ドイツのロマン派を代表する作曲家ロベルト・シューマンと妻クララ・ヴィーク・シューマンの愛を描く、製作、監督クラレンス・ブラウン、主演キャサリン・ヘプバーン、ポール・ヘンリード、ロバート・ウォーカー、ヘンリー・ダニエル、レオ・G・キャロル他共演の伝記ドラマ。 |
・ドラマ
■ スタッフ キャスト ■
監督:クラレンス・ブラウン
製作:クラレンス・ブラウン
原作
”Song of Love, the Life of Robert and Clara Schumann”(戯曲)
バーナード・シューバート
マリオ・シルヴァ
脚本
アイヴァン・トース
イルマ・フォン・クーベ
アレン・ヴィンセント
ロバート・アードリー
撮影:ハリー・ストラドリング
編集:ロバート・カーン
出演
クララ・ヴィーク・シューマン:キャサリン・ヘプバーン
ロベルト・シューマン:ポール・ヘンリード
ヨハネス・ブラームス:ロバート・ウォーカー
フランツ・リスト:ヘンリー・ダニエル
フリードリヒ・ヴィーク:レオ・G・キャロル
ベルタ:エルサ・ジャンセン
ユーリエ・シューマン:ジジ・ペルー
マリー・シューマン:アン・カーター
ハスリンガー:ルドウィッグ・ストッセル
ホフマン医師:ロマン・ボーネン
ヴァレリー・ホヘンフェルス:タラ・ビレル
アルベルト王:ヘンリー・スティーヴンソン
聖歌隊の少年:ジョージ・チャキリス
アメリカ 映画
配給 MGM
1947年製作 119分
公開
北米:1947年10月9日
日本:1949年2月1日
製作費 $2,696,000
北米興行収入 $1,469,000
世界 $2,737,000
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1839年5月10日、ドイツ、ザクセン王国、ドレスデン。
国王の前で演奏を終えたクララ・ヴィーク(キャサリン・ヘプバーン)は、アンコールに応えようとする。
師である父フリードリヒ(レオ・G・キャロル)から”ラ・カンパネッラ”を弾くよう指示されたクララは、心を寄せるロベルト・シューマン(ポール・ヘンリード)の曲”トロイメライ”を弾きたいことを伝える。
それを許してもらえないクララだったが、客席のロベルトのことを思いながらトロイメライを弾く。
桟敷席のアルベルト王子は聴き惚れてしまい、国王は、同席したフランツ・リスト(ヘンリー・ダニエル)から、新人のロベルト・シューマンの曲であることを知らされる。 弾き終えたクララは、指示に従わなかったことを不満に思うフリードリヒに、ロベルトを愛していると伝える。 ロベルトと話したクララは、父には自分達のことを伝えたと言って愛を確かめる。 フリードリヒと話をしたロベルトだったが、そこにアルベルト王子が現れて、クララに賛辞を述べる。 自分達が愛し合っていることを、師であるフリードリヒに伝えたロベルトは、結婚に反対され、今は演奏が大事なクララの相手には相応しくないと言われる。 結婚相手は裕福な者でクララ以上の才能も求めるフリードリヒに対し、彼女の幸せや気持ちを無視していると反論したロベルトは、金になる娘を手放したくないだけだとまで言ってしまう。 フリードリヒから破門されたロベルトに、クララはついて行くつもりだったが、この件は裁判で争われることになる。 裁判は、愛しか伝えないクララに不利な状況となるが、発言したリストは、ロベルトの才能が問題だと指摘する。 ロベルトは前途有望な作曲家であり、フリードリヒが才能を認めなくても、演奏を聴いた国王は賛辞を述べ観客にも好評だったとリストは語り、彼のその才能を認める。 裁判に勝ったクララとロベルトは結婚し、愛に満ちた新生活を始める。 1849年。 ハイハイして現れた赤ん坊や、鶏を追う子供達に驚くヨハネスは戸惑う。 騒ぐ子供達がうるさくて作曲ができないロベルトは不満を訴えるものの、クララから、静かにさせるのは無理だと言われる。 ピアニストであるクララの仕事もしてほしいとロベルトから頼まれたベルタは、働きが足りないと言われたと考えて気分を害する。 客間で末息子を抱くヨハネスに気づいたロベルトは、紹介状を見せられて師事を受けたいと言われ、曲を演奏してもらう。 演奏に気づいたクララはその素晴らしさに感激し、ロベルトも、まったく新しい音楽だとヨハネスに伝える。 自分を誰よりも尊敬すると言うヨハネスを歓迎したロベルトは、彼にこの家に住む提案をして、指導することになる。 ロベルトの言葉を不満に思うベルタが辞めてしまい、ニューイヤーズ・イヴで8人もの客を招待していいたクララは戸惑う。 焦るクララは、料理は自分達が作ると言うロベルトとヨハネスに、鶏を殺さなくてはならないと伝える。 ヨハネスが鶏を殺すことになるが、卵を産んだことを知ったロベルトとクララは、このまま生かすことにする。 卵一個では料理はできないと考えたクララとロベルトだったが、精肉店でガチョウを買うことをヨハネスが提案する。 パーティーは始まり、新年を迎えて盛り上がる。 ロベルトとクララ、そして客達は、鉛の兵隊を溶かして水に落とし、その形を見る占いを楽しむ。 その後、ヨハネスのピアノの演奏を聴いていたロベルトは、耳鳴りに気づき体調に異変を感じる。 翌日、前夜の片づけをしていたヨハネスは、給料を受け取りに来たベルタと話し、皆が頼りにしていると言って彼女をおだてる。 戻る気になったベルタはヨハネスを台所から追い払い、彼女の復帰を知った子供達とクララは喜ぶ。 その後、頭痛に悩むロベルトは、コンサートに誘われていると言うクララの復帰を喜ぶことができない。 生活費のために無理するロベルトを見ていられないクララは、自分なら簡単に金を稼ぐことができると言って、歴史に残る作曲家になれるはずの彼を励ます。 コンサートを開いたクララは、ベルタが抱く末息子のフェリックスに母乳を与える必要があるため、曲を飛ばして演奏を終えるものの喝采を受ける。 興行主のハスリンガー(ルドウィッグ・ストッセル)からロンドン公演を提案されたクララだったが、それを断りロベルトと共に家に戻る。 家が隔離されているために驚いたクララとロベルトは、娘のユーリエ(ジジ・ペルー)がはしかにかかったことを知り、看病していたヨハネスから心配いらないと言われる。 オペラの連絡がないロベルトは気落ちするものの、クララは心配いらないと言って彼を励ます。 ユーリエを寝かせようとしたヨハネスは、母クララよりも自分のことが好きか訊かれるものの、明確に答えられない。 お話をしてほしいと言われたヨハネスは、ユーリエに”子守唄”を弾くと伝えてピアノに向かう。 数日後、回復したユーリエをホフマン医師(ロマン・ボーネン)に診せようとしたクララは、目隠しをして子供達と鬼ごっこをしていたヨハネスに、マリー(アン・カーター)と間違われてキスされてしまう。 ユーリエを診たホフマンは、ロベルトの曲がいつもと違うことに気づき、クララから、オペラの連絡待ちで不安を抱えている彼の頭痛のことを話す。 ロベルトと話したホフマンは、曲調が違うことを指摘し、思うように曲が書けずに苛立つ彼を落ち着かせる。 頭痛のことを話すロベルトに休養するようにと指示したホフマンは、薬を処方すると言ってその場を去る。 クララに過労だと伝えたホフマンは、処方箋を渡して帰ろうとするものの、ロベルトの姉は心の病で自殺を図ったと言われる。 ロベルトがうつ病ではないかと心配するクララは、ヨハネスにそれを伝える。 断定はできないと言うホフマンから、成功につながることはないかと訊かれたクララは、ロベルトにとっては今はオペラだと伝えてホフマンを見送る。 ヨハネスが受け取っていたオペラの通知を見たクララは、ロベルトの曲が不採用だったために落胆する。 ロベルトには話さないようにと伝えたヨハネスは、ある考えが浮かびリストの元に向かう。 ヨハネスから協力を求められたリストは、彼が、ロベルトのためを考えているだけではなく、クララに惹かれていることに気づく。 友人のヴァレリー・ホヘンフェルス(タラ・ビレル)に、高名な指揮者ライネケを誘惑してほしいと頼んだリストは、翌日のコンサートで、ロベルトを前にして彼の曲”献呈”を演奏する。 弾き終えたリストはヨハネスに絶賛され、クララに一曲リクエストする。 クララに侮辱されたリストは、憤慨するヴァレリーに、あれは批評だと伝えてライネケにロベルトを推薦する。 それを知ったヨハネスは、思い通りになったことを喜ぶ。 その後、ヨハネスが家を出ることを知ったクララは驚き、彼と話をして考えを訊く。 荷物を戻そうとしたクララは、ヨハネスから愛を告げられて困惑し、初めて会った時から惹かれていたと言われる。 今でも愛しているので、もうここにはいられないと言われたクララは、あなたがいなくなると寂しくなるとヨハネスに伝えてその場を去る。 作曲をするロベルトの元に向かったクララは、ヨハネスが出て行くことを涙しながら伝える。 ロベルトから、ヨハネスが自分に好意を抱いていることに気づいていたと言われたクララは戸惑う。 皆が知っていたと言うロベルトは、ヨハネスの気持ちを知ってショックを受けたクララを気遣う。 才能豊かなヨハネスは必ず乗り越えられると考えるロベルトは、クララを抱きしめる。 その後コンサートが開かれ、交響楽団を指揮するロベルトは、頭痛と耳鳴りで体の自由が奪われ、寄り添うクララと共にステージを降りる。 精神を病み自殺を図ったロベルトは、療養所で静養することになり、彼と話したクララは、自分のために作曲した曲を演奏してもらう。 5年後。 ケルンで開かれる自分のコンサートにクララを誘ったヨハネスは、それを断る彼女に、決して何事も投げ出すことがなかったロベルトが、最後の日も新たな曲と思いながら”トロイメライ”を作っていたことを話す。 自分を哀れみ、ロベルトから逃げていると言われたクララは、ヨハネスの言葉を迷惑に思うが、悲しむ姿を見ていられないと言われる。 クララの考えが変わらないことを知ったヨハネスは、別れを告げてその場を去る。 その夜、劇場の桟敷席にいるクララに気づいたヨハネスは彼女の元に向かい、その場を抜け出し食事とダンスをして楽しい時間を過ごす。 気晴らしになったクララは、ヨハネスから求婚されるものの、7人の子を持つ母であり年齢差もあると伝える。 ヨハネスの気持ちは理解するものの、ロベルトへの愛は変わらず、音楽や生活の中で彼を感じると言うクララは、それを永遠に思い続けることを伝える。 1890年、ドレスデン。 演奏を終えて喝采を受けるクララは、ロベルトを想いながら、国王や観客に感謝の言葉を述べる。
...全てを見る(結末あり)
シューマン家を訪ねた若き作曲家ヨハネス・ブラームス(ロバート・ウォーカー)は、家政婦のベルタ(エルサ・ジャンセン)に迎えられ客間に通される。
作曲家としての才能を開花させてシューマン家を訪ねたヨハネスは、ロベルトを失った寂しさのために、未だに引き籠るクララとの再会を喜ぶ。
桟敷席でクララの演奏を聴くアルベルト王(ヘンリー・スティーヴンソン)は、11歳の時に彼女に会い、”素晴らしい演奏でした”と挨拶した時のことを思いだす。
■ 解説 評価 感想 ■
*(簡略ストー リー)
1839年、ドイツ、ザクセン王国、ドレスデン。
ピアニストのクララ・ヴィークは、新人の作曲家ロベルト・シューマンへの思いを父フリードリヒに認めてもらえず、裁判沙汰にまでなる。
師であるフリードリヒに破門されたロベルトは、クララへの深い愛情により裁判に勝ち、二人は結婚して新生活を始める。
7人の子供に恵まれたロベルトとクララは、訪ねて来た若き作曲家ヨハネス・ブラームスを指導することになる。
家族を養うために作曲を続けるロベルトは、過労のために頭痛と耳鳴りに悩み、そんな夫と子供達のことを思うクララは復帰を考えるのだが・・・。
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バーナード・シューバートとマリオ・シルヴァによる戯曲”Song of Love, the Life of Robert and Clara Schumann”を基に製作された作品。
ドイツのロマン派を代表する作曲家ロベルト・シューマンの妻、そして同じ音楽家として夫を支え愛したクララ・ヴィーク・シューマンの半生を描く伝記ドラマ。
生活のために体を酷使し、病と闘いながら作曲を続けるシューマンの痛々しい姿と共に、7人の子育てに追われ音楽活動を諦めるクララの生き方など、以外にも思える平素な生活感を描写するクラレンス・ブラウンの丁寧な演出が見どころの作品。
また、実際には真実かは疑われている、クララとブラームスの恋愛関係が描かれた内容も興味深い。
*本作ではブラームスの一方的な恋として描かれている。
それにしても、徹底的なピアノ指導を受けたとは言え、キャサリン・ヘプバーン他の力感溢れる演奏は見事としか言いようがない。
ポール・ヘンリードの演奏時の手はエルヴィン・ニレジハジであり、アルトゥール・ルービンシュタインの演奏で録音された。
主演のキャサリン・ヘプバーンは、上記のように見事なピアノ演奏も披露する、19世紀に活躍したピアニストのクララ・ヴィーク・シューマンを好演している。
ほぼ全編で苦悩している作曲家ロベルト・シューマンのポール・ヘンリード、彼の指導を受ける作曲家ヨハネス・ブラームスのロバート・ウォーカー、作曲家フランツ・リストのヘンリー・ダニエル、クララの父親である音楽家フリードリヒ・ヴィークのレオ・G・キャロル、シューマン家の家政婦エルサ・ジャンセン、シューマン家の三女ユーリエのジジ・ペルー、長女マリーのアン・カーター、興行主のルドウィッグ・ストッセル、医師ロマン・ボーネン、リストの友人タラ・ビレル、ザクセン王国国王アルベルトのヘンリー・スティーヴンソン、聖歌隊の少年でジョージ・チャキリスなどが共演している。