1940年代に人気を誇ったボクシング世界ミドル級チャンピオン、ロッキー・グラジアノの伝記映画。 監督ロバート・ワイズ、ポール・ニューマン、ピア・アンジェリ、サル・ミネオ共演のヒューマン・ドラマの秀作。 スティーヴ・マックィーンの端役出演に注目! |
・スティーヴ・マックイーン / Steve McQueen 作品一覧
■ スタッフ キャスト ■
監督:ロバート・ワイズ
製作:チャールズ・シュニー
原作
ロッキー・グラジアノ
ローランド・バーバー
”Somebody Up There Likes Me”
脚本:アーネスト・レーマン
撮影:ジョセフ・ルッテンバーグ
編集:アルバート・アクト
美術・装置
セドリック・ギボンズ
マルコルム・ブラウン
エドウィン・B・ウィリス
F・キーフ・グリーソン
音楽
ブロニスラウ・ケイパー
ペリー・コモ(主題歌)
”Somebody Up There Likes Me”
出演
ポール・ニューマン:ロッキー・グラジアノ/トーマス・ロッコ・バルベラ
ピア・アンジェリ:ノーマ・アンガー・グラジアノ
サル・ミネオ:ロモロ
アイリーン・ヘッカート:アイーダ・バルベラ
ハロルド・J・ストーン:ニック・バルベラ
エヴェレット・スローン:アーヴィング・コーエン
ロバート・ロッジア:フランキー・ペッポ
ドナ・ジョー・グリブル:ヨランダ・バルベラ
ジャドソン・プラット:ジョニー・ヘイランド
アーチ・ジョンソン:ヘルドン
スティーヴ・マックィーン:フィデル
アンジェラ・カートライト:オードリー・バルベラ
アメリカ 映画
配給 MGM
1956年製作 113分
公開
北米:1956年7月3日
日本:1956年12月12日
■ アカデミー賞 ■
第29回アカデミー賞
・受賞
美術(白黒)・撮影賞(白黒)
・ノミネート
編集賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
ニューヨーク。
貧民街で育ったトーマス・ロッコ”ロッキー”バルベラ(ポール・ニューマン)は、相棒のロモロ(サル・ミネオ)らを伴いあらゆる悪事をして毎日を過ごしていた。
三流ボクサーだった父ニック(ハロルド・J・ストーン)に、始終からかわれていたロッキーは父を憎み、そのはけ口を喧嘩や盗みにぶつけていたのだ。
そんなロッキーを母アイーダ(アイリーン・ヘッカート)だけは、いつまでも温かく見守るのだった。
しかし、ロモロやフィデル(スティーヴ・マックィーン)らと盗みを続けていたロッキーは、ポーランド人の縄張りで騒ぎを起こして逮捕されてしまう。
父ニックはロッキーを助けようとせず、彼はついに禁固刑になってしまう。
ロッキーはその後も反抗を続け、感化院に送られてしまうが、改心する様子は全くなかった。
そんな時ロッキーは、同じ収監中のフランキー・ペッポ(ロバート・ロッジア)に、その腕っ節の強さを見込まれてボクサーに誘われる。 しかし、ロッキーは、父親の職業だったボクサーに興味を示さない。 その後、刑務所に移されたロッキーは、精神を病むほど心配する母アイーダに、縁を切るとまで言われてしまう。 ロッキーは、それをきっかけに模範囚となり、その後出所するのだが、彼はそのまま徴兵されてしまう。 当然、軍隊に馴染めないロッキーは、上官を殴り倒して逃亡してしまい、ペッポを頼り、スティルマン・ジムに向かう。 ペッポは未だに服役中だったが、ジムでスパーリングに志願したロッキーは、”ロッキー・グラジアノ”と名前を偽り、ライト・ヘビー級の南米チャンピオンを殴り倒してしまう。 それを見たマネージャーのアーヴィング・コーエン(エヴェレット・スローン)は、ロッキーの才能を見抜き、次々と試合を組んでいく。 しかし、脱走兵だということがばれたロッキーは、再び軍刑務所行きになってしまう。 その後、ロッキーは刑務所内で、囚人ヘルドン(アーチ・ジョンソン)と喧嘩をしているところを、ボクシング分隊のジョニー・ヘイランド(ジャドソン・プラット)の目に留まる。 ロッキーは、プロのボクサーになるために、トレーニングを積むようヘイランドから助言される。 そして、それを教訓にして出所したロッキーは、ボクサーとして連戦連勝を続ける。 母アイーダは、まともな生活を始めたロッキーを見て、ひとまず安心するが、父ニックは、自分がボクサーとして成功できなかったたため息子を嫌い、その活躍を喜べない。 ある日、妹ヨランダ(ドナ・ジョー・グリブル)の友達ノーマ・アンガー(ピア・アンジェリ)がロッキーに会いに来るが、彼は素っ気無い態度をとってしまう。 しかし、地下鉄で帰ろうとする、ノーマが心配になったロッキーは、結局、彼女を家まで送ることになる。 その後、二人は親交を深めて惹かれ合うようになるが、ボクシングに没頭するロッキーを、ノーマはなかなか受け入れられない。 ノーマは、ボクシングを野蛮なものとしか考えず、問題を起こしてばかりいるロッキーに愛想を尽かす。 ロッキーは、ボクシングに命をかけていることをノーマに力説して、彼女に真面目に生きることを約束して理解を得る。 しかし、試合のことを忘れていたロッキーは、ライセンス剥奪寸前にまでなってしまう。 協会に呼ばれたロッキーは、恋をしたことが原因だと弁明して、意外にもその言い訳がコミッショナーに受け入れられて、ライセンスの剥奪を免れる。 コーエンに、男として責任を持つため、ノーマとの結婚を勧められたロッキーは、彼女との結婚を決意する。 家族を持ったロッキーは、妻ノーマや生まれたばかりの娘のために戦い続ける。 1946年9月27日。 ショックを受けたノーマは、リングに上がるロッキーを支えきれないことを義母アイーダに伝える。 アイーダは、自分が、夫ニックにボクシングを諦めさせたような過ちはしないよう、ノーマに助言して彼女を励ます。 ノーマは、帰宅したロッキーの闘志を奮い立たせ、彼は、頼もしくなった妻を一層愛しく思い、戦う勇気を与えられる。 そんな時、ゼール戦の敗戦のショックから立ち直ったロッキーの元に、出所したペッポが現れる。 ペッポは、ロッキーの軍隊時代のスキャンダルを暴露すると彼を脅し、八百長話を持ちかけてくる。 ロッキーは、スキャンダル発覚を恐れ、ペッポの名は出さずにいたが、結局、ニューヨークのライセンスは剥奪され、ゼールとの再戦は中止となり、さらに軍隊のスキャンダルも暴露されてしまう。 家に閉じこもるロッキーに、シカゴでのゼールとの世界戦が決まったことをコーエンが知らせる。 味方のいない、シカゴでの再戦に気乗りしないロッキーだったが、ノーマが強い意志で彼を支える。 シカゴでのトレーニングを始めたロッキーだったが、周囲の視線が気になり、燃え上がる闘志が沸いてこない。 ロッキーは、ニューヨークに戻りロモロに会うが、未だにチンピラで強盗生活をしている彼に哀れさを感じ、かつて暴れ回っていたゴミためのような街を見て絶望する。 不仲だった父ニックに会ってみる気になったロッキーは、酒浸りの父を、人生を捨てた負け犬だと罵り傷つけてしまう。 言葉をなくし、うなだれるニックに謝罪したロッキーは、父にチャンピオンになってくれと涙ながらに言われて、家族や街の希望を一心に受けている自分に気づく。 そして、ロッキーはシカゴに向かい、ノーマとコーエンを安心させて試合に挑む。 1947年7月16日。 その後、ニューヨークに凱旋したロッキーは、人々に大歓迎されながらノーマに語る。 ”俺は運が良かった、天の誰かが俺を好いている” そして、ノーマは答える。 ”地上の誰かもしれないわよ”
...全てを見る(結末あり)
ついに世界戦に挑戦したロッキーだったが、ミドル級王者のトニー・ゼールにKO敗けしてしまう。
事実を知られたくない悩むロッキーは、怪我を装い世界戦の前哨戦を中止させるが、八百長疑惑に関与したことを疑われ聴取される。
試合のゴングは鳴り、劣勢のロッキーは一気に反撃に出て、ついに、6ラウンドKO勝ちで世界チャンピオンのベルトを勝ち取る。
*(簡略ストー リー)
ニューヨーク。
父親への反発から、あらゆる悪事に手を染めて毎日を過ごす青年ロッキー・バルベラは、ついに刑務所に入れられ、それでも改心せずにいた。
しかし、自分をかばい続けてくれた母に絶縁されそうになったロッキーは、それをきっかけに模範囚となり、やがて出所する。
そのまま徴兵されたロッキーは、上官を殴り逃走し、刑務所で会ったペッポの紹介でボクシング・ジムに向かう。
スパーリングを志願して、強豪選手を倒してしまったロッキーは、マネージャーのコーエンに才能を見出されるが、脱走兵として再び刑務所に収監される。
そこでロッキーは、プロ・ボクサーへの道を勧められ、出所後に連戦連勝を続けて、才能を開花させる。
妹の友人ノーマと出会ったロッキーは、不器用ながらも彼女との愛を育て、やがて、世界王者に挑戦するのだが・・・。
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映画は、ロッキーが王座を獲得したところで終わるのだが、実際には、翌年の再々線で、宿敵のトニー・ゼールに3ラウンドKO負けしている。
原題の
”Somebody Up There Likes Me”は、ロッキーの、挫折と栄光の半生を見事に表現した実に重みがあるいいタイトルだ。
貧しさだけでなく、亀裂の入った父子の関係や、その狭間で苦悩する母親の愛情などを、繊細且つドラマチックに描く、ロバート・ワイズの演出は見応えがある。
ドラマを盛り上げる、ペリー・コモの歌う主題歌”Somebody Up There Likes Me”、貧しいながらも必死に生きる人々の様子を、見事に描写している撮影やセットなども素晴らしい。
第29回アカデミー賞では、美術(白黒)撮影賞(白黒)を受賞した。
・ノミネート
編集賞
気性が荒く、手がつけられない悪党ではあるが、意外にナイーヴな一面もある主人公を、ポール・ニューマンは、映画初主演ながら見事に演じている。
本作は、当初ジェイムズ・ディーンの起用が予定されていたが、彼の急逝によりポール・ニューマンが主役の座を得た。
その結果、主人公ロッキー・グラジアノ本人の協力もあり、ポール・ニューマンの徹底した役作りが功を奏し、本作の熱演で彼の演技は高く評価され、大スターへの道を切り開くことになる。
ロッキーの人間性の弱さを見事にカバーする、妻役のピア・アンジェリは、見た目とは違う芯の強い人物を好演している。
夫とは逆に、どんなに悪事を働いても、根気よく、また温かく息子を見守り続ける母役、アイリーン・ヘッカートの熱演は忘れ難い。
モチベーションの上がらないロッキーが、奮起するきっかけになる、哀れな旧友サル・ミネオの存在と、父ハロルド・J・ストーンとの和解の場面は涙なくしては見られない。
また、実質的にはこれがスクリーン初登場のスティーヴ・マックィーンが、短い出演だが妙に印象に残る。
無駄のない、機敏な身のこなしなどが目に焼きつくところなど、光る才能の持ち主は別格だ。
主人公を人間的にも成長させるマネージャーのエヴェレット・スローン、主人公を利用する悪党ロバート・ロッジア、主人公の妹ドナ・ジョー・グリブル、娘アンジェラ・カートライト、軍のボクシング部長ジャドソン・プラット、囚人のアーチ・ジョンソンなどが共演している。