製作、脚本、編集、出演ピーター・ボグダノヴィッチによる実際に起きた事件を基にした問題作。 平凡な男性が起こす無差別乱射事件を描く、出演ティム・オケリー、ボリス・カーロフ他によるサスペンス・スリラーの秀作。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ピーター・ボグダノヴィッチ
製作:ピーター・ボグダノヴィッチ
脚本:ピーター・ボグダノヴィッチ
撮影:ラズロ・コヴァックス
編集:ピーター・ボグダノヴィッチ
音楽:ロナルド・スタイン
出演
ロバート”ボビー”トンプソンJr.:ティム・オケリー
バイロン・オーロック:ボリス・カーロフ
ジェニー:ナンシー・シュー
エド・ラフリン:アーサー・ピーターソン
スミス連邦保安官:モンテ・ランディス
ロバート・トンプソン:ジェームズ・ブラウン
シャーロット・トンプソン:メアリー・ジャクソン
アイリーン・トンプソン:ターニャ・モーガン
キップ・ラーキン:サンディ・バロン
サミー・マイケルズ:ピーター・ボグダノヴィッチ
アメリカ 映画
配給 パラマウント・ピクチャーズ
1968年製作 90分
公開
北米:1968年8月15日
日本:未公開
製作費 $130,000
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
サンフェルナンド・バレー。
怪奇映画スター、バイロン・オーロック(ボリス・カーロフ)は引退を決意するが、監督のサミー・マイケルズ(ピーター・ボグダノヴィッチ)に、次回作への出演を求められる。
その姿を、道の向かいのガン・ショップから見ていたロバート”ボビー”トンプソンJr.(ティム・オケリー)は、ライフルを購入して店を出る。
ボビーは、あらゆる種類の銃が入っているトランクにライフルをしまい車で走り去る。
帰宅したボビーは、家族と共に夕食を取り、バイロンを見かけたことなどを話す。 サミーの恋人で秘書のジェニー(ナンシー・シュー)と共にエド・ラフリン(アーサー・ピーターソン)と食事をしたバイロンは、自分の作品が上映される予定のドライブイン・シアターでの舞台挨拶を断ってしまう。 その後ボビーは、父親ロバート(ジェームズ・ブラウン)と共に射撃の練習をする。 ボビーは、ターゲットの空き缶を並べるロバートを狙い引き金に指をかける。 それを見たロバートは驚き、調整をしただけだというボビーに、事故につながると言って注意する。 ホテルに戻ったバイロンは、今回の引退のことで意見の合わないジェニーとのことなどを気にする。 ボビーは、夜勤で出かける妻アイリーン(ターニャ・モーガン)を引き止めるが、彼女は仕事に向かう。 その後ボビーは、車のトランクから拳銃を取り出す。 自分が出演する、ハワード・ホークスの「光に叛く者」(1931)をテレビで観ていたバイロンは、現れたサミーに脚本を返そうとする。 サミーは話よりも映画に夢中になり、ハワード・ホークスにはかなわないことを確認して気落ちする。 バイロンは酔ったサミーに、怪奇映画役者の自分が普通の役はできないと、出演を断った理由を伝える。 その後二人は酔いが回り、ベッドで眠ってしまう。 その夜、仕事から戻ったアイリーンを待っていたボビーは、彼女が眠るのを確認する。 翌日ボビーは、昼近くに目覚めたアイリーンと母シャーロット(メアリー・ジャクソン)、そして配達員を射殺する。 ボビーは、アイリーンとシャーロットをベッドに寝かせ、配達員の死体を片付ける。 妻と母を殺し更に殺人を犯すという、予告のメモをボビーは残す。 同じ頃サミーとバイロンは目覚め、現れたジェニーを迎える。 バイロンは、ジェニーが手配した祖国イギリス行きをキャンセルして、その夜の舞台挨拶に出席することを伝え、彼女を安心させる。 ボビーは、ガン・ショップに向かい、大量の弾丸を購入する。 バイロンは、サミーやジェニー、そしてスタッフと共に舞台挨拶の準備を始める。 石油タンクに向かったボビーは、銃を持ち立ち入り禁止区域に侵入する。 タンクに上ったボビーは、各種の銃を並べて、目の前を走るハイウェイの車に照準を合わせる。 ボビーは無差別乱射を始め、異変に気づき上がってきた係員も射殺する。 警官が事故現場に駆けつけたため、焦ったボビーは何丁かの銃を残してその場から逃れる。 車を暴走させて逃走するボビーはパトカーに追われ、付近のドライブイン・シアターに向かい身を隠す。 夕方となり、ボビーは銃を持ってスクリーンの裏に回り待機する。 午後8時過ぎ、”The Terror”(1963)の上映が始り、ボビーはスクリーンに穴を開けて駐車場を狙う。 ボビーは、電話ボックスに入った男性を狙撃し、同じ頃、会場にバイロンが到着する。 バイロンは待ち構えていたエドらに、スクリーンの前に駐車するよう指示される。 ボビーは家族が乗る車やカップルを狙い、映写技師を射殺する。 狙撃犯がいることに気づいた者達は、駐車場から出ようとして混乱となり、サミーが到着する。 弾丸を落としてしまったボビーは、その場から降りて弾丸を拾い乱射を始める。 バイロンに同伴していたジェニーが撃たれ、到着した警官は犯人を捜す。 ジェニーを介抱したバイロンは、ボビーの居場所を知りその場に向かう。 バイロンは、ボビーの放った弾丸が額をかすめたことも気にせず、彼を殴り観念させる。 ボビーは警官に取り押さえられ、バイロンに駆け寄るサミーは彼の無事を確認する。 これが現実なのかと、その状況を考えるバイロンは、サミーと共に無事だったジェニーの元に向かう。 ボビーは連行され、夜が明けた駐車場には、彼の車だけが残されていた。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
怪奇映画スター、バイロン・オーロックは引退を決意する。
映画監督サミーは、バイロンに次回作の出演を求めるのだが、彼の考えは変わらなかった。
その頃、平凡な男性ボビー・トンプソンは、銃を収集しながら、家族との生活を続ける。
祖国イギリスへの帰国の準備を始めたバイロンは、自作が上映されるドライブイン・シアターでの舞台挨拶も断ってしまう。
一方、ボビーは妻や母親を射殺して、石油タンクに上り、ハイウェイの車に向かい無差別乱射を始める。
それが警察に知られ追われたボビーは、バイロンの作品が上映されるドライブイン・シアターに逃げ込む・・・。
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まだ20代の、ピーター・ボグダノヴィッチの実質的な監督デビュー作。
ジョン・フォードやハワード・ホークスの研究家で、多くの著書もあるピーター・ボグダノヴィッチが、愛する映画への思いを込めて自ら製作、監督した作品。
それに加え、今では珍しくない内容だが、直前の1966年に起きた”テキサスタワー乱射事件”などを意識した、人間及び社会の歪みを鋭く描いた、ピーター・ボグダノヴィッチの着眼点や演出は、当時を考えると実に新鮮だ。
ボリス・カーロフ自身の出演作を効果的に使っているところが注目であり、「光に叛く者」(1931)のテレビ放映を食い入るように観る、監督役で出演しているピーター・ボグダノヴィッチが、尊敬するハワード・ホークスの演出に、とてもかなわないと嘆くシーンなども面白い。
ドライブイン・シアターで上映される、ロジャーー・コーマンの”The Terror”(1963)では、若き日のジャック・ニコルソンが登場するのも興味深い。
本作は、フランシス・フォード・コッポラもクレジット無しで監督に名を連ねている。
平凡な生活を続ける男性ではあるが、突如として無差別殺人を犯す恐怖の狙撃犯を演ずるティム・オケリー、80歳を過ぎていたとは思えない、圧倒的存在感で画面を支配する、主演と言ってもいい怪奇映画スター役のボリス・カーロフ、その秘書ナンシー・シュー、関係者のアーサー・ピーターソン、主人公の両親役ジェームズ・ブラウンとメアリー・ジャクソン、妻ターニャ・モーガンなどが共演している。