精神科医療施設の医師が赴任した院長に惹かれながら記憶を失っていた彼の過去の秘密を解き明かそうとする姿を描く、製作デヴィッド・O・セルズニック、監督アルフレッド・ヒッチコック、主演イングリッド・バーグマン、グレゴリー・ペック、レオ・G・キャロル他共演のミステリー・スリラーの秀作。 |
・アルフレッド・ヒッチコック Alfred Hitchcock 作品一覧
・アルフレッド・ヒッチコック / Alfred Hitchcock / Pinterest
・イングリッド・バーグマン / Ingrid Bergman / Pinterest
・グレゴリー・ペック / Gregory Peck / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:アルフレッド・ヒッチコック
製作:デヴィッド・O・セルズニック
原作
ヒラリー・セント・ジョージ・サンダース
フランシス・ビーディング
”The House of Dr. Edwardes”
脚本
ベン・ヘクト
アンガス・マクファイル
撮影:ジョージ・バーンズ
編集:ハル・C・カーン
音楽:ミクロス・ローザ
出演
コンスタンス・ピーターセン:イングリッド・バーグマン
アンソニー・エドワーズ/ジョン・バランタイン:グレゴリー・ペック
マーチソン:レオ・G・キャロル
アレクサンダー”アレックス”ブルロフ:マイケル・チェーホフ
メアリー・キャミチール:ロンダ・フレミング
フレロー:ジョン・エメリー
ガームス:ノーマン・ロイド
エンパイア・ステート・ホテルの警備係:ビル・グッドウィン
エンパイア・ステート・ホテルの旅行客:ウォーレス・フォード
クーリー警部補:アート・ベイカー
ギレスピー巡査部長:レジス・トゥーミイ
アメリカ 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ
1945年製作 111分
公開
北米:1945年12月28日
日本:1951年11月23日
製作費 $1,500,000
北米興行収入 $6,387,000
■ アカデミー賞 ■
第18回アカデミー賞
・受賞
音楽賞(ドラマ・コメディ)
・ノミネート
作品・監督
助演男優(マイケル・チェーホフ)
撮影(白黒)・特殊効果賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
精神医療施設”緑の園”の医師コンスタンス・ピーターセン(イングリッド・バーグマン)は、退任する院長マーチソン(レオ・G・キャロル)の労を労う。
間もなく新任院長のアンソニー・エドワーズ(グレゴリー・ペック)が現れ、マーチソンと引継ぎをする。
エドワーズは食事の席でピーターセンに挨拶し、仕事一筋の彼女はエドワーズに惹かれてしまう。
席に着いたエドワーズは、施設増築でプールを作る話をし始めたピーターセンが、フォークでテーブルクロスに線を描いた瞬間に動揺してしまう。
ピーターセンは、ナイフでその縞模様を消そうとするエドワーズの行動を気にする。 同僚医師は、エドワーズがピーターセンに好意を持ったことを確信し彼女をからかう。 患者のガームス(ノーマン・ロイド)と話していたエドワーズはピーターセンを呼ぶ。 エドワーズはピーターセンを誘い、二人はランチを持参して散歩に出かける。 施設に戻ったピーターセンは、ガームスが興奮状態になったことを知り慌てて同僚医師の元に向かう。 ピーターセンがエドワーズと出掛けたことを知っていた同僚は、彼女を再びからかう。 その夜、眠れないピーターセンは、エドワーズの部屋から明かりが漏れていることを気にしながら図書室に向かい、彼の著書を手にして戻ろうとする。 エドワーズが気になり部屋に入ったピーターセンは、彼が読書しながらソファーで眠っていることを知る。 目覚めたエドワーズは、著書について語るピーターセンが、それが口実で思いを伝えたかったことを知る。 ピーターセンの気持ちを受け入れ、自分も同じ考えだと伝えたエドワーズは彼女を抱き寄せる。 しかし、ピーターセンのガウンの縞模様に気づいたエドワーズは動揺する。 そこにガームスが自分の喉を切ったという連絡が入り、エドワーズとピーターセンは手術室に向かう。 ところが、エドワーズは取り乱してしまい、気を失いかけて部屋に運ばれる。 エドワーズに付き添っていたピーターセンは、著書のサインと自分が受け取った彼のメモの筆跡が違うことに気づく。 目覚めたエドワーズは、あることを思い出したと言ってピーターセンに話し始める。 自分がエドワーズを殺し成りすましたという男(グレゴリー・ペック)は、記憶が完全に戻らないまま、”J.B.”と刻まれたシガレットケースをピーターセンに渡し、それが名前だと彼女に言われる。 ピーターセンに休むよう言われたJ.B.だったが、彼女に迷惑はかけられないという手紙を残して姿を消す。 その後、警察の捜査が始まり、エドワーズの秘書だった女性が現れ、マーチソンらは男がエドワーズとは別人だということを写真で確認する。 マーチソンはピーターセンの部屋に向かい、彼女はJ.B.の手紙が床に落ちていることを気にしながら対応し、行き先を知らないことを伝える。 床に落ちていた手紙を拾ったマーチソンはピーターセンにそれを渡し、彼女はJ.B.がニューヨークのホテルに向かったことを知る。 記憶を失った者は追い込まれると自殺するという同僚の話を聞いたピーターセンは、急遽ニューヨークに向かう。 ”エンパイア・ステート・ホテル” 喧嘩をした夫を捜しに来たということを警備係に伝え、協力を得てJ.B.の部屋を知ったピーターセンは彼の元に向かう。 J.B.と愛を確かめ合ったピーターセンは、彼の記憶を取り戻す手助けを始め、左手の火傷痕に気づく。 その原因を思い出せないJ.B.は動揺するが、記憶を取り戻すきっかけができたと言ってピーターセンは彼を励ます。 新聞に自分の写真が載っていることを知ったピーターセンは、J.B.を伴いホテルを出て駅に向かい、彼が過去に行った場所を突き止めようとする。 切符の販売窓口に向かったJ.B.は、格子を目の前にして動揺し、行き先が”ローマ”だと言いながら倒れそうになる。 とりあえず切符を買ったピーターセンは、恩師でもある医師アレクサンダー”アレックス”ブルロフ(マイケル・チェーホフ)に会うため、ロチェスターに向かうことをJ.B.に伝える。 汽車に乗車したJ.B.は、”ローマ”に行ったことを思い出してみる必要があるとピーターセンに言われる。 それがイタリアのローマなのか・・・ ロチェスター。 そこにブルロフが戻り、ピーターセンは再会を喜ぶが、クーリー警部補(アート・ベイカー)とギレスピー巡査部長(レジス・トゥーミイ)が、エドワーズの件を聞きに来たことを知り動揺する。 ブルロフは、嫌ってはいたがエドワーズの死との関連を否定し、警官はその場を去る。 ピーターセンは結婚したことをブルロフに伝え、祝福された二人は部屋を提供される。 新婚のような気分を味わった二人だったが、ベッドの”白い”シーツの縞模様を見たJ.B.は、何かを思い出しそうbになりながら興奮して気を失ってしまう。 その後、目覚めたJ.B.は、バスルームでひげを剃ろうとするが、”白い”泡や洗面台、コップやピーターセンが眠るベッドの縞模様のシーツを見て動揺する。 剃刀を持ったまま階下に降りたJ.B.は、起きていたブルロフからミルクを渡されてそれを飲み干す。 翌朝、J.B.がいないことに気づき、ソファーにもたれかかるブルロフの身に何かあったのかと驚くピーターセンだったが、彼はその場で寝てしまっただけだった。 姿の見えないJ.B.がソファーで寝ていることをピーターセンに知らせたブルロフは、最初から二人の行動を察していたことを分析医の権威として伝える。 危険んを察知したブルロフは、ミルクに鎮静剤を入れたことを伝え、J.B.が剃刀を持っていたことも知らせる。 J.B.が殺人者である可能性を指摘するブルロフは、分析医から恋をする女性となったピーターセンの話を聞かされる。 警察を呼ぶ気でもあったブルロフだったが、数日間だけでも治療させてほしいと言うピーターセンの説得に仕方なく応じる。 J.B.を起こしたブルロフは、彼の力になることを伝え、ピーターセンと共に記憶を取り戻す治療を始める。 奇妙な夢の話をしたJ.B.は、外の様子に気づき話を止める。 窓の外の雪景色を見たピーターセンは、J.B.の恐怖が雪の”白”とそこに残ったソリの通った跡の”線”だと気づく。 スキーが関係しているとピーターセンに指摘されたブルロフは殺人が関わっていると語り、それを聞いていたJ.B.は、持っていたコーヒー・カップを落としてしまう。 夢にヒントがあると考えたピーターセンとブルロフは考えを巡らせ、関係している”ガブリエル谷”のことをJ.B.は思い出す。 我慢の限界に達したJ.B.は警察に行くと言い出すが、ピーターセンは雪山に向かおうとする。 ピーターセンは、同行を拒むJ.B.に愛を伝え、殺人犯でないことを信じていることを付け加える。 その頃、警察のコーリー警部補には手配中のピーターセンの写真が届き、彼はブルロフの家に向かう。 雪山に上り滑走したピーターセンとJ.B.は”ガブリエル谷”に近づく。 J.B.は谷に落ちる寸前で、子供時代に誤って弟を突き落とし殺してしまった事故のことを思い出す。 滑ることを止めたJ.B.はピーターセンを抱き寄せる。 その後、山小屋でJ.B.は、自分の名がジョン・バランタインだったことを思い出してピーターセンに伝える。 バランタインは、出会ったエドワーズとこの場でスキーを楽しんでいた際に、彼が崖から転落したことを弟の事故死と重ねて考え、自分が殺したと思い込んでいたのだった。 その件から逃避するためバランタインはエドワードも演じ、彼が生きていることを証明しようとしたとピーターセンは分析する。 愛を確かめた二人だったが、そこにクーリー警部補とギレスピーが現れ、エドワーズの遺体は発見されたものの、銃痕が見つかったためにバランタインは殺人罪で逮捕されてしまう。 その後、ピーターセンはあらゆる努力をしてバランタインを救おうとするが無駄だった。 施設に戻ったピーターセンは、訪ねて来たブルロフに励まされ、全てを忘れ新たな人生を歩むよう助言される。 院長に戻ったマーチソンにも同じことを言われたピーターセンは、彼がエドワーズを知ってはいるが好きではなかったという言葉を気にする。 バランタインの夢のメモを持参してマーチソンの部屋に向かったピーターセンは、彼がエドワーズを殺した犯人であることを暴く。 院長交代を苦にして悩み衰弱し、エドワーズを憎んだマーチソンは、バランタインと共に雪山に向かった彼を背後から銃撃したことも認める。 マーチソンに銃を向けられたピーターセンだったが、目撃者などがいるはずだと指摘する。 二人殺しても罪は同じだと開き直るマーチソンは、最初の殺人時は健康状態が考慮され情状酌量で罪は問われないが、今回は殺人罪となると言い残して席を立つピーターセンを撃つことができない。 マーチソンは、ピーターセンが部屋を出た後、銃口を自分に向けて自ら命を絶つ。 その後バランタインは釈放される。 ピーターセンは、ブルロフに祝福されながら新たな人生を歩むために、バランタインと共に旅立つ。
...全てを見る(結末あり)
ピーターセンは、ピッツバーグからの旅行者(ウォーレス・フォード)に絡まれるものの、ホテルの警備係(ビル・グッドウィン)が彼を追い払う。
J.B.は、戦場での戦闘で軍服が燃えたため火傷をした可能性があることをピーターセンに伝える。
ブルロフの家に着いた二人は、その場に外出中の主人を待つ警官がいることを知る。
★ヒッチコック登場場面
上映から約38分、ホテルのエレベーターを出る、ヴァイオリン・ケースを持ちタバコを吸いながら立ち去る男性がヒッチコック。
*(簡略ストー リー)
精神医療施設”緑の園”の医師コンスタンス・ピーターセンは、退任するマーチソン院長に代わり赴任したアンソニー・エドワーズに惹かれてしまう。
仕事一筋であったピーターセンは、エドワーズへの思いが抑えきれなくなるのだが、彼が縞模様や白い色を恐れ、エドワーズを殺し成り済ました記憶喪失者であることを知ってしまう。
姿を消したエドワーズを追ったピーターセンは、彼を助けるために恩師である分析医ブルロフの元に向かうのだが・・・。
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1927年に発表された、ヒラリー・セント・ジョージ・サンダースとフランシス・ビーディングの小説”The House of Dr. Edwardes”を基に製作された作品。
縞模様や白い色に隠された恐怖の秘密を暴く謎解きと、ミステリアスな雰囲気を漂わせる異色作であり、様々な手法を駆使したアルフレッド・ヒッチコックの演出は見応え十分。
中でも、夢の世界を描くサルバドール・ダリが担当した幻想的な世界は見事であり、その映像センスは話題になり映画史に残るものとなった。
ミルクを飲むコップの中からのショット、殺人犯が自ら命を絶つ画面に銃口を向けるシーンなども注目だ。
第18回アカデミー賞では、非常に印象的な楽曲を提供したミクロス・ローザが音楽賞(ドラマ・コメディ)を受賞した。
・ノミネート
作品・監督
助演男優(マイケル・チェーホフ)
撮影(白黒)・特殊効果賞
30歳を前に既に貫録さえ感じさせる主人公を演ずるイングリッド・バーグマンは、恋に悩みながら、対面する相手を鋭く分析する美貌を備えた精神科医を好演している。
イングリッド・バーグマンより一歳年下のグレゴリー・ペックは前年デビューしたばかりであり、期待のホープとして記憶を失い苦悩する謎の男性を熱演している。
目立たないのだが、冒頭から怪しい雰囲気で演ずる院長役、ヒッチコック作品ではお馴染のレオ・G・キャロル、アカデミー助演賞にノミネートされた、主人公の恩師である著名な精神分析医を演じたマイケル・チェーホフ、患者ロンダ・フレミング、同じく若き日の名優ノーマン・ロイド、ホテル警備係ビル・グッドウィン、旅行客ウォーレス・フォード、警官アート・ベイカー、レジス・トゥーミイなどが共演している。