1905年に発表された、ハインリヒ・マンの小説”Professor Unrat”を基に製作された、ヴァイマル共和国時代のドイツ映画。 厳格な初老の教師がキャバレーの踊り子に魅了され凋落の人生を歩む姿を描く、監督ジョセフ・フォン・スタンバーグ、主演エミール・ヤニングス、マレーネ・ディートリッヒによるドラマ。 |
・ドラマ
・マレーネ・ディートリッヒ / Marlene Dietrich / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:ジョセフ・フォン・スタンバーグ
製作:エリッヒ・ポマー
原作:ハインリヒ・マン”Professor Unrat”
脚本:ロベルト・リーブマン
撮影:ギュンター・リッタウ
音楽:フリードリヒ・ホレンダー
出演
イマヌエル・ラート教授:エミール・ヤニングス
ローラ-ローラ:マレーネ・ディートリッヒ
キーパート:クルト・ゲロン
ガステ:ローザ・ヴァレッティ
マゼッパ:ハンス・アルベルス
ヴァイマル共和国 映画
配給
UFA
パラマウント・ピクチャーズ
1930年製作 103分
公開
ドイツ:1930年4月1日
北米:1931年1月3日
日本:1931年5月13日
北米興行収入 $77,980
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
ヴァイマル共和国。
ギムナジウム(中等教育学校)の、厳格な初老の英語教師イマヌエル・ラート教授(エミール・ヤニングス)は、ある生徒が、女性のみだらな写真付きのハガキを持っていることに気づき、それを問い詰める。
生徒は、クラスメイトのグループが、”嘆きの天使”というキャバレーに通っている仲間に入らないために、ハガキをポケットに入れられ、嫌がらせを受けたことをラートに伝える。
それを知ったラートは驚き、生徒を預かる身として責任を感じ、その現場を確かめようとする。
その夜、ラートはキャバレーを訪れ、彼に気づいた生徒達は逃げ去る。
生徒達を追ったラートは、人気の踊り子兼歌手のローラ-ローラ(マレーネ・ディートリッヒ)の楽屋で、ステージから戻った彼女に用件を訪ねられる。 ラートは、生徒を誘惑していると言ってローラに小言を言い始めるが、彼女はそれを気にもせず、現われた座長兼手品師のキーパート(クルト・ゲロン)は、ローラをステージへと追い遣る。 キーパートは、ラートがローラに目をつけたと思い込み冷やかすが、彼は生徒を見つけて、慌てながらその場を去って行く。 翌朝、少々動揺しながら学校に向ったラートは、生徒達には昨夜のことを追求しなかった。 その夜もキャバレーに向ったラートは、キーパートに歓迎されてローラに会い、昨晩、間違えて持ち帰ってしまった衣装を返す。 昨夜とは打って変わり、ローラの前でしおらしくなってしまったラートは、既に彼女の虜になっていた。 ローラを目当ての常連客が、彼女の楽屋にまで押しかける様子を見ていたラートは、彼らをその場から追い払ってしまう。 ラートのその行為に、それまで彼をからかっていたローラは、態度を変えて彼に親切に振舞う。 客はラートの暴行を訴え、巡回していた警官がその場に現われたため、ローラとキーパートは、ラートを地下室に向わせる。 しかし、その場に生徒達が隠れていたため、ラートは楽屋に戻ってきてしまう。 やましいことはしていないラートは、毅然とした態度で警官に対応し、騒ぎ立てる客だけを警官は署に連行する。 生徒達に説教を始めたラートだったが、口答えをする彼らをその場からたたき出してしまう。 キーパートの妻ガステ(ローザ・ヴァレッティ)に、その態度を称えられたラートだったが、興奮して倒れそうになるところをローラ達に介抱される。 ローラはラートを励ましてステージに向かい、キーパートから、薬だといって飲み物を与えられたラートは、ローラの歌を聴くために特別席に案内される。 キーパートは客達にラートを紹介し、彼は気分よくローラの歌を聴くことになる。 翌朝、規則正しい毎日を送っていたラートは、深酒して寝過ごしてしまう。 目覚めた場所が、キャバレーの二階にあるローラの部屋だと気づいたラートは、彼女と共に心地よい朝を過ごしていたが、授業の始まる時間だと知り慌てて学校に向かい。 遅れて教室に入ったラートは、黒板に落書きをされて生徒達に冷やかされ騒動になり、それに気づいた校長は、女のために一生を棒に振るのかと彼に警告する。 ラートは、ローラは将来の妻だと言って、彼女を侮辱することを非難するが、校長は解雇を伝えてその場を立ち去る。 その後ラートは、巡業に出るローラの元に花束を持って向かい、改まって指輪を渡して求婚する。 ローラは笑い出すが、ラートは真剣な気持を彼女に伝え、それが受け入れられる。 結婚式を済ませたラートとローラは、キーパートらに祝福され、堅物のラートは、幸せを実感しながらおどけて見せたりもする。 ローラが、未だに写真付きのハガキを売ろうとしていることを知ったラートは、自分の蓄えがあるうちは、彼女にそれを禁ずる。 その後、キャバレーの雑用係として、惨めな生活を始めた誇り高いラートは、我慢の限界に達して出て行こうとする。 しかし、それを思い留まったラートは、結局はローラを支える身でいるしかなかった。 結婚から5年。 ”嘆きの天使”に戻ったローラは、入れ替わりでその場を去る一座の座長マゼッパ(ハンス・アルベルス)に声をかけられる。 その夜、出番が迫るラートは、マゼッパに言い寄られるローラを見て嫉妬しながら、無理矢理にステージに立たされる。 キーパートは、教育者だったラートを、奇術の助手として大袈裟に紹介する。 奇術を始めたキーパートだったが、客に笑われて侮辱を受けたラートは発狂してしまい、ステージを降りてローラに襲い掛かる。 ローラはそれを逃れ、ラートは拘束服を着せられるが、キーパートは、やり過ぎたと言ってそれを脱がし、全てが女のせいだ語り彼に同情して慰める。 そして、ステージのローラの歌を聴きながら、その場を抜け出したラートは、学校に向かい教室の教壇で息絶える。
...全てを見る(結末あり)
ついに道化にまでなり、ステージに立つようになったラートは、”嘆きの天使”に戻ることを拒むものの、それは許されなかった。
*(簡略ストー リー)
ヴァイマル共和国。
ギムナジウム(中等教育学校)の初老の英語教師イマヌエル・ラート教授は、生徒が持っていた、女性のみだらな写真付きのハガキを見つけて追求する。
生徒達が、キャバレー”嘆きの天使”に通っていることを知ったラートは、それを知り驚いてしまう。
責任を感じたラートは、早速そのキャバレーの様子を確かめに行くのだが、彼は、ステージの花形歌手で踊り子のローラ-ローラに心奪われてしまう。
当初はラートをからかっていたローラだったが、彼の真摯な態度と、自分を守ろうとする姿を見て考えを変える。
座長のキーパートにも歓迎され、キャバレーに出入りし始めたラートは、それを生徒にからかわれ、学校でも問題になってしまう。
ローラを侮辱する校長に、彼女との結婚まで宣言したラートは、ついに教職を失ってしまう。
そして、ラートはローラに求婚し、巡業に出る彼女との生活を始めるのだが・・・。
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作品自体は、第1回アカデミー賞で主演賞を受賞したばかりのエミール・ヤニングスの主演作品なのだが、ジョセフ・フォン・スタンバーグとマレーネ・ディートリッヒが初めて組んだ作品として知られ、その後の二人と、特にディートリッヒの活躍で、彼女の主演作のように言われるようになった。
撮影当時、実はまだ40代半ばのエミール・ヤニングスは、体系からした貫禄と、その厳しさを表現する厳めしい表情などが印象的で、画面を圧倒する存在として見事な演技を見せてくれる。
厳格な主人公を印象付ける描写や、芸人一座のユーモラスな雰囲気の対比など、ジョセフ・フォン・スタンバーグの細やかな演出も見事である。
さらには、後に伝説とまでなる、マレーネ・ディートリッヒの”退廃的な美”の描写なども素晴らしい。
やや膨よかディートリッヒが、美脚を含めて惜しげもなく膚を露にする姿は今見ても魅力的だが、公開当時を考えると、衝撃的だっただろう。
的外れな邦題が気になる昨今、キャバレー名ではあるが、”The Blue Angel”を、主人公の心情、またヒロイン自身とダブらせた、”嘆きの天使”という素晴らしい邦題には敬服する。
芸人一座の座長兼手品師クルト・ゲロン、その妻ローザ・ヴァレッティ、ヒロインに言い寄るハンス・アルベルスなどが共演している。