SF作家ハリー・ハリスンが1966年に発表した小説”Make Room! Make Room!”(人間がいっぱい)を基に製作された作品。 人口増加問題による食糧政策の秘密を描く、監督リチャード・フライシャー、主演チャールトン・ヘストン、エドワード・G・ロビンソン、チャック・コナーズ、ジョゼフ・コットン共演によるSFサスペンス。 |
・SF
■ スタッフ キャスト ■
監督:リチャード・フライシャー
製作
ウォルター・セルツァー
ラッセル・サッチャー
原作:ハリー・ハリスン
『人間がいっぱい』”Make Room! Make Room!”(1966)
脚本:スタンリー・R・グリーンバーグ
撮影:リチャード・H・クライン
編集:サミュエル・E・ビートリー
音楽:フレッド・マイロー
出演
チャールトン・ヘストン:ロバート・ソーン
エドワード・G・ロビンソン:ソル・ロス
チャック・コナーズ:タブ・フィールディング
ジョゼフ・コットン:ウィリアム・R・サイモンソン
リー・テイラー=ヤング:シャール
ブロック・ピーターズ:ハッチャー
ウィット・ビッセル:サンティーニ知事
ロイ・ジェンソン:ドノヴァン
スティーブン・ヤング:ギルバート
ポーラ・ケリー:マーサ
リンカーン・キルパトリック:神父
アメリカ 映画
配給 MGM
1973年製作 97分
公開
北米:1973年5月9日
日本:1973年6月
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
2022年、ニューヨーク、人口4000万人。
人口増加による食料不足で、一部の裕福層を除き、市民は、週一回の食料配給で、何とか生き延びている状況だった。
この食料を供給するソイレント社は、材料のプランクトンの減少により、新製品ソイレント・グリーンを開発した。
しかし、品不足から、配給を待つ市民の不満は暴動になりかねない状態だった。
刑事ロバート・ソーン(チャールトン・ヘストン)は、元大学教授で、アドバイザーでもある老人ソル・ロス(エドワード・G・ロビンソン)と暮らしていた。
ある日、ソイレント社の幹部ウィリアム・R・サイモンソン(ジョゼフ・コットン)が、ドノヴァン(ロイ・ジェンソン)に指示を受けた、ギルバート(スティーブン・ヤング)という青年に殺害される事件が起き、それをソーンが担当することになる。 ソーンは、事件現場の豪邸で、サイモンソンに付き添うボディガードのタブ・フィールディング(チャック・コナーズ)と、”ファニチャー”と呼ばれる、配置された女性シャール(リー・テイラー=ヤング)に会う。 殺人が起きた時には、二人はあいにく留守だったのだが、ソーンは、タブに尋問を始める。 そんなソーンは、豪邸内の豪華な設備や、久しぶりに味わう酒、そして水や石鹸といった豊富な物資に驚いてしまう。 ”みやげ”を持って帰宅したソーンは、それをロスに渡し、果物や牛肉を見た彼は、昔を想い起こし涙してしまう。 翌日、ソーンは、上司ハッチャー(ブロック・ピーターズ)に、今回の事件が、何らかの陰謀が絡む殺人だと報告する。 ダブを疑い、周辺を調査し始めたソーンは、彼の家で同棲相手のマーサ(ポーラ・ケリー)に探りを入れ、彼らが平民では買えない物資を所持していることなどを突き止める。 帰宅したソーンは、サイモンソンの家から持ち帰った食材で、何年かぶりのまともな食事を楽しむ。 ロスの調査で、事件の背後に大物が絡んでいると感じたソーンは、それをハッチャーに報告し、自分が尾行されていることも伝える。 シャールの元に向かったソーンは、サイモンソンの死が強盗の仕業でないことを告げ、独りになり淋しがる彼女と愛し合うようになる。 その後ソーンは、サイモンソンから告白を受けた神父(リンカーン・キルパトリック)に会うが、その内容が、身の破滅を招くということしか分からなかった。 署に戻ったソーンは、ハッチャーから捜査の打ち切りを知らされるが、彼はそれを断固として拒否する。 事件終結を望む州知事サンティーニ(ウィット・ビッセル)は、ソーンが捜査終了を拒否したことと、彼が、サイモンソンが生前に会っていた神父に接触したという報告を受ける。 そしてタブが、州知事の部下ドノヴァンの命令を受け神父を殺害する。 食料配給所の警備に当たっていたソーンは、市民の不満により起きた暴動に紛れたギルバートから命を狙われるものの、辛くもそれを逃れる。 ソーンは、タブを自宅で待ち伏せて痛めつけ、殺人事件との関係を問い詰めて、捜査の邪魔をさせないよう、彼を脅して立ち去る。 ギルバートに足を撃たれていたソーンは、シャールの元に向かい彼女との一時で安らぎを得る。 その頃ロスは、情報交換所の集まりで、ソイレント社によるサイモンソン殺人事件の真相を知る。 そしてロスは、人類の置かれている現実に絶望し、安楽死のできるホームへと向かう。 それを知ったソーンはロスの元に向かい、彼の安楽死の処置を止めさせようとする。 ロスは、大スクリーンに映し出される、かつて見た、美しい地球の自然を目にしながら息を引き取ろうとしていたが、ソーンと話をすることが出来る。 ロスはソーンに、ソイレント・グリーンの秘密を語り、静かに息を引き取る。 ロスの話を聞き、その裏付けを取るよう言われて愕然としたソーンだったが、ホームから運び出される多数の遺体の移送場所に向かう。 そこでソーンは、ソイレント・グリーンが人肉を原料にして加工されている現場を目撃してしまう。 その場を逃れ、情報交換所に向かったソーンは、シャールに電話して危険を伝え、ハッチャーに助けを求める。 ダブに襲われたソーンは、銃弾を受けながらも教会に逃げ込み彼を倒す。 傷を負ったソーンは、駆けつけたハッチャーに、ソイレント・グリーンは人間が原料であり、それを交換所の人々に知らせるよう伝える。 そして、タンカで運ばれるソーンは叫び続ける。 ”ソイレント・グリーンは人間だ!、何とかそれを止めなくては・・・”と。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
2022年。
人口増加による世界の食料不足が深刻化して、食料供給会社ソイレント社は、プランクトンなどの減少もあり、新製品”ソイレント・グリーン”を開発した。
そんな時、ソイレント社の幹部サイモンソンが殺害される事件が起きる。
事件の担当刑事ロバート・ソーンは、同居する老人で、元大学教授のアオバイザーのロスの協力で捜査を始める。
事件の背後に、大きな陰謀が隠されていることを察知したソーンは、サイモンソンのボディーガードだったタブを疑い調査を始める。
自分自身も尾行され、捜査打ち切りを言い渡されたソーンは命を狙われる。
そして、協力者ロスは、サイモンソン殺害に関係する、恐ろしい真実を知り絶望する・・・。
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希望もない未来に不安を感じながらも、必死で生き抜こうとする刑事と、絶望して自ら死を選ぶ老人、現実を知った二人の苦悩を含め、リチャード・フライシャーは、単なるSFアクションとしてでなく、友情や悲哀もストレートに描いている。
公開当時から50年後に人口増加で食糧難が起きるという、1970年代前半に考えてもかなり現実味のある内容が話題を呼んだSF作品でもある。
住まい、仕事、食料、全てが不足し、その生活に疲弊しきった住民の苦悩が見事に描かれ、そんな中で逞しく生き抜く刑事役をチャールトン・ヘストンは熱演している。
彼とは、かつて「十戒」(1956)で共演しているエドワード・G・ロビンソンの、全てを悟り、自ら現実と別れを告げようとする博学の老人役は、本作のテーマを象徴した名演で、ドラマに深みを与えている。
残念ながら、本作は、公開を待たずに亡くなった彼の遺作にもなった。
彼が、安楽死を希望しホームに向かい、ベートーヴェンの「田園」を聞きながら、目の前に映し出される、かつての大自然の風景を見るシーンは印象的で、生き抜く価値のない世界だと悟った老人なら、死を選ぶだろうという気持ちが切実に伝わってくる。
冒頭で殺害されてしまい、やや物足りなさを感じる、事件の要になる人物で登場するジョゼフ・コットンも、懐かしい顔を見せてくれる。
こちらも「大いなる西部」(1958)でチャールトン・ヘストンと共演した、凄みや体力で彼を上回るチャック・コナーズも、インパクトある役柄で登場する。
サイモンソン(J・コットン)の世話係として豪邸に滞在するリー・テイラー=ヤング、主人公の上司ブロック・ピーターズ、州知事のウィット・ビッセル、その部下ロイ・ジェンソン、殺し屋のスティーブン・ヤング、タブ(C・コナーズ)の同棲相手ポーラ・ケリー、真実を知ってしまう神父リンカーン・キルパトリックなどが共演している。