敵地の女学院に保護された北軍の負傷兵と女性達との関係を描く、製作、監督ドン・シーゲルと名コンビとなるクリント・イーストウッド主演、ジェラルディン・ペイジ、エリザベス・ハートマン他共演による愛憎のドラマ。 |
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■ スタッフ キャスト ■
監督:ドン・シーゲル
製作:ドン・シーゲル
原作:トーマス・P・カリナン”Painted Devil”
脚本
アルバート・モルツ
イレーネ・カンプ
撮影:ブルース・サーティース
編集:カール・パインジター
音楽:ラロ・シフリン
出演
ジョン”マクビー”マクバニー伍長:クリント・イーストウッド
マーサ・ファーンズワース:ジェラルディン・ペイジ
エドウィナ・ダブニー:エリザベス・ハートマン
ドリス:ダーリーン・カー
ハリー:メエ・マーサー
キャロル:ジョー・アン・ハリス
アメリア”エイミー”:パメリン・ファーディン
アビゲイル:メロディ・トーマス
リジー:ペギー・ドライヤー
ジェニー:パッツィー・マティック
スクローギンズ:マット・クラーク
兵士:バディ・ヴァン・ホーン
アメリカ 映画
配給 ユニバーサル・ピクチャーズ
1971年製作 104分
公開
北米:1971年3月31日
日本:1971年12月4日
北米興行収入 $1,100,000
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
南北戦争末期、ルイジアナ州。
負傷していた北軍兵ジョン”マクビー”マクバニー伍長(クリント・イーストウッド)は、森の中でキノコを採っていた女学院の生徒アメリア”エイミー”(パメリン・ファーディン)に救われる。
学院に戻ったエイミーは、門の鐘を鳴らして院長のマーサ・ファーンズワース(ジェラルディン・ペイジ)を呼ぶ。
フランス語の授業をしていた教師エドウィナ・ダブニー(エリザベス・ハートマン)もそれに気づき、生徒のドリス(ダーリーン・カー)、キャロル(ジョー・アン・ハリス)、アビゲイル(メロディ・トーマス)、ジェニー(パッツィー・マティック)、そして女奴隷のハリー(メエ・マーサー)が門に向かう。
マーサは、門の外に出てはいけない規則があったためにエイミーを叱り、とりあえずマクバニーを学院に運ぶ。 屋上での見張りを怠ったリジー(ペギー・ドライヤー)に注意したマーサは、北軍兵がいることを知らせる、青い布を門に結ぶことをエイミーに指示する。 エドウィナは、マクバニーの怪我と衰弱の状態から、彼を引き渡すのは気の毒だと思うが、マーサはそれが義務であると考える。 マーサらはマクバニーをベッドに寝かせ、生徒達は彼の様子を気にする。 ハリーがマクバニーの体を拭き、マーサは兄のパジャマを彼に着せる。 男と接するのが久しぶりだったマーサは、関係を持っていた兄のことを思い出したために、それを口にしたハリーを非難する。 南軍兵が現れたことを見張りのリジーから知らされたマーサは門に向かう。 敵軍捕虜を連れている大尉に対応したマーサは、”女学院”という看板は外すべきだと助言され、マクバニーのことを伝えようとするが思い止まる。 早速、看板を外したマーサは、手伝ってくれたエドウィナに信頼していることを伝え、共同経営者となり後を任せる考えがあることを語る。 エドウィナは、この上ない喜びを感じてマーサに感謝する。 奴隷であるハリーと自分の立場の違いなどを、世話をする彼女と話していたマクバニーは、回復するまで部屋に閉じ込められることになる。 その夜、マクバニーの様態を見ていたエドウィナは、現れたキャロル(ジョー・アン・ハリス)が抱く淫らな考えを戒める。 翌朝マクバニーは、朝食を運んできたエドウィナから、マーサや行方不明になったその兄の話を聞く。 多くを語らないエドウィナだったが、マクバニーに惹かれる。 その後、マクバニーを救ったことで彼が自分を”愛している”と思い込むエイミーは部屋に忍び込む。 男はいないとエドウィナから知らされていたマクバニーはエイミーにキスされ、”ランドルフにも話した”と言われたため不思議に思う。 見張りをしていたドリスは、マクバニーのことを知らせるべきだと考え、現れた警備隊に合図をするものの気づいてもらえない。 ”ランドルフ”がエイミーの飼っているカメだとエドウィナから知らされたマクバニーは、好意を抱きつつ彼女に優しく語りかける。 男性との交際経験がないエドウィナは戸惑う。 その後、傷を診に来たマーサに、自分が負傷した経緯などを偽って伝えたマクバニーは、学院の女性達におかしな考えを抱くことは許さないと言われる。 誤解を解こうとするマクバニーだったが、マーサは彼を警戒する。 その夜、聖書の時間を抜け出したキャロルは、マクバニーの部屋に向かい彼に迫る。 物々交換のため出かけたマーサに、マクバニーの髭を剃るよう指示されたハリーは、自分を逃がすようにと彼に言われる。 ハリーから松葉杖を渡されたマクバニーはテラスに出て、現れたエドウィナと語り合う。 マクバニーに好意を示されたエドウィナは、同じ気持ちだということを彼に伝える。 マーサが戻り、マクバニーは助けてもらったことを感謝して、代わりに働くことを伝える。 キャロルはマナーの時間を抜け出し、裏庭にいたマクバニーに迫り、夜、部屋で待つと伝えて約束をする。 エドウィナは、キャロルの姿が見えないことを気にして裏庭に向かい、彼女とマクバニーの関係を知ってしまう。 マクバニーに失望したエドウィナだったが、彼に迫られ、それを目撃してしまったキャロルは、嫉妬心から、現れた警備隊に知らせようと青い布を門に結び付ける。 警備隊に気づいたマクバニーは、身を潜めるものの見つかってしまい、一人と揉み合いになり銃を向けられる。 そこに現れたマーサが、マクバニーを従兄弟だと言って警備隊を納得させる。 その夜から、マクバニーは食堂で皆と食事をすることになり楽しい時を過ごす。 南軍兵が現れたことを知ったマーサは、マクバニーを二階に向かわせて対応する。 マーサは、泊まり込みで警備するという兵士を警戒してそれを断り、生徒達に寝るよう指示する。 キャロルはマクバニーに責められながらも、ドアを開けて待っていると言って彼を誘う。 マーサは、部屋に戻るマクバニーを呼び止めてワインを勧め、今後もこの場に滞在して手伝う気がないかを問う。 マクバニーは、マーサが自分を求めていることに気づき彼女にキスし、ドアの鍵は取り除かれ自由な身となる。 マーサから部屋に誘われたことで、マクバニーは、今後、エドウィナやキャロルとも関係を持てると考える。 同じ思いで快楽を求めるマーサは、マクバニーとエドウィナと共に愛し合う夢を見てしまう。 マーサの部屋に向かったマクバニーだったが、階段に現れたキャロルと愛し合ってしまう。 マクバニーとの愛を確かめ合っていたエドウィナも気分よく眠ろうとしていたが、階上の物音に気づきキャロルの部屋に向かう。 キャロルと愛し合うマクバニーにショックを受けたエドウィナは取り乱し、彼を階段から突き落としてしまう。 マーサはマクバニーを食堂に運び、骨折した右足を切断してしまう。 翌朝、目覚めたマクバニーは、骨折程度で脚を切断されたことに気づいて驚き、自分が部屋に行かなかったことへの仕打ちだと言ってマーサを非難する。 マクバニーは動揺して、その場で涙するエドウィナも罵り追い払う。 その後、南軍が撤退したことを知ったマクバニーは、謝罪するキャロルに協力を求め、この場から逃げ出すことを考える。 マクバニーは、マーサと兄の関係を示す写真や手紙、そして銃を手に入れる。 マーサを銃で脅し足のことで責めたマクバニーは復讐を誓い、ワインを飲んで酔い、彼女が自分を奴隷にしたかったと言って、脚を切断した理由を生徒達の前で語る。 兄との関係の証拠をマーサに見せるマクバニーは、それを制止されるものの収まらず、エイミーのカメを投げ捨てて殺してしまう。 マクバニーは、エイミーに謝罪しながら全てマーサのせいだと言って立ち去る。 それを追うエドウィナは、制止するマーサーを殴り倒してマクバニーの部屋に向かう。 エドウィナはドアを塞ぎ、マクバニーに愛を告げて抱き合う。 マーサはマクバニーを始末することを考え、食事の用意をするため、彼の好物であるキノコを採ってくるようエイミーに指示する。 エイミーが採ってきたキノコ料理が回されるが、誰も手を付けないままマクバニーはそれを食べる。 北軍が学院の世話をするように手配させると告げるマクバニーは、結婚することを決めたエドウィナと、翌日、旅立つことをマーサに伝える。 共同経営の件は諦め、これまでのことを感謝することをマーサに伝えたエドウィナは、マクバニーにキノコを勧められる。 それを食べようとしたエドウィナをマーサは制止し、事態に気づいたマクバニーは、意識が朦朧となり食堂を出て倒れる。 翌日マーサは、生徒達徒と共にマクバニーの死体を布に包み、エドウィナは彼の亡骸に愛を告げる。 そしてマーサらは、マクバニーの死体を森に運ぶ。
...全てを見る(結末あり)
その夜、食事の招待を受けたマクバニーは昼間のことを謝罪し、マーサに促されて祈りを捧げる。
*(簡略ストー リー)
南北戦争末期、ルイジアナ州。
北軍の負傷兵ジョン”マクビー”マクバニー伍長は、女学院の生徒エイミーに救われる。
学院長マーサは、義務としてマクバニーを南軍に引き渡すことを考えるものの思い止まる。
生徒達は殆ど接することがない男性の出現に驚くものの、マクバニーに興味を持つ。
そんなマクバニーに、教師のエドウィナは惹かれる。
行方不明となっていた兄と関係を持っていたマーサは、マクバニーに厳しく接しながらも彼を”男”として意識する。
そしてマクバニーは、善人を装いながら女性達との生活を始めるのだが・・・。
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1966年に発表された、トーマス・P・カリナンの南部ゴシック小説”Painted Devil”を基に製作された作品。
2017年公開の「The Beguiled/ビガイルド」は本作のリメイク。
「マンハッタン無宿」(1969)で既にコンビを組んでいたドン・シーゲルとクリント・イーストウッドによる異色のドラマ。
クリント・イーストウッドの主宰する”マルパソ・カンパニー”の作品であり、そして二人の評価は、同年に公開される「ダーティハリー」(1971)で一気に高まることになる。
ハリウッドに偉大な功績を残す、クリント・イーストウッドの現在を知り鑑賞すると、公開当時とは違う思いで観られる。
最近のイーストウッド作品しか知らない方が観ると驚かれる内容かもしれないが、様々な状況で描かれる違いはあるものの、当時の彼の作品には”女性との絡み”が必ずと言っていいほど登場した。
サスペンス・スリラーと考える向きもあるが、恐怖や緊迫感の描写は弱く、女性特有とも言える嫉妬、欺瞞などを執拗に描く、ドン・シーゲルとクリント・イーストウッドが組んだ”愛憎のドラマ”として貴重な作品とも言える。
原題は”Beguiled”(騙す、欺く)で、思わせぶりな邦題とは違い、それを根底としてドラマは進行する。
女性に翻弄させられているように見えて、強かさを感じさせる負傷兵を熱演するクリント・イーストウッド、愛欲を求める女性を好演する名女優ジェラルディン・ペイジ、主人公を愛する教師エリザベス・ハートマン、「ダーティハリー」(1971)にも被害者の少年の母親役で登場する女奴隷役のメエ・マーサー、主人公に迫る生徒ジョー・アン・ハリス、主人公を救う生徒パメリン・ファーディン、同じく生徒ダーリーン・カー、メロディ・トーマス、ペギー・ドライヤー、パッツィー・マティック、南軍兵マット・クラーク、イーストウッドのスタント・ダブルとして知られるバディ・ヴァン・ホーンも兵士役で共演している。