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スモーク Smoke (1995)

1990年に発表された、ポール・オースターの短編小説”Auggie Wren’s Christmas Story”を基に製作された作品。
ニューヨークブルックリンのタバコ店に集う人々の日常を描く、監督ウェイン・ワン、主演ハーヴェイ・カイテルウィリアム・ハートハロルド・ペリノーJr.ストッカード・チャニングフォレスト・ウィテカーアシュレイ・ジャッド他共演のドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ

ウィリアム・ハート / William Hurt / Pinterest


スタッフ キャスト ■
監督:ウェイン・ワン

製作
ピーター・ニューマン
グレッグ・ジョンソン
黒岩久美

堀越謙三
製作総指揮
ボブ・ワインスタイン

ハーヴェイ・ワインスタイン
井関惺
脚本:ポール・オースター”Auggie Wren’s Christmas Story”
撮影:アダム・ホレンダー

編集
メイジー・ホイ
クリストファー・テレフセン

音楽:レイチェル・ポートマン

出演
オーガスタス”オーギー”レン:ハーヴェイ・カイテル

ポール・ベンジャミン:ウィリアム・ハート
トーマス・ジェファーソン”ラシード”コール:ハロルド・ペリノーJr.
ルビー・マクナット:ストッカード・チャニング
サイラス・コール:フォレスト・ウィテカー
ジミー・ローズ:ジャレッド・ハリス
フェリシティ:アシュレイ・ジャッド
ドリーン・コール:エリカ・ギンペル
ヴィニー:ヴィクター・アルゴ
エマ:ミシェル・ハースト
チャールズ・クリム:マリク・ヨバ
エイプリル・リー:メアリー・B・ウォード
トミー:ジャンカルロ・エスポジート

ジェリー:ホセ・ズニーガ
デニス:スティーヴン・ジェヴェドン

アメリカ 映画
配給 ミラマックス
1995年製作 112分
公開
北米:1995年6月9日
日本:1995年10月7日
製作費 $7,000,000
北米興行収入 $8,349,400


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
1990年、夏、ニューヨークブルックリン
オーガスタス”オーギー”レン(ハーヴェイ・カイテル)が任されているタバコ店には、トミー(ジャンカルロ・エスポジート)、ジェリー(ホセ・ズニーガ)、デニス(スティーヴン・ジェヴェドン)らがいつもたむろしていた。

常連客の一人で、付近のアパートに住む作家のポール・ベンジャミン(ウィリアム・ハート)は、数年前の銀行強盗の際に、妊娠中の妻が流れ弾に当たって死亡して以来、立ち直れないままでいた。

オーギーの店でタバコを買ったポールは、考え事をしながら道を渡ろうとしてトラックに轢かれそうになり、少年”ラシード”コール(ハロルド・ペリノーJr.)に助けられる。

1.ポール

礼をさせてくれと言うポールは、ラシードがレモネードを飲みたいと言うのでカフェに向い、アパートに泊まることを提案する。
...全てを見る(結末あり)

ラシードが遠慮するため、ポールは彼に住所を教えて別れる。

店のオーナーのヴィニー(ヴィクター・アルゴ)から、キューバ産のタバコの取引の件で警戒するよう言われたオーギーは、9月まで戻らない彼に後を任される。

閉店しようとしたオーギーは、ポールが現れたために、嫌な顔もせずに彼にタバコを売る。

ポールがカメラに気づいたため、オーギーは、毎日欠かさず店の前で街角を写真に撮ることを趣味していると話す。

それに興味を持ったポールは、4000日も撮り続けた写真を見せてもらい、1日も欠かしていないと言うオーギーの話に感心する。

そのお陰で休暇もとれないと言うオーギーは、人生のプロジェクトだと話す。

写真が全て同じに見えるポールだったが、そのように思えても違うので、ゆっくり見ることをオーギーは勧める。

それに従ったポールは、妻エレンが写っている写真に気づき、他にも何枚かあるとオーギーに言われながら、彼女を想い涙する。

翌日、現れたラシードを歓迎したポールは、約束通り彼を部屋に泊める。

ポールが仕事をしている間に、ラシードは本棚の奥に紙袋を隠す。

2日後、気が散って仕事ができないとポール言われたラシードは、礼を言ってその場を去る。

2.ラシード

来客のためドアを開けたポールは、甥のトーマスを捜すエマ(ミシェル・ハースト)が、いきなり部屋に入ってきたために事情を聞く。

甥が”トーマス・ジェファーソン・コール”だと言うエマの話でラシードのことだと気づいたポールは、両親がいないトーマスを彼女が育てたことを知る。

エマは、母親は死んだのだが、蒸発した父親を郊外の給油所で見かけた者がいるという話をトーマスにしたということだった。

給油所で車の修理をするサイラス・コール(フォレスト・ウィテカー)は、道の向こうで何時間も自分を見つめているトーマスに話しかける。

トーマスは、自分を追い払おうとする左腕が義手のサイラスに、建物をスケッチしているだけだと伝える。

雇う気がないかと言われたサイラスは、客もなく閉鎖寸前だと答えてトーマスを相手にしない。

元恋人ルビー・マクナット(ストッカード・チャニング)が現れたために驚いたオーギーは、18年振りの彼女から深刻な話があると言われたため、店員のジミー・ローズ(ジャレッド・ハリス)に外に出ているよう指示する。

自分達の娘フェリシティを捜すことに協力してほしいと言われたオーギーは、身に覚えがないためまともに話を聞く気になれない。

ドラッグ中毒であるフェリシティが妊娠しているため何とかしたいと言うルビーは、かつて、自分のために宝石を盗んで捕まったオーギーの話を聞く。

行きたかった大学を諦めて、刑務所か軍隊行きを選ばされた末に4年間もの兵役に就き、死にそうな目に遭ったことを話すオーギーは、娘のことを信じようとしない。

手持ちの金もないので助けられないとオーギーに言われたルビーは、涙しながらその場を去る。

その後もトーマスが去ろうとしないために、サイラスは、2階を片付けて住むようにと言って、時給5ドルで雇うことを伝える。

感謝するトーマスは、”ポール・ベンジャミン”だと名乗りサイラスと握手する。

片づけの途中で休息したトーマスは、失った腕のことをサイラスに尋ねる。

自分の愚かで身勝手な行動で、12年前に交通事故を起こし愛する女性を死なせてしまったサイラスは、神が罰を与えて自分は生かし、そのことを忘れないために義手をつけたと話す。

それで心を改めたのかをトーマスから聞かれたサイラスは、努力はしていると答える。

給油所のスケッチを残したトーマスは、不要なテレビを持ってポールのアパートに向かう。

お礼だと言ってテレビを置いて帰ろうとするトーマスを引き留めたポールは、おばが訪ねて来たことを伝えて、真実を知ろうとする。

強盗をした悪党のチャールズ・クリム(マリク・ヨバ)と通りでぶつかってしまい、慌てて逃げたトーマスは、彼から逃げているということだった。

納得したポールは、おばに電話するようトーマスに指示する。

3.ルビー

再び現れたルビーに車に乗るよう指示されたオーギーは、娘に会ってほしいと言われたために驚く。

仕方なく、娘だというフェリシティ(アシュレイ・ジャッド)に会ったオーギーは、ルビーを母親だと思っていないと言われる。

生れてくる子供のことが心配だというルビーだったが、フェリシティは、堕したと言って二人を追い払う。

ポールと話をしていたトーマスは、今日が17歳の誕生日だと伝える。

本屋に向かったポールとトーマスは、店員のエイプリル・リー(メアリー・B・ウォード)を、二人で祝うつもりだった夕食に誘う。

食事後に、エイプリルとトーマスと共にバーで楽しんでいたポールは、現れたオーギーに二人を紹介する。

ポールは、オーナーのヴィニーがいない夏の間だけトーマスを雇ってほしいとオーギーに頼み、それを承諾してもらう。

翌日から、トーマスはジミーと共にオーギーの店で働き始める。

本棚の奥に隠してあった紙袋を見つけたポールは、それがトーマスのものだと知り渡そうとする。

袋に入っていた紙幣が散らばり、ポールは、それがクリムの奪った金で、拾ったトーマスがそのまま逃げたことを知る。

クレムに金を返してくるようにとポールに言われたトーマスは、自分の将来のために必要な金だと答える。

死にたいのかと言われたトーマスは、言葉を返せない。

オーギーに店の留守番を任されたトーマスは、水道の蛇口を閉め忘れたため、その場にあった高級タバコが水浸しになってしまう。

戻って来たオーギーは、それに気づき憤慨する。

その夜、トーマスを連れてオーギーの元に向い謝罪させたポールは、取引がなくなり全財産と信頼を失ったと言われる。

紙袋に入った5000ドルをトーマスから渡されたオーギーは、盗んだ金だと決めつける。

店で働き償いをしたいトーマスの気持ちを理解してほしいとポール言われたオーギーは、仕方なくトーマスを許し5000ドルを受け取る。

その夜ポールは、押入って来たクリムに脅され、トーマスの居場所を聞かれる。

アパートに戻ろうとしたトーマスはそれに気づき、その場から逃げ去る。

翌朝、怪我をしたポールに驚くオーギーは、姿を消したトーマスのことなどを聞かれる。

何も解決できなかったルビーはピッツバーグに戻ることになり、ガソリン代さえもないと言う彼女に、オーギーは5000ドルを渡して感謝される。

フェリシティが自分の娘かどうかは定かでないと言われたオーギーは、それで納得してルビーと別れる。

4.サイラス

給油所に戻っていたトーマスは、日曜日だったために休みだったサイラスと妻ドリーン(エリカ・ギンペル)にピクニックに誘われる。

そこに、オーギーとポールが現れ、トーマスは、サイラスに二人を紹介する。

トーマスがポールと同じ名前だったためにそれを追及したサイラスは、言い訳をする彼を不審に思う。

正直に話すようにとオーギーとポールに言われたトーマスは、”トーマス・ジェファーソン・コール”だと本名をサイラスに伝える。

それを信じないサイラスは動揺し、母親の名前を言ったトーマスを殴ってしまう。

襲いかかって来たトーマスを嘘つき呼ばわりするサイラスは、義手を見て妻を想い出す。

落ち着いたサイラスらは、ピクニックの席に着き考えこむ。

5.オーギー

クリスマスが近づき、オーギーの店に顔を出したポールは、”ニューヨーク・タイムズ”の紙面の短編小説を任されたことを伝える。

そのクリスマスに関するネタが見つからないとポールに言われたオーギーは、ランチを奢ってくれればいい話を提供することを約束する。

ポールとダイナーに向かったオーギーは、写真を撮り始めるきっかけになったカメラの話を始める。

ヴィニーに雇われた1976年に、万引きした少年を追いかけて落した財布を拾い、その中にあった数枚の写真を見たオーギーは怒りが消えた。

恵まれない環境で育った子供が大切にしていた写真が自分の心を癒し、責める気になれなかったとオーギーは話す。

財布は送り返すこともできたのだが、その年のクリスマス、誰とも過ごす予定がなかったオーギーは、それを返しに行くことを決めて少年のアパートに向かった。

アパートにいた盲目の老婆が、自分を孫だと思い抱きしめようとしたため、オーギーはクリスマスだから会いに来たと答えてしまう。

ゲームをしたオーギーは、高齢でボケてはいるが、老婆が自分を孫だと思う振りをして喜んでいることに気づき、成り行きに任せて楽しく過ごした。

近所で食べ物を買い食事をしたオーギーは、トイレを借りた際に、その場にあった数台の新品のカメラの一台を盗んでしまう。

老婆はワインのせいで眠ってしまい、彼女を起こすことなく、財布をテーブルに置いてアパートを出たという話だった。

その後、老婆に会いに行ったのかをポールに聞かれたオーギーは、数か月後にカメラを返しにアパートを訪れたものの、別の家族が住んでいて彼女の居場所は分からなかった。

死んだのだろうという話になったポールは、いいことをしたと伝えて、カメラは盗品だろうし、それを役立てることができたと言って、クリスマスに相応しい話をしてくれたオーギーに感謝する。

それが作り話だとポールに指摘されたオーギーは、秘密を分かち合えないのなら友達ではないと言って微笑む。

納得したポールは、それが生きていることの価値だと伝える。

その後ポールは、”オーギー・レンのクルスマス・ストーリー”というタイトルで小説を書く。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
1990年、夏、ニューヨークブルックリン
タバコ店を任されているオーガスタス”オーギー”レンは、毎日欠かさず街角を写真で撮るのが趣味だった。
常連客の作家であるポールは、数年前の銀行強盗の際、妻が流れ弾に当たって死亡したため立ち直れずにいた。
そんなポールは、考え事をしながら道路を渡ろうとして轢かれそうになり、少年ラシードに助けられる。
ラシードに礼をしたいポールは、彼をアパートに泊めてやるのだが・・・。
__________

原作者ポール・オースターが脚本も担当し、彼との共同作品が多い盟友ウェイン・ワンの監督作品で、4か月後に公開される「ブルー・イン・ザ・フェイス」(1995)は姉妹作であり、二人の共同監督、脚本による作品である。

原作”Auggie Wren’s Christmas Story”とドラマの中の小説家が依頼されて書き始める短編小説が同じであることから、そのモデルはポール・オースターで、彼のペンネームは小説家と同じ”ポール・ベンジャミン”。
彼の短編を読んだウェイン・ワンが、ブルックリン在住の彼の元に向い映画化を勧めたと言われている。

辛い過去や、犯罪に巻き込まれ家族関係に悩む、当事者の切実な問題など重苦しい部分もあるドラマなのだが、タバコ店に集う彼らが、現実を見据えて対処ししていく様がシンプルに描かれている。

人生を楽しむために必要な人の考えには嘘もあり、それを理解し合えることも友情につながるという、クライマックスの深みのある演出と脚本も素晴らしい。

第45回ベルリン国際映画祭審査員特別賞受賞(銀熊賞)作品。

一級の脚本と演出に応える、主人公を演ずる実力派ハーヴェイ・カイテルと、その友人である作家ウィリアム・ハートの繊細な演技は秀逸で、無言のまま表情だけで気持ちを伝える場面など、彼らの職人芸を堪能できる。

豪華キャストも注目で、撮影当時既に30歳を超えていたとは思えない初々しさを感じる、犯罪に巻き込まれながら父親を捜すために家を出た少年を好演するハロルド・ペリノーJr.、その父親役で、彼とは実際には2歳しか違わないフォレスト・ウィテカー、その妻エリカ・ギンペル、主人公の元恋人ストッカード・チャニング、その娘でジャンキーのアシュレイ・ジャッド、タバコ店の店員ジャレッド・ハリス、タバコ店のオーナー、ヴィクター・アルゴ、少年のおばミシェル・ハースト、少年から現金を奪われた悪党のマリク・ヨバ、書店の店員メアリー・B・ウォード、タバコ店の客ジャンカルロ・エスポジートホセ・ズニーガ、スティーヴン・ジェヴェドンなどが共演している。


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