1952年にブロードウェイで公開された、アーサー・ローレンツの戯曲”The Time of the Cuckoo”の映画化。 夏の休暇旅行でヴェネツィアを訪れたアメリカ人中年女性が地元の紳士と出会い恋に落ちるもののかなわぬ恋に揺れ動く女心を描く、監督、脚本デヴィッド・リーン、主演キャサリン・ヘプバーン、ロッサノ・ブラッツィ、イザ・ミランダ他共演によるラブロマンスの秀作。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:デヴィッド・リーン
製作:イリヤ・ロパート
原作:アーサー・ローレンツ(戯曲)
脚本
アーサー・ローレンツ
H・E・ベイツ
デヴィッド・リーン
撮影:ジャック・ヒルデヤード
編集:ピーター・テイラー
音楽:アレッサンドロ・チコニーニ
出演
ジェーン・ハドソン:キャサリン・ヘプバーン
レナート・デ・ロッシ:ロッサノ・ブラッツィ
フィオリーニ夫人:イザ・ミランダ
エディ・イエーガー:ダーレン・マクギャヴィン
フィル・イエーガー:マリ・アードン
マクレニー夫人:ジェーン・ローズ
マクレニー:マクドナルド・パーク
マウロ:ガイタノ・アウディエーロ
ヴィト・デ・ロッシ:ジェレミー・スペンサー
イギリス/アメリカ 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ
1955年製作 100分
公開
イギリス:1955年11月7日
北米:1955年6月21日
日本:1955年8月14日
北米興行収入 $2,000,000
■ アカデミー賞 ■
第28回アカデミー賞
・ノミネート
監督
主演女優賞(キャサリン・ヘプバーン)
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
アメリカ人の独身中年女性ジェーン・ハドソン(キャサリン・ヘプバーン)は、念願だったヨーロッパ旅行を実現させて、ヴェネツィアを訪れる。
オハイオ州のアクロンで、初等教育現場の秘書をしているジェーンは、夏の休暇を利用しての旅だった。
16ミリ・カメラを片手に、運河のヴァポレット(水上バス)で移動したジェーンは、宿泊先であるホテル”ペンシオーネ・フィオリーニ”に着く。
チェックインを済ませ、フィオリーニ夫人(イザ・ミランダ)に部屋に案内されたジェーンは、ベランダから見える街並みや、その風景に満足する。
宿泊客で、ヴァポレットでも一緒だったアメリカ人マクレニー(マクドナルド・パーク)と妻(ジェーン・ローズ)、画家のエディ・イエーガー(ダーレン・マクギャヴィン)と妻のフィル(マリ・アードン)、フィオリーニ夫人との親交を深めたジェーンは、恋人達の歩く姿を見て散策に出かける。 浮浪児マウロ(ガイタノ・アウディエーロ)に付きまとわれたジェーンは、彼に優しく接しながらも追い払い、鐘の音に誘われてサン・マルコ広場に向かう。 ジェーンは、観光客で溢れるその場の雰囲気を楽しむ。 カフェでくつろいでいたジェーンは、視線を感じて振り向くと、ある紳士(ロッサノ・ブラッツィ)が自分を見つめていたため、彼女は動揺してしまい、その場を離れる。 翌日も観光を続けていたジェーンは、街角の骨董店で美しいゴブレットが目に留まり、思わず店に入る。 その場にいた少年(ジェレミー・スペンサー)に、ジェーンはゴブレットのことを尋ねると、奥から店の主人レナート・デ・ロッシ(ロッサノ・ブラッツィ)が現われ、18世紀の品の説明を始める。 お互いに、前日カフェで見かけたことに気づいた二人は驚き、ジューンは再び動揺し、レナートは、買い物の経験のない彼女に、ゴブレットを値引きして販売する。 レナートにゴブレットを包んでもらったジェーンは、そそくさと店を出てしまう。 その後ジェーンは、恋の予感を感じながらサン・マルコ広場のカフェに向かうが、フィルを見かけ、連れがいるように椅子をテーブルに持たれさせる。 そこにレナートが現われ挨拶されるが、彼は椅子を見て遠慮し、立ち去ってしまう。 一旦ホテルに戻り、再び街に出たジェーンは、マウロと共にレナートの店のある”サン・バルナバ広場”に向かい、彼がいないことを知り、店の概観をカメラで撮影し始める。 しかし、ジェーンは運河に落ちてしまい、人々に助けられるものの、逃げ去るようにホテルに戻る。 その後、なんとレナートがホテルに現われ、彼は率直に、ジェーンに惹かれてしまったことを伝える。 レナートを受け入れたい気持ちに、戸惑うジェーンだったが、そこにマクレニー夫妻が戻ってくる。 夫妻は、買ってきたヴェネツィアン・グラスをジェーンに見せるが、それは、レナートの店で買ったものと同じデザインで、しかもセット商品だった。 レナートに、騙されたと思い込むジェーンはショックを受けて憤慨するが、彼は、自分が売ったものは同じデザインだが年代物だと、自信を持って伝える。 傷ついたジェーンだったが、レナートは優しく語りかけ、彼女をサン・マルコ広場で行われるコンサートに誘う。 その夜、コンサートを楽しんだ二人は、ジェーンのホテルの近くでキスをして別れ、翌日も会う約束をする。 そこに、店にいたレナートの甥だという少年が現われ、彼が遅れるということを伝える。 ジェーンは少年ヴィトと話すうちに、彼がレナートの息子で、母親もいると知って驚き、その場を去ってしまう。 ホテルに戻った失意のジェーンは、フィオリーニ夫人が男性と密会し、マウロに金を払って用事をさせているのを目撃してしまう。 マウロを叱ったジェーンだったが、そこにレナートが現われ、別居中の妻のことなどを正直に話し、率直に自分の考えを伝え、興奮するジェーンを落ちつかせる。 その後、二人は夜の街を楽しみ、そしてレナートの部屋で結ばれ、ジェーンは早朝にゴンドラでホテルに戻る。 翌日、二人はブラーノに向かい、のどかな島で癒される一日を過ごす。 ヴェネツィアに戻ったジェーンは、その日に発つことをレナートに伝える。 ジェーンは、驚くレナートに、自分達の関係には未来がないことを涙ながらに伝え、愛を告げる彼を振り切り、旅立ちの私宅を始める。 駅のホームで、ジェーンは自分に会いに来たマウロに別れを告げるが、待ち焦がれるレナートは現われない。 汽車は出発し、現われたレナートに気づくジェーンだったが、彼は贈り物を渡すこともできず、一輪の花をかざす。 そしてジェーンは、ホームのレナートにいつまでも手を振り、この地の思い出を胸に旅立つ。
...全てを見る(結末あり)
翌日、ジェーンは朝からショッピングを楽しみ夜に備え、着飾って、いつものカフェに向かいレナートを待つ。
*(簡略ストー リー)
アメリカ人中年女性ジェーン・ハドソンは、夏の休暇旅行でヴェネツィアを訪れる。
宿泊先のホテルに着き、その街の雰囲気を満喫するジェーンだったが、婚期を逃している自分には、恋人達の姿が刺激的に思える。
早速、街に出たジェーンは、鐘の音に誘われてサン・マルコ広場に向かう。
独りカフェでくつろぐジェーンは、カップルなどが気になる。
そんな時ジェーンは、ある紳士に見つめられているのに気づき、動揺してその場を去ってしまう。
ホテルに戻ったジェーンは、恋の予感を感じながら街の観光を始め、サン・バルナバ広場の骨董店で、美しいゴブレットが目に留まる。
ジェーンは、店の主人がカフェの紳士だと気づき、再び動揺してその場を去る。
その後ジェーンは、その紳士レナートが気になる存在となり、翌日、彼の店を訪ねる・・・。
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この後、格調高い作品を世に送り出していくデヴィッド・リーンは、主演キャサリン・ヘプバーンの、潜在的に持つ強さとユーモアセンスを見事に生かし、大人の恋を大袈裟に描写せず、情感豊かに描ききっている。
作品自体の質の高さよりも、「ローマの休日」(1953)に相通ずる観光映画として、美しいヴェネツィアの街並みや名所を楽しむことができる。
モノクロ映像の「ローマの休日」とは違い、総天然色テクニカラーの美しさ、そして、雰囲気を盛り上げるアレッサンドロ・チコニーニの音楽なども素晴らしい。
余りにも有名なサン・マルコ広場よりも、現在でもその建物は残る、サン・バルナバ広場の骨董店のロケ現場に、興味を持った方は多いはずだ。
第28回アカデミー賞では、監督、主演女優賞(キャサリン・ヘプバーン)にノミネートされた。
主演のキャサリン・ヘプバーンは既に50歳手前であり、ハリウッドに君臨する実力派大スターという目で誰もが見てしまう。
しかし、地味な職業の中年女性という役柄でもあり、気の強い性格を見せつつも、表情や仕草だけで演技する、抑え気味のシーンも多々あり実に興味深い。
キャサリン・ヘプバーンよりも実は9歳も年下のロッサノ・ブラッツィは、別居中とはいえ、不倫の身ではあるが、その真摯な態度で正直な紳士を好演し、男の目からも理想の男性像に思える。
主人公の宿泊先の女主人イザ・ミランダ、宿泊客の若い画家夫婦ダーレン・マクギャヴィンとマリ・アードン、アメリカ人観光客夫妻ジェーン・ローズとマクドナルド・パーク、浮浪少年ガイタノ・アウディエーロ、レナート(R・ブラッツィ)の息子ジェレミー・スペンサー等が共演している。
*マクレニー夫人を演ずるジェーン・ローズは、舞台のオリジナル・キャストである。