両親から離れて暮らす少年の苦悩と成長を描く、 監督ジョセフ・ロージー、主演パット・オブライエン、ロバート・ライアン、バーバラ・ヘイル、ディーン・ストックウェル他共演のドラマ。 |
・ドラマ
■ スタッフ キャスト ■
監督:ジョセフ・ロージー
製作:ドア・シャリー
原作:ベッツィ・ビートン
脚本
ベン・バーズマン
アルフレッド・ルイス・レヴィット
撮影:ジョージ・バーンズ
編集:フランク・ドイル
音楽:リー・ハーライン
出演
フライ:パット・オブライエン
エヴァンス博士:ロバート・ライアン
ブランド:バーバラ・ヘイル
ピーター・フライ:ディーン・ストックウェル
国王:ウォルター・キャトレット
クヌードソン医師:サミュエル・S・ハインズ
ジョーイ:ドウェイン・ヒックマン
アメリカ 映画
配給 RKO
1948年製作 82分
公開
北米:1948年12月27日
日本:1950年3月7日
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
ある坊主頭の家出少年(ディーン・ストックウェル)が、警察に保護される。
少年は一言も口をきかず、その場に現れた心理学者のエヴァンス博士(ロバート・ライアン)は、彼に優しく語り掛ける。
夕食を食べ損ねたと言うエヴァンスは、空腹だと思われる少年にもハンバーガーなどを与える。
専門医だと伝えたエヴァンスは少年に髪の毛のことを聞き、床屋が切ったと答える彼から長い話になる言われる。
その話に興味を示すエヴァンスは、ある手紙のせいだと言う少年が祖父のことも語り始めたため、分かり易く話すよう伝える。
そして少年は、幼き日々を裕福な家庭で育った話から語り始める。
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楽しいクリスマスを過ごし、翌年の夏には電報が届く。 留守だった両親が戦争で亡くなったという報せだった。 それを知らされないまま、おばの家に続きいとこの家に預けられ、その後も親戚の家を転々とした少年ピーターは、血のつながりはなかったが、祖父と呼んだフライ(パット・オブライエン)の家に住むことになった。 有名な俳優だったというフライの楽屋には、国王(ウォルター・キャトレット)が訪ねて来たと言うことだった。 フライに手紙を渡し彼の家で暮らすことになるピーターは、両親に自分のことを知らせるかを問う。 両親の死を知らされていないピーターの気持ちを考えるフライは、彼に孤独や恐怖に耐えることを教える。 翌朝フライは、町の人々に孫が学校に行き始めると言いながらピーターを皆に紹介する。 学校に着いたピーターは、担任のブランド(バーバラ・ヘイル)に迎えられ、直ぐに友達もできる。 フライに自転車を買ってもらい、バイトも始めたピーターは留守番にも慣れて夜の暗闇も怖くなくなった。 その後、フライと共に戦災孤児のための活動も始めたピーターは、自分の両親が戦争で死んだとブランドが言っていたとクラスメイトから知らされる。 両親は旅行中だと言ってクラスメイトと喧嘩になったピーターは、それをフライとブランドに制止される。 ピーターは両親の件をブランドンに尋ね、フライは、もっと早く話すべきだったと伝える。 初めて会った日に言うつもりだったフライだったが、親しくなってから話すことを考えていたと伝える。 フライは両親がロンドンで亡くなったことを伝え、子供達を救うために犠牲になったことを誇りに思うべきだと言ってピーターを励ます。 両親が亡くなったことは以前から知っていて、知らない振りをしていたとピーターから聞いたフライは安心するが、明らかに動揺していることに気づく。 バイト先に向かったピーターは、戦争で世界が滅ぶと話す客の言葉を気にしながら、自分が大人になった頃に開戦になると言われて牛乳瓶を落してしまう。 夕食の際に、戦争で世界が滅ぶかをフライに質問したピーターは、暗い世の中であるため部屋に植物を置いていると言われる。 妻の話もしたフライから、世界は滅びず今の情況が続くと言われたピーターは、植物を食卓の上に置く。 翌日、驚くことが起きるとフライに言われたピーターは、不吉に思う。 そして、翌朝の入浴中に事件が起きる。 髪の毛が緑色になってしまったピーターは、同じ色の石鹸で洗ったのが原因だと思い、もう一度、違う石鹸で洗う。 恐る恐る鏡を見たピーターは、髪の毛が緑のままなのでフライにそれを伝える。 冗談だと思い驚きもしないフライから、緑の髪の人間は世界に一人もいないと言われたピーターは、得意げに鏡の前でポーズをとる。 近所の少女には不思議に思われてもきれいだと言われるが、ピーターの髪の毛を見た牛乳屋は階段から落ちる。 驚いたフライは染めていないことを確認して、ピーターの体調に異変がないかを確かめる。 考えこむピーターに、もっと良いことが起きると言ってフライは彼を励ます。 フライと家を出たピーターは、少女達に髪の毛を見せてきれいだと言われるものの、町の人々の視線を気にする。 クヌードソン医師(サミュエル・S・ハインズ)の診療所を訪ねたフライとピーターは、髪の毛が緑になったのは原因不明で元に戻す方法はないと言われる。 前代未聞であり、医学史上に残る記念すべきことだとクヌードソン言われたピーターだったが、元の髪の毛に戻りたいと伝える。 染めるのも切るのも嫌だと言うピーターは、どこも異常はないとクヌードソンに診断され、様子を見ることにしてフライと共に帰宅する。 その後、人目を気にしながらピーターを学校に送るフライは、髪の毛の噂をする者達を軽蔑する。 校庭に入った瞬間にからかわれるピーターは、仲のいい少女には伝染病がうつると言われてしまう。 ピーターを迎えたブランドは、生徒達の髪の毛を色別にチェックし、質問はあるかを問い授業を始める。 学校を終えて帰宅したピーターは、フライに預けられていた父親からの手紙を見つける。 16歳の誕生日に読むようにと書かれた手紙を破ったピーターは、他所の子供を助けて自分を見捨てた両親を恨む。 家出をして山に向かったピーターは悲しくなるが、その場にいた戦災孤児らに出会う。 この世で一人だけの緑色の髪の毛は、幸運の印だと言われて羨ましがられたピーターだったが、元の髪がいいと答える。 戦争は子供を不幸にすると教えてくれる緑色の髪の毛で、人々に戦争が無意味だと訴えることができることを知らされたピーターは、それを皆に伝えるために町に戻る。 牛乳屋やクヌードソン医師、町の人々やブランドにそれを話したピーターは、悪い噂がなくならないことを知らされる。 髪の毛を切れば元に戻る可能性があると話すクヌードソンの意見を伝えるフライだったが、ピーターは、緑色のままでいることに意味があると言ってそれを拒む。 ピーターの意見を尊重するフライは納得する。 孤児達に会いたくなり森に向かったピーターだったが、待ち構えていたクラスメイトのジョーイ(ドウェイン・ヒックマン)らに髪の毛を切られそうになる。 逃げるピーターは自宅に戻り、フライに髪の毛を切られそうになったことを伝える。 ピーターが傷つくことや町の騒ぎを考えると事態をこのままにしておけないフライは、髪の毛を切ることをピーターに同意させる。 床屋に連れて行かれたピーターは、フライや町の人々に見守られながら、バリカンで髪の毛を切られる。 その後、塞ぎ込むピーターは口もきかず食事もせず、フライは自分のした行為を後悔する。 その夜、フライに別れも言わずにピーターは家を出る。 そして警察に保護されたことをエヴァンスに語るピーターは、この話を信じるかを問う。 それを否定するエヴァンスは、ピーター自身が信じていないと語り、本当に信じているなら何を言われても逃げ出さないはずだと指摘する。 どこか遠くへ行くと言うピーターに許可を与えないエヴァンスは、フライとブランド、そしてクヌードソン医師が迎えに来ていることを彼に知らせる。 何も言わず立ち去ろうとするピーターに、フライは父親からの手紙があると伝える。 フライは、16歳の誕生日に渡すことになっていた手紙を読み始める。 亡くなった妻の遺志を伝える父が語る内容は、”親戚に預けたのは仕事のためで、世界中の子供達と共にピーターを愛し、死は悲しいが自分達は使命を果たし、価値あることに命を捧げたので後悔していない、それを忘れないでほしい。 それを信じるかをピーターに問われたフライは、勿論だと答える。 フライが落した手紙を拾い大切にすると言うピーターは、その場を去ろうとする。 エヴァンスに呼び止められたピーターは会えとよかったと言われ、髪の毛が生えてもまた緑だと思うと答える。 ピーターはフライやブランドと共にその場を去り、利発的な子供であり珍しい事例だとクヌードソンは語り、質問があるかをエヴァンスに問う。 何もないと答えるエヴァンスは、髪の毛の色は問題ではなくピーターの心を信じたと語り、それに同意したクヌードソンもその場を去る。 帰宅したピーターとフライは、今後訪れる幸せを確信する。
...全てを見る(結末あり)
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戦争の体験を語り継ぎ、もし忘れたら思い出すように・・・。”だった。
*(簡略ストー リー)
警察に保護された坊主頭の少年ピーターは、心理学者のエヴァンスに体験したことを話し始める。
留守だった両親と離れ親戚に預けられていたピーターは、父親からの手紙だけを手にして老人である俳優のフライと暮らし始める。
陽気なフライとの生活にも慣れたピーターは、学校に通い始めバイトなどもする。
そんなある日、ピーターの髪の毛が緑色になってしまい、驚くフライと共に医師クヌードソンの診察を受ける。
何も異常がないと診断されたピーターだったが、町の人々からは奇異な目で見られ学校ではからかわれる。
ピーターは戸惑いながら、自分の髪の毛の変化の意味についてを考えるのだが・・・。
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その後”赤狩り”の影響でイギリスに亡命するジョセフ・ロージーの、実質的な長編デビュー作品。
もの悲しいテーマ曲”Nature Boy”、悲痛な表情の家出少年の登場から始まる暗い雰囲気の内容なのだが、少年と暮らす陽気な老人はユーモアを兼ね備え、ファンタジックな映像も加わるという不思議な雰囲気の展開が実に興味深い。
更に、少年の髪の毛が緑色になることに何の意味があるかが問われる後半は、反戦がテーマとなる重々しい内容となり深く考えさせられる。
少年は、離れて暮らす両親(既に亡くなっている)のことを想い、共に暮らす老人は、暗い社会情勢を忘れるために部屋に飾る緑色の植物に癒しを求める。
その環境下で暮らす少年に変化をもたらす髪の毛の色が、世界の変化にもつながるという、戦争の痛手が消えない終戦直後の人々の気持ちが察することができる作品でもある。
少年の心を癒そうとする共に暮らす老人を好演するパット・オブライエン、保護された少年に優しく接し、また厳しいものの捉え方もしながら話を聞く心理学者ロバート・ライアン、学校の担任教師バーバラ・ヘイル、主人公の少年を熱演する名子役ディーン・ストックウェル、国王のウォルター・キャトレット、町医者サミュエル・S・ハインズ、少年のクラスメイト、ドウェイン・ヒックマンなどが共演している。