「猿の惑星」(1968)の原作者でも知られるフランス人作家ピエール・ブールが1952年に発表した小説”The Bridge over the River Kwai”(Le Pont de la riviere Kwai )の映画化。 橋梁建設の至上命令を受けた日本軍の大佐と誇り高きイギリス軍大佐の対立や親交を通して戦争の虚しさを描く、監督デヴィッド・リーン、主演ウィリアム・ホールデン、アレック・ギネス、ジャック・ホーキンス、早川雪洲、ジェームズ・ドナルド共演による映画史上に残る戦争ドラマの傑作。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:デヴィッド・リーン
製作:サム・スピーゲル
原作:ピエール・ブール
脚色
カール・フォアマン
マイケル・ウィルソン
撮影:ジャック・ヒルデヤード
編集:ピーター・テイラー
音楽:マルコム・アーノルド
出演
シアーズ中佐:ウィリアム・ホールデン
ニコルソン大佐:アレック・ギネス
ウォーデン少佐:ジャック・ホーキンス
斉藤大佐:早川雪洲
クリプトン軍医:ジェームズ・ドナルド
ジョイス少尉:ジェフリー・ホーン
グリーン大佐:アンドレ・モレル
看護士:アン・シアーズ
リーヴス大尉:ピーター・ウィリアムズ
グローガン二等兵:パーシー・ハーバート
ベーカー二等兵:ハロルド・グッドウィン
カネマツ大尉:ヘンリー・大川
イギリス/アメリカ 映画
配給 コロンビア・ピクチャーズ
1957年製作 162分
公開
イギリス:1957年10月2日
北米:1957年12月18日
日本:1957年12月22日
製作費 $3,000,000
北米興行収入 $33,300,000
■ アカデミー賞 ■
第30回アカデミー賞
・受賞
作品・監督
主演男優(アレック・ギネス)
脚色・編集・撮影・作曲賞
・ノミネート
助演男優賞(早川雪洲)
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1943年、第二次大戦下。
タイとビルマ(現ミャンマー)国境近くにある、日本軍捕虜収容所。
アメリカ海軍中佐シアーズ(ウィリアム・ホールデン)は、過酷な労働から解放されるための、逃げ道ばかりを探っていた。
シアーズは、日本軍のカネマツ大尉(ヘンリー・ 大川)を、死亡した捕虜のライターで買収して、病院に入ることに成功する。
同じ頃、ニコルソン大佐(アレック・ギネス)率いるイギリス軍捕虜の一団が収容所に到着する。
収容所長の斎藤大佐(早川雪洲)は、誇り高く威厳がある人物で、部下から恐れられていた。
斎藤大佐の元には、バンコクとラングーン(ヤンゴン)を結ぶ泰緬鉄道を開通させるために、クワイ河に橋梁を建設せよとの指令が入り、捕虜は、その鉄道と橋の建設工事の労働力となっていた。 期日までの完成を目指し、斎藤は捕虜全員の労働を命ずるのだが、ニコルソン大佐は、それがジュネーブ条約に反することを主張する。 収容所の視察を始めたニコルソンは、病院でシアーズと対面し、斉藤には、労働条件のことでは話をつけたと伝え、話のわかる所長だとまで言い切る。 その夜、捕虜の将校会議が開かれ、脱走を計画しているシアーズに対し、降伏命令を受けた以上、軍律違反も同然だとニコルソンは指摘する。 ニコルソンは、翌日からの作業で指揮を執るのはイギリス軍士官であることを伝え会議を終わろうとする。 シアーズは、あくまで軍人としての尊厳にこだわろうとするニコルソンを前に、自分は”奴隷”に過ぎないと言い放つ。 海軍中佐だという、シアーズの言動を理解できないニコルソンは、彼を変人扱いする。 翌日、捕虜を整列させた斉藤は、日本人技師である将校を紹介し、イギリス兵将校を含めた作業を始めさせようとする。 ニコルソンは当然それに抗議し、ジュネーブ条約を書面で再び確認しようとするが、それを渡された斉藤は、彼を平手打ちする。 兵士達は一瞬ざわめくが、ニコルソンは、彼らだけを作業に向かわせる。 斉藤は、ニコルソンら残った将校に銃を向けて労働を強要し、部下に銃撃の命令を出そうとする。 しかし、軍医クリプトン少佐(ジェームズ・ドナルド)がそれを制止し、非武装の者を殺害しようとする斉藤に対し、それは武士道に反する行為だと非難する。 斉藤は、無言でその場を離れ、ニコルソンをはじめ将校達は、炎天下の屋外に放置される。 倒れる者もいる中、夕方まで立たされた将校らは営倉に入れられ、ニコルソンは斉藤に呼ばれる。 兵士達の怒号の中、ニコルソンは痛めつけられて狭い営倉に監禁されてしまうが、兵士達は彼を称える歌を唄う。 その夜、シアーズは仲間二人と脱走し、彼だけ逃げ延びることに成功する。 その後、日本軍の将校指揮下の橋梁工事が進まず、捕虜達のサボタージュもあり、工事の遅れが懸念された。 3日間営倉に入れられているニコルソンを案じたクリプトンは斉藤に面会する。 斉藤はニコルソンの態度を非難し、クリプトンに彼を説得させようとする。 クリプトンは、将校に働かせるのも体のためだと言って、ニコルソンに妥協案を示すが、彼は信条の問題だと譲ろうとしない。 それを斉藤に伝えたクリプトンは、二人の指揮官の意地の張り合いを異常に思う。 期日が迫る中、一行に進まない工事に業を煮した斉藤は、自ら指揮を執ることを捕虜に伝え、彼らの機嫌取りのため赤十字からの支給品を渡す。 さらに斉藤は、その夜、密かにニコルソンを呼び、料理や酒を振舞い、工事が完了しない場合は”切腹”を覚悟する、自分の立場を説明して彼を妥協させようとする。 しかし、ニコルソンは自らの主張を変えようとせず、自分の部下の士官の優秀さを強調し、兵士に尊敬されているからこそ指揮が出来ることを訴える。 その頃、シアーズは密林をさ迷った後、現地の人々に介抱され、用意されたボートで川を下る。 3月10日、”陸軍記念日”。 ニコルソンと同時に解放された将校達は、兵士達に歓喜で迎えられるが、斉藤は屈辱を味わい一人、悔し涙を流す。 部隊に戻ったニコルソンは、軍人の誇りや人間の尊厳を取り戻すために、この工事が絶好のチャンスだと将校達に伝える。 捕虜であっても、労働に喜びを見出し、軍人のあるべき姿を示すべく、ニコルソンは決意を新たにする。 ニコルソンは、日本軍から工事を引き継ぎ、期日までに橋を完成させようと、まず地盤の固い位置に橋梁工事を移すことを提案し、出来うる限りの方法を考える。 斎藤は、誇り高き日本軍人として屈辱を受けながらも、任務遂行のために、仕方なくニコルソンに主導権を渡す。 会議に参加したクリプトンは、日本軍に協力しているとも捉えられるニコルソンの行動に疑問も抱く。 セイロン(スリランカ)、コロンボ。 コマンド部隊を指揮するウォーデンは、シアーズから泰緬鉄道に関わる情報などを入手しようと、彼を司令部に呼び出す。 爆破の専門家ウォーデンは、日本軍が建設中のクワイ河の橋を爆破する作戦計画を進めていた。 問題は、現地に詳しい者がいないことで、ウォーデンは、シアーズを作戦に志願させようとする。 道案内として適任者のシアーズだったが、命がけで脱出した場所に戻ることなど、承知できるはずがなかった。 しかし、実は階級などを偽っていたシアーズに、断れない条件を突きつけたウォーデンは、彼が作戦に志願することを承諾させて、司令官のグリーン大佐(アンドレ・モレル)を安心させる。 橋梁工事は順調に進み、兵士の士気は上がり、規律と健康を取り戻していた。 しかし、クリプトンはニコルソンに、これは敵を利するもので、反逆行為にならないかと疑問を投げかける。 それに対しニコルソンは、軍人の誇りなどを説き、クリプトンの意見を一蹴する。 セイロンでの訓練が進む中、作戦メンバーにカナダ人の若い少尉ジョイス(ジェフリー・ホーン)を参加させるかが検討される。 グリーン大佐は、ジョイスが戦場でためらわずに敵を殺すことが出来るかなどを確認し、彼を作戦に参加させることを決める。 パラシュート降下の危険も確立の問題で、一か八かの打っ付け本番となり、シアーズはグリーン大佐から、捕虜になった場合の自殺用のピルの説明も受ける。 そして、作戦は決行され、パラシュート降下したウォーデンの爆破部隊は、降下に失敗した部下一名を失う。 ウォーデンは、シアーズとジョイスと共に、現地のガイドと荷物運びの女達と共に密林奥深くへと進む。 本部からの暗号連絡で、橋の完成と軍要人を乗せた列車が通る日時を知ったウォーデンらは先を急ぐ。 現地の工事は急ピッチで進んでいたが、完成が期日に間に合いそうにないことを知ったニコルソンは、病院の軽傷者なども作業に参加させる。 その後、敵兵と遭遇したウォーデンらは攻撃を加え、逃れた兵士を密林に追う。 ジョイスが敵兵を刺し殺すのをためらったため、ウォーデンが相手を殺すものの、足を負傷してしまう。 険しい山道を進むにつれ、傷を負ったウォーデンは遅れ始め、彼は自分を置いて目的地に向かうよう命令する。 しかしシアーズは、ニコルソンと同じく、軍律や任務に縛られ行動するウォーデンに、人間らしく生きることの大切さを力説し、彼を担架に乗せて目的地に向かう。 そして一行は、ついに、完成した橋を望む山の頂に到着して現場に接近し夜を待つ。 橋では、ニコルソンが誇らしげに、イギリス軍が建造したという記念のプレートを取り付ける。 ウォーデンは橋を観察し、爆薬を仕掛ける方法や爆破の段取りを決め、爆破作業をジョイスに命じ、シアーズにはその援護を任せる。 収容所では、橋の完成を祝いイギリス軍による催しが開かれ、ニコルソンは兵士達の労を労う。 その間に、筏に装備を載せたシアーズとジョイスが橋に爆薬を仕掛ける。 爆薬を仕掛けたジョイスは、川岸で起爆装置と共に待機し、ウォーデンは高台で迫撃砲を構え、シアーズも対岸で援護体制を整えて時を待つ。 そして夜が明けるが、ウォーデンらは川の水位が下がり、爆薬やケーブルが見えてしまっていることに気づく。 その後、橋は開通し、移動する捕虜達が先頭に立って行進して橋を渡る。 残ったニコルソンは橋に向かい、クリプトンは丘から列車の開通を見物しようとする。 斉藤は、結果的に功績をニコルソンに譲ったことを苦にし、彼を殺害することも考える。 しかし、胸騒ぎのするニコルソンは、斎藤を連れ川に下りて点検を始める。 ケーブルを見つけたニコルソンは、ジョイスが待機する場所に近づく。 列車は汽笛と共に橋に接近し、ニコルソンはケーブルをたどり起爆装置に達する。 ニコルソンはケーブルを切断しようとするが、飛び出したジョイスが斉藤を刺殺する。 ジョイスは、自分達が橋を爆破する目的の部隊だということをニコルソンに告げるが、彼はそれを日本軍に知らせる。 それを見たウォーデンとシアーズは、ニコルソンを殺すようにとジョイスに叫ぶ。 列車の汽笛が聞こえ、ジョイスは橋を爆破しようとするが、それをニコルソンが制止しようとする。 シアーズは、ニコルソンを殺せと叫びながら川を渡るが、ジョイスは敵の銃弾を受けて死亡する。 川を渡ったシアーズも銃撃され、ニコルソンと顔を合わせ、お互いを確認しながら力尽きる。 ウォーデンの発射した迫撃砲が川岸を攻撃し、ニコルソンは、自分が何をせねばならないかを呆然と考えながら、その爆撃で意識がもうろうとなる。 そして、橋を通過しようとする列車の汽笛を聞きながら、ニコルソンは、起爆装置の上に倒れこみ息絶える。 その瞬間、列車が通過すると同時に、橋は爆音と共に崩れ落ちてしまう。 ウォーデンは一人生き残り、作戦の正当性を訴え、女達と共にその場を引き上げる。 イギリス軍兵士が誇りをかけて完成させた橋を、それを指揮したニコルソンの手で爆破する、その一部始終を見ていたクリプトンは叫ぶ。 ”ばかげている! ばかげている!” そして、”橋はイギリス軍兵士により建造された”というプレートが川を流れ、何も知らない兵士達の行進の軍靴の音が虚しく響く。
...全てを見る(結末あり)
斉藤はニコルソンを呼び出し、彼の意見を受け入れることを伝えて解放する。
海上を漂流後、救助されて、イギリス軍の病院に入院して療養していたシアーズは、ウォーデン少佐(ジャック・ホーキンス)の訪問を受ける。
*(簡略ストー リー)
泰緬鉄道の開通のめ、クワイ河に橋梁を建設する命令を受けた日本軍捕虜収容所の斉藤大佐は、収容されたイギリス軍捕虜の指揮官ニコルソン大佐を含めた、将校らにも労働を命ずる。
しかし、ジュネーブ条約に反する行為だと言ってニコルソンはそれを断固拒否し、斉藤と激しく対立する。
日本兵の指揮下で一行に進まない工事に焦りを見せた斉藤は、仕方なくニコルソンの要求を呑み苦汁を嘗める。
その頃、収容所を脱走したアメリカ海軍士官のシアーズは、奇跡的に助かりイギリス軍に保護される。
シアーズは収容所の待遇のために士官と偽っていたことが知られ、橋梁爆破のコマンド部隊に志願させられてしまう。
部隊指揮官のウォーデンらと、現地に向かったシアーズは、完成した見事な橋に爆薬を仕掛けその時を待つ。
しかし、ニコルソンは破壊工作に気づき、それを阻止しようとするの・・・。
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ほとんどのシーンは、スリランカのオールロケで撮影され、実際に建造された木造の橋他のセットは見事な出来栄えであり、撮り直しのきかない汽車が通り爆破されるタイミングも抜群で、CGなどを一切使わない本物のスペクタクル映像を見せてくれる。
第30回アカデミー賞では9部門にノミネートされ、作品賞以下7部門で受賞した。
・受賞
作品・監督
主演男優(アレック・ギネス)
脚色・編集・撮影・作曲賞
・ノミネート
助演男優賞(早川雪洲)
1997年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。
下記の荒船清十郎氏の言葉ではないが、 誇り高き武士道と騎士道のぶつかり合いを軸にしているストーリーの中で、要領ば かりいい現実主義者のアメリカ人兵ウィリアム・ホールデンの、結局は命を捨ててまで、人間らしさを示す個性がひと際印象に残る。
悪く言えば無責任でいい加減な男のシアーズが、徐々にストーリーの中心人物となり、最後の爆破作戦に命を懸ける勇敢さに心打たれる。
デヴィッド・リーン作品の常連で、オープニング・クレジットでは3番目の登場ながら、アカデミー主演賞を見事に受賞したアレック・ギネスの、信念を貫く統率力ある指揮官の熱演も光る。
強かなシアーズを手玉に取る、爆薬のプロ、ジャック・ホーキンスの説得力のある演技も見逃せない。
アカデミー助演賞候補になった、この時、既に70歳を過ぎていた早川雪洲も、序盤の中心人物として、誇り高い収容所長を演じている。
ラストで、戦争の虚しさを目の当たりにして絶叫する、ジェームズ・ドナルドの視点から見ても実に興味深い作品だ。
こちらもアカデミー作曲賞を受賞した、ダイナミックなマルコム・アーノルドのテーマ曲も素晴しく、ケネス・ジョゼフ・アルフォードの曲である”ボギー大佐”をM・アーノルドが編曲した、あまりにも有名な「クワイ河マーチ」も効果的に使われている。
ロッキード事件の証人喚問を取り仕切った、政治家の故荒船清十郎氏が、早川雪洲と親交があったことで、1970年代に民放が本作を放映した際、冒頭に荒船氏のナレーションを入れたことを思い出す。
確か、
「武士道と騎士道とは、究極において合致する。
日本と英国の将校が南方のジャングルで激突した・・・
だが最後には、ほのかな友情すら花開くのである。」
だと記憶しているのだが・・・。