらうことを提案されたアイナーは、気にせずに劇場の衣裳部屋に向う。 自分の裸体を鏡に映すアイナーは、興奮してしまう。 女装したアイナーは、ヘンリクの元に向かう。 帰宅したアイナーはゲルダを抱きしめ、彼女が自分の裸体を描いたことを知る。 その絵をラスムッセンに見せたゲルダは、モデルはアイナーの従妹だと伝える。 確かにアイナーに似ていると言うラスムッセンは何かを感じながら、今までとは違う他のデッサンも見て、これなら売れるかもしれないとゲルダに伝える。 ヘンリクと逢引きを続けるアイナーは、自分を”アイナー”と呼ぶ彼が同性愛者だと気づき、その場を去る。 帰宅したゲルダは、リリーの姿のままでいたアイナーが悲しむ姿を見て寄り添うが、ヘンリクと会っていたことを知る。 ヘンリクには惹かれていないと言うアイナーは、自分の中のリリーが、気持ちを抑えられないことをゲルダに伝える。 かつてヴァイレ同じような気持ちになったアイナーは、自分の中の”リリー”が幼馴染のハンス・アクスギル(マティアス・スーナールツ)に恋をして、一度だけキスしたことをゲルダに話す。 それを知り激怒した父親にハンスが殴られたことを話したアイナーは、気分が悪くなり倒れてしまう。 医師の診察を受けたアイナーが精神病だと言われたゲルダは、それを否定する。 絵が売れたことをラスムッセンから知らされたゲルダは、パリで個展を開くことになり、チャンスが訪れたと言う彼に感謝する。 病院からの検査結果が届き、ゲルダは、アイナーが性的倒錯と診断されたことを知る。 アイナーに個展の話をしたゲルダは、同行しないと言う彼を強引に連れて行く。 パリ。 ヴァイレの記憶がなくなってしまったアイナーは、ゲルダの絵の協力もできなくなり、女性の裸体を見に行き興奮する。 画商であるハンスに会ったゲルダは、夫がアイナーだと伝えて、子供時代にキスしたことなどを話す。 アイナーが自分を見失っていることを話したゲルダは、代理人になってほしいことをハンスに伝える。 新しい画商に会ってほしいとゲルダから言われたアイナーは、仕事もしていない自分は助手で満足だと答える。 画商はハンスで、外で食事をしてから家に連れて来るとゲルダから言われたアイナーは動揺する。 ハンスと食事をしたゲルダは、現れなかったアイナーをからかってやると言われるが、彼には酷だと伝える。 アパートに戻ったゲルダは、アイナーがリリーでいたために、従妹だと言ってハンスに紹介する。 戸惑うハンスに、ヴァイレで一度会っていると言うリリーは、遠慮なく話し始める。 結婚の話になったリリーは動揺して席を外してしまい、彼がアイナーだと気づいていたハンスは、帰ってほしいと言うゲルダに、力になると伝える。 リリーに声をかけたハンスはその場を去り、彼が気づいたことを心配するリリーは、話は明日にしたいとゲルダから言われる。 ナイトドレスを貸してほしいとリリーから頼まれたゲルダは、夜は人格を消すようにと伝えるが、何を着ていようと、見るのはリリーの夢だと言われる。 その後はリリーを認めたゲルダは、彼女をモデルにして絵を描き続け、個展は大盛況となる。 パーティーでハンスに迫られたゲルダは、アイナーの妻でいられないことで苦悩する。 そのことをリリーに伝えたゲルダはアイナーにはなれないと言われ、夫に会いたいと伝える。 それを拒んだリリーは、涙しながら頼むゲルダに無理だと答える。 苦しむゲルダは、一瞬、ハンスに心を許そうとするが、アイナーの元に戻り、望むことを与えられないと彼から言われる。 ゲルダから、もうこれ以上耐えられないと言われたアイナーは、答えを見つけると伝えて、性に関してを調べる。 仕草などを奇異な目で見られたアイナーは、男達にからかわれて痛めつけられる。 ハンスに会ったアイナーは傷の手当てをしてもらい、自分でいられない苦しい胸の内を理解してもらえる。 治療が必要だと言うハンスは、誰かを見つけることをアイナーに伝えて安心させる。 医師の診察を受けたアイナーは、異常者としか扱われない。 自分がモデルを頼んだのが原因ではないかと考えるゲルダに、それを否定するアイナーは、リリーは以前から自分の中にいたことを伝える。 ゲルダから、一人の人物に会うことを提案されたアイナーは、ドイツ人の婦人科医クルト・ヴァルネクロス(セバスチャン・コッホ)の元に向かう。 ゲルダと共にヴァルネクロスに会ったアイナーは、自分は女だと思うと伝える。 それに同意したゲルダはアイナーを支える意思を伝え、ヴァルネクロスから正しい考えだと言われる。 同じような男性がいたことを話すヴァルネクロスは、手術をすることにしたのだが、それを望んだ男性は、怖気づいて逃げたと伝える。 自分は逃げないと言うアイナーだったが、手術が一度も行われたことがないことをヴァルネクロスから知らされる。 ゲルダから手術の内容を訊かれたヴァルネクロスは、最初は男性器の切除で、体力の回復後に膣の形成を行う2回の手術が必要だと言われる。 二度と戻ることはできず失敗する可能性もあると言われたアイナーは、唯一の希望だと考え、ドレスデンに向かうことになる。 翌日、駅のホームでハンスに励まされたアイナーは、同行しようとするゲルダに、愛している自分を消しに行くのだから連れてはいけないと伝える。 アイナーは、納得したゲルダから渡されたスカーフを手にして旅立つ。 ドレスデン。 ヴァルネクロスに面会したリリーは、静養して体力をつけるために1週間待つようにと言われ、はやる気持ちを抑える。 不安が募るゲルダは、心配するハンスの話を聞き入れず、アイナーの元に向かうべきだと言う彼の提案を拒む。 最初の手術は成功するもののリリーは傷みに苦しみ、ゲルダは彼女の元に向かう。 その後、静養して落ち着きを取り戻したリリーは、ゲルダと共にコペンハーゲンに戻る。 女性としての新たな人生を始めたリリーは、百貨店の店員として働き始める。 ある日、ヘンリクと再会したリリーは、手術をしたことを話す。 アイナーを忘れることを約束したものの、結婚生活を思い出してしまうゲルダは、彼は死に自分の人世を生きるとリリーから言われる。 ハンスに連絡したゲルダは、不在だった彼にコペンハーゲンにいるという伝言を残す。 ヘンリクに寄り添うリリーを見かけたゲルダ、彼女と目を合わせただけで立ち去る。 帰宅したリリーは、ヘンリクが同性愛者で何もないことをゲルダに伝える。 2回目の手術をする決心をしたリリーは、早過ぎると言うゲルダから反対されるものの、考えは変わらなかった。 ドレスデン。 付添うゲルダは心配であることを伝えるが、これが希望であり幸せになりたいとリリーから言われる。 ホテルに戻ったゲルダは、ハンスが来てくれたことに気づき、心配いらないと言う彼と抱き合う。 手術を受けたリリーの状態は悪化し、出血と高熱への対処をしていると、ゲルダはヴァルネクロスから言われる。 熱は下がる可能性もあるが危険な状態だと言われたゲルダは、苦しむリリーに付き添う。 落ち着いたリリーは、ようやく本当の自分になれたとゲルダとハンスに笑顔で伝える。 外に出ることを希望したリリーは、ゲルダとハンスに車椅子で庭に連れて行かれる。 もう自分の心配はいらないと言うリリーは、これほどの素晴らしい愛に、自分が値しないことをゲルダに伝える。 何も恐れることはないと言うリリーは、赤ん坊だった自分が、母に抱かれて”リリー”と呼ばれている夢を見たことをゲルダに話す。 ヴァイレ。 リリーのスカーフが風で飛んでしまい、ゲルダは、それを追うハンスを制止する。 スカーフが風で舞う様子を見つめるゲルダは、アイナーが子供時代に沼地でなくした凧の話をしていたことを思い出して微笑む。 リリー・エルベが書き綴っていた日記が基になり、1933年に”Man into woman: an authentic record of a change of sex”が出版された。 リリーの勇気が、その後のトランスジェンダー運動に影響を及ぼした。 ゲルダ・ヴィーグナーは、生涯リリーの肖像画を描き続けた。
...全てを見る(結末あり)
個展は成功するが、アイナーは、男としてゲルダの愛を受け入れられなくなる。
女性になれる喜びを感じながら病院に向かったリリーは、受付で名前を聞かれて”リリー・エルベ”と答える。
難しい手術になるとヴァルネクロスから言われたリリーは、本当の女性になれる期待で胸膨らむ。
アイナーが愛して描き続けた場所をハンスと共に訪れたゲルダはその場にたたずむ。
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■ 解説 評価 感想 ■
*(簡略ストー リー)
1926年、デンマーク、コペンハーゲン。
風景画家のアイナー・ヴィーグナーは、肖像画家の妻ゲルダから、女性ダンサーの代役でモデルを頼まれる。
その瞬間アイナーは、自分の中の女性を感じてしまい、それ以来、その存在”リリー”になりたいことだけを考えるようになる。
それを知ったゲルダは、戸惑いながらもリリーの存在を認め、彼女を描き画家としての名声を得る。
成功とは裏腹に夫婦としての生活が不可能となったゲルダは悩む。
その後、リリーになることを決心したアイナーは、婦人科のヴァルネクロス医師に出会い、性別適合手術を受ける決心をするのだが・・・。
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1930年代初頭に、世界初となる性別適合手術を受けたリリー・エルベ/アイナー・ヴィーグナーと、彼を支えた妻ゲルダ・ヴィーグナーの愛と苦悩を描くドラマ。
現在では社会的にも認められる場合が多い、性同一性障害及びトランスジェンダー運動などに多大なる影響を与えた存在のリリー・エルベの、性別適合手術を受けるまでのエピソードと死を、主人公夫婦の関係を中心に描き、衣装やセットなどで当時を見事に再現し、美しい映像や人物描写が印象的な作品には仕上がっている。
主人公のアイナー・ヴィーグナー / リリー・エルベを演ずるエディ・レッドメインと妻ゲルダ役のアリシア・ヴィキャンデルの見事な演技が見所の作品なのだが、トム・フーパーの演出に奥深さが感じられず、やや平凡な感じがする。
この手の問題には理解があるはずのアメリカでも好評価とは言えず、北米興行収入も約1100万ドルに終わった。
*世界 $64,191,520
第88回アカデミー賞では、助演女優賞(アリシア・ヴィキャンデル)を受賞し、主演男優(エディ・レッドメイン)、衣装デザイン、美術賞にノミネートされた。
元々、美男子とは言えないエディ・レッドメインが、”リリー”となった瞬間の美しさに見とれたと言いたいところなのだが・・・。
女性を演ずる彼の演技は見事でり、完璧な女性に思えない違和感を漂わせる雰囲気も素晴らしい。
”夫”を失いながらも、女性になったリリーを支える妻ゲルダ・ヴィーグナーを好演するアリシア・ヴィキャンデル、二人を見守る主人公アイナーの幼馴染である画商マティアス・スーナールツ、アイナーと親交を深める同性愛者ベン・ウィショー、主人公夫婦の友人であるダンサーのアンバー・ハード、性別適合手術をするクルト・ヴァルネクロス医師のセバスチャン・コッホ、医師ニコラス・ウッドソン、主人公夫婦の知人エメラルド・フェネル、画商のエイドリアン・シラーなどが共演している。