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チャイナ・シンドローム The China Syndrome (1979)

原発事故に遭遇したテレビ局のレポーターとカメラマンが安全性に疑問を持つ社員と共に利益優先の会社側と闘う姿を描く、ジェーン・フォンダジャック・レモンマイケル・ダグラス(製作兼)他共演、監督ジェームズ・ブリッジによる社会派ドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(社会派)


スタッフ キャスト ■
監督:ジェームズ・ブリッジ

製作総指揮:ブルース・ギルバート
製作:マイケル・ダグラス
脚本
マイク・グレイ
T・S・クック
ジェームズ・ブリッジ
撮影:ジェームズ・クレイブ
編集:デイヴィッド・ローリンズ
美術・装置
ジョージ・C・ジェンキンス
アーサー・ジェフ・パーカー
音楽:スティーヴン・ビショップ

出演
キンバリー・ウェルズ:ジェーン・フォンダ
ジャック・ゴデル:ジャック・レモン
リチャード・アダムス:マイケル・ダグラス
ハーマン・デ・ヤング:スコット・ブラディ
ビル・ギブソン:ジェームズ・ハンプトン
ドン・ジャコヴィッチ:ピーター・ドーナット
テッド・スピンドラー:ウィルフォード・ブリムリー
エヴァン・マコーマック:リチャード・ハード
マック・チャーチル:ジェームズ・カレン
ヘクター・セイラス:ダニエル・ヴァルデス

アメリカ 映画
配給 コロンビア・ピクチャーズ
1979年製作 122分
公開
北米:1979年3月16日
日本:1979年9月
北米興行収入 $51,718,370


アカデミー賞 ■
第52回アカデミー賞
・ノミネート
主演男優(ジャック・レモン
主演女優(ジェーン・フォンダ
脚本・美術賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
ロサンゼルス
地元TV局KXLAの人気レポーター、キンバリー・ウェルズ(ジェーン・フォンダ)は、ディレクターのマック・チャーチル(ジェームズ・カレン)の指示で、カメラマンのリチャード・アダムス(マイケル・ダグラス)とヘクター・セイラス(ダニエル・ヴァルデス)を伴い、ヴェンタナの原子力発電所の取
材に向かう。

広報のビル・ギブソン(ジェームズ・ハンプトン)に迎えられた三人は、発電の仕組みなどを取材してプラントに向かう。

所長のハーマン・デ・ヤング(スコット・ブラディ)を紹介された三人は取材を続けるが、コントロール・ルームの撮影は、警備上許可されなかった。

その時、発電所内で震動が起き、冷却ポンプが停止して、放射能漏れする恐れがある事態が発生する。

操作主任のジャック・ゴデル(ジャック・レモン)は、テレビ局が取材に来ていることを知らされ、単なるタービン停止だと伝える。
...全てを見る(結末あり)

コントロール・ルームの、ただならぬ様子を目の当たりにしたリチャードは、密かにカメラを回す。

炉心が危険水位に達したため、焦ったゴデルは緊急事態を発令し、プラント内の作業員の避難を命ずる。

寸前で”メルトダウン”を免れ、ドデル、テッド・スピンドラー(ウィルフォード・ブリムリー)以下、職員は安堵する。

局に戻ったキンバリーらは、夕方のニュースで、今回の事件を流す準備を始めて、マックはプロデューサーのドン・ジャコヴィッチ(ピーター・ドーナット)にも連絡を入れる。

その後ジャコヴィッチに連絡が入り、裏付けのないレポートの放送は却下されてしまう。

その夜、本社に呼ばれた所長デ・ヤングは、会長エヴァン・マコーマック(リチャード・ハード)に、NRC(原子力規制委員会)の調査をうまく切り抜けるよう指示を受ける。

同じ頃、今回の件が間違いなく事故だと言い切るリチャードは、フィルムを放送しないことを隠蔽だと非難し、訴訟を恐れるジャコヴィッチに食い下がる。

キンバリーは、スクープをものにできなかったことを残念に思うものの、手放しでリチャードの後押しをすることもできなかった。

この仕事を続けていきたい、キンバリーの気持ちも理解するリチャードだったが、彼は、保管庫に向かいフィルムを盗む。

その後キンバリーは、希望する調査報道には、自分が向かないとジャコヴィッチに言われてしまう。

帰宅したキンバリーは、留守電の、リチャードが自分を批判するメッセージを聞き思いを巡らせる。

NRCの質問を受けたゴデルは、気になる振動のことについてテッドに確認するが、その態度で、会社からの圧力がかかっていることを悟る。

キンバリーは、例のフィルムが盗まれたことをマックから知らされ、犯人である、フリーのカメラマンのリチャードを推薦した彼女は責任を追及され、それを取り戻すよう命ぜられる。

発電所では、問題なしというNRCの報告書が届き再起動が許可されるが、ゴデルはそれに疑問を感じる。

リチャードを捜していたキンバリーは、バーでゴデルとテッドに出くわし、声をかけられる。

ゴデルはキンバリーに、今回の件は事故ではなく、弁の故障だったことを伝える。

キンバリーは、あの時の様子からそれに意見し、新原発建設を急ぐために、調査を急いだのではと疑問を投げかけ、市民を危険にさらしたことについて、ゴデルに答を求める。

日頃、原発を批判の対象にする報道機関を嫌うゴデルは、あらゆる事態を想定した、品質管理の行き届いた施設である原発は、今回のようなトラブルも回避できたと、改めて事故を否定する。

翌日、プラント内をチェックしたゴデルは、漏れていた水の、高い放射能レベルを確認する。

デ・ヤングに呼ばれたゴデルは、慎重なチェックが必要だと主張する。

しかし、再起動を遅らせるわけにいかないデ・ヤングは、応急処置で対処するようゴデルに指示する。

キンバリーは、リチャードが、原発反対派集会の会場にいることを知り彼の元に向かう。

リチャードは、自身あり気にキンバリーを迎え、彼女は予定を変更して、その場でレポートを始める。

ゴデルは、キンバリーにインタビューされる、子供を持つ親として、不安を訴える女性の様子に注目する。

取材を終えたキンバリーは、リチャードが待つ部屋で事件のフィルムを見た物理学者と原子力技師、専門家二人の意見を聞く。

そして、事件が、大惨事を招きかねない事態の”チャイナ・シンドローム”(メルトダウン)寸前だったことと、その恐ろしさをキンバリーらは知らされる。

その頃、発電所では、デ・ヤングの指示で再起動の最終チェックが行われる。

安全点検の報告書を調べたゴデルは、X線写真でポンプに異常がありながら、毎回同じ写真を使っていたことを確認し、デ・ヤングにそれを伝える。

再度の写真撮影を提案するゴデルは、2000万ドルの支出と、日に50万ドルの損失があることを伝えられただけで、それを却下される。

仕方なく、通常運転再開指示を出したゴデルは、ポンプを点検した業者を追及して報告の不正を確信する。

帰宅したゴデルは、訪ねて来たキンバリーとリチャードから、コントロール・ルームのフィルムの存在と、それについての専門家の意見を知らされる。

ゴデルは、あくまでシステムがメルトダウンを食い止めたことを強調するが、その時に起きた振動を調べた結果の検査の手抜きと、報告書の捏造があったことを二人に伝える。

そしてキンバリーは、”チャイナ・シンドローム”が現実になる危険性を知る。

ゴデルは、原発反対派に写真を渡すことを約束して、キンバリーとリチャードは、夕方の放送のために局に戻る。

専門家の協力を確認したリチャードは、それをキンバリーに伝え、暴走を阻止しようとするジャコヴィッチの意見を彼女は聞き入れない。

翌日、ゴデルは約束通り写真をヘクターに渡し、彼はそれをNRCの公聴会が開かれている会場に運ぶ。

しかし、ヘクターの車は何者かに追突され、崖下に転落してしまう。

ゴデルは、ヘクターが到着してないことをキンバリーから知らされ、会場で証言するよう呼ばれるものの、尾行されたため発電所に向かう。

ヘクターの事故を知ったキンバリーとリチャードは現場に急行し、彼の無事を確認する。

その頃、デ・ヤングが出力を上げようとしていることを知ったゴデルは、コントロール・ルームに向かい、テッドに、欠陥による危険性を伝えるが相手にされない。

コデルは警備員の銃を奪い、テッドら職員を外に出し、その場を占拠して出力を下げる。

キンバリーはゴデルにに呼ばれ、コントロール・ルームで、彼がテレビに向かい証言することを提案される。

会長マコーマックは、汚染水を放出するというゴデルに手を出せず、リチャードに撮影許可を出すが、放送の準備が整う間に、強硬手段をとろうとする。

それを実行するため、冷却水ポンプの緊急停止を考えるデ・ヤングだったが、テッドは、ゴデルが警戒していた危険行為だと意見する。

デ・ヤングは、それに耳を貸さずに、緊急停止の準備を始めさせる。

緊張するゴデルをキンバリーは励まし、リチャードは、ようやく到着したマックら撮影班を従えてコントロール・ルームに向かう。

それと同時に警察とSWATも到着し、ロックされていたコントロール・ルームのドアを破ろうとする。

そして中継の準備が整い、現場からの生中継が始まり、ゴデルは事件の経緯を話し始める。

ゴデルは動揺して容易に真意を伝えられず、マコーマックの指示で、ポンプが緊急停止させられたことに気づき取り乱してしまう。

同時にテレビ中継も遮断されてしまい、突入したSWAT隊員がゴデルを銃撃する。

瀕死のゴデルは、キンバリーに震動を感じることを伝え、その場に緊張が走るものの、ポンプは破壊する寸前で停止する。

テッドは停止を確認するが、ゴデルは息を引き取り、原発側は安全を強調する声明を発表する。

広報のギブソンが、社員ゴデルの酔った末の行動だと言う言葉を聞いたキンバリーは、所長デ・ヤングやテッドに対してマイクを向け、質問を浴びせる。

我慢の限界に達したテッドは、親友だったゴデルを擁護し、会社側が全てをでっち上げていることを暴露し、この原発の危険性を指摘する。

キンバリーは、今後ゴデルの正当性は必ず明らかになり、彼は英雄だというテッドの言葉に感極る。

そしてキンバリーは、どうにか感情を抑えカメラに向かい、ゴデルが、原発と市民を守りたかったことを伝え、真相究明を訴えてレポートを締めくくる。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
ロサンゼルス
地方局のTVレポーター、キンバリー・ウェルズは、フリー・カメラマンのリチャードとヘクターと共に原発の取材に向かう。
取材を続けていた三人は、ある緊急事態に遭遇するが、原発側は単なる機器の故障だと伝える。
しかし、原発所内の操作技師ジャック・ゴデルは、”メルトダウン”寸前まで達した事件の深刻さを理解していた。
リチャードが、その様子を隠し撮りしていたため、局に戻ったキンバリーは、それをスクープしようとする。
しかし、訴訟を恐れる上からの通達で、放送は却下され、納得がいかないリチャードはフィルムを盗んでしまう。
一方、原発側は、NRC(原子力規制委員会)の調査をうまく切り抜けるよう、社員などに圧力をかけて裏工作を始める。
調査報道を望むキンバリーは、チャンスを逃して無念に思うが、局に逆らって職を失いたくないのも事実だった。
そんな時、単独でも今回の件を追及する姿勢を貫くリチャードの気持ちに、キンバリーは心を動かされる。
その頃、ゴデルは独自に事件を検証し、重大な欠陥を見過ごす検査報告捏造の事実を知り、その危険性を所長に訴えるが聞き入れられない。
同じ頃、リチャードはフィルムを専門家に見せて、その見解をキンバリーにも知らせる。
そしてキンバリーは、今回の事件が、市民を危険に陥れる重大な事故、”チャイナ・シンドローム”(メルトダウン)が起きる寸前だったことを知るのだが・・・。
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まず、公開当時のことを覚えている方は、その衝撃的な事件を思い出すはずだ。

それは、本作が公開された1979年3月16日の12日後、アメリカ東部、ペンシルベニア州スリーマイル島原子力発電所で起きた原子炉冷却材喪失事故である。

当時、映画の宣伝ではないかと思ったほどのこの事故により、全世界は、原発事故の恐ろしさを知ることになり、また、医学用語として使われていた”シンドローム”(症候群)という言葉が、特別な社会状態などを示す言葉として、世間一般に使われるようにもなった。

原題”チャイナ・シンドローム”は、ドラマの中でもあるように、”メルトダウン”を起こした核燃料が発電所から地下に溶け出して、地球の反対側の中国まで達することを意味するのだが、その途中で地下水脈と接触し、爆発して蒸発した水蒸気の汚染により、広範囲の地域が居住不能になってしまうことを差す。

本作は、原発の恐ろしさを強調するだけの作品ではなく、利益優先の企業、そして権力に立ち向かう一市民である社員と、それを支援するテレビ・レポーターの勇気や正義を称えつつ、サスペンスの要素を取り入れた内容で、社会派ドラマではあるが、それほど堅苦しい内容でもない。

その対象が原発であり、またスリーマイル島原発事故の衝撃が、本作がヒットした理由でもあり、権力に立ち向かう者達を描いた、この種の作品は他にも多くあるために、今見ると、かなり冷静に観ることが出来る。
*北米興行収入 $51,718,370

第52回アカデミー賞では、主演男優(ジャック・レモン)、主演女優(ジェーン・フォンダ)、脚本、美術賞にノミネートされた。

ジャック・レモンは、全編を通した主人公として建設当初から操作技師を務める社員を演じ、彼の家族の存在を描いていないことから、原発が生活そのものという人物に描かれ、それを愛することと、市民の安全との板挟みで苦悩する姿を、見事に演じ切っている。

ファースト・クレジットではあるが、ジャック・レモンに主役を譲っている感じのあるジェーン・フォンダは、クライマックスでは、報道レポーターとして成長していく逞しい女性を熱演し、ドラマを締めくくっている。

信念を貫く異端児として、正義感を発揮する報道カメラマンを好演する、製作も兼ねるマイケル・ダグラス、原発所長スコット・ブラディ、広報ジェームズ・ハンプトン、会社側の圧力に屈していたが、主人公の勇気ある行動に心打たれ、友として不正を暴露する社員ウィルフォード・ブリムリー、危険を無視した利益優先を推し進める会長のリチャード・ハード、TV局プロデューサーのピーター・ドーナット、ディレクターのジェームズ・カレン、カメラマンのダニエル・ヴァルデスなどが共演している。


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