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アパートの鍵貸します The Apartment (1960)

上役の欲求のために利用される社員とエレベーター係の恋をコミカルに描く、製作、監督ビリー・ワイルダーと盟友I・A・L・ダイアモンドによる脚本、ジャック・レモンシャーリー・マクレーンフレッド・マクマレイ他共演による映画史上に残るロマンチック・コメディの傑作。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ロマンチック・コメディ

シャーリー・マクレーン / Shirley MacLaine / Pinterest


スタッフ キャスト ■
監督:ビリー・ワイルダー

製作:ビリー・ワイルダー
脚本
ビリー・ワイルダー
I・A・L・ダイアモンド
撮影:ジョセフ・ラシェル
編集:ダニエル・マンデル
美術・装置
アレクサンドル・トローネル
エドワード・G・ボイル
音楽:アドルフ・ドイッチュ

出演
ジャック・レモン:C・C”バド”バクスター
シャーリー・マクレーン:フラン・キューブリック
フレッド・マクマレイ:ジェフ・D・シェルドレイク
レイ・ウォルストン:ジョー・ドビッシュ
ジャック・クラスチェン:Dr.ドレイファス
デヴィッド・ルイス:カークビー
ホープ・ホリデー:マーギー・マクドゥーガル
ジョーン・ショウリー:シルヴィア
エディー・アダムス:オルセン
ジョニー・セヴン:カール・マトゥシュカ
ジョイス・ジェイムソン:バーのブロンド女性

アメリカ 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ
1960年製作 124分
公開
北米:1960年1月15日
日本:1960年10月8日
製作費 $3,000,000


アカデミー賞 ■
第33回アカデミー賞

・受賞
作品・監督・脚本・編集・美術賞(白黒)
・ノミネート
主演男優(ジャック・レモン
主演女優(シャーリー・マクレーン
助演男優(ジャック・クラスチェン
撮影(白黒)・録音賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
ニューヨークの大保険会社の若手社員C・C・バクスター(ジャック・レモン)は、出世至上主義者だった。

バクスターは、数人の上司に自分のアパートの鍵を貸し、 そこを逢い引きの場に使わせていた。

今日もバクスターは、上司カークビー(デヴィッド・ルイス)と会社の電話交換係シルヴィア(ジョーン・ショウリー)の密会のため、部屋に入れないでいた。

ようやく部屋に戻れたバクスターは、隣部屋のドレイファス医師(ジャック・クラスチェン)に、”客人”が空けた大量の酒瓶や、毎晩聞こえる”激しい物音”について質問される。
...全てを見る(結末あり)

そんなことは気にもせず、軽い食事を済ませてベッドに入ったバクスターだったが、上司ジョー・ドビッシュ(レイ・ウォルストン)からの電話を受ける。

ドビッシュは、バーで”マリリン・モンロー”級の美女(ジョイス・ジェイムソン)を見つけ、どうしてもバクスターの部屋を借りたいと、彼に無理強いする。

それを断るバクスターだったが、ドビッシュは”昇進関係”をちらつかせ、仕方なくバクスターは部屋を空ける。

公園で寒い夜を過ごしたバクスターは、寝不足と風邪気味にも拘らず、翌日も会社に出社する。

バクスターは、会社のビルのエレベーターガール、フラン・キューブリック(シャーリー・マクレーン)に、密かに思いを寄せていた。

仕事場で、熱があることがわかったバクスターは、今夜こそゆっくり部屋で休むことに決め、上司達の予約を調整する。

そんな時、人事部のジェフ・D・シェルドレイク部長(フレッド・マクマレイ)に呼び出されたバクスターは、フランに激励されながら部長室に向かう。

シェルドレイクは、バクスターの社内の人気の原因を彼に問い詰め、課長の間を行き来している”鍵”のことに言及し始める。

バクスターはそれを察して、段取りや内容をシェルドレイクに告白する。

全てを把握したシェルドレイクは、バクスターにミュージカルのチケットを渡して”鍵”と交換し、来月の昇進を彼に約束する。

バクスターは、フランを食事とミュージカルに誘うが、彼女は先約があり、8時半からのミュージカルだけ付き合うことを伝え、二人は劇場で待ち合わせることになる。

しかし、フランの相手はシェルドレイクだった。

以前付き合っていた二人は、妻子のあるシェルドレイクとの愛が叶わないと悟ったフランが、手を引いてしまっていたのだった。

バクスターとの約束があるフランは帰ろうとするが、離婚を決意して寄りを戻そうとするシェルドレイクに、愛を告げられる。

バーにいた二人は、シェルドレイクの秘書オルセン(エディー・アダムス)に目撃されてしまうが、シェルドレイクは気にせず、バクスターのアパートに向かう。

結局フランは劇場に現れず、その夜は落胆したバクスターだったが、その後、会社では約束通り新しいオフィスを与えられる。

そんなバクスターの元に、ドビッシュやカークビーら”常連”の上司が祝福しに現れる。

バクスターは、ここ数週間アパートを、最も影響力のあるシェルドレイクに独占させているため、課長達に”鍵”を貸さない彼は責められてしまう。

そこにシェルドレイクが現れ、課長達はそそくさと退散してしまい、シェルドレイクは、バクスターに合鍵を作るよう指示する。

その時バクスターは、シェルドレイクの相手が忘れていった鏡の割れたコンパクトを渡す。

クリスマスの社内パーティの際、フランは、バクスターにミュージカルのことを謝罪する。

その後フランは、シェルドレイクの秘書オルセンから、自分が彼の元愛人で、その女癖の悪さと、口説きの決まり文句で、彼が”離婚”を持ち出すことを知らされる。

ショックを受けたフランを、自分のオフィスに連れて行ったバクスターは、親しいシェルドレイクから届いた、家族団らんのクリスマスカードをフランに見せる。

バクスターは、新調した帽子が似合うか確かめるために、フランからコンパクトを借りる。

そしてバクスターは、割れた鏡に気づき、シェルドレイクの愛人がフランだと知ってしまう。

その時、愕然とするバクスターに、今晩の部屋の準備を確かめる、シェルドレイクから辛い電話がかかる。

傷心のバクスターは、会社を後にしてバーに向かい、酔った女性マーギー・マクドゥーガル(ホープ・ホリデー)に声をかけられる

一方、オルセンの話で傷ついたフランは、シェルドレイクに泣きながらその話をする。

クリスマスでもあり、家族や親戚が気になるシェルドレイクは、プレゼント代わりに、フランに100ドルを渡し、ワニ皮のバッグでも買うように伝え、バクスターの部屋を出る。

フランはその場に残り、シェルドレイクの心無いプレゼントにショックを受け、化粧を直そうとした洗面台の睡眠薬に気づく。

放心状態だった失意のバクスターは、少しは気がまぎれて、マーギーと自分のアパートに向かう。

部屋に戻ったバクスターは、寝室で寝ているフランに気づき憤慨し、彼女を起こして追い出そうとする。

しかし、フランが睡眠薬を飲んだことを知ったバクスターは慌ててしまい、隣のドレイファス医師を呼び、マーギーを追い払う。

ドレイファスの介抱で、一命を取り留めたフランのために、バクスターは彼女の自殺未遂は、自分が原因だという説明をする。

翌日バクスターは、シェルドレイクにこの一件を連絡するが、彼は、バクスターに後処理を任せてしまう。

意識を取り戻したフランは帰宅しようとするが、バクスターは、憧れの彼女が、クリスマスに自分のアパートにいるだけで幸せな気分になる。

また、トラブルを避けるためにも、フランの回復を待とうとして、二人でジン・ラミーを始めたりもする。

フランはつきのない自分の人生を嘆くが、バクスターは、優しく接し彼女を労わる。

優しいバクスターの気持ちに触れ、フランは今の自分を見つめ直す。

その時、カークビーがシルヴィアを連れて現れるのだが、彼は、部屋にフランがいることを知り退散する。

クリスマス休暇が明けて、出社したシェルドレイクは秘書のオルセンを解雇し、バクスターに電話をかける。

シェルドレイクはフランと話しをするが、それを盗み聞きしたオルセンが、シェルドレイクの妻に、今回の一件を話してしまう。

フランの義兄カール・マトゥシュカ(ジョニー・セヴン)は、会社に出向き上司のドビッシュに、妹フランのことを尋ねる。

居合わせたカークビーから、フランの居場所を聞いていたドビッシュは、バクスターのアパートを教えてしまい、最近つれない彼に仕返しをする。

フランと食事をしようとしていたバクスターは、彼女を連れ戻しに現れたカールに殴られてしまう。

バクスターは、フランと結婚することを決意しシェルドレイクに打ち明けようとする。

しかし、シェルドレイクはついに離婚が成立したために、フランと結婚することをバクスターに告げる。

そして、バクスターは部長補佐となり、会社で会ったフランには、出世のために、シェルドレイクを利用したと強がりを言う。

再び部屋を貸せと言うシェルドレイクに、バクスターは、重役トイレの鍵を渡し、会社を辞めてニューヨークを離れることを決意する。

大晦日の夜、シェルドレイクはフランを誘い、バクスターが鍵を貸さずに会社も辞めたことを話す。

ちょうど新しい年が明ける頃、フランはシェルドレイクの元から姿を消す。

そしてフランは、バクスターのアパートへと向かう。

しかし、ドアの前で銃声のような音が・・・

それは、一人で寂しく大晦日を祝おうとして、バクスターが開けたシャンパンの音だった。

フランが現れ夢心地のバクスターは、彼女に愛を告げる。

しかし、フランはそれを制止して、バクスターに向い、”黙って配って”と言って、満面の笑顔でカードを渡してジン・ラミーを始める。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
ニューヨーク
大保険会社の若手社員C・C・バクスターは、出世至上主義者であり、数人の上司に自分のアパートの鍵を貸し、そこを逢い引きの場に使わせていた。
昇進のために、自分の生活を犠牲にして、上司のスケジュール合わせに奔走するバクスターは、会社のエレベーターガールのフランに思いを寄せていた。
そんなバクスターは、夜も部屋を追い出され、辛い思いをする日もあった。
ある日、人事部のシェルドレイク部長に呼び出されたバクスターは、自分の行為が上にバレたことを察知して観念する。
しかし、シェルドレイクの目的は、バクスターの”鍵”だった。
バクスターは、一気に昇進するチャンスだと考えて、シェルドレイクに部屋を提供するために、フランを食事とミュージカルに誘うのだが、彼女には、ある人物との約束があった・・・。
__________

前年の「お熱いのがお好き」(1959)でもコンビを組んだ、ビリー・ワイルダーと盟友I・A・L・ダイアモンドの、良質の舞台劇を見ているような、テンポのよい凝った脚本と、ビリー・ワイルダーの流れるような演出は冴え渡る。

1994年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。

第33回アカデミー賞では、作品賞以下5部門を受賞した。
・受賞
作品、監督、脚本、編集、美術賞(白黒)
・ノミネート
主演男優(ジャック・レモン
主演女優(シャーリー・マクレーン
助演男優(ジャック・クラスチェン
撮影(白黒)、録音賞

ジャック・レモン演ずる主人公が、エリートのようではあるがそそっかしく、要領がいいのか悪いのかわからないところ、また、あの身のこなしや仕草が愛嬌があり、その雰囲気だけで大いに笑わせてくれる。
コメディアンかつ演技派としての、彼の才能を最高に発揮できた作品とも言える。

顔立ちがアジア人に近いシャーリー・マクレーンに、ハリウッド的美人とは違う親近感を感じた人も多いと思う。

部長役のフレッド・マクマレイは、いかにもやり手で強かな上役がはまっている。
彼は俳優としての実績の他、実業家としても成功し、ハリウッドでも有数の富豪として知られた。

他にも、「スティング」(1973)で絶妙な詐欺師ぶりを見せた、上司役のレイ・ウォルストンオスカー候補になった隣人医師役のジャック・クラスチェンの好演も印象に残る。

また、この時代のアメリカの豊かさを強調するために、ビリー・ワイルダーは、主人公が勤める巨大保険会社のビルのオフィスのセットを広く見せようとして、手前のデスクより奥のデスクをわざと小さく作り、遠近感を出す工夫などをしている。

その甲斐あって、アカデミー美術賞も受賞した。

本作を初めて見た時に、リモコン・テレビを見ながら冷凍食品を食べ、風邪気味の主人公はティッシュペーパー持参で出社、クーラーやオーブン、電気毛布も当たり前という、一平社員の生活を見て、アメリカでは既にこの時代に、どこの家庭でもこんな生活をしていたのかと驚き、興味を抱いたことを
思い出す。

上司デヴィッド・ルイス、主人公がバーで出会う女性ホープ・ホリデー、会社の電話交換係ジョーン・ショウリー、部長秘書のエディー・アダムス、フラン(S・マクレーン)の兄ジョニー・セヴン、バーのブロンド女性ジョイス・ジェイムソン等が共演している。


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