1970年に発表された、アンソニー・シェイファーの同名の戯曲の映画化。 著名な小説家と妻の浮気相手の青年との心理的頭脳ゲームを描く、監督ジョセフ・L・マンキウィッツ、ローレンス・オリヴィエ、マイケル・ケイン共演によるコメディ・タッチの傑作サスペンス。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ジョセフ・L・マンキウィッツ
製作:モートン・ゴットリーブ
製作総指揮:エドガー・J・シェリック
戯曲:アンソニー・シェイファー”Sleuth”
脚本:アンソニー・シェイファー
撮影:オズワルド・モリス
編集:リチャード・マーデン
音楽:ジョン・アディソン
出演
ローレンス・オリヴィエ:アンドリュー・ワイク
マイケル・ケイン:マイロ・ティンドル
イギリス 映画
配給 20世紀FOX
1972年製作 138分
公開
北米:1972年12月10日
日本:1973年3月19日
■ アカデミー賞 ■
第45回アカデミー賞
・ノミネート
監督
主演男優(ローレンス・オリヴィエ/マイケル・ケイン)
作曲賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
世界的に有名なイギリスの推理小説家アンドリュー・ワイク(ローレンス・オリヴィエ)は、ロンドン郊外の大邸宅に美容院経営者マイロ・ティンドル(マイケル・ケイン)を呼び出す。
ワイクは、ティンドルが妻マーガリートと不倫関係にあることを知っていたが、彼女と本気で付き合えば、退屈で浪費家、そして、わがままなこと極まりなく養っていけないと忠告する。
さらにワイクは、自分も愛人と暮らしたいので、ティンドルがマーガリートを養えるようにと、自分の25万ポンドの宝石を盗み出すよう提案する。
宝石には保険が掛けてあり、自分達に損のないことを説明したワイクは、宝石を売りさばく手はずや権利書も用意してあることと、時価の2/3が現金でティンドルの懐に入るということを知らせる。 ティンドルは半信半疑でワイクの話を聞いていたが、小説の主人公メリデュー卿が世に出たのは、自分が犯罪の天才だからという彼の言葉と、非課税の17万ポンドの現金に釣られて提案に乗ることにする。 強盗をもっともらしく見せるため、ワイクは、ティンドルに犯罪の美学に沿った犯人に仕立て上げられ、ピエロの扮装をさせられる。 宝石強盗についての細かい指示を出すワイクは、外部からはしごを使わせてティンドルを屋敷に侵入させる。 悪戦苦闘して、ワイクが待ち受ける金庫の部屋に侵入したティンドルは、彼の指示で部屋を荒らし、ダイナマイトで金庫の扉を爆破して宝石を手に入れる。 そしてワイクは、自分が強盗を見つけて犯人と格闘になり、部屋が荒らされたという設定で、実際に格闘も始める。 さらに拳銃まで取り出したワイクは、陶器と写真を撃った後、ティンドルに銃口を向けて態度を変える。 これは、ティンドルを陥れるためのゲームで、自分が強盗を殺しても、誰からも責められないと言い切る。 逃げ惑い命乞いをするティンドルに、ピエロのマスクをかぶせて、ワイクは銃の引き金を引く。 数日後、屋敷に老刑事が現れ、ティンドル失踪の件でワイクに質問を始める。 ワイクはティンドルについて白を切るが、ティンドルに宛てた、彼の筆跡のメモなどを刑事は見せて、弾痕も追求する。 仕方なくワイクは、ティンドルとはゲームをしたと刑事に話し、宝石強盗を装い、2発は実弾で、彼を撃ったのは空砲だったことなどを告白する。 ワイクは気絶した哀れなティンドルの姿を見て満足して、彼にブランデーを飲ませて帰したというのだ。 刑事は血液の痕跡を見つけ、庭にティンドルの死体を埋めたと主張し、タンスから彼の衣服を発見する。 刑事はワイクがティンドルを殺害したと断定して、さらに彼を追求し、取り押さえようとする。 しかし、実は刑事は変装したティンドルで、空砲で屈辱を味わった復讐のために、彼が仕掛けた罠だったのだ。 得意満面のティンドルだったが、これで相こだというワイクに対し、ティンドルは、まだ貸しがあると言い張り、ワイクの愛人を殺したことを知らせる。 そして、警察が来ることと、殺害はワイクの犯行だと決め付けられることを伝え、今度はティンドルが主導権を握り、新たなゲームが始まる。 ワイクは、ティンドルが隠してあるという、証拠品を探すよう指示され、彼にからかわれながら、それを次々探していく。 ようやく最後の証拠品を探し当てたワイクは、屋敷に到着したという警察に慌てふためくが、それもティンドルの仕掛けた罠だった。 ティンドルはワイクの愛人と会ったのは確かで、人に恥をかかせるゲームを好むことを知っていた彼女は、協力して証拠品を提供してくれたのだった。 勝ち誇るティンドルはワイクを侮辱し、彼の妻マーガリートは屋敷には戻らないことを告げて、最後に彼の小説をも非難して妻のコートを取りにいく。 ショックを受けたワイクは、自分が置かれている状況を小説に見立てて、拳銃に実弾を込める。 妻を奪われ、人間性までけなされたワイクは、ティンドルに向けて発砲するが、その時警察が到着する。 瀕死のティンドルは、”警察にはただのゲームだと言え!”と言い残し、部屋中の電動人形のスイッチを押しながら、息を引き取る。 そしてワイクは、動き出して笑わらう人形に囲まれながら絶望する。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
ロンドン。
世界的なイギリスの推理小説家アンドリュー・ワイクは、大邸宅に妻と不倫関係の美容院経営者マイロ・ティンドルを呼び出す。
ワイクは、退屈で浪費家、さらに、わがまま極まりない妻と本気で付き合えば、間違いなく養っていけないとティンドルに忠告する。
そしてワイクは、ティンドルが妻を養えるようにと、保険が掛かけられている25万ポンドの宝石を盗み出すよう提案する。
宝石をさばく手はずや権利書も用意し、現金がティンドルの懐に入るということをワイクは知らせる。
ティンドルは半信半疑でいたが、犯罪の天才故に、推理小説家として成功したと言うワイクの言葉と、非課税の現金に釣られて、提案に乗ることにするのだ
が・・・。
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2007年、本作でティンドルを好演したマイケル・ケインが、ワイクを演じてリメイクされた。
*「スルース」(2007)
第45回アカデミー賞では、監督、主演男優、作曲賞にノミネートされ、主演の二人は共に候補になった。
後半は、主演の二人の激しい復讐合戦となり、悲劇のような展開で終わるのだが、序盤は両者のコミカルな演技が楽しめる。
時代の流れで仕方がないが、スマートな作風になり過ぎたリメイク作品に比べ、主人公達の、滑稽なゲームを嘲り笑うがごとく、随所で効果的に使われる、電気仕掛けの人形や美術品などの小道具の使い方は見事だ。
手がけた作品は少ないものの、「三人の妻への手紙」(1949)と「イヴの総て」(1950)で、2度アカデミー監督、脚本賞を受賞したジョセフ・L・マンキウィッツが、史上最大の失敗作と言われた「クレオパトラ」(1963)から、名誉を挽回した快心作で、軽快でメリハリのある、彼の演出は絶賛された。
また、彼は1993年に83歳で亡くなっているが、結局この作品が遺作となった。
小説家の屋敷内での出来事を全編二人だけの出演者で描いた異色作であり、ローレンス・オリヴィエの重厚且つコミカルな、変幻自在の演技と、既にその実力を高く評価されていたマイケル・ケインの、生きのよさが非常に印象に残る秀作。