スコットランド首相を目指す市長の娘と弱者を守ろうとする青年記者の恋を描く、監督ヴィクター・サヴィル、イアン・ダリンプル、主演ヴィヴィアン・リー、レックス・ハリソン、セシル・パーカー、サラ・オールグッド他共演のロマンチック・コメディ。 |
・ヴィヴィアン・リー / Vivian Leigh / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督
ヴィクター・サヴィル
イアン・ダリンプル
製作
ヴィクター・サヴィル
アレクサンダー・コルダ
原作:
ブルーノ・フランク”Sturm im Wasserglas”(戯曲/ドイツ国)
ジェームズ・ブライディ
”Storm in a Teacup”(ロンドン)
”Storm Over Patsy”(ブロードウェイ)
脚本
ジェームズ・ブライディ
ドナルド・ブル
イアン・ダリンプル
撮影:マッツ・グリーンバウム
編集
シリル・ランデル
ヒュー・スチュワート
音楽:フレデリック・ルイス
出演
ヴィクトリア・ガウ:ヴィヴィアン・リー
フランク・バードン:レックス・ハリソン
ウィリアム・ガウ:セシル・パーカー
ホノリア・ヘガティ:サラ・オールグッド
リスベット・スカーヴィング:ウルスラ・ジーンズ
ホレス・スカーヴィング:ガス・マクノートン
マッケラー:エドガー・K・ブルース
スケリーヴォア卿:ロバート・ヘイル
ベイリー・キャレンダー:クエンティン・マクファーソン
検察官:アーサー・ウォントナー
保安官:エリオット・メイクハム
メンジー:ジョージ・ピュー
巡査部長:アーサー・シートン
巡査:セシルマナー・リング
ワトキンス:アイヴァー・バーナード
評議員:シリル・スミス
キャシディ:W.G.フェイ
ドナルド:ジャック・ショート
イギリス 映画
製作 London Films
1937年製作 87分
公開
イギリス:1937年5月26日
北米:1938年2月25日
日本:1937年
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
スコットランド西海岸、ベイキー。
船で故郷に戻ったヴィクトリア・ガウ(ヴィヴィアン・リー)は、イングランドから来た新聞記者のフランク・バードン(レックス・ハリソン)から声をかけられ、荷物を持ってもらう。
迎えに来た車に乗ったヴィクトリアは、フランクを気にせずにその場を去る。
鑑札金未払いのために愛犬パッツィを取り上げらえることになったホノリア・ヘガティ(サラ・オールグッド)は、現れた巡査部長(アーサー・シートン)と巡査(セシルマナー・リング)に、自分は貧しいアイス売りだと伝えるものの聞き入れてもらえなかった。
パッツィを連れて行かれたヘガティは涙し、彼女を気の毒に思う人々は市の行いを非難し、フランクもその騒ぎを見ていた。
市長ウィリアム・ガウ(セシル・パーカー)の娘であるヴィクトリアは、父が選挙活動を始めることを知る。 ベイリー・キャレンダー(クエンティン・マクファーソン)と共に選挙の話をして将来は首相の座を狙うガウは、戻ったヴィクトリアを歓迎する。 選挙活動のことをヴィクトリアに説明するガウは、党首スケリーヴォア卿(ロバート・ヘイル)が来ることを話し、指導者となる夢を語る。 新聞社”ベイキー・アドヴァタイザー”の社主ホレス・スカーヴィング(ガス・マクノートン)に迎えられたフランクは、議員に立候補するガウ市長の記事を書くよう指示される。 その場に現れたホレスの妻リスベット(ウルスラ・ジーンズ)に挨拶するものの、気のない返事をされたフランクは、ホレスの指示で市庁舎に向かう。 ガウのオフィスにいたヴィクトリアは、現れたリスベットと父が深い関係にあることに気づく。 その後議会を傍聴するフランクは、現れたヴィクトリアが市長の娘とは知らずに、彼の横暴な態度を批判する。 議会を終えたガウは、パッツィのことで話しに来たヘガティを相手にせず、フランクからの取材の申し入れを受けて、彼を屋敷に連れて行こうとする。 車にヴィクトリアが乗っていたために驚いたフランクは、彼女がガウの娘だと知り戸惑う。 市長の補佐マッケラー(エドガー・K・ブルース)の家に向かったヘガティは、その場にパッツィがいたために喜ぶが、いずれ処分されてしまうことを知り再び市長に会おうとする。 屋敷に着きフランクの取材を受けるガウは、訪ねて来たヘガティがヴィクトリアと話していることに気づく。 父がヘガティを相手にしないために気の毒に思ったヴィクトリアは、彼女が愛犬を救おうとしていることを知る。 何とかしてあげようとするヴィクトリアだったが、ヘガティの話を聞こうとしないガウは彼女を追い払う。 信念などを語るガウのヘガティに対する態度に納得できないフランクは、取材した内容を無視して記事を書き替えてしまう。 市長を批判する記事が掲載されたことを気にしないフランクはゴルフ場に向かい、その場にいたヴィクトリアとラウンドする。 アイスクリームを売っていたヘガティは、自分のことが新聞の記事になっていることを知らされて驚き、図書館に向かいそれを確認する。 ヴィクトリアに送ってもらい町に戻ったフランクは、記事のことを知ったリスベットに非難される。 その頃ガウは、集会のための演説の準備をする。 ガウに記事のことを説明しようとしたフランクは、ヴィクトリアからその件を批判され、世のためになることをしようと思いながら育った話をして理解してもう。 記事が掲載されることを知らなかったホレスは、集会を前に焦る。 集会が開かれる市庁舎に到着したガウは、何も知らないまま、ヴィクトリアと共に現れたフランクに、記事を指示通りに書き直したことを確認する。 会場の市民に歓迎されていると思い、ホレスに紹介されて演説を始めたガウは、人々に非難されたために驚きその場を去る。 ようやく記事のことを知ったガウは憤慨し、現れたフランクの説明を聞こうとしない。 市民が押し寄せ暴動寸前である事態を知ったガウだったが、それを恐れることなく外に出て、ヴィクトリアと共に車に乗る。 翌朝、昨夜の騒ぎは自分のせいではないというフランクからの手紙を受け取ったヴィクトリアは、父と彼のことを話す。 フランクを許せないガウは、記事がロンドンの新聞にも載っていることを知り、そこに現れたリスベットから笑い者だと言われる。 フランクを呼んだガウは彼を追求し、敵陣営に買収されたことを考える。 ガウから記事の撤回を要求されるもののそれを拒むフランクは、その場にいたホレスからも非難されて解雇される。 考えを変えないフランクは、弱者を無視するガウを批判してその場を去る。 フランクを支持するヴィクトリアも、考えには従えないと父に伝えて部屋を出る。 鬱憤晴らしに遊戯場に向かったフランクは、追ってきたヴィクトリアから、父が考えを改めたら記事の撤回を考えてほしいと言われ、そのための協力を約束する。 その頃、ヘガティのアイスクリームの屋台が差し押さえられ、パッツィの命も今日までだと知ったフランクは、ガウの行いを批判し、約束は撤回するとヴィクトリアに伝える。 戸惑うヴィクトリアは、フランクが自分を愛していることを知る。 マッケラーの家に向かったヘガティは、パッツィに最後の別れを告げて彼をパブに誘い、気づかれないようにして窓を開ける。 パブに向かった巡査部長と巡査は、獣医が待っていると言ってマッケラーと共に店を出る。 その場にいたフランクは、ヘガティに計画通りだと伝える。 党首スケリーヴォア卿を招き食事会を開いたガウは、犬の記事の件や暴動の説明を求められる。 そこに犬の大群が現れ、ガウとスケリーヴォア卿らは記者に写真を撮られる。 マッケラーからパッツィが逃げたことを知らされたガウは、押し入ってきた犬たちを追い払うことができない。 騒ぎの中、憤慨したスケリーヴォア卿はその場を去る。 それがフランクの仕業だと知ったヴィクトリアは、庭にいた彼に、二度と来ないでほしいと伝える。 十分だと判断したフランクは、合図をして犬を引き揚げさせる。 ガウのことを心配するリスベットは、ヴィクトリアとホレスを非難する。 事態は大問題になり、無償で記事を書き続けるフランクはそれを記者に渡す。 ガウは、罪状をでっち上げてフランクを逮捕するよう、検察官(アーサー・ウォントナー)に指示する。 逮捕されたフランクは裁判を待つことになり、動物愛護団体から派遣されたワトキンス(アイヴァー・バーナード)の協力を拒み、誰の手も借りようとしなかった。 面会に来たヘガティから、人の手助けも受けるべきだと言われたフランクは、これ以上、皆やヴィクトリアを傷つけたくないと伝える。 世論はヘガティとパッツィに味方し、非難の嵐の中でガウは、市長の辞任を表明するものの却下される。 パッツィ事件の判決が下される裁判が開かれ、フランクは法廷に向かう。 ヴィクトリアから批判されたガウは、彼女がフランクに惹かれていることを知るものの、許す気はなかった。 証人として呼ばれたヘガティはパッツィを伴い、検察官から、フランクがガウに対し怒りを抱いていたたかを問われるものの、弁護人から無関係な質問だと言われたために証言を終える。 パッツィのことを説明するキャシディ(W.G.フェイ)の証言も必要ないと言う弁護人は、国中の住人を呼び出すつもりかと意見する。 判事から態度を批判された弁護人は退廷し、フランクは自己弁護することを許可される。 休廷となり、ヴィクトリアと話したフランクは、彼女が検察側の証人であることを知る。 開廷してガウが証人として呼ばれ、ヴィクトリアは隙を見て法廷に入る。 フランクから、いつまで迫害を続ける気だと訊かれたガウは、自分のような悪党は抗議されても当然だと言われる。 暴動が起きた理由を問われたガウは、弱い者いじめをすれば一般人は黙っていない言うフランクの話を聞こうとせず、家族の絆を乱したことを非難する。 証人として呼ばれたヴィクトリアはそれを拒み、被告フランクとは夫婦なので無理だと伝える。 裁判は延期され、マッケラーは、フランクとヴィクトリアが夫婦だったことを人々に知らせて驚かせる。 フランクを読んだガウは、ヴィクトリアとの結婚はウソだったことを知る。 ヴィクトリアから、訴状を取り下げ争いをやめさせるためにしたと言われたガウは、偽証罪であることに戸惑う。 ガウが去った後、フランクとヴィクトリアはキスする。 慌てて検察官の元に向かったガウは、訴状を取り下げることを伝えるものの無理だと言われる。 法廷に戻ったガウは証言台に立ち、被告フランクの行動は正しかったと言って、すべて誤解だったと証言する。 ヘガティと市民、そしてパッツィは喜び歓声を上げる。 自分の傲慢な態度を謝罪したガウは、フランクに感謝する。 その後、政治生命を諦める気のないガウは、指導者としての考えを国民に伝える。 その演説を車のラジオで聴きながら、フランクとヴィクトリアは新婚旅行に向かう。
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*(簡略ストー リー)
スコットランド西海岸、ベイキー。
傲慢な野心家である市長ガウは、首相を目指し議員選挙の準備をしていた。
故郷に戻ったガウの娘ヴィクトリアは、イングランドから来た新聞記者のフランクと出会う。
貧しいアイスクリーム売りの婦人ヘガティは、鑑札料を支払わなかったために、市長の命令で愛犬パッツィを奪われてしまう。
それを知った地元新聞社で働くことになったフランクは、ヘガティを気の毒に思い、市長の取材内容を変更してその件を記事にしてしまう。
市民は市長を批判して大問題になり、フランクは、ヘガティに同情するヴィクトリアと共に戦う決心をするのだが・・・。
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ブルーノ・フランクによるドイツ国で上演された戯曲”Sturm im Wasserglas”と、ジェームズ・ブライディによる戯曲”Storm in a Teacup”(ロンドン)、”Storm Over Patsy”(ブロードウェイ)を基に製作された作品。
脚本家、編集、製作などで活躍していたイアン・ダリンプルとヴィクター・サヴィルが共同で監督した作品。
ハリウッド風に言えば”スクリューボール・コメディ”と言える内容で、ナチスの台頭により緊張感が高まる時代に製作された、権力や特権階級を批判するブラック・コメディ的な雰囲気で展開する物語となっている。
デビュー間もないものの既に活躍していたヴィヴィアン・リーとレックス・ハリソンの共演は注目であり、彼にとっては初の大役となった。
主演のヴィヴィアン・リーは、市長である傲慢な父と、彼の考えを正そうとする正義感ある記者との狭間で心揺れ動く女性を好演している。
ヴィヴィアン・リーは本作の北米公開時期(1938年2月)に、「風と共に去りぬ」(1939)の”スカーレット・オハラ”役に選ばれる可能性があり、ローレンス・オリヴィエを頼りハリウッドに向かったという経緯がある。
本作が出世作とも言えるまだ20代のレックス・ハリソンは、弱者を助けるために権力に立ち向かう青年記者を熱演している。
娘や青年記者の行動に手を焼く傲慢で野心家の市長セシル・パーカー、彼に愛犬を奪われる貧しい婦人を愉快に演ずるサラ・オールグッド、新聞社社主(ガス・マクノートン)の妻で市長と深い関係にあるウルスラ・ジーンズ、老婦人に同情する市長の補佐エドガー・K・ブルース、政党党首のロバート・ヘイル、市長の友人クエンティン・マクファーソン、検察官のアーサー・ウォントナー、保安官のエリオット・メイクハム、巡査部長のアーサー・シートン、巡査のセシルマナー・リング、動物愛護団体のアイヴァー・バーナード他、シリル・スミス、W.G.フェイなどが共演している。