ホワイトハウスの執事を34年間勤めたユージン・アレンに関する、2008年に”ワシントン・ポスト”に掲載されたウィル・ハイグッドの記事”A Butler Well Served by This Election”を基に製作された作品。 奴隷からホワイトハウスの執事となり7人の大統領に仕えた黒人男性の苦難の人生を描く、製作、監督リー・ダニエルズ、主演フォレスト・ウィテカー、オプラ・ウィンフリー、キューバ・グッディングJr.、ロビン・ウィリアムズ、ジェームズ・マースデン、リーヴ・シュレイバー、ジョン・キューザック、アラン・リックマン、ジェーン・フォンダ他共演のヒューマン・ドラマ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:リー・ダニエルズ
製作
ローラ・ジスキン
リー・ダニエルズ
カシアン・エルウィズ他
製作総指揮
マイケル・フィンリー他
原作:ウィル・ハイグッド”A Butler Well Served by This Election”
脚本:ダニー・ストロング
撮影:アンドリュー・ダン
編集:ジョー・クロッツ
音楽:ロドリーゴ・レアン
出演
セシル・ゲインズ:フォレスト・ウィテカー
グロリア・ゲインズ:オプラ・ウィンフリー
ルイス・ゲインズ:デヴィッド・オイェロウォ
チャーリー・ゲインズ:イライジャ・ケリー
アール・ゲインズ:デヴィッド・バナー
ハッティ・パール:マライア・キャリー
ハワード:テレンス・ハワード
ジーナ:アドリアーニ・レノックス
キャロル・ハミー:ヤヤ・ダコスタ
トーマス・ウェストフォール:アレックス・ペティファー
アナベス・ウェストフォール:ヴァネッサ・レッドグレイヴ
メイナード:クラレンス・ウィリアムズ三世
カーター・ウィルソン:キューバ・グッディングJr.
ジェームズ・ホロウェイ:レニー・クラヴィッツ
フレディ・ファローズ:コールマン・ドミンゴ
ドワイト・D・アイゼンハワー:ロビン・ウィリアムズ
ジョン・F・ケネディ:ジェームズ・マースデン
リンドン・ジョンソン:リーヴ・シュレイバー
リチャード・ニクソン:ジョン・キューザック
ロナルド・レーガン:アラン・リックマン
ナンシー・レーガン:ジェーン・フォンダ
アメリカ 映画
配給 ワインスタイン・カンパニー
2013年製作 132分
公開
北米:2013年8月16日
日本:2014年2月15日
製作費 $30,000,000
北米興行収入 $116,632,100
世界 $176,598,910
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
2009年1月、ホワイトハウス。
執事として歴代大統領に仕えたセシル・ゲインズ(フォレスト・ウィテカー)は、長い人生を振り返る。
1926年、ジョージア州、メイコン。
綿花畑の奴隷として父アール(デヴィッド・バナー)や母ハッティ(マライア・キャリー)らと働く少年セシルは、虐げられた日々を送っていた。
ハッティを暴行した地主の息子トーマス・ウェストフォール(アレックス・ペティファー)に声をかけたアールは、セシルの目の前で射殺される。
農場の女主人アナベスは、セシルの気持ちを察して哀れみ、彼を”ハウス・ニガー”にする。
空気のような存在になるようにと言いつけられたセシルは、給仕の仕事を覚える。 1937年。 正気を失った母ハッティに別れを告げたセシルは、自分を可愛がってくれてたアナベスが寂しがっていることを理解しながら旅立つ。 しかし、外の世界は農園の生活よりも過酷で、黒人は常に命を狙われた。 空腹に耐えられず食べ物が飾ってあるホテルのウインドウを壊したセシルは、その場の使用人メイナード(クラレンス・ウィリアムズ三世)に見つかり、今後のことを聞かれる。 メイナードに頼み仕事を与えられたセシルは、ホテルの使用人となる。 その後、メイナードに仕込まれたセシルは、ワシントンD.C.での執事の仕事に推薦される。 1957年、ワシントンD.C.。 ある日、夜勤を終えて帰宅したセシルは、上司からの連絡を受けてホワイトハウスに向かうよう指示される。 執事長のフレディ・ファローズ(コールマン・ドミンゴ)と面会したセシルは、採用されることになる。 グロリアや隣人のハワード(テレンス・ハワード)、その妻ジーナ(アドリアーニ・レノックス)に祝福されたセシルは、ホワイトハウスでの仕事を始める。 セシルはフレディに仕事についてを説明され、執事頭カーター・ウィルソン(キューバ・グッディングJr.)とジェームズ・ホロウェイ(レニー・クラヴィッツ)に歓迎される。 そしてセシルは、緊張しながら大統領執務室のドワイト・D・アイゼンハワー(ロビン・ウィリアムズ)にお茶を運ぶ。 帰宅したセシルは、長男のルイス(デヴィッド・オイェロウォ)が、白人に惨殺された少年”エメット・ティル”の母親メイミーの演説会に行くつもりだと知りそれを許さない。 その頃、アーカンソーのリトルロックで起きた高校の人種差別問題で、アイゼンハワーはついに軍を派遣する決断をする。 セシルは、アイゼンハワーが世の中を変えてくれると考えた。 ルイスを地元の”ハワード大学”に通わせたかったセシルだったが、ルイスはテネシー州の”フィスク大学”に入学することになる。 セシルはルイスのことを心配しながら、グロリアとチャーリーと共に息子を見送る。 次期大統領を目指す副大統領リチャード・ニクソン(ジョン・キューザック)は、黒人の生活改善を約束し選挙での協力をセシルや同僚らに求める。 1960年、フィスク大学。 白人の規制に抵抗して痛めつけられたルイスらは逮捕される。 晩餐会を無事に終えたセシルは、ルイスが逮捕される様子が映し出されるニュースを見てショックを受ける。 ルイスは有罪となり30日の実刑を言い渡され、身柄を引き取りに行ったセシルは、変革が必要だと言う息子の行動を非難する。 1961年。 ホワイトハウスでの仕事は完ぺきにこなすものの、セシルは家庭を犠牲にしなければならず、酒に溺れるグロリアとの関係にも溝が生まれる。 出所後も”フリーダム・ライダース”に参加したルイスは、バスで移動中に”KKK”や市民に襲われる。 火炎瓶を投げつけられたバスは炎上し、ルイスの生死もわからなかった。 拘留されていたルイスからの連絡を受けたセシルだったが、戻るようにと言う言葉も聞き入れる気のない死も覚悟するルイスは、今後も活動を続けることを伝える。 ハワードと関係を持っていたグロリアは罪悪感を感じ始め、ギャンブラーの彼を拒むようになる。 ケネディの部屋に薬を運んだセシルは、彼がルイスの活動内容を全て把握していることを知る。 差別問題を重視していなかった考えを正すとセシルに伝えたケネディは、国内のホテルやレストランで、全ての国民が平等にサービスを受ける権利を保障する法案を議会に提出することを発表する。 1963年11月22日。 ルイスの部屋を片付けたグロリアは、荷物を運び出すよう息子チャーリー(イライジャ・ケリー)に指示する。 帰宅したセシルは、夫人ジャクリーンから渡された大統領のネクタイをグロリアに見せて暗殺のことを話すが、彼女は家のことが心配だと言って事件に興味を示さない。 しかし、それをきっかけに二人の関係は修復し、セシルは仕事を減らしてグロリアと過ごす時間を増やそうとする。 1964年。 グロリアは、浮気相手の夫にハワードが射殺されたことを知り動揺する。 1965年。 その後も差別問題は収まらず、”血の日曜日事件”が起きる。 ルイスのことをジョンソン大統領聞かれたセシルは、連絡もない息子は事件のあったセルマにいるだろうと答える。 ホワイトハウス前では、ベトナム戦争に反対する若者達のデモが激しくなる。 1968年。 4月4日、テネシー州、メンフィス。 ワシントンD.C.でも黒人達の暴動が起き、それに遭遇したセシルは時代の変化を感じる。 キャロルを伴い家に戻ったルイスは、民族主義運動と黒人解放闘争の考えの下に組織された、”ブラックパンサー党”を結成したことを家族に知らせる。 セシルはその考えを理解できずルイスを追いだそうとするが、グロリアがそれを制止する。 しかしグロリアは、セシルの仕事を侮辱するような言葉を口にしたルイスに出て行くよう伝える。 翌日ルイスは逮捕されてしまい、身元引受人がいないため、仕方なくカーターが保釈金を払い釈放させる。 1969年。 ”ブラックパンサー党”自体は、徹底的に叩き排除すると言うニクソンの話をセシルは聞いてしまう。 塔の考えが徹底抗戦だと知ったルイスは、活動に興味を失いキャロルと別れてその場を去る。 セシルの誕生日。 チャーリーの葬儀は行われるが、ルイスの姿はなかった。 1974年。 仕事場に現れたルイスを歓迎したカーターは、彼が大学を卒業して修士号を取ったことを知る。 ルイスが来ていることをジェームズに知らされたセシルは、話す気がないことを伝えてルイスを追い払ってしまう。 カーターにルイスへの態度を批判されたセシルだったが、弟の葬儀にも出席しない最低の人間だと息子を批判する。 時は流れフォードからカーター政権を経て1980年代となり、絶縁状態だったルイスは民主党の下院議員候補となる。 ルイスが選挙で負けたことを知ったセシルは、息子に連絡するようグロリアに言われる。 チャーリーの死後に訪ねて来たルイスが、絶っていた酒を飲み酔い潰れていたのを介抱してくれたことを、グロリアはセシルに伝える。 1986年。 上司に黒人スタッフを白人と平等に扱うよう再び要請したセシルは、聞き入れられなければ辞職すると告げる。 辞めればいいという答えを予想していたセシルは、この件で大統領が話があると言っていることを上司に伝える。 セシルは、自分の意見が受け入れられたことを喜んでくれた大統領夫人ナンシー(ジェーン・フォンダ)から、客として夫婦で晩餐会への招待を受ける。 グロリアと共に晩餐会に出席したセシルは、給仕される側として戸惑う。 その後、人種差別政策を続ける南アフリカへの経済制裁を議会が可決した場合、レーガンは拒否権を行使する考えを変えない。 晩餐会以来、気分が塞ぐセシルは、ルイスの活動が国の魂を守るためのヒーロー的な行為だったと思えるようになる。 仕事を愛し続けていたセシルは、やがて虚しさを感じ始める。 故郷であるジョージア州のメイコンをグロリアと訪ねたセシルは、共に人生を歩めたことに感謝して愛を確かめ合う。 ホワイトハウスに戻ったセシルは、辞職することをレーガンに伝える。 レーガンから家族同然だと言われたセシルは、国への貢献を称えられる。 人権問題で考えを誤ったかもしれないと言うレーガンに、自分も変化を恐れたが、今はそうは思わないとセシルは答える。 南アフリカ大使館。 歩み寄って来たルイスに、デモに参加するために来たと伝えたセシルは、職を失うと言われる。 息子を失ったと語るセシルはルイスに謝罪し、父子は固く抱き合う。 その後、二人は逮捕拘留されてしまうが、セシルは良い経験だったと考える。 2008年。 セシルとグロリアは、オバマを支援する活動を続ける。 ある日曜日、ミサに行くため議員となっていたルイスを待つセシルは、病気を抱えていたグロリアが息を引き取ったことに気づく。 その後の大統領選挙の結果、オバマが次期大統領になることが確実となり、ルイスと共にそれを見守るセシルは涙する。 2009年1月。
...全てを見る(結末あり)
このままではトーマスに殺されると考えた18歳のセシルは、農園を出る決心をする。
豪華なホテルでの仕事を続けていたセシルは、その場で出会ったグロリア(オプラ・ウィンフリー)と結婚し、二人の息子と共に一軒家に住むまでになっていた。
キャロル・ハミー(ヤヤ・ダコスタ)と知り合ったルイスは、公民権運動の秘密集会に参加するようになり活動を始める。
ジョン・F・ケネディ(ジェームズ・マースデン)が大統領に就任し、セシルらは新しい主人を迎える。
ケネディはダラスで暗殺され、セシルは大きなショックを受ける。
ケネディの後任となったリンドン・ジョンソン(リーヴ・シュレイバー)は、公民権法を成立させる。
マウコムXの集会などに参加して活動を続けるルイスとキャロルは、愛し合うようになる。
上司に黒人スタッフの給与面での待遇改善を求めたセシルだったが、公民権運動の指導者マーティン・ルーサー・キング牧師に感化されるなと言われただけだった。
ルイスも行動を共にしていたキング牧師が、モーテルで暗殺される。
大統領のニクソンは、”ブラックパンサー党”の運動を黒人の経済活動に発展させて黒人票を獲得できれば、次回の選挙でも勝てると考える。
ルイスからの電話で金の無心を拒んだルイスは、ベトナムでチャーリーが戦死したことを知りグロリアと共に悲しむ。
二期目の任期を務めていたニクソンは、”ウォーターゲート事件”により辞任の危機に直面していたが、彼はセシルの前でそれを否定する。
大統領職二期目のロナルド・レーガン(アラン・リックマン)は、セシルを信頼して仕事を任せる。
ネルソン・マンデラの釈放を求め、レーガンの政策を批判するデモでマイクを握っていたルイスは、その場に現れたセシルに気づく。
セシルにとって驚くべきことが起き、何と黒人のバラク・オバマが大統領候補となったのだ。
オバマの大統領就任式が行われ、ホワイトハウスに招かれたセシルは、自分が仕えた歴代大統領のことを思いながら、大統領執務室に向かう。
*(簡略ストー リー)
1926年、ジョージア州のメイコンで奴隷の子として生まれたセシル・ゲインズは、女主人に給仕の仕事を教わる。
1937年、故郷を離れ、ある町のホテルでプロの給仕として仕込まれたセシルは、ワシントンD.C.での仕事に推薦される。
1957年、豪華なホテルで働くようになったセシルは、妻グロリアと二人の息子ルイスとチャーリーと共に一軒家で暮らしていた。
そんなセシルは、ある日ホワイトハウスに呼び出され、大統領の執事として採用される。
カーターやジェームズら同僚に歓迎されたセシルは、アイゼンハワー大統領に仕えることになる。
その頃、黒人差別に対する公民権運動が活発化し、セシルの長男ルイスがその活動に参加するようになる。
それを気にするセシルは、仕事の忙しさから家族との触れ合いが減り、妻グロリアも酒や浮気に走り関係に亀裂が生じ始める・・・。
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実話を参考にしたドラマであり、アメリカ大統領に仕えた執事の約30年間を描く物語は、有名な事件を順序立てて描く歴史を学べる作品としても楽しめる内容となっている。
大統領そのものが歴史に残る存在であり、その画面での印象が強いのだが、主人公が”空気のような存在”の執事なので、その描写などはぶつかり合わずうまい具合に調和がとれている。
激動の時代を生きた一人の男性人生を描く骨太のドラマなのだが、エンディングで表記されるように、黒人に対する差別と闘った人々を称えるのが大きなテーマだったとするとやや観方が変わってしまう。
上記のように役者の演技や徹底した時代の再現などの面では重みを感じるが、事実を淡々と描く場面が多い分、奥深さの点ではリー・ダニエルズの演出は物足りないというところだろうか。
そんなところが災いしてか、公開前からオスカー・レースなどの目玉として期待が高まったが、ノミネートすらされなかった。
北米興行収入は約1億1700万ドル、全世界では約1億7700万ドルのヒットとなった。
奴隷からホワイトハウスの執事を務めるまでになる男性の生き様を、実力派らしく重厚に演ずるフォレスト・ウィテカー、その妻オプラ・ウィンフリー、その息子デヴィッド・オイェロウォとイライジャ・ケリー、主人公の父親デヴィッド・バナー、母親マライア・キャリー、主人公の隣人テレンス・ハワード、その妻アドリアーニ・レノックス、長男と活動を共にする恋人でもあるヤヤ・ダコスタ、主人公に給仕の仕事を教える地主ヴァネッサ・レッドグレイヴ、その息子アレックス・ペティファー、主人公をプロの給仕として育てるクラレンス・ウィリアムズ三世、執事の同僚キューバ・グッディングJr.とレニー・クラヴィッツ、執事長コールマン・ドミンゴ、ドワイト・D・アイゼンハワーのロビン・ウィリアムズ、ジョン・F・ケネディのジェームズ・マースデン、リンドン・ジョンソンのリーヴ・シュレイバー、リチャード・ニクソンのジョン・キューザック、ロナルド・レーガンのアラン・リックマン、ナンシー・レーガンのジェーン・フォンダなど、豪華共演者も注目だ。