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おみおくりの作法 Still Life (2013)

孤独死した人の葬儀を執り行う準備と共に親族を捜す公務員の日常を描く、製作、監督、脚本ウベルト・パゾリーニ、主演エディ・マーサンジョアンヌ・フロガット他共演のドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ


スタッフ キャスト
監督:ウベルト・パゾリーニ

製作
ウベルト・パゾリーニ
フェリックス・ヴォッセン
クリストファー・サイモン
製作総指揮:バーナビー・サウスクーム
脚本:ウベルト・パゾリーニ
撮影:ステファーノ・ファリヴェーネ
編集
トレイシー・グレインジャー
ギャヴィン・バックリー
音楽:レイチェル・ポートマン

出演
ジョン・メイ:エディ・マーサン
ケリー・ストーク:ジョアンヌ・フロガット
プラチェット:アンドリュー・バカン
ジャンボ:キアラン・マッキンタイア
シャクティ:ニール・ディスーザ
メアリー:カレン・ドルーリー
ホームレス:ポール・アンダーソン
ホームレス:ティム・ポッター

イギリス/イタリア 映画
配給
Redwave Films
Embargo Films
2013年製作 92分
公開
イギリス:2015年2月6日
北米:2015年1月16日
日本:2015年1月24日
北米興行収入 $9,480


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー
ロンドン
ケニントン地区の職員である民生係ジョン・メイ(エディ・マーサン)は、孤独死した人の葬儀を執り行う仕事をしていた。

亡くなった人物の親族を捜すジョンは、見つかった場合は葬儀費用の請求はせず、葬儀の参列の義務もないことを伝える仕事を淡々とこなした。

几帳面なジョンは、調査が終了した人の写真を持ち帰り、アルバムに保管していた。

親族を捜すものの、ほとんどの場合は自分一人で公営合同墓地で埋葬まで済ますジョンは虚しさを感じる。

自分が埋葬される場所を決めていたジョンは、眺めのいいそこに向かい、仰向けになってみる。

次の仕事の連絡が入り、住所が自分のアパートの向かいの建物だと知ったジョンは、死後数週間経って発見された男性の部屋に向かう。

管理人と共に部屋を調べたジョンは、アル中だったと思われる亡くなった”ウィリアム”ビリー”ストーク”と言う男性の調査を始める。

上司のプラチェット(アンドリュー・バカン)に呼ばれたジョンは、部署の合併先ダリッチ地区のピルジャーを紹介され、業務はそちらに移ることを知らされる。
...全てを見る(結末あり)

そのために解雇を言い渡されたジョンは、徹底した調査は認めるが、時間のかけ過ぎをプラチェットに指摘され、再出発するいい機会だと言われる。

ストークの件が最後の仕事となることを知ったジョンは、3日で終わるようにと指示される。

帰宅したジョンは、真向かいだったストークの部屋の窓を眺め、そこから持ってきたアルバムに貼られている少女の写真を確認する。

翌日、パブなどを回ったジョンは手がかりがつかめず、処分されるストークの荷物の中にあったレコードを持ち帰る。

レコードに挟まれていた写真のネガを現像したジョンは、それに写る男性がかぶる”オーカム・ベーカリー”の帽子に注目する。

オーカム
ポークパイ工場で、写真に写っていたシャクティ(ニール・ディスーザ)と話し写真を見せたジョンは、ストークを知っている彼から、短気な男で逆らう者はいなかったと言われる。

シャクティにアルバムも見せたジョンは、写真が娘だと思うことで意見が一致し、ストークがフィッシュ・アンド・チップスの店の女性とウィットビーに行ったことを知る。

数日中にロンドンでストークの葬儀を行うので来てほしいとシャクティに伝えたジョンだったが、飲むならいいが葬儀は気が進まないと言われる。

ロンドンには戻らず、プラチェットに電話をして、体調不良のため明日も休むと伝えたジョンは北に向かう。

ウィットビー
何軒かフィッシュ・アンド・チップス店を回ったジョンは、メアリー(カレン・ドルーリー)という女性の店で、彼女がストークと付き合っていたことを知る。

メアリーからストークの話を聞いたジョンは、彼女が店の外に出ている間に、魚を配達に来た男性から、ストークに友人などいないと言われる。

ストークが死んだことを知った男性は、彼が異常者のような荒っぽい男だったことをジョンに話す。

娘と戻ってきたメアリーは、人が変わったストークは、酒に溺れて自分にまで当たり始め、暫くして出て行ったので、その後は刑務所に入ったのではないかとジョンに話す。

ストークのアルバムを見せたジョンは、メアリーから家族がいたことは知らないと言われる。

娘のことも心当たりはないと言うメアリーは、ストークが知らない娘ならいると伝える。

幼い子供をメアリーに預けて仕事に行った女性がストークの娘だと知ったジョンは、彼女と孫を連れて葬儀に参列してほしいとメアリーに伝える。

メアリーに断られたジョンは、ストークのその後の消息もわからないままその場を去る。

ロンドンに戻り、メアリーから受け取った魚を調理して食べたジョンは、今までの記録であるアルバムを開き、それぞれの仕事のことを思い出す。

翌日ジョンは、墓地の指定された場所に無造作に遺灰を撒くピルジャーの姿を見つめる。

遺体安置所に向かったジョンは、自分たちの最後の仕事だと言って、ストークの資料を係員に渡す。

プラチェットから、弔う者がいなければ葬儀は不要だと思うと言われたジョンは、一度もそんな考えになったことはないと伝える。

死者の想いなど存在しないと伝えたプラチェットは、その場を去る。

ストークのアルバムを見つめたジョンは席を立ち、車で帰ろうとするプラチェットを呼び止め、もう数日ほしいと伝える。

ジョンは、自分の時間でやるなら許可すると言われる。

刑務所でストークの服役歴などを彼を知る看守から聞いたジョンは、面会記録は内務省にあると言われる。

ジョンは、全員が賭けた慈善募金のために歯でベルトに食いついたストークが、3分半も4階からぶら下がった話を聞き、彼が無鉄砲な男だったとしか分からなかった。

内務省に向かったジョンは、服役中のストークに面会した”ケリー・ストーク”という女性の記録を確認して、彼女がトゥルーロに住んでいることを知る。

新しいアルバムを買ったジョンは、ストークのアルバムの少女の写真を張り直す。

トゥルーロ
犬のシェルターを訪ねたジョンは、その場にいたケリー(ジョアンヌ・フロガット)に挨拶し、ストークの娘であることを確認して、ケニントン地区の民生係だと伝える。

父親が亡くなったことを知らされたケリーは、いつ亡くなったかは正確には分からないと言われる。

動揺するケリーは、それ以上、話を聞こうとしなかったものの、ジョンから父の遺品であるアルバムを見せられる。

それを見たケリーは、ジョンと共に家に向かう車の中で話をする。

手紙すらくれなかった父が、自分の18歳の誕生日に刑務所から酔った様子で電話をしてきて、謝罪したいと言われたために、母と共に面会に行ったことをケリーは話す。

会った途端に感情が昂ぶり父と口論になり、止めに入った看守まで殴って連れて行かれた父とはそれが最後だったという話を、ジョンはケリーから聞く。

ケリーの家で、ストークが”フォークランド紛争”当時のパラシュート部隊の同僚ジャンボ(キアラン・マッキンタイア)と写る写真を見せられたジョンは、それを渡される。

なぜ持っていたのか分からないと言いながら涙ぐむケリーの気持ちを察するジョンは、母親のことを尋ね、3年前に亡くなったことを知る。

去ろうとするジョンを呼び止めて、父の死を教えてくれたことに感謝したケリーは、葬儀の件で気が変わったら連絡がほしいと言われる。

これ以上その件については話したくないとジョンに伝えたケリーは、家に戻る。

ロンドンに戻り施設を訪れたジョンは、ジャンボに会い話を聞く。

夕食を用意してくれていたジャンボに、自分の好みのツナ缶とトーストだったために完璧だと伝えてジョンは、ストークは荒っぽい男だったが命の恩人だったという話を聞く。

除隊後にストークはホームレスになったと言われたジョンは、酒で人を殺した記憶を消そうとしたということだった。

負傷して退院した後にロンドンに住み結婚もしたという思い出を、ジャンボはジョンに話す。

ストークがいた区域に向かいホームレスの二人(ポール・アンダーソン/ティム・ポッター)に話を聞こうとしたジョンは、ストークを知る彼らに数週間前に亡くなったことを伝える。

酒を持ってくれば話すと言われたジョンは、酒屋でウィスキーの大瓶を買い、二人の元に戻りそれを渡しストークの話を聞く。

その後ジョンは、ストークの墓石と棺桶を用意し、自分のために考えていた墓地の区画を確保し、そこに彼を埋葬することを考える。

オフィスを片付けたジョンは、ストークの調査を終了し、彼が刑務所でしたように、窓枠にベルトをかけて噛んでみようとする。

そこにケリーから電話があり、葬儀のための打ち合わせをしたいと言われたジョンは、それを嬉しく思う。

建物を出たジョンは、プラチェットの車のタイヤに放尿する。

トゥルーロ
翌日、駅の近くのカフェでケリーに会い話をしたジョンは、葬儀で流す音楽のことなどを伝える。

墓石の赤御影石はパラシュート部隊のベレー帽の色であり、眺めがいい墓地の埋葬場所などを熱心に話してくれるジョンに、ケリーは好意を持つ。

電車に乗り、葬儀の後でお茶かココアでも飲みながら話をしたいとジョンに伝えたケリーは、いくらでも時間があるので喜んで付き合うと言われる。

感謝されたジョンは、仕事をしただけだと伝えてケリーを見送る。

ロンドンに戻り、金曜の葬儀の際にケリーに贈る犬の絵柄のカップを購入したジョンは、その帰り道でバス(ニュー・バス・フォー・ロンドン)に轢かれて死亡する。

金曜日。
享年44歳のジョンの葬儀には誰も出席せず、棺は墓地に運ばれる。

その場では、ケリーやメアリーと娘と孫、ジャンボや戦友、ホームレスの二人、シャクティ、刑務所の看守など、ジョンが会ったすべての人々が参列して、ストークが埋葬されようとしていた。

現れないジョンのことを心配するケリーは、神父以外は誰も付き添わない霊柩車が通り過ぎるのが気になる。

ジョンは公営合同墓地に埋葬され、その様子を見つめながらケリーはその場を去る。

暫くすると、ストークなど、ジョンが携わった孤独死した人々の霊が現れる。


解説 評価 感想

*(簡略ストー リー)
ロンドン
ケニントン地区の民生係ジョン・メイは、孤独死した人の葬儀を執り行う仕事をしていた。
ある日、自分のアパートの向かいの建物の部屋に住むストークという男性が死亡していたことが分かり、ジョンは彼の調査を始めて親族を捜す。
経費削減のため、上司のプラチェットから解雇を言い渡されたジョンは、落胆しながらもストークの調査を続けるのだが・・・。
__________

投資銀行家の経歴を持つ、「ミッション」(1986)で助監督、「フル・モンティ」(1997)では製作に参加したイタリアの映画製作者ウベルト・パゾリーニが、製作、脚本を兼ねて監督した作品。

孤独死した人の葬儀を執り行う準備と共に親族を捜す公務員の日常を描くドラマ。

主人公が最後の仕事として調査する”ビリー・ストーク”の映像はほとんど登場しないが、その人物像が、調査の過程で観る者に鮮明に伝わってくる演出と脚本が素晴らしい。

第70回ヴェネチア国際映画祭では、オリゾンティ部門監督賞他4部門で受賞した作品。

穏やかに進行する物語の中で流れる、レイチェル・ポートマンの音楽が非常に印象に残る。

多くの話題作で名バイプレイヤーとして活躍する主演のエディ・マーサンは、几帳面に淡々と仕事をする公務員を好演している。
一本調子な役柄なのだが、セリフのない場面の表情だけで感情を表現する彼の演技は素晴らしく、地味な役者ではあるが、自分を含め彼のファンは多いはずだ。

孤独死したストークの娘で、親身になってくれる主人公と心通わせる女性を演ずるジョアンヌ・フロガット、ストークの戦友であるキアラン・マッキンタイア、主人公を解雇する上司アンドリュー・バカン、パイ工場で働くストークの元同僚ニール・ディスーザ、フィッシュ・アンド・チップス店を経営するストークの元恋人カレン・ドルーリー、ホームレスのポール・アンダーソンティム・ポッターなどが共演している。


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