ヒマラヤの謎の生物”イエティ/雪男”の捜索に向かった登山隊が体験する恐怖を描く、監督ヴァル・ゲスト、主演フォレスト・タッカー、ピーター・カッシング、モーリン・コーネル他共演のホラー。 |
・マスターズ・オブ・モンスターズ Masters of Horror / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:ヴァル・ゲスト
製作:オーブリー・ベアリング
製作総指揮:マイケル・カレラス
原作:ナイジェル・ニール”The Creature”(TV)
脚本:ナイジェル・ニール
撮影:アーサー・グラント
編集:ビル・レニー
音楽:ハンフリー・サール
出演
トム・フレンド博士:フォレスト・タッカー
ジョン・ローラソン博士:ピーター・カッシング
ヘレン・ローラソン:モーリン・コーネル
ピーター・フォックス:リチャード・ワティス
エド・シェリー:ロバート・ブラウン
アンドリュー・マクニー:マイケル・ブリル
クサン:ウルフェ・モリス
ラマ:アーノルド・マール
僧侶:アンソニー・チン
イギリス 映画
配給
ワーナー・ブラザーズ(イギリス)
20世紀FOX(北米)
1957年製作 91分
公開
イギリス:1957年8月26日
北米:1957年10月
日本:未公開
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
ヒマラヤ。
植物学者のジョン・ローラソン(ピーター・カッシング)は、助手のピーター・フォックス(リチャード・ワティス)に、寺院で研究を続けていた。
ラマ(アーノルド・マール)の協力に感謝するローラソンは、仲間達が来ることを知っている彼から、登山隊がこの地を訪れる理由を訊かれる。
調査だろうと答えたローラソンは、既に迎えに行ったために今夜到着するとラマから言われる。
サンプル瓶を取りに戻ったフォックスは、ローラソンの妻ヘレン(モーリン・コーネル)に、貴重な植物が手に入ったことを伝える。
僧院に戻ろうとしたフォックスは、お茶を勧められたため、仕事を思い出したと言って、ヘレンに瓶を持って行ってもらうことにする。
捜索隊のトム・フレンド博士(フォレスト・タッカー)らが、何を探しているのかをラマは気にする。 なぜフレンドらに協力するのかを尋ねるラマに、ローラソンは明確な答えを返さずに、フォックスが遅いと話を逸らす。 ラマは、フォックスは現れずヘレンが来るとローラソンに伝える。 現れたヘレンはローラソンに瓶を渡し、夫が登山をする間も滞在してほしいとラマから言われる。 驚いたヘレンは、ラマが去った後で、登山のことをローラソンに問い詰める。 フレンドらが来たら話そうと思っていたと言うローラソンは、気分を害するヘレンから、この場に来た目的が、植物採集ではないのではないかと言われる。 昔書いた論文が気になっていたと言うヘレンは、ローラソンが渓谷にいる生物を探す気だと知り動揺する。 その夜、僧侶達の儀式が始り、到着したフレンドにローラソンは声をかける。 ローラソンに挨拶したフレンドは、罠猟師のエド・シェリー(ロバート・ブラウン)と写真家のアンドリュー・マクニー(マイケル・ブリル)を紹介する。 フォックスとヘレンを紹介されたフレンドは、山に向かうと言うローラソンに当然だと伝えるが、”イエティ/雪男”と口にしたため制止される。 食事をしたローラソンらはイエティの話になり、マクニーがそれを目撃したと言うが、ヘレンは信じようとしない。 証拠があると言うフレンドは、銀の民族工芸品を見せて、書いてある文字をローラソンに訳してもらう。 ”偉大なる力強き生物を守るように”と書かれた工芸品が、僧院のものだと気づいたローラソンは、ドイツの探検家が盗んだとフレンドから言われる。 ”神”について書かれていると言うローラソンは、その中に隠されていた牙のような歯を見せられて驚く。 外で行われている儀式を気にするフレンドは、危険はないとローラソンから言われる。 ガイドなしで5人で山に向かうと言うフレンドは、小人数であればイエティは警戒しないと話す。 食料のことを訊かれたフレンドは、既にいくつかの岩穴に蓄えてあるとローラソンに伝える。 現地人のシェルパ、クサン(ウルフェ・モリス)を連れて行くと言うフレンドは、彼だけを同伴させる理由をヘレンから訊かれ、イエティを見ているからだと答える。 登山家でもある自分の協力で、豪雪になる前に山に向かいたいと言うフレンドに、まず”歯”について確かめたいと伝えたローラソンは、ヘレンも連れてラマの元に向かう。 工芸品を見たラマは、昔、盗まれたものであることを認めてフレンドに感謝し、”歯の彫刻”だと伝える。 全能の神の歯を型どって作ったものだと聞いていることを伝えたラマは、生物を探しても無駄だと言って諦めさせようとする。 自分達だけでも出発すると言うフレンドに、ローラソンが同行すると伝えたため、納得できないヘレンはその場を去る。 フレンドは、生還できる者は少ないとラマから言われる。 翌朝、今までの説が実証できると言って、ローラソンは、心配するヘレンに理解を求める。 クサンと僧侶(アンソニー・チン)が話しているため、それを気にするヘレンはローラソンの身を案ずるが、決意が固い彼を送り出すしかなかった。 出発したフレンドら5人は、日が暮れる前に尾根の上の小屋に向かおうとする。 絶壁を登り山小屋に着いた5人は、隠されていた食料を食べる。 標高5400メートルでキャンプをして捜索を始める考えを伝えたフレンドは、用意してある酸素を使いその上を目指し、イエティを捕らえる計画を話す。 イエティの生態について自分の考えを話すローラソンは、生き残るために、誰もいない高山に順応したという証拠を見つけるのが目的だと伝えて、2メートル以上の巨体だろうと語る。 シェリーが罠猟師であるため、イエティを生け捕りにして見世物にでもする考えのフレンドに、ローラソンは話が違うと言って言い寄る。 その時、マクニーが何かの声を聴き、フレンドらは外を調べるが異常はなかった。 戦後、悪の道にも手を染め、その後、人々に注目されたくなったとローラソンに話すフレンドは、イエティを捕らえて連れ帰り大儲けをしたいと、正直にローラソンに伝える。 イエティが実在すると信じるフレンドは、世紀の大発見になると言ってテレビに出す考えを話し、明日に備えて眠る。 翌日、フレンドらのガイドが賃金を要求して騒ぎ始め、それを鎮めたフォックスは、彼らを引き止めておくためだとヘレンに伝える。 騒ぎ出したのは、皆が戻らないと思ったからだと言って、ローラソンらが死んでしまうと考えて動揺するヘレンを、フォックスは落ち着かせる。 僧侶達が物事を見通す力があると言うヘレンに、眠るようにと伝えたフォックスは、ラマに会いに行く。 僧院に向い、瞑想するラマに話しかけたフォックスは、ただならぬ雰囲気を感じてその場を去る。 5人は山を登り始め、珍しいコケを採取するために遅れたローラソンは、後から来たマクニーから、理由は分からないが、この地に来なければならないと思い続けていたと言われる。 多くの登山隊に応募したものの断られたマクニーが、この隊に金を払って参加したことを知ったローラソンは驚く。 その後、ローラソンとマクニーは、フレンドらを見失ってしまう。 ローラソンはフレンドらに、マクニーは何かの声が前から聴こえると言ってそれに向い呼び掛ける。 マクニーが仕掛けられていた罠に足を挟まれてしまい、そこに現れたシェリーがそれを外す。 こんな馬鹿げた罠にかかる訳がないと言われたシェリーだったが、イエティを捕らえたことを伝えて、ローラソンとマクニーをその場に連れて行く。 檻に入れられた生き物を見てイエティではないと言うローラソンは、マクニーの手当てをしようとする。 ラジオで吹雪になる予報を聴いたフレンドは、クサンがイエティと認めた猿のような生き物を連れ帰ると言い張る。 以前にも同じことをした、狼少年の事件もフレンドの仕業だと知ったローラソンは、彼を詐欺師呼ばわりする。 言い争い揉み合ったローラソンとフレンドは、ラジオを壊してしまう。 ローラソンは、放心状態のマクニーの様子がおかしいことに気づき、フレンドは、騒がしい外の様子を見に行く。 鉄製の檻が壊されていることを知ったフレンドらは、2種類の足跡に気づく。 大きな方は50~60センチもあり、フレンドは、クサンにライフルを取りに行かせる。 テントに戻ったクサンは、中を探るイエティの巨大な手を見て叫び声をあげる。 それを聞いたローラソンらはテントに向い、マクニーが気を失っていることに気づく。 取り乱すクサンは、フレンドのせいだと言って、制止も聞かずにその場から逃げ去ってしまう。 罠がバラバラに壊されていることに気づいたフレンドは、それをシェリーに知らせる。 クサンが錯乱して逃げたことをローラソンに知らせたフレンドは、壊された罠の残骸を見せる。 イエティが人間に近い生き物だと考えたローラソンは、銃は使わないようにと指示する。 マクニーを落ち着かせるローラソンは、何を見たのか聞き出そうとする。 外に出たシェリーは発砲して足跡と血をたどり、フレンドとローラソンと共にイエティが死んでいるのを確認する。 体長は3メートル以上あり、他にもいると考えたフレンドは、イエティの死体をソリで運ぼうとする。 翌朝、クサンが衰弱しながら戻ったことを知ったヘレンは、それをフォックスに伝えて、何があったのかをラマに聞きに行く。 修行僧に捕らえられたヘレンはラマの元に連れて行かれ、クサンのことを訊くものの、気のせいだと言われる。 ローラソンの身を案ずるヘレンに、自ら危険を選んだと伝えたラマは、助けを求められるものの、人は運命には逆らうことができないと言って、彼女のことを現れたフォックスに任せる。 その後ヘレンは、フォックスから無謀だと言われながらも、フレンドらが連れて来たガイドを雇って山に向かおうとする。 意識が戻ったマクニーからイエティのことを訊かれたローラソンは、明らかに猿ではなく、その表情は悲しげで人間の様に知的だったと話す。 フレンドに呼ばれてイエティを洞窟に運ぶのを手伝ったローラソンは、テントに戻りマクニーが姿を消したことに気づく。 山を登るマクニーは転落し死んだことを確認したローラソンは、イエティの鳴き声に誘われて正気を失ったと言うフレンドに、足を滑らせただけだと伝える。 銃声がしたためにシェリーの元に向かったフレッドとローラソンは、イエティが2匹いたと言われる。 洞窟の仲間の死体を狙ったと言う興奮するシェリーを落ち着かせたフレンドは、イエティを仕留めようとする彼に、ネットの罠を仕掛けるようにと指示する。 山小屋に着いたヘレンは、ローラソンらがその場にいたことを知り、一晩、ここで過ごすとフォックスから言われる。 ネットの仕掛けを確認したフレンドは、シェリーに銃を渡してその場を任せ、監視するためにローラソンと共にテントに向かう。 その後、吹雪になり、危険が迫ると言うローラソンは、イエティを何とか生け捕りにしようと考えるフレンドに、知的で知られざる能力を持つイエティを滅ぼす訳にはいかないと伝えて説得する。 それを聞き入れないフレンドは、洞窟からイエティの声が聴こえたため、ローラソンと共に外に出る。 イエティを目の前にしたシェリーは、銃が発砲できないことに気づき、恐怖に怯えて叫び声をあげる。 洞窟に入ったフレンドとローラソンは、ネットが破られ、シェリーが心臓発作でショック死したことを知る。 フレンドが銃に細工をしたことに気づいたローラソンは、イエティを生け捕るためだと言われる。 イエティは仲間を取り戻そうとしただけで、シェリーを殺したのはお前だと、ローラソンはフレンドに伝える。 シェリーをマクニーの隣に埋葬したフレンドとローラソンは、洞窟に戻る。 イエティの行動を考えてみたローラソンは、危険だと決めつけるのは間違いだとフレンドに伝える。 ローラソンはイエティが野獣とは思えず、人間が消え去るのを待っているだけだと考える。 ”謙虚さを忘れるな”と言ったラマの言葉を思い出したローラソンは、人間の思い上がりによりイエティに苦痛を与えたのだと考え、彼らを生かそうとする。 壊れているはずのラジオの天気予報が聴こえてしまったローラソンは動揺し、高山病のせいではないかと考え、酸素を吸うようにとフレンドから言われる。 フレンドも、シェリーが助けを求める声を聴いてしまい、銃を持って外に出ようとするが、幻聴だと言うローラソンは彼を落ち着かせる。 それを振り切り洞窟から出たフレンドは、シェリーを捜して発砲してしまう。 ローラソンはフレンドを呼び戻そうとするが、大規模な雪崩が起きる。 何とか洞窟に戻ったローラソンだったが、フレンドは雪崩に巻き込まれる。 雪崩は収まり、外に出たローラソンはフレンドを捜すものの、見つからないために洞窟に戻る。 仲間を運ぶために現れた2匹のイエティに気づいたローラソンは、彼らを見上げながら意識を失う。 吹雪の中、ヘレンが外に出たことを知ったフォックスは、ガイドを連れて彼女を追う。 山を登り、ローラソンを見つけたヘレンは、フォックスに助けを求める。 僧院に戻り、ヘレンとフォックスと共にラマに会ったローラソンは、自分の考えが間違いだったことを話す。 存在しないものを探していたと言うローラソンの言葉に対し、ラマは、”イエティはいない”と伝える。
...全てを見る(結末あり)
■ 解説 評価 感想 ■
*(簡略ストー リー)
ヒマラヤ。
僧院で研究を続ける植物学者のローラソンは、実は、生息すると思われる”イエティ/雪男”の調査をするため、トム・フレンド博士が率いる登山隊を待っていた。
その件を隠していたことを妻のヘレンから非難されたローラソンだったが、山に向かう決意は変わらなかった。
到着したフレンドと罠猟師のシェリー、写真家のマクニーを歓迎したローラソンは、証拠であるイエティの”牙”のような歯を見せられる。
それが、かつて僧院から盗まれた彫刻であると知らせたラマは、イエティを探しても無駄だとフレンドらに伝える。
しかし、イエティを捕らえて大儲けを企むフレンドは、それをローラソンには伝えないまま雪山に向かう・・・。
__________
BBCで放映された、製作、監督ナイジェル・ニールによるテレビ・ドラマ”The Creature”を基に製作された作品。
ヒマラヤに潜むと思われる謎の生物”イエティ”を捕らえようとする、登山隊が体験する恐怖を描くホラー。
全体的には、ホラーというよりも冒険映画に近い内容なのだが、ラマの考えが物語を支配する、神の領域的なヒマラヤで起きる神秘的な雰囲気が漂う作品に仕上がっている。
ヒマラヤの自然を再現した、ハリウッド作品と見間違うほどのセットなども見事な出来栄えで、これ見よがしというようにはしていないイエティの登場場面なども注目だ。
待ちに待ったイエティの登場では、影などを使い完璧な全体像などは見せない、ホラー映画ならではの効果的な演出がされている。
イエティを見世物にしようとする傲慢な男フォレスト・タッカーが主演なのだが、ホラー映画ということで、ピーター・カッシングの主演作品と思われがちだ。
実際に、主人公は、植物学者であるピーター・カッシングと言っていい内容で、純粋にイエティの調査のみを考え、その存在意義を理解する思慮深い学者を好演している。
ピーター・カッシングが”マスター・オブ・ホラー”と言われるようになるのは、この時期以降の話である。
植物採集と研究が目的ではなかった山に向かった夫の身を案ずるモーリン・コーネル、研究助手のリチャード・ワティス、26年後の「007/オクトパシー」(1983)から”M”を演ずることになる、登山隊に加わる罠猟師のロバート・ブラウン(「007/私を愛したスパイ」1977では海軍中将を演じている)、イエティにとり憑かれる写真家のマイケル・ブリル、シェルパのウルフェ・モリス、ラマのアーノルド・マール、僧侶のアンソニー・チンなどが共演している。