2003年に発表された、元CIA工作官ロバート・ベアの回顧録”See No Evil”を基に製作された作品。 中東の産油国を舞台にした石油利権を巡る陰謀とCIAの工作活動を描く、製作スティーヴン・ソダーバーグ、製作、主演ジョージ・クルーニー、共演マット・デイモン、アマンダ・ピート、クリス・クーパー、クリストファー・プラマー、ウィリアム・ハート、監督スティーヴン・ギャガンによる社会派サスペンス。 |
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■ スタッフ キャスト ■
監督:スティーヴン・ギャガン
製作総指揮
ジョージ・クルーニー
スティーヴン・ソダーバーグ
ベン・コスグローヴ
ジェフ・スコール
アイヴァン・ライトマン
製作
ジェニファー・フォックス
ジョージア・カカンデス
マイケル・ノジック
原作:ロバート・ベア”See No Evil”
脚本:スティーヴン・ギャガン
撮影:ロバート・エルスウィット
編集:ティム・スクワイアズ
音楽:アレクサンドル・デスプラ
出演
ボブ・バーンズ:ジョージ・クルーニー
ブライアン・ウッドマン:マット・デイモン
ジュリー・ウッドマン:アマンダ・ピート
ジミー・ポープ:クリス・クーパー
ベネット・ホリデイ:ジェフリー・ライト
ディーン・ホワイティング:クリストファー・プラマー
スタン・ゴフ:ウィリアム・ハート
ダニー・ダルトン:ティム・ブレイク・ネルソン
ワシーム・カーン:マザール・ムニール
ハマド・アル・スバーイ:ナディム・サワラー
ナシール・アル・スバーイ王子:アレクサンダー・シディグ
メシャール王子:アクバール・クルサ
CIA本部長:ジェイン・アトキンソン
フレッド・フランクス:トム・マッカーシー
ムサウイ:マーク・ストロング
ドナルド:デヴィッド・クレノン
リーランド・ジャニス:ピーター・ゲレティ
シドニー・ヒューイット:ニッキー・ヘンソン
ロビー・バーンズ:マックス・ミンゲラ
テリー:ジェイミー・シェリダン
ベネット・ホリデイSr.:ウィリアム・C・ミッチェル
マリリン・リチャーズ:ヴィオラ・デイヴィス
アメリカ 映画
配給 ワーナー・ブラザーズ
2005年製作 127分
公開
北米:2005年11月23日
日本:2006年3月4日
製作費 $50,000,000
北米興行収入 $50,824,620
世界 $93,974,620
■ アカデミー賞 ■
第78回アカデミー賞
・受賞
助演男優賞(ジョージ・クルーニー)
・ノミネート
脚本賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
イラン、テヘラン。
CIAの中東担当ベテラン情報員ボブ・バーンズ(ジョージ・クルーニー)は、高性能ミサイルを”青い眼のエジプト人”らに奪われる。
ワシントンD.C.。
法律事務所の代表ディーン・ホワイティング(クリストファー・プラマー)は、弁護士ベネット・ホリデイ(ジェフリー・ライト)から、顧客である石油会社大手”コネックス”が、ペルシャ湾の天然ガス採掘権を中国に奪われ、”キリーン”という企業が、カザフスタンで未開発の大油田の採掘権を得たことなどを報告される。
両社は合併が予想されていたが、司法省が、キリーンの不正をマークしていたため、ホワイティングは、どのようにして油田採掘権を手に入れたのかを調べ、報告するようホリデイに指示を出す。
テキサス州、ヒューストン、コネックス本社。 しかし、慎重なコネックス側は、顧問弁護士のシドニー・ヒューイット(ニッキー・ヘンソン)の合併戦略に関する意見を求め、ホリデイがそれを担当する。 ジュネーブ。 バージニア州、ラングレー、CIA本部。 本部のマリリン・リチャーズ(ヴィオラ・デイヴィス)の質問を受けたバーンズは、その後、息子ロビー(マックス・ミンゲラ)と食事をする。 しかし、真実を伝えようとしない父に幻滅して、ロビーは席を立ってしまう。 スペイン、マルベラ。 ペルシャ湾。 マルベラ。 ワシントンD.C.。 ペルシャ湾。 ジュネーブ。 ワシントンD.C.。 検事局の自信について、ホリデイはキリーン側に内通者がいるだろうと考える。 ペルシャ湾。 フランス、アンティーブ岬。 CIA本部。 バーンズは、テヘランで奪われたミサイルがテロ組織に渡ったことを知らされ、ナシール王子暗殺のためベイルートに派遣されることになる。 一方、ナシール王子に呼ばれたウッドマンは、生きている息子に1億ドルを提供する条件で、経済アドバイザーとして雇われることになる。 ウッドマンは、石油の海路輸送を廃止して、イランを通るパイプラインで利益を二倍にすることを、早速、王子に提案する。 キリーンのポープに会ったホリデイは、CLI”イラン自由化委員会”のメンバーで、油田契約を陰で支えたダニー・ダルトン(ティム・ブレイク・ネルソン)のことを知る。 メリーランド州、ロックヴィル。 ベイルート郊外、ヒズボラ占領地区。 バーンズはムサウイに会い、市内にいるナシール王子の拉致計画を実行しようとする。 しかしバーンズは、イランのスパイだったムサウイに裏切られ、彼から拷問を受ける。 その後、バーンズが、指導者に歓迎されていることを知らされ、ムサウイは彼を解放する。 ワシームは、”青い眼のエジプト人”と親交を持ち、彼が奪ったアメリカ製の高性能ミサイルを見せられる。 CIA本部。 テリー副長官(ジェイミー・シェリダン)に会った二人は、既に調べているバーンズを休ませるよう指示され、王子の死を望む者と彼がつながっていたことを指摘され、それを調べるように指示される。 ワシントンD.C.。 ダルトンが、スイスの寄宿学校に送金していることを知ったホリデイは、それがカザフスタンの国土大臣への賄賂であり違法だと指摘する。 ジュネーブ。 ナシール王子の考えに同調するウッドマンが、死んだ子供を利用して金儲けを考えているように感じたジュリーは、彼にそれを否定されるものの、子供と帰国することを決める。 ホリデイは、ドルトンを検事局のドナルドに売ろうとするが、それだけでは不十分だと言われる。 孤立するバーンズは、フランクスからFBIが自分を調べていることを知らされ、誰が暗殺計画を指示したかを聞いても返事を得られない。 ハマド国王はメシャール王子を後継者に指名し、ナシール王子は弟を支えることを拒み、改革運動を進めるために行動を開始する。 ゴフを訪ねたバーンズは、親米派のメシャール王子を王にするためにある勢力が動いたことと、自分が全てを暴露することを、ホワイティングが恐れていると知らされる。 ホワイティングを呼び出したバーンズは、自分を蔑む彼に対し、家族を含めて抹殺することを伝えて脅しをかけた上で、パスポートを返すように要求する。 ワシームは信仰を深め、”青い眼のエジプト人”に、特別な集団に選ばれたことを知らされ、父に無言の別れを告げる。 ホリデイは、もう一人の犠牲者が必要なことをポープに伝え、自分の上の大物で、合併の障害を取り除くことで二人は合意する。 バーンズはベイルート入りするが、既にナシール王子の暗殺計画がCIAにより進められていた。 コネックスのCEOリーランド・ジャニス(ピーター・ゲレティ)に面会したホリデイは、イランのパイプラインでの闇取引が判明したことを知らせる。 ホリデイは、合併を担当した主任弁護士ヒューイットの不正を報告し、同席していた彼は愕然とする。 フランクスらは、衛星映像でナシール王子の車の隊列を監視するが、バーンズがそれに近づく。 バーンズは白旗を掲げて隊列を止めるが、フランクスは標的を攻撃するよう指示を出す。 ナシール王子は、バーンズが、ホテルのエレベーターに乗ってきた男だと気づきくが、王子の車は攻撃される。 石油産業の表彰式。 車を替えたために、傷を負いながらも命拾いしたウッドマンは、徒歩でベイルート市街に向かう。 漁師を装ったワシームらは、高性能ミサイルを積んだ船で、コネックス・キリーン液化天然ガス施設に突入して自爆する。 過激派育成施設では、後進にに捧げられた、ワシームのメッセージを録画したビデオが流れる。 ウッドマンは帰国して家族の元に戻り、死亡したバーンズの所持品と資料は、CIA内から処分される。 帰宅したホリデイは、玄関にたたずむ父に声をかけて家に入る。
キリーンのCEOジミー・ポープ(クリス・クーパー)は、今回の合併が大きな利益をもたらすことに自信を示す。
...全てを見る(結末あり)
コネックスとキリーンの合併は発表されて、エネルギー・アナリストのブライアン・ウッドマン(マット・デイモン)は、その件について分析する。
バーンズの報告を受けた本部長(ジェイン・アトキンソン)は、ミサイルを失ったとは言えない情況で、かつて活躍した彼を昇進させることを決めて帰国指示を出す。
某中東産油国の国王ハマド・アル・スバーイ(ナディム・サワラー)のパーティーに招待されたウッドマンは、妻のジュリー(アマンダ・ピート)や子供達と現地に到着する。
パキスタンからの出稼ぎ労働者ワシーム・カーン(マザール・ムニール)は、今回の合併による人員削減で、父と共に液化天然ガス施設を解雇されていた。
外務大臣でもあるナシール王子(アレクサンダー・シディグ)に面会できなかったウッドマンは、その夜、息子がプールで感電し死亡してしまう。
ホリデイは、アルコール依存症の不仲の父親(ウィリアム・C・ミッチェル)を引き取る。
外国人労働者施設で暮らすワシームは、職が見つからずに苦悩する。
息子の葬儀を終えたウッドマンは、ジュリーと共に悲しみに堪えながら仕事を続ける。
ホリデイは、検事局のドナルド(デヴィッド・クレノン)を訪れ、キリーンの不正に確信を持っていることを知らされ、自分達が切り捨てられると警告される。
その後も職の当てがないワシームは、イスラム教の神学校(過激派育成組織)に入る。
石油事業に関して兄ナシール王子と対立するメシャール王子(アクバール・クルサ)に接触したホワイティングは、彼を王にするための協力を申し出る。
本部長に呼ばれたバーンズは、反米テロ組織に資金提供しているナシール王子の資料を、同僚フレッド・フランクス(トム・マッカーシー)から見せられる。
元CIA情報員で友人のスタン・ゴフ(ウィリアム・ハート)と話をしたバーンズは、ベイルート行きが安全かを彼に尋ね、”ヒズボラ”を通すべきだと助言される。
指導者に面会したバーンズは、ムサウイ(マーク・ストロング)と共に、ヒズボラとは関係のない仕事をすることを伝えて筋を通し歓迎される。
フランクスは、ムサウイが、王子暗殺の件をマスコミに流したことを本部長に伝える。
帰国したバーンズは病院に収容されて、武器取引についてなどを尋問され、パスポートを没収される。
ハマド国王の資産が凍結され、テロリスト呼ばわりされているナシール王子は、自分の、国家中東全体に対する夢や大義をウッドマンに語り、弟メシャールやコネックスを操るホワイティングに屈しない意思を示す。
コネックス・キリーンCEOのジャニスは、メシャール新国王を紹介する。
*(簡略ストー リー)
イラン、テヘラン。
中東担当のCIAベテラン情報員ボブ・バーンズは、高性能ミサイルをテロ組織に奪われてしまう。
ワシントンD.C.。
同じ頃、法律事務所の代表のホワイティングは、弁護士ホリデイから、石油会社大手”コネックス”と合併が予想される小規模企業”キリーン”が、カザフスタンで未開発の大油田の採掘権を得たことなどを報告される。
司法省が、キリーンの不正をマークしていたため、ホワイティングは、油田採掘権を手に入れた方法を調べ、報告するようホリデイに指示を出す。
帰国したバーンズは、某産油国の王子ナシールをテロ組織支援者と判断し暗殺する計画のため、ベイルートに派遣される。
エネルギー・アナリストのウッドマンは、ナシール王子に気に入られ、経済アドバイザーとして側近になる。
ベイルートに着いたバーンズは、”ヒズボラ”に筋を通して、協力者ムサウイと共にナシーム王子拉致暗殺計画を進めようとするのだが・・・。
__________
国家、企業そして個人に絡むオイルマネー、利権、利益の複雑な仕組みが暗躍する社会と組織構造をリアルに描く作品で、「トラフィック」(2000)でアカデミー脚色賞を受賞した、脚本家として知られるスティーヴン・ギャガンの重厚な演出に圧倒される。
意味不明なチャラチャラした幼稚なものが、大人の社会まで席巻する、情報機関すら存在しない日本人には理解し難い物語・・・では済まされない、CIA工作官だったロバート・ベアの回顧録であることを考えれば、その内容はさらに興味深い。
冷静に観れば物語は単純で、タイトルを含めて、専門用語などにこだわり過ぎると混乱してしまう。
麻薬のような存在の”石油”をめぐる、石油会社、CIA、弁護士、経済アナリスト、産油国の王族、出稼ぎ労働などの、思惑、人生そして運命が絡み合いながら迎える、衝撃のクライマックスまで目を離せない。
第78回アカデミー賞では、助演男優賞(ジョージ・クルーニー)を受賞した。
・ノミネート
脚本賞
多くの登場人物を並行して描いているため、特定できる主演とは言えなかった助演扱いのジョージ・クルーニーは、髭を蓄えた太り気味で登場して、精悍さを捨てた哀れにも見える男を熱演している。
一般社会とかけ離れた、オイルマネーの支配社会に身を投じてしまう経済アナリスト、マット・デイモン、その妻アマンダ・ピート、バイタリティ溢れる一企業のCEO、クリス・クーパー、その企業の合併の障害をなくそうとする弁護士ジェフリー・ライト、企業や産油国までもを動かそうとする黒幕のクリストファー・プラマー、主人公に助言する元CIAのウィリアム・ハート、石油業界人ティム・ブレイク・ネルソン、自爆テロ犯となる労働者の青年マザール・ムニール、某産油国国王ナディム・サワラー、王子のアレクサンダー・シディグとアクバール・クルサ、イランのスパイだったマーク・ストロング、CIA本部長役のジェイン・アトキンソン、部下トム・マッカーシー、副長官のジェイミー・シェリダン、局員のヴィオラ・デイヴィス、巨大石油企業CEOのピーター・ゲレティ、検事局のデヴィッド・クレノン、弁護士ニッキー・ヘンソン、主人公の息子マックス・ミンゲラ、ホリデイ(J・ライト)の父親ウィリアム・C・ミッチェルなど豪華キャストも注目だ。