1945年に発表されたマッキンレー・カンターの小説”Glory for Me”を基に製作した作品。 第二次大戦の復員兵とその家族らの苦悩を描く、主演マーナ・ロイ、フレデリック・マーチ、ダナ・アンドリュース、テレサ・ライト、ヴァージニア・メイヨ、ハロルド・ラッセル共演による映画史上に残る不朽の名作。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ウィリアム・ワイラー
製作:サミュエル・ゴールドウィン
原作:マッキンレー・カンター“Glory for Me”
脚本:ロバート・E・シャーウッド
撮影:グレッグ・トーランド
編集:ダニエル・マンデル
音楽:ヒューゴ・フリードホーファー
出演
マーナ・ロイ:ミリー・スティーブンソン
フレデリック・マーチ:アル・スティーブンソン
ダナ・アンドリュース:フレッド・デリー
テレサ・ライト:ペギー・スティーブンソン
ヴァージニア・メイヨ:マリー・デリー
ハロルド・ラッセル:ホーマー・パリッシュ
キャッシー・オドネル:ウィルマ・キャメロン
レイ・コリンズ:ミルトン
グラディス・ジョージ:ホーテンス・デリー
ローマン・ボーネン:パット・デリー
ホギー・カーマイケル:ブッチ・エングル
マイケル・ホール:ロブ・スティーブンソン
アメリカ 映画
配給 RKO
1946年製作 172分
公開
北米:1946年11月21日
日本:1948年6月15日
製作費 $2,100,000
北米興行収入 $23,650,000
■ アカデミー賞 ■
第19回アカデミー賞
・受賞
作品・監督
主演男優(フレデリック・マーチ)
助演男優(ハロルド・ラッセル)
脚本・編集・作曲
名誉賞(ハロルド・ラッセル)
・ノミネート
録音賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
第二次大戦の復員兵達は故郷に戻る。
アメリカ陸軍・第25歩兵師団アル・スティーブンソン(フレデリック・マーチ)、陸軍航空軍・第8爆撃軍団フレッド・デリー(ダナ・アンドリュース)、水兵ホーマー・パリッシュ(ハロルド・ラッセル)は、アメリカ中西部の故郷に帰る輸送機に同乗する。
アルとフレッドは、故郷に帰れる安堵の表情を浮かべるが、ホーマーは、戦場の事故で両手を失っていたため、恋人の待つ故郷の様子が気がかりだった。
ホーマーは、家族に温かく迎えられるが、恋人ウィルマ・キャメロン(キャッシー・オドネル)と抱き合う、彼の心境は複雑だった。
家族に再会したホーマーを見送り、アルとフレッドも自宅に向かう。
帰宅したアルは、妻ミリー(マーナ・ロイ)の美しさ、娘ペギー(テレサ・ライト)や息子ロブ(マイケル・ホール)の成長ぶりを喜ぶ。 フレッドは、両親(ローマン・ボーネン/グラディス・ジョージ)の元に戻るが、妻マリー(ヴァージニア・メイヨ)が家を出て、ナイトクラブで働いていることを知る。 その後アルは、ミリーとペギーを連れて街に繰り出し、クラブを何軒もハシゴする。 その頃、ウィルマの家で、ホーマーの今後などを話し合っていた両家の家族は、体のことを意識し過ぎる態度で彼に接してしまう。 家族の過剰な反応に、ホーマーは、その場に居づらくなり席を外して外出する。 そしてホーマーは、叔父のブッチ・エングル(ホギー・カーマイケル)の店でフレッドと出くわす。 そこにアルの一家も現れ、再会を喜んだ三人は、アルの家族を含めて楽しい夜を過ごす。 ブッチは、塞ぎこむホーマーに気づき、受け入れる体制が出来ていない、家族の心情を理解するよう彼に伝えて励ます。 アルは酔いつぶれてしまい、フレッドは、マリーのアパートの前で意識を失ってしまう。 仕方なく、ミリーとペギーはフレッドを連れ帰り、自宅に泊めることにする。 夜中に戦闘の夢でうなされる”心的外傷後ストレス障害”と思われるフレッドを気遣い、翌朝、彼をマリーのアパートに送り届けたペギーは、次第にフレッドに惹かれていく。 その後、アルは出征前の銀行に、小口融資担当の副頭取として迎えられことになる。 帰宅したフレッドは、派手さだけで、女性としての魅力のないマリーをペギーと比べてしまうのだった。 ホーマーは、自分を哀れむ世間の目を気にして、ウィルマの愛情も同情としか捉えられずにいた。 倉庫に居た自分とウィルマを、興味本位に見ていた妹に、辛く当たってしまったホーマーは、ウィルマも突き放してしまう。 手持ちの金もなくなり職探しも難航するフレッドは、クラブを辞めて、自分を当てにしていたマリーと衝突してしまう。 結局フレッドは、薄給にも拘らず元の百貨店の販売係として働くことになる。 銀行に復帰したフレッドは、復員兵から融資の依頼を受け、その条件が整わず思案する。 アルは、窓口に現れたホーマーに気づいて声をかけ、彼が立派に社会復帰しているのを見て、復員兵への融資を決める。 ある日、フレッドの職場にペギーが顔を出し、彼女を昼食に誘う。 フレッドは別れ際にペギーを抱きしめてキスしてしまい、自分の気持ちを伝える。 ペギーは、フレッドとマリーを食事に誘い、彼を諦めようとするが、母ミリーは娘の気持ちを見抜き心配する。 頭取のミルトン(レイ・コリンズ)に食事会に招かれたアルだったが、アルコール依存症気味の彼を、同行した妻ミリーは心配する。 アルは酔いながらもスピーチを始めて、戦争で培った経験を職務で生かすと、昼間、聞かされていたミルトンは困惑する。 しかし、アルは立派に話をまとめ上げ、ミリーは夫を誇らしく思いミルトンも拍手を贈る。 フレッド、マリーとでクラブに行ったペギーは、二人が愛し合っていないことを知り、ペギーはフレッドへの気持ちが逆に増してしまう。 それを両親に話したペギーだったが、アルは、ブッチの店でフレッドに会い、彼に娘との交際を諦めさせようとする。 フレッドは潔くアルの支持に従い、その場でペギーに電話をして、現れたホーマーに呼びかけられるものの、何も言わずに店を出て行く。 自宅でフレッドからの電話を受けたペギーは、心の重荷が解けたと、母ミリーに強がりを言うが、心は大きく傷ついてしまう。 先日のブッチの店のことが気になったホーマーは、フレッドの職場を訪ねる。 ホーマーはそこに居た客から、彼のような犠牲を払う価値が、参戦した戦争にはなかったと言われる。 ナチや日本とは戦わず、共産主義者と戦うべきだったと尚も言い張る客を、フレッドが追い払おうとするが、ホーマーはその客に言い寄り揉み合いになる。 それを見ていたフレッドは、客を殴り倒して店を辞めてしまう。 謝るホーマーにフレッドは、自分が立会人になるから、ウィルマにプロポーズしろと彼を励ます。 その夜、町を出るようにと家族に言われたウィルマは、それをホーマーに伝えるが、彼には引き止める勇気がなかった。 ホーマーを諦めきれないウィルマは、彼の寝室に向かい、全てをさらけ出そうとするホーマーの、パジャマのボタンをかける。 ウィルマを旅立たせようとするホーマーだったが、彼女はホーマーに二度と離れないことを告げてキスする。 そして、ウィルマの気持ちを知ったホーマーは、ようやく心の安らぎを得る。 フレッドは、マリーの浮気を知り彼女を見限り、両親に別れを告げて町を出ようと飛行場に向かう。 両親パットとホーテンスは、フレッドが置いていった、第8爆撃軍団司令官ドゥーリトル中将からの、フレッドの武勲を称える書面を見て、息子を誇りに思う。 フレッドは、飛行場で搭乗する便を待つ間に、戦闘機の解体現場を見て回る。 解体される、かつて自分が乗っていた爆撃機B-17を見つけたフレッドは、機体の内部に入り思いに耽る。 解体業者に声をかけられたフレッドは、そこで運良く仕事をもらい働き始める。 やがて、ホーマーとウィルマの結婚が決まり、自宅で結婚式が行われることになる。 ホーマーの立会人のフレッドは、アルそしてペギーに再会し近況を報告する。 式は始まり、フレッドは、ホーマーとウィルマの誓いの言葉を聞きながら、ペギーと見つめ合い心を決める。 そして、フレッドはペギーに歩み寄り、彼女に結婚することを約束して抱き合う。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
激戦を生き残った第二次大戦の復員兵の三人、アル・スティーブンソン、フレッド・デリー、ホーマー・パリッシュは、帰郷する輸送機の中で出会う。
戦場の事故で両手を失ったホーマーは、家族や恋人ウィルマと再会するものの、彼の心境は複雑だった。
妻ミリーや娘ペギーらの歓迎を受けたアルは、街に繰り出してクラブをハジゴし、泥酔してしまう。
両親の元に戻ったフレッドは、妻マリーが家を出て、ナイトクラブで働いていることを知る。
三人は、酒、悪夢そして外的損傷など、戦争の痛手を受け、それぞれの生活に戻るのだが、社会に順応するのには、時間がかかってしまう・・・。
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1945年に発表されたマッキンレー・カンターの小説”Glory for Me”を基に、自らも1942年から終戦まで陸軍航空軍少佐として従軍したウィリアム・ワイラーが、戦後最初に撮った作品。
1989年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。
各方面から絶賛された本作は、第19回アカデミー賞では、8部門にノミネートされ7部門で受賞し、ハロルド・ラッセルは助演賞の他、退役軍人に希望と勇気を与えたという理由で名誉賞も受賞している。
・受賞
作品・監督
主演男優(フレデリック・マーチ)
助演男優(ハロルド・ラッセル)
脚本・編集・作曲
名誉賞(ハロルド・ラッセル)
・ノミネート
録音賞
復員兵を待ち受ける喜びや悲しみ、そして苦悩を通し、様々な人間模様を繊細に描く、ウィリアム・ワイラーの演出は出色だ。
終戦の翌年の公開ということで、避けることできない問題、または作らなければいけないテーマとして、使命感のような力強さが感じられる傑作である。
酒場の場面で、ホーマー(H・ラッセル)が、叔父のブッチ(H・カーマイケル)と、義手でピアノ演奏を披露する場面がある。
傍らにF・マーチがいて、奥の電話ボックスでは、D・アンドリュースが神妙な面持ちで、心を寄せていたペギー(テレサ・ライト)に別れの電話をしているシーンの素晴らしさには驚かされる。
かなり離れているD・アンドリュースの苦渋の表情までが、焦点が合ってはっきり映し出されるそのショットと構図は、見事としか言いようがない。
感動のドラマを盛上げる、ヒューゴ・フリードホーファーの美しい音楽も素晴しい。
アカデミー主演賞を獲得したフレデリック・マーチは、銀行の管理職の身でありながら出征し、戦争で得た多くの教訓を、残りの半生に生かそうとする逞しいアメリカ人、そして、理想の父親像を見事に演じている。
しかしながら、そんな主人公も、戦争の影響によりアルコール依存症になりかけているというところなど、細かい演出も見られる。
銀行の業務に、苦言を呈する夫を制止するどころか、誇りに思い献身的に支える、母親としても思慮深い、やや押さえ気味のマーナ・ロイの演技も味がある。
前半から中盤にかけて、銀行の夕食会のホロ酔い加減の大演説位までは、フレデリック・マーチを中心にドラマは展開するが、中盤からクライマックスにかけての主役、ダナ・アンドリュースの好演も印象的だ。
ウィリアム・ワイラーのお気に入り、テレサ・ライトとキャッシー・オドネルの存在、二人の苦悩と喜びが、ドラマにアクセントを加えている。
*キャッシー・オドネルは、ウィリアム・ワイラーの兄でプロデューサーのロバート・ワイラーの妻である。
実際の復員兵である、戦場の事故で両手を無くしたハロルド・ラッセルは、プロの俳優でないことが信じられないほどの見事な演技を見せる。
アカデミー助演賞と名誉賞の受賞は、当然の結果とも言える。
ヴァージニア・メイヨの能天気な役柄も、彼女のイメージにぴったり合っている。
しかし、実生活の彼女は非常に堅実な女性であり、映画の役柄とは全く違う性格だということを知りながら見ると興味深い。
また、作曲家でありピアニストのホギー・カーマイケルが酒場の主人として、ピアノの演奏を披露してくれる。