夢遊病者を使った興行師の殺人とそれに隠された秘密を描く、”ドイツ表現主義”映画の第一作にして最高傑作であるサイレント映画。 監督ロベルト・ヴィーネ、主演ヴェルナー・クラウス、コンラート・ファイト、フリードリッヒ・フェーヘル、リル・ダゴファー他共演のホラー。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ロベルト・ヴィーネ
製作
エリッヒ・ポマー
ルドルフ・マイナート
脚本
ハンス・ヤノヴィッツ
カール・マイヤー
撮影:ウィリー・ハマイスター
音楽:ジュゼッペ・ベッチェ
出演
カリガリ博士:ヴェルナー・クラウス
チェザーレ:コンラート・ファイト
フランシス:フリードリッヒ・フェーヘル
ジェーン・オルセン:リル・ダゴファー
アラン:ハンス・ハインツ・フォン・トワルドウスキー
オルセン博士:ルドルフ・レッティンゲル
アイン・ヴァーブレッカー:ルドルフ・クライン=ロッゲ
アメリカ 映画
配給 Decla Film
1920年製作 74分
公開
ドイツ:1920年2月26日
北米:1921年3月19日
日本:1921年5月14日
製作費 $18,000
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
ベンチに座りながら、亡霊にとり憑かれたために家族を捨てることになったと言う老人の話を聞くフランシス(フリードリッヒ・フェーヘル)は、現れたジェーン・オルセン(リル・ダゴファー)が歩き去った後に、婚約者であることを老人に伝える。
自分とジェーンは、あなたよりはるかに恐ろしい体験をしたと言うフランシスは、その話を始める。
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ホルステンヴァル。
開催されていたカーニバルに、興行師であるカリガリ博士(ヴェルナー・クラウス)が現れる。
親友のアラン(ハンス・ハインツ・フォン・トワルドウスキー)に誘われたフランシスは、カーニバルに向かう。 役場に向かったカリガリ博士は、カーニバルでの興行の許可をえようとする。 職員から興行の内容を訊かれたカリガリ博士は、夢遊病者のショーだと答える。 呆れる職員に相手にされないカリガリ博士は、別の職員と話す。 その後、カリガリ博士は、脅威の夢遊病者チェザーレの絵を見せながら、小屋の前で客引きをする。 その夜、殺人事件が発生し、役場の職員(カリガリ博士の対応をした人物)が死体で発見される。 カリガリ博士は、25年間、眠り続けている夢遊病者のチェザーレが甦ると言って、客を小屋に呼び込む。 夢遊病者チェザーレ(コンラート・ファイト)が眠るキャビネット(箱)を開けたカリガリ博士は、彼を目覚めさせる。 預言者であるチェザーレに未来を尋ねてみてほしいと客に伝えたカリガリ博士は、フランシスと共にその場にいたアランの質問を訊く。 自分の寿命を尋ねたアランは、チェザーレから、”長くはない、夜明けには死ぬ”と言われて動揺する。 帰り道でフランシスは、互いにジェーンを愛してしまったが、どちらが選ばれても友達でいようとアランに伝えて別れる。 その夜、何者かに襲われたアランは殺される。 翌朝、アランが殺されたことを知ったフランシスは驚き、夢遊病者の予言通りだったと言いながら悲しむ。 警察に向かったフランシスは、町で何か恐ろしいことが起こっていると伝える。 訪ねて来たフランシスから、アランの死を知らされたジェーンは驚く。 ジェーンの父オルセン博士(ルドルフ・レッティンゲル)と話したフランシスは、怪しいカリガリ博士とチェザーレを警察に調べてもらうことにする。 その後、町では、老女を襲おうとしたナイフを持った男アイン・ヴァーブレッカー(ルドルフ・クライン=ロッゲ)が逮捕される。 カリガリ博士を訪ねたフランシスとオルセンは、彼から話を聞こうとする。 署に連行されたアインは、凶器となるナイフを押収されて拘留される。 チェザーレを調べるオルセンから、眠っている彼を起こすようにと言われたカリガリ博士は、それに応じようとしない。 そこに、連続殺人犯が逮捕されたという連絡が入り知らされたフランシスは、オルセンにそれを伝える。 慌てながら帰るフランシスとオルセンを、カリガリ博士は笑いながら見送る。 父の帰りが遅いために、ジェーンは心配する。 警察署に向かったフランシスとオルセンは、老女を殺して今回の事件の犯人に罪を着せようとしたのは確かだが、前の二人は殺していないと言うアインの話を聞く。 小屋に現れたジェーンから、オルセンを捜していと言われたカリガリ博士は、中で待つことを勧める。 カリガリ博士が開けた箱からチェザーレが現れ、恐ろしくなったジェーンはその場から逃げ去る。 アランの葬儀が済んだ夜、フランシスはカリガリ博士の小屋に向かう。 カリガリ博士からジェーンを殺すことを命ぜられたチェザーレは、眠っている彼女をナイフで殺そうとする。 ジェーンの美しさに惹かれてしまい、殺すことをためらったチェザーレは、目覚めて抵抗する彼女を連れ去る。 騒ぎに気づいたオルセンは、ジェーンが連れ去られたことを知り愕然とする。 追っ手から逃げるチェザーレは、途中でジェーンを置き去りにする。 逃げきれないチェザーレは発作を起こして倒れてしまい、そのまま息を引き取る。 家に運ばれたジェーンは、フランシスとオルセンに、チェザーレに連れ去られたことを話す。 そんなはずはないと言うフランシスは、カリガリ博士と共に眠っているチェザーレを見張っていたことをジェーンに伝える。 警察署に向かい、その件を警官に話したフランシスは、アインが拘置所でおとなしくしていることを確認して、カリガリ博士の元に向かう。 警官が小屋の中から箱を運び出し、中に入っているのがチェザーレの人形であったために、フランシスは精神病院に向かう。 職員にカリガリ博士という患者がいるか尋ねたフランシスは、いないと言われる。 患者の身元は院長しか知らないと言われたフランシスは、院長室に案内される。 その場にいたのがカリガリ博士であったために驚いたフランシスは、部屋を出て職員にそれを伝える。 夜になり、院長が眠っている間に、職員と共に院長室を調べたフランシスは、院長が研究していたと思われる、1156年に書かれた博士論文を見つける。 そこには、1093年、夢遊病者のチェザーレを連れて旅をしていたカリガリ博士が、彼を自由に操り危険な行為を行ったと記されていた。 その後、各地で同じ手口の謎の殺人事件が多発したのだった。 事例には、”3月12日の朝、この病院に夢遊病者が現れ、ついにその時が来た”と記されていた。 院長は、論文に記されていたことを実現させようとしたのだった。 翌日、チェザーレの死体が発見されたことを知ったフランシスは、職員と共にそれを院長室に運ぶ。 チェザーレの死体と対面した院長は、悲しみのあまり取り乱してしまう。 取り押さえられて拘束服を着せられた”カリガリ博士”と化している院長は、監禁される。 話を終えたフランシスは、老人と共に病棟に戻る。 実は精神異常者だったフランシスは、その場にいた男性患者(コンラート・ファイト)をチェザーレと呼ぶ。 同じ患者のジェーンに話しかけたフランシスは、愛を告げて、結婚してくれるのか尋ねる。 ジェーンから、王家の血を引く自分達は勝手な行動は許されないと言われたフランシスは、中庭に現れた院長をカリガリと呼び襲い掛かる。 職員に取り押さえられたフランシスは、拘束服を着せられる。 フランシスの様子を見た院長は、自分をカリガリ博士と思い込んでいる、偏執病である彼の治療方法は分かったとつぶやく。
...全てを見る(結末あり)
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*(簡略ストー リー)
ベンチに座っていたフランシスは、通り過ぎるジェーンを見ながら、自分達が体験した恐ろしい出来事を老人に話し始める・・・。
ホルステンヴァルの町でカーニバルが開催され、興行師のカリガリ博士は、夢遊病者のチェザーレを使った見世物を始める。
親友のアランに誘われてカーニバルに向かったフランシスは、カリガリ博士のショーを見る。
預言者であるチェザーレに自分の寿命を尋ねたアランは、”明日の朝までに死ぬ”と言われて動揺する。
その頃、町では市の職員が殺され死体が発見される。
翌朝、アランが殺されたことを知ったフランシスは驚き、心を寄せるジェーンにそれを伝える。
ジェーンの父オルセン博士にカリガリ博士とチェザーレの予言のことを話したフランシスは、二人のことを調べようとするのだが・・・。
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第一次大戦前からジ始まった”ドイツ表現主義”の映画製作において、その第一作にして最高傑作と言われるサイレント作品。
夢遊病者を使った興行師”カリガリ博士”による恐ろしい殺人事件が描かれている内容で、実は精神病院の院長だった興行師は、古い論文に記されていることを再現しようとした”狂人”であったと分かる展開だけでも、当時の作品にしては凝っている脚本が実に興味深い。
更に、この物語が精神患者の妄想だと分かるクライマックスは、当時の人々をどれだけ驚かせたかが想像できる。
”ドイツ表現主義”の芸術性を最大限に生かし表現したセットの素晴らしさなども含めて、後世に多大なる影響を与えた世界の映画市場に残る傑作と言える作品である。
カーニバルの興行師として夢遊病者を操り殺人を繰り返す”カリガリ博士”と精神病院の院長を演ずるヴェルナー・クラウス、妖気漂う夢遊病者”チェザーレ”を怪演するコンラート・ファイト、物語を語り殺人事件の解決に奔走するものの、実はすべてが彼の妄想だったと分かる青年フリードリッヒ・フェーヘル、その親友で殺害されるハンス・ハインツ・フォン・トワルドウスキー、二人が心を寄せる女性リル・ダゴファー、その父親ルドルフ・レッティンゲル、殺人未遂容疑で逮捕される男ルドルフ・クライン=ロッゲなどが共演している。