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ケイン号の叛乱 The Caine Mutiny (1954)

戦争の嵐」などで知られる作家ハーマン・ウォークが1951年に発表しピューリッツァー賞を受賞した同名小説の映画化。
老朽駆逐艦ケイン号での無能な艦長と乗組員の確執を描く、監督エドワード・ドミトリクハンフリー・ボガートホセ・ファーラーヴァン・ジョンソン共演の戦争ドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(戦争)

ハンフリー・ボガート / Humphrey Bogart / Pinterest


スタッフ キャスト ■
監督:エドワード・ドミトリク

製作:スタンリー・クレイマー
原作:ハーマン・ウォーク
脚本:スタンリー・ロバーツ
撮影:フランツ・プラナー
編集
ヘンリー・バチスタ

ウィリアム・A・ライオン
音楽:マックス・スタイナー

出演
ハンフリー・ボガート:フィリップ・フランシス・クイーグ少佐
ホセ・ファーラー:バーニー・グリーンウォルド大尉
ヴァン・ジョンソン:スティーヴ・マリク大尉
ロバート・フランシス:ウィリー・キース少尉
フレッド・マクマレイ:トム・キーファー大尉
トム・テューリー:デヴリース少佐
E・G・マーシャル:ジョン・カーリー少佐
ジェリー・パリス:バーニー・ハーディング少尉
メイ・ウィン:メイ・ウィン
リー・マーヴィン:ミートボール
クロード・エイキンス:ホリブル

アメリカ 映画
配給 コロンビア・ピクチャーズ
1954年製作 124分
公開
北米:1954年6月24日
日本:1954年8月16日
製作費 $2,000,000
北米興行収入 $8,700,000


アカデミー賞 ■
第27回アカデミー賞
・ノミネート
作品
主演男優(ハンフリー・ボガート
助演男優(トム・テューリー
脚本・編集・作曲・録音賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
1943年、第二次大戦下、サンフランシスコ
士官学校を卒業したばかりの良家の子息、ウィリー・キース(ロバート・フランシス)は、身分違いを気にする恋人で、歌手のメイ・ウィン(メイ・ウィン)に別れを告げる。

パール・ハーバー
キースは、アメリカ海軍少尉として、くたびれた駆逐艦ケイン号に乗り込むことになる。

副官スティーヴ・マリク大尉(ヴァン・ジョンソン)と通信長トム・キーファー大尉(フレッド・マクマレイ)とに迎えられたキースは、艦長デヴリース少佐(トム・テューリー)に着任の報告をする。

くだけた雰囲気のデヴリースは、キースの経歴を見て、空母か戦艦に乗船できなくても、どちらにしても戦争は地獄だと言って、彼に全力を尽くすことを望む。

もう一人の新任少尉バーニー・ハーディング(ジェリー・パリス)と共に、キースはキーファーの通信部に配属され、誰でも出来るという日常作業を教えられる

その後キースは、デヴリースから提督の参謀本部から誘いがあったことを知らされるが、彼は実力者の親の根回しであることを察し、それを嫌い断ってしまう。

3ケ月が過ぎた頃、規律を守れない乗組員や、それを黙認して自分に厳しい評価を下すデヴリースに、キースは反論してしまう。

キースは、デヴリースから艦長が交代すること聞き、それを歓迎する。

やがて、新任の艦長フィリップ・フランシス・クイーグ少佐(ハンフリー・ボガート)が着任し、デヴリースと引継ぎを済ませる。
...全てを見る(結末あり)

キースは、前艦長デヴリースの、規則に縛られることのない粗野な振る舞いが好きになれなかった。

しかし、デヴリースが去る際に、乗組員のミートボール(リー・マーヴィン)らが、彼に感謝と親しみを込めて腕時計を贈ったことや、その態度などを見て疑問に思う。

マリクは、その思いを理解できなければ、良い将校になれないとキースに伝える。

その後キースは、前艦長とは違うクイーグの、軍規に厳しい態度を見て好感を持つ。

そしてキースは、クイーグから風紀係担当官に命ぜられて、ケイン号を、アメリカ海軍一の標的曳航艦にするという考えの彼を頼もしく思う。

演習中キースは、ホリブル(クロード・エイキンス)のだらしない服装を見逃したことをクイーグから非難される。

そのことに夢中になってしまったクイーグは、指揮を怠りミスを犯してしまう。

クイーグは、そのミスを隠蔽して報告し、それが発覚してしまい、その事情説明のために、ケイン号はサンフランシスコに向かうことになる。

メイと再会したキースは、ヨセミテで週末を過ごし、彼女に結婚する意志があるかを確認する。

しかし、身分違いをキースの母親、そして彼自身が気にしていることを悟り、メイはそれを断ってしまう。

結局、クイーグは処分されることなく艦に戻り、彼は部下達の信頼を失ってしまう。

指令を受けたクイーグは、上陸作戦でまともな指揮が執れず、部下達の見解は無能な臆病者だという結論に達する。

キーファーは、クイーグを偏執者呼ばわりするが、艦内の士気に関わると判断したマリクは、それに同調し始めたキースを含め、艦長非難を止めさせようとする。

とは言うものの、マリクはクイーグの言動を気にし、精神障害について調べ、医学日誌をつけることにする。

その後クイーグは、自分に黙って映画の上映をしたことに腹を立て、安全訓練では細かいことに注文をつけ、水兵達を罰していく。

さらにクイーグは、冷蔵庫のイチゴが紛失したと言って、士官に対して、真夜中に乗組員の調査をさせ、艦内の鍵の全てに名札を付けさせ、全員の身体検査を始める。

その結果、マリクもクイーグを偏執者呼ばわりするキーファーの意見を考慮するようになり、下級士官が指揮官を解任できる、”海軍既定・第184条”の適用を考える。

イチゴ事件の調査が続く中、ハーディングが妻の病気で下船することになり、彼は給食係がそれを食べたところを目撃したことをマリクらに伝える。

ハーディングはそれをクイーグに話し、彼がそれを秘密にしておこうとしていることを知り、それを聞いたマリクは、ついに腰を上げ、”第184条”を実行すべく、ハルゼー提督の元を訪れる決心をする。

ハルゼー提督に会うため空母に向かったマリク、キーファー、キースの三人は、ケイン号とは全く違うその様子に圧倒される。

同じ海軍とは思えない雰囲気に、ゴミのようなケイン号で起きた事件は、特別な世界での出来事と判断し、怖気づいた三人は直訴を取り止めてしまう。

その後、ケイン号は台風に遭遇し、クイーグの指揮で艦が沈没しかねない状況となる。

仕方なくマリクは”第184条”を適用し、クイーグから指揮権を奪い艦を救う。

しかし、マリクは艦長に対する反逆罪で、軍法会議にかけられることになる。

サンフランシスコ
マリクの弁護人バーニー・グリーンウォルド(ホセ・ファーラー)は、精神医の診察で正常だというクイーグに対し、勝ち目のないことを告げる。

軍法会議は始まり、検察官のジョン・カーリー少佐(E・G・マーシャル)の厳しい質問に、キースはたじろぐ場面もある。

さらに、キーファーは、嘘の証言をして形勢はマリクに不利のまま進む。

しかし、弁護人グリーンウォルドは、クイーグを正常だと診察した医師に、同じような境遇の者に対する診察経験不足を指摘する。

カーリーは、補足的な質問をして、グリーンウォルドの質問が愚問に思えるように誘導する。

さらにカーリーは、証言席のマリクに対し、専門家でもないのにクイーグを精神病と判断した、彼の行動の不自然さを指摘する。

マリクは、医師達の診察が正しいとしたらというカーリーの質問に、自分は有罪だろうと答えてしまう。

そして、クイーグが法廷席に呼ばれ、グリーンウォルドに様々な状況下での、指揮官としての能力不足を指摘される。

グリーンウォルドは、イチゴ事件で冷蔵庫の複製の鍵が見つかったと言い張るクイーグに、彼が給食係が犯人だということを知っていたことを証明させるため、ハーディングを呼ぶ必要性があるかを尋ねる。

クイーグは、緊張するといじり始める金属玉を取り出し、動揺しながら話を続ける。

そしてクイーグは、グリーンウォルドがハーディングを召喚するという言葉を聞いて、正気を失いかけながら、鍵がなかったことも話してしまう。

マリクは無罪となり、同僚士官はそれを喜び、気まずい思いをしながらキーファーもその場に姿を現す。

この事件をきっかけに成長したキースは、メイに連絡を入れ、母親のことなどは気にせず結婚を申し込み、彼女にそれを承諾してもらえる。

そこに、酔ったグリーンウォルドが現れ、クイーグを追い詰めたのは士官達で、彼への忠誠心があれば、全ての問題は切り抜けられたことを指摘する。

特に、小説家志望をいいことに、全てシナリオ通りにことを運ぼうとした、自分を守るために嘘の証言をしたキーファーを、グリーンウォルドは激しく非難し立ち去る。

その後、新たな艦に乗り込むことになったキースは、見送りに来たメイに別れを告げる。

乗り込む船の艦長は、ケイン号の前艦長デヴリースだった。

そして、多くの経験を積んだキースは、以前とは違う目でデヴリースを見ていた。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
老朽駆逐艦ケイン号に着任したキース少尉は、規則を守らない乗組員などを黙認する艦長デヴリースを好きになれないでいた。
そんな時、デヴリースが船を去ることになり、それを惜しむ乗組員の姿を見て、キースは疑問に思う。
キースは、それが理解できなければ良い士官になれないと、副官マリクに指摘される。
新任艦長フィリップ・フランシス・クイーグのデヴリースとは違う、軍規に厳しい態度を見たキースは彼に好感を持つ。
しかし、演習中にミスを犯し、指揮官としての無能さを露呈したクイーグに対し、乗組員は不安を抱え始める。
通信長キーファーから、クイーグが偏執者だと言われたマリクだったが、彼は兵士の士気にかかわる言動を止めさせようとする。
しかしマリクは、クイーグの神経を疑うような態度を見て、軍規に基づきついに彼の解任を考慮し始める・・・。
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非米活動家として国外に逃れて、紆余曲折あった後に、名作を多く残すことになるエドワード・ドミトリクは、単に狂人に近い人間を描くのではなく、社会問題とも言える、最前線で戦う職業運人の苦悩や、その現場体験で、青年将校が成長していく姿を見事に描ききっている。

中盤過ぎまでは、無能な艦長と乗組員の確執と戦闘や嵐の大スペクタクル、その後の終の盤は、法廷劇という対照的なストーリー展開も、メリハリの効いた演出と共に見応え十分だ。

第27回アカデミー賞では作品、主演男優(ハンフリー・ボガート)、助演男優(トム・テューリー)、脚本、編集、作曲、録音賞にノミネートされた。

アメリカ海軍全面協力による迫力映像と、いかにも軍隊ものを連想させるマックス・スタイナーのテンポよく力強い音楽も耳に残る。

ハンフリー・ボガートの、偏執者呼ばわりされる異常な艦長役は見ものであり、彼の晩年の名演として高く評価され、アカデミー主演賞にノミネートされた。

思慮深い副官ヴァン・ジョンソン、自らの保身に走る通信長役のフレッド・マクマレイ、経験不足の将校役ロバート・フランシスや、クライマックスで裁判に勝ちながら士官の反乱を一喝する弁護人ホセ・ファーラーら、豪華共演者の熱演も注目だ。

尚、今後の活躍が期待されていたロバート・フランシスは、翌年自ら操縦していた飛行機の事故でわずか25年の生涯を閉じている。

また、それほど出番は多くはないが、アカデミー助演賞候補になった、乗組員に信頼があるトム・テューリーの、人間味ある艦長が、後任艦長の無能振りを際立たせ見事な存在感を見せてくれる。

その他、反乱士官を追及する検察官E・G・マーシャルや、妙に目立つ水兵の若きリー・マーヴィンクロード・エイキンスも印象に残る。

新任将校ジェリー・パリス、キース(R・フランシス)の恋人メイ・ウィンなどが共演している。


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