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噂の二人 The Children’s Hour (1961)

1934年に初演された、リリアン・ヘルマンのデビュー作(戯曲)”The Children’s Hour”の映画化。
同性愛の疑惑を持たれた二人の女性教師の苦悩を描く、製作、監督ウィリアム・ワイラー、主演オードリー・ヘプバーンシャーリー・マクレーンジェームズ・ガーナーミリアム・ホプキンス他共演のドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ

オードリー・ヘプバーン / Audrey Hepburn 作品一覧
オードリー・ヘプバーン / Audrey Hepburn / Pinterest
シャーリー・マクレーン / Shirley MacLaine / Pinterest


スタッフ キャスト ■
監督:ウィリアム・ワイラー

製作:ウィリアム・ワイラー
原作:リリアン・ヘルマン
脚本:ジョン・マイケル・ヘイズ
撮影:フランツ・プラナー
編集:ロバート・スウィンク
美術・装置
フェルナンド・キャリーア

エドワード・G・ボイル
音楽:アレックス・ノース

出演
オードリー・ヘプバーン:カレン・ライト
シャーリー・マクレーン:マーサ・ドビー
ジェームズ・ガーナー:ジョー・カーディン
ミリアム・ホプキンス:リリー・モーター
ヴェロニカ・カートライト:ロザリー・ウェルズ
フェイ・ベインター:アメリア・ティルフォード
カレン・ボルキン:メアリー・ティルフォード

アメリカ 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ
1961年製作 107分
公開
北米:1961年12月19日
日本:1962年4月
製作費 $3,600,000


アカデミー賞 ■
第34回アカデミー賞

・ノミネート
助演女優(フェイ・ベインター
撮影(白黒)・録音・美術(白黒)


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
ニューイングランド
”ライト・ドビー女子寄宿学校”を経営する若い二人、カレン・ライト(オードリー・ヘプバーン)とマーサ・ドビー(シャーリー・マクレーン)は、学生時代からの親友だった。

学校は、父兄からの信頼もあり、二人の努力で経営も軌道に乗りかけていた。

カレンは、地元の名士であるアメリア・ティルフォード(フェイ・ベインター)の甥で、医師のジョー・カーディン(ジェームズ・ガーナー)との結婚を決意する。

それを知ったマーサは祝福できず、逆に大人気なく癇癪を起こ してしまう。

しかし、マーサは気を取り戻し、カレンに幸せを願っていることを伝える。

カレンは、友情のつもりでマーサの頬にキスするのだが、それを見てしまった、ティルフォード夫人の孫娘メアリー(カレン・ボルキン)は、二人の間柄が普通の関係でないのではないかと疑う。
...全てを見る(結末あり)

わがままなメアリーは、校内でトラブルばかり起こし、カレンらに目をつけられていた。

学校を手伝う、女優でもあるマーサの叔母リリー・モーター(ミリアム・ホプキンス)に、カレンとジョーのことを嫉妬してると言われたマーサは、再び癇癪を起こしてしまう。

マーサは、リリーを追い出そうとして声を荒げ、その様子をメアリーのルームメイトに立ち聞きされ、現れたジョーにも八つ当たりしてしまう。

ルームメイトから、マーサがカレンとジョーの結婚に嫉妬していると聞いたメアリーは、昨夜の二人のことを思い出す。

二人の関係を”異常”と判断したメアリーは、悪知恵を働かせ、同室のロザリー・ウェルズ(ヴェロニカ・カートライト)から金を脅し取り、学校を抜け出してタクシーで祖母の元に向かう。

自分ばかりが叱られるのに腹をたてていたメアリーは、カレンとマーサの関係を、祖母に誇張して話してしまう。

驚いたティルフォード夫人は、学校に向かいそれを確かめようとする。

そこに、出て行こうとするリリーが現れ、カレンとジョーに対するマーサの嫉妬は、夫や恋人がいてもいい年頃の女性にしては異常だと、軽はずみに口にしてしまう。

それを聞いたティルフォード夫人は、車で待っていたメアリーに学校には戻らなくてもいいことを伝える。

ティルフォード夫人は、生徒達の父兄に今回のことを伝え、その後、子供達は全員、家に連れ戻されてしまう。

理由も言わずに、子供達を連れ立ち去ろうとする親から、その真相を知らされたカレンは愕然とする。

ロザリーは、ティルフォード夫人の屋敷にいるメアリーの元に向かうよう言われる。

屋敷に着いたロザリーは、ティルフォード夫人にメアリーの嘘を話そうとする。

しかし、友人のペンダントを借りただけのことを、ロザリーは盗んだと言ってメアリーに脅され、それを思い止まる。

そしてロザリーは、秘密を守ることをメアリーに誓わされてしまう。

ティルフォード夫人は、訪ねて来たジョーにカレンとの結婚を諦めさせようとする。

そこに、疑いを晴らすためにカレンとマーサが現れ、ジョーに今回の騒ぎの真相を知らせる。

カレンとマーサが恋人同士だと聞いたジョーは、そのことを信じている伯母にそれを問質す。

潔白を主張する、二人の話を聞き入れないティルフォード夫人に対して、マーサは名誉毀損で訴えると言い出す。

身の破滅を招くだけだと言う夫人に対し、ジョーも二人の側につくことを伝える。

ジョーが夫人を説得し、彼女が信じているメアリーに真相を話させようとする。

やがて、混乱したメアリーは、辻褄が合わないことを言い始める。

メアリーは、ロザリーから聞いた話だったと言い出し、部屋に呼ばれた彼女にペンダントの話をし始めて脅す。

ロザリーは取り乱しながら、自分が目撃してメアリーに言ったことを伝え泣き崩れてしまう。

その後カレンとマーサは、ティルフォード夫人を訴えるものの、召喚したリリーも現れず敗訴してしまい、二人は町の人々から奇異な目で見られ、外出もできずにいた。

そんな時、ようやく現れたリリーをマーサは責め、彼女を追い払おうとする。

ジョーは、二人を連れて町を出る決心をするが、カレンは彼が疑っていたことを感じ取り、別れる決心をする。

その頃、ロザリーの母親が娘の異変に気づき、彼女から話を聞き、それをティルフォード夫人に伝え、彼女はメアリーの嘘を知り愕然とする。

カレンがジョーと別れたことを知ったマーサは、実は無意識のうちに、周囲が思っている意味で、彼女に対して愛情を抱いていたことを告白してしまう。

ロザリーの告白で、メアリーの企みを知ったティルフォード夫人は、カレンとマーサの元を訪れ謝罪するが、二人の心が癒されることはなかった。

ティルフォード夫人は立ち去り、カレンはマーサに出直すことを伝える。

それに同意したマーサは、少し休みたいことを伝え、疑いが晴れたカレンは、久しぶりに散歩に出かける。

しかし、カレンは、マーサを捜すリリーの姿が気になり、建物に戻ろうとする。

部屋に鍵がかかっていることを知ったカレンは、それをこじ開けるのだが、マーサは自ら命を絶っていた。

その後、リリーとマーサの葬儀を済ませたカレンは、埋葬に参列していた、ジョーやティルフォード夫人と言葉も交わすこともなく、一人、去って行く。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
女子寄宿学校を経営する若い二人、カレン・ライトとマーサ・ドビーは、学生時代からの親友だった。
経営も軌道に乗りかけ、カレンは医師であるジョーとの結婚を決意し、それをマーサに伝える。
しかし、マーサはそれを手放しで祝福できずに苛立ってしまう。
町の名士ティルフォード夫人の孫娘で、学校の問題児メアリーは、自分が叱られてばかりいることからカレンとマーサの関係が”異常”だと祖母に話してしまう。
二人が恋人同士だとも聞いた夫人はショックを受け、学校を手伝うマーサの叔母リリーの軽はずみな言葉でそれを信じてしまう。
夫人が、父兄達にそれを伝えたため、生徒達は全員親元に連れ戻されてしまう。
その噂を否定するカレンとマーサの話は信じてもらえず、夫人を訴えた結果も敗訴となり、町の人々は二人を軽蔑の眼差しで見る。
そしてカレンは、僅かではあるが、自分を疑っていたジョーとの別れを決意するのだが、マーサから衝撃の告白を受ける・・・。
__________

ウィリアム・ワイラーは、1936年に「この3人」で戯曲を映画化しており、その時に主演したマーサ役ミリアム・ホプキンスを叔母役で起用している。

理想に燃える二人の女性が、同性愛の汚名を着せられ、苦悩した末に起きる悲劇を正面から見つめ直し、疑いが晴れて同情する人々に目もくれずに立ち去る主人公の姿に、人間の醜さと気高さが集約されるラストの力強さ。
それが伝わるウィリアム・ワイラーの見事な演出で、見応えある作品に仕上がっている。

第34回アカデミー賞では、助演女優(フェイ・ベインター)、撮影(白黒)、録音、美術(白黒)にノミネートされた。

それらしき雰囲気で進む物語だが、クライマックスでマーサがカレンに対する愛情を告白するシーンは今見てもショッキングで、当時としては驚きの内容だったはずだ。
しかも、リリアン・ヘルマンの戯曲の発表は、本作の27年前ということを考えると尚更だ。

本作の2ヶ月前に「ティファニーで朝食を」(1961)が公開されたばかりのオードリー・ヘプバーンは、清潔感のある実直な教師を好演している。

マーサの自殺を発見した時の涙と、ラストの毅然とした姿の対比で、人としての強さを見事に表現している。

逆に、気丈に見えるシャーリー・マクレーンが、自分が汚れていると思い込み、内面的な弱さを露呈する演技も素晴らしい。

頼れる男性でありながら、結局は恋人を守りきれない医師ジェームズ・ガーナーも、大柄でアクション派に見えるが、繊細な演技を見せてくれる。

悪人ではないが、実力者としての権力を利用して、若い二人の女性を破滅させてしまうまでの迫力と、全てが間違いだと知り罪の意識から憔悴してしまうフェイ・ベインターの名演も光る。
*本作は彼女の遺作となった。

お調子者である能天気な、マーサの叔母ミリアム・ホプキンスの特異なキャラクターが、かなり印象的に描かれているのは、前記の様に旧作の主演者でもある彼女に対するウィリアム・ワイラーの敬意を感じる。

事件のきっかけを作る、わがままな生徒カレン・ボルキン、彼女に脅されて利用されるヴェロニカ・カートライト、子役二人の演技も見逃せない。


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