ドナルド・ハミルトンの短編連載記事”Ambush at Blanco Canyon”を基に1958年に発表された小説”The Big Country”を基にした、巨匠ウィリアム・ワイラーと主演のグレゴリー・ペックの製作による、ジーン・シモンズ、チャールトン・ヘストン、キャロル・ベイカー、バール・アイヴス、チャールズ・ビックフォード、チャック・コナーズ他共演の西部劇超大作。 |
・西部劇
・グレゴリー・ペック / Gregory Peck / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:ウィリアム・ワイラー
製作
ウィリアム・ワイラー
グレゴリー・ペック
原作:ドナルド・ハミルトン“Ambush at Blanco Canyon”
脚本
ジェームズ・R・ウェッブ
サイ・バートレット
ロバート・ワイルダー
撮影:フランツ・F・プラナー
編集
ロバート・ベルチャー
ジョン・ハウアー
音楽:ジェローム・モロス
出演
グレゴリー・ペック:ジェームズ・マッケイ
ジーン・シモンズ:ジュリー・マラゴン
チャールトン・ヘストン:スティーヴ・リーチ
キャロル・ベイカー:パトリシア”パット”テリル
バール・アイヴス:ルーファス・ヘネシー
チャールズ・ビックフォード:ヘンリー・テリル少佐
チャック・コナーズ:バック・ヘネシー
アルフォンソ・ベドヤ:ラモン・グィテレス
アメリカ 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ
1958年製作 166分
公開
北米:1958年10月1日
日本:1958年12月
■ アカデミー賞 ■
第31回アカデミー賞
・受賞
助演男優賞(バール・アイヴス)
・ノミネート
音楽賞(ドラマ・コメディ)
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
果てしなく広がる西部の原野を駆ける駅馬車に乗り、東部の船会社の御曹司ジェームズ・マッケイ(グレゴリー・ペック)が、地元の有力者で牧場主のヘンリー・テリル少佐(チャールズ・ビックフォード)の娘パトリシア”パット”(キャロル・ベイカー)と結婚するため、その地を訪れる。
テリルの牧場の牧童頭スティーヴ・リーチ(チャールトン・ヘストン)は、マッケイを迎えに来る。
しかし、パットに思いを寄せるリーチは、育ちの良い優男のマッケイを、軽蔑の眼差しで見ていた。
パットに再会したマッケイは、彼女の親友で教師ジュリー・マラゴン(ジーン・シモンズ )を紹介され、その後、二人はテリルの農場に向かう。
その途中、二人は、テリルと敵対するルーファス・ヘネシー(バール・アイヴス)の息子、バック(チャック・コナーズ)らの嫌がらせに遭う。 マッケイは、バックらの仕打ちに耐え、勝気なパットとは違い冷静に対処する。 町に戻ったバックは、惹かれているジュリーの家に向かい、父ヘネシーが、彼女の所有する水源地”ビッグ・マディ”を手に入れようとしている話を始めて言い寄る。 テリルもその土地を狙っているため、バックはジュリーに釘を刺して、その場を立ち去る。 牧場に着いたマッケイは、東部とは全く違う西部の大地に思いを馳せる。 敷地内を見回ったマッケイは、素っ気無い使用人の中で、メキシコ人のラモン・グィテレス(アルフォンソ・ベドヤ)に親しみを感じる。 マッケイに敵意を見せるリーチは、乗馬が得意でない彼に、わざと荒馬をあてがおうとする。 その場はそれを遠慮したマッケイは、その後テリルから、バックのしたことで、ヘネシーに遠慮はいらないと言われる。 好戦的なテリルとは対照的に、マッケイは、自分に敵意を見せる者達と争おうとはしなかった。 その考えを良しとしないテリルは、マッケイとパットへの嫌がらせの報復として、ヘネシー家を襲撃しようとする。 それを、個人的な仕返しだと非難するマッケイの態度を見たパットは、彼の考えを理解できない。 ヘネシーの牧場に着いたテリルとリーチらは、主人が留守だと知り、その場を荒らして引き上げる。 テリルの行動に納得のいかないマッケイは、ラモンに荒馬を準備させ、何度も落馬しても諦めず、ついにそれを乗りこなしてしまう。 その後、テリルらが町に現れたことを知ったバックは身を隠し、マッケイを襲ったヘネシーの使用人達は、リンチにかけられ制裁を加えられる。 その夜、テリルの屋敷では、ジュリーなども招待され、ジムの歓迎パーティーが催される。 パットは、西部に肌が合いそうもないマッケイが、東部に戻るのではないかと心配するが、テリルは、彼を西部の男にしてみせることを約束して娘を安心させる。 そこにヘネシーが現れ、自分の牧場を荒らして襲ったテリルを非難し、逆に脅しをかけて去っていく。 バックは、ジュリーとの仲が順調だと偽り、ヘネシーを満足させる。 同じ頃、テリルの行動に賛同できないマッケイは、ラモンの制止も聞かずに、争いの元になっている”ビッグ・マディ”を視察するため旅立つ。 それを知ったテリルやリーチは、行き先も分からず、土地に詳しくないマッケイの捜索を始める。 しかし、マッケイはコンパスを頼りに、迷わず”ビッグ・マディ”にたどり着く。 その場に来ていたジュリーは、人影を見て銃を手に警戒するが、それがマッケイだと分かり驚いてしまう。 ジュリーと土地を見て回ったマッケイは、水場に向かい、土地をどちらかに売れば、血みどろの闘いが始まると考え、安易に結論は出せずにいることを、思慮深い彼女から聞かされる。 そこでマッケイは、和平を保つため、両家に水を使わせるという条件で、ジュリーから”ビッグ・マディ”を買い取ることで彼女と合意する。 その頃、テリルらはマッケイを見つけられず、パットは、屋敷で彼の身を案ずる。 そんな時マッケイは、野営していたリーチらの元に現れて牧場に戻る。 パットはマッケイの帰りを喜ぶが、迷いもせず、目的を達してきたという、彼の言葉を信じないリーチが喧嘩を売る。 マッケイは、その挑発に乗らずに冷静に対応するが、テリルやパットは、彼の態度を弱腰とみて失望する。 翌日、町に移ることをパットに伝えたマッケイは、リーチと素手で対決することになる。 大海原での危険な航海を、船長として切り抜けてきた経験を持つジムは、リーチとの互角の殴り合いで、真の男の勇気を証明してみせる。 マッケイの気持ちを理解しかけたリーチは、テリルの強引なやり方に疑問を持ち始める。 翌日、牧場に現れたジュリーに、臆病なマッケイを追い出したことを伝えたパットだったが、荒馬を乗りこなした、彼の勇気を知るラモンからその事実を知らされる。 ジュリーが、マッケイに好意を持っているのではないかとまで疑うパットだったが、自分への結婚のプレゼントとして、彼が”ビッグ・マディ”を買ってくれたことを知らされる。 マッケイはジュリーの家を訪ね、パットから距離を置いた理由が、根の深いものだということを彼女に伝える。 ジュリーの話を聞いたパットは、マッケイの元に向かうが、彼は結婚は出来ないことを伝える。 さらにマッケイが、”ビッグ・マディ”の水をヘネシーに分ける考えだと知ったパットは、激高して、その場を立ち去る。 その頃、ヘネシーはジュリーを呼び出し、”ビッグ・マディ”を手に入れるために、彼女と息子バックを、無理矢理に結婚させようとする。 その場のジュリーの態度で、バックとの仲が嘘だったと悟ったヘネシーは、彼女に”ビッグ・マディ”の売却証明書にサインさせようとする。 何もためらわずに書類にサインしたジュリーを見て、不審に思ったヘネシーは、彼女が土地をマッケイに売ったことを知らされる。 テリルとの対決を覚悟したヘネシーは、部下をブランコ谷で待機させる。 その後、部屋に閉じ込められたジュリーに、バックが襲い掛かるが、ヘネシーがそれを制止して、卑劣な息子を見限る。 テリルは、ジュリーを救い出す名目で、ヘネシーの農場を襲おうとする。 ヘネシーもそれを察知し、マッケイはジュリーを救うために彼の元に向かおうとするが、谷の手前で、テリルがそれを腕ずくで阻止しようとする。 マッケイは、それを無視してラモンと谷に向かい、テリルが果たそうとする個人的恨みに、リーチはこれ以上、利用されるのが嫌になる。 谷を抜け、ヘネシーの農場に着いたマッケイは、ジュリーを連れ戻しに来たことを伝える。 土地の受け渡し証書を確認したヘネシーに、マッケイは水を分け与えることを告げる。 しかし、ヘネシーは、”ビッグ・マディ”だけの問題でなく、テリルとの闘いは永久に続くことをマッケイに伝える。 ジュリーは、マッケイを助けるために、自らこの場に来たことを伝え、彼を追い払おうとする。 それでもマッケイは、ジュリーを連れ帰ろうとするが、ヘネシーは、二人が惹かれ合っていることに気づく。 バックもそれに気づき、彼とマッケイは決闘で決着をつけることになる。 ジュリーはマッケイの身を案ずるが、彼は決闘に挑もうとする。 準備をしたテリルは谷を抜けようとするが、犠牲者が出ることが分かりきっているリーチは、それを止めようとする。 テリルに臆病者呼ばわりされたリーチだったが、彼は命令に従わず、他の部下も谷に向かおうとしない。 しかし、独りで谷に向かったテリルを見捨てられず、リーチらは仕方なく主人の後を追う。 ヘネシーは、正々堂々と闘うことをマッケイとバックに誓わせ、二人に銃を渡す。 しかし、ヘネシーの合図を待たずに、バックはマッケイを銃撃し、弾丸が彼の額をかすめる。 次に、マッケイがバックに狙いを定め銃を構えるが、バックは怯えてうずくまってしまう。 マッケイは銃を空撃ちし、ヘネシーは情けない息子バックを軽蔑する。 そして、バックは手下の銃を奪おうとするが、父ヘネシーに撃ち殺されてしまう。 卑怯な手段を使ったとは言え、息子を亡くしたヘネシーは、怒りの矛先をテリルに向けて谷に向かう。 ヘネシーは、谷でテリルらに攻撃を加える部下を制止し、最後の決着をつけようとする。 テリルを呼び出したヘネシーだったが、二人は一対の一の対決で相撃ちに終わり、長年続いた争いに終止符が打たれる。 そしてマッケイとジュリーは、大西部での新生活に向けて希望を胸に家路を急ぐ。
...全てを見る(結末あり)
翌日、バックは家に戻り、父ヘネシーにマッケイらにした行為を戒められる。
マッケイは、ヘネシーの言い分もテリルの意見と同じで、ただの個人的な争いだと言い切る。
*(簡略ストー リー)
東部の船会社の御曹司ジェームズ・マッケイは、大牧場主テリルの娘パットと結婚するため、西部の地に到着する。
テリルの牧場の牧童頭リーチや、彼らと争いを続ける牧場主ヘネシーの息子バックらの、自分への敵意の視線を気にもせず、マッケイはパットとの再会を喜ぶ。
テリルとヘネシーの争いの元である、水場を所有する女教師ジュリーに会ったマッケイは、血で血を洗う争いを、解決させる手段を考えるのだが・・・。
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ウィリアム・ワイラーにとっては、「西部の男」(1940)以来18年ぶりの西部劇となるが、そのスケールの大きさと重厚で奥深い演出により一級の作品に仕上がってはいる。
第31回アカデミー賞では、助演男優賞(バール・アイヴス)を受賞した。
・ノミネート
音楽賞(ドラマ・コメディ)
アカデミー賞候補にもなった、ジェローム・モロスの主題曲で始まる力強いオープニングで早くも圧倒されてしまう。
西部に生きる人々の逞しさと頑なな生き様が、大いなる大地に新しい息吹を感じさせるラストも感動的だ。
ジョン・フォード作品のように、詩情豊かな物語の展開から、突然、登場する追跡シーンのスピード感と迫力などとは違う作風も楽しめる。
西部劇の中では、もちろん本作はA級ではあるが、自分を含め、フォード作品への思い入れがある者にとっては、いささか物足りなさも感じる作品でもある。
主演のグレゴリー・ペックは、製作も兼ねているので、多彩な出演者の中でも、群を抜き存在感がある。
正義感が強く実直な役柄は、彼のイメージにぴったりだ。
2年前の「十戒」(1956)、そして翌年公開される「ベン・ハー」(1959)を控え、主演が製作者のグレゴリー・ペックでなければ・・と言いたげな、チャールトン・ヘストンの、恨めしそうな目つきが、役柄とだぶり何とも気になるが、大物らしい貫禄ある演技が印象的だ。
本作のキーポイントとなる、水場の”ビッグ・マディ”の地主で、思慮深く理知的な女性を演じたジーン・シモンズの好演も光る。
対立する両家では、圧倒的な迫力でアカデミー助演賞を受賞した、バール・アイヴスも出色の名演を見せてくれる。
敵役ではあるが、その度胸と潔さは痛快でもある。
また、その息子を演じたチャック・コナーズも、嫌味な役ではあるが、長身を生かし存在感を示している。
牧場主チャールズ・ビックフォードとキャロル・ベイカーの頑固な親子も好演してはいるものの、インパクトと迫力で敵親子にかなわなかったというところだろうか。
グレゴリー・ペックに気に入られ、最後まで傍らで行動を共にする、アルフォンソ・ベドヤも、人間味、そして愛嬌のあるメキシコ人役でいい味を出している。