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見知らぬ乗客 Strangers On a Train (1951)

1950年に発表された、パトリシア・ハイスミスの小説”Strangers on a Train”を基に製作された作品。
列車に乗り合わせた乗客から交換殺人をもちかけられたテニス・プレーヤーが心理的に追い詰められる姿を描く、製作、監督アルフレッド・ヒッチコック、主演ファーリー・グレンジャールース・ローマンロバート・ウォーカーレオ・G・キャロル他共演の傑作サスペンス。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(サスペンス/犯罪)

アルフレッド・ヒッチコック Alfred Hitchcock 作品一覧
アルフレッド・ヒッチコック / Alfred Hitchcock / Pinterest


スタッフ キャスト
監督:アルフレッド・ヒッチコック
製作:アルフレッド・ヒッチコック
原作:パトリシア・ハイスミスStrangers on a Train
脚本
レイモンド・チャンドラー
チェンツイ・オルモンド
撮影:ロバート・バークス
編集:ウィリアム・H・ジーグラー
音楽:ディミトリ・ティオムキン

出演
ガイ・ヘインズ:ファーリー・グレンジャー
アン・モートン:ルース・ローマン
ブルーノ・アントニー:ロバート・ウォーカー
モートン上院議員:レオ・G・キャロル
バーバラ・モートン:パトリシア・ヒッチコック
ミリアム・ジョイス・ヘインズ:ローラ・エリオットケイシー・ロジャース
アントニー夫人:マリオン・ローン
アントニー:ジョナサン・ヘイル
カニンガム夫人:ノーマ・ヴァルデン
ヘネシー:ロバート・ギスト

アメリカ 映画
配給 ワーナー・ブラザーズ
1951年製作 101分
公開
北米:1951年6月30日
日本:1953年5月9日
製作費 $1,200,000
北米興行収入 $7,000,000


アカデミー賞
第24回アカデミー賞

・ノミネート
撮影賞(白黒)


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー
アマチュア・テニスのスター選手ガイ・ヘインズ(ファーリー・グレンジャー)は、列車でワシントンD.C.から故郷メトカルフへ向かう途中、ブルーノ・アントニー(ロバート・ウォーカー)という男性に話しかけられる。

妻ミリアム(ローラ・エリオット)との不和や、新聞のゴシップ記事で読んだという、上院議員の娘アン・モートン(ルース・ローマン)との関係を不躾に話す風変わりなブルーノを、少々鬱陶しく思うガイは食堂車に向かおうとする。

空席がなかったために、ブルーノと話をすることになったガイは、彼から、完全犯罪に興味があるかを問われる。

ブルーノは、仮定の話だとしながら、自分がガイの妻を殺して、彼が、嫌っている父を殺すという交換殺人を提案する。
...全てを見る(結末あり)

それを、まともに聞き入れるはずもないガイは、列車を降り妻ミリアムの元に向かうが、ブルーノは、彼が忘れていったライターに気づく。

離婚の話合いを進めようとしたガイだったが、ミリアムは、有名になった彼と別れる気のないことを伝える。

他の男の子供を身篭り、自分から離婚話を切り出しておきながら、ワシントンD.C.のパーティーにまで同行するという、身勝手なミリアムに腹を立てたガイは、彼女と口論となりその場を去る。

アンに、その件を電話で伝えたガイは怒りが収まらず、ミリアムを絞殺したいとまで口にしてしまう。

自宅屋敷に戻ったブルーノは、息子の奇行やその言動を心配する母親(マリオン・ローン)と、精神的治療が必要だという父親(ジョナサン・ヘイル)の話も聞かず、ガイに連絡を取るが相手にされない。

メトカフに向かったブルーノは、ミリアムの住所を調べて、その夜、男友達とアミューズメント・パークに向かった彼女の後をつける。

ミリアムはブルーノに気づき、意識しながらアトラクションを楽しむ。

そしてブルーノは、男達と離れたミリアムに近づき絞殺して、その場を離れる。

ワシントンD.C.
自宅に戻ったガイは、入り口で現れたブルーノに声を掛けられ、プレゼントだと言って、ミリアムの割れた眼鏡を渡される。

ブルーノから、ミリアムを殺したことを知らされたガイは驚き、警察に向かおうとする。

共犯で捕まると言われたガイは、交換殺人の件と、ミリアムが死んで得するのは自分だけだと知らされて、戸惑ってしまう。

その時、自宅の電話が鳴りパトカーが現れ、焦ったガイは、尚も、交換殺人で父親を殺そうとする考えを語るブルーノを非難して、部屋に戻りアンと電話で話す。

事件を知り、心配するアンの元に向かったガイは、彼女の父親である上院議員のモートン(レオ・G・キャロル)と娘のバーバラ(パトリシア・ヒッチコック)に迎えられる。

モートンは、ミリアムが殺害されたことをガイに伝え、彼が疑われていることをバーバラが付け加える。

犯行時間のアリバイが必要だということで、ガイは、列車内で話した大学教授のことを思い出し、一同はひとまず安堵する。

翌日、警察に出向いたガイは、大学教授が呼ばれていたために安心する。

しかし、教授は酔っていたということで、列車内のことは何も覚えていなかった。

アリバイは証明されず、それをアンやモートンに知らせたガイは、その場でブルーノからの電話を受けるものの即切ってしまう。

ガイには護衛としてヘネシー刑事(ロバート・ギスト)が常に同行するが、ブルーノはガイを監視して、計画実行を催促する手紙まで送る。

その後、アンと過ごしていたガイは、現れたブルーノを追い払うが、彼から、殺害の計画書や、その場所に入る鍵などが届く。

テニス会場にまで現れたブルーノと親しくなったアンは、彼が、以前にもガイの前に現れたことに気づく。

その場に現れたバーバラを紹介されたブルーノは、彼女の眼鏡を見て、ミリアムを殺害した時のことを思い出し顔色が変わる。

その後、ガイの元には拳銃が送られてくるが、彼はそれを隠して、モートン邸のパーティーに出席する。

ところが、そこにブルーノが現れ、彼はモートンや判事を捉まえて自分の持論を語り、カニンガム夫人(ノーマ・ヴァルデン)には、殺人についてを語り始める。

そしてブルーノは、テスト的にカニンガム夫人の首に手をあてるが、それを見ていたバーバラの眼鏡で、再び犯行を思い出してしまう。

ブルーノは、カニンガム夫人の首を絞めてしまい、彼は意識を失い書斎に運ばれる。

モートンは、不審感を抱いていたブルーノを追い出すようガイに指示する。

意識を取り戻したブルーノが、反省している様子もないために、ガイは彼を殴り屋敷から連れ出す。

ブルーノが、自分を見て絞め殺そうとしたと感じたバーバラは動揺し、その恐ろしい彼の表情をアンに伝える。

それをガイに伝えたアンは、バーバラの眼鏡が気になり、ミリアムも眼鏡をかけていたことを知る。

ブルーノがミリアムを殺したことに気づいたアンは、ガイからその事実と、交換殺人についての話などを聞かされる。

共犯だと脅されたために警察にも通報できなかったことを伝えるガイは、アンを巻き込んでしまったことを後悔する。

仕方なくブルーノに連絡を入れたガイは、父親を殺害することを伝え、彼に家を離れているように指示する。

ブルーノの屋敷に侵入したガイは二階に向かい、寝ているはずのアントニーに全てを話そうとする。

しかし、ベッドに横たわっていたのはブルーノで、ガイを疑っていた彼は待ち構えていたのだった。

ガイは銃を返して、ブルーノが異常であることを伝え精神療養施設に入るよう勧めて、その場を去ろうとする。

銃をガイに向けたブルーノは、この場で射殺するよりも良い方法で対処することを伝えて彼を脅す。

アントニー邸を訪ね夫人に会ったアンは、ブルーノに、ガイの無実についてを証言させるよう説得する。

しかし、息子の異常には気づいているものの、夫人はアンの話をまともに聞き入れない。

その後、現れたブルーノは、落としたライターを犯行現場に拾いに行けと言われたなど、自分がガイに利用されているような言い方をしてアンを動揺させる。

それをガイに話したアンは、ブルーノがライターを現場に置きに行くと彼に言われる。

自分達が、ブルーノより先にメトカフに向かう必要があることをアンはガイに伝え、試合中の彼は、見張りのヘネシーに怪しまれないために、そのままゲームに臨む。

簡単に片付くかと思われた試合は長引いてしまい、ブルーノはメトカフに到着するが、ライターを排水溝に落としてしまう。

ブルーノは何んとかそれを拾い上げ、同じ頃、ようやく試合に勝ったガイは、バーバラがヘネシーの気を引いた隙に、用意されていたタクシーでメトカフに向かう。

それに気づいたヘネシーはガイを追い、駅でみつけた彼の行き先がメトカフだと知り、連行せずに署に連絡を入れる。

アミューズメント・パークに着いたブルーノは日没を待ち、到着したガイも現場に向かい、既に張り込んでいた警察も彼の行先を知る。

ガイは、アミューズメント・パークに現れた警察が、警戒していることを知る。

ブルーノは、犯行時に顔を見られた係員に気づかれ、それが警官に知らされ、その場に現れたガイに名前を叫ばれる。

回転木馬に飛び乗った二人だったが、警官が発砲した流れ弾が、それを操作していた者に当ってしまう。

回転木馬は速度を上げ、ガイとブルーノは揉み合いになる。

ブルーノが、木馬から突き落とした子供を救ったガイは、彼にその場から蹴落とされそうになる。

設備の床下からもぐり込んだ係員がそれを止めるが、急激にブレーキがかかった回転木馬は大破してしまう。

子供達を乗せていた親達が取り乱す中、無事だったガイは、殺人犯ブルーノの目撃者の係員に無実を証明され、現れた警官に、脅迫されていたことを伝える。

ガイは、設備に挟まれた重傷のブルーノの元に向かい、彼が持っているはずのライターのことを尋ねる。

ブルーノは、ライターは持っていないと言って息を引き取るが、彼の手にそれは握られていた。

警官はガイを信じてライターを預かり、翌日、警察署で事情を聞くことになる。

ガイはアンに連絡を入れて、バーバラやモートンはそれを聞いて喜ぶ。

その後、アンと列車に乗っていたガイは、牧師に声を掛けられる。

しかしガイは、怪訝な顔をして、何も言わずにアンと共にその場を離れる。


解説 評価 感想

★ヒッチコック登場場面
上映から約10分、ファーリー・グレンジャーが列車を降りる際に、”コントラバス”を持参して乗車しようとする男性として登場する。
非情に分かり易い。

*(簡略ストー リー)
アマチュア・テニスのスター選手ガイ・ヘインズは、故郷のメトカフに向かう列車内で、風変わりな男性ブルーノに声を掛けられる。
新聞の記事などで、ガイが妻ミリアムと不仲と知るブルーノは、仮定の話だとしながら、自分が彼女を殺し、嫌っている父親をガイが殺すという交換殺人を提案する。
それをまともに聞き入れるはずのないガイは、列車を降りてミリアムの元に向かうが、彼女に離婚を拒まれてしまう。
ガイは、上院議員の娘アンと付き合っていたのだが、ワシントンD.C.に戻った彼は、現れたブルーノから、ミリアムを殺したことを知らされる。
そしてブルーノは、交換殺人として、自分の父親を殺すようガイに迫るのだが・・・。
__________

アルフレッド・ヒッチコック作品の中でも、かなり評価の高い一作。

計算しつくされた場面展開、ロバート・バークスの映像感覚の素晴らしさ、ヒッチコックとは不仲だと言われるレイモンド・チャンドラーも参加した脚本の妙、場面を盛り上げるディミトリ・ティオムキンの音楽、その調和のとれた仕上がりは、全編に渡り一時も目が離せない。
レイモンド・チャンドラーは、ほとんど仕事をしなかったという説もある。

冒頭の、主人公二人の出会いまでの描写、あっさりと行われる殺人を眼鏡のレンズ上にで映し出すショット、また、その眼鏡が引き金になる犯人の殺意の再燃、その斬新なアイデアの数々は見事だ。

第24回アカデミー賞は、撮影賞(白黒)にノミネートされた。

主演のファーリー・グレンジャーは、夫婦間の諍いで苦悩するものの、誠実なイメージが漂い熱演し、実生活でもその奇行が知られていたことを考えながら観ると、一層ロバート・ウォーカーの好演が際立つ。
同性愛的描写もあるパトリシア・ハイスミスの原作と、ファーリー・グレンジャー自身もバイセクシャルだったことも興味深い。
ロバート・ウォーカーは、本作公開2か月後に急死する。

苦悩する主人公を支える恋人のルース・ローマン、その父親で、ヒッチコック作品の常連、上院議員のレオ・G・キャロル、その娘役でヒッチコックの実娘パトリシア・ヒッチコック、主人公の妻役で”ローラ・エリオット”のクレジットだったケイシー・ロジャース、ブルーノ(ロバート・ウォーカー)の母親役マリオン・ローン、父親ジョナサン・ヘイル、パーティーで首を絞められる婦人ノーマ・ヴァルデン、主人公の護衛兼見張りの刑事ロバート・ギストなどが共演している。


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