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スローターハウス5 Slaughterhouse-Five (1972)

1969年に発表された、カート・ヴォネガットの小説”スローターハウス5/Slaughterhouse-Five, or The Children’s Crusade: A Duty-Dance With Death”を基に製作された作品。
過去・現在・未来を移動することができる男性が人生を見つめ直す姿を描く、監督ジョージ・ロイ・ヒル、主演マイケル・サックスロン・リーブマンユージン・ロッシェヴァレリー・ペリン他共演のSF反戦映画。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


SF


スタッフ キャスト
監督:ジョージ・ロイ・ヒル

製作:ポール・モナシュ
原作:カート・ヴォネガット
スローターハウス5/Slaughterhouse-Five, or The Children’s Crusade: A Duty-Dance With Death
脚本:スティーブン・ゲラー
撮影:ミロスラフ・オンドリチェク
編集:デデ・アレン
音楽:グレン・グールド

出演
ビリー・ビルグリム:マイケル・サックス
ポール・ラザロ:ロン・リーブマン
エドガー・ダービー:ユージン・ロッシェ
バレンシア・マーヴル・ピルグリム:シャロン・ガンズ
モンタナ・ワイルドハック:ヴァレリー・ペリン
ワイルド・ボブ・コディ:ロバーツ・ブロッサム
ライオネル・マーブル:ソーレル・ブーケ
バーバラ・ピルグリム:ホーリー・ニア
ロバート・ビルグリム:ペリー・キング
ロナルド・ウェアリー:ケビン・コンウェイ
ラムフォード教授:ジョン・デナー
ハワード・W・キャンベルJr.:リチャード・シャール
ピルグリム夫人:ルシル・ベンソン
ドイツ兵:カール=オットー・アルベルティ
ドイツ軍指揮官:フレデリック・フォン・レデブール

アメリカ 映画
配給 ユニバーサル・ピクチャーズ
1972年製作 104分
公開
北米:1972年3月15日
日本:1975年4月12日
製作費 $3,200,000


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー
一人タイプを打つ老人ビリー・ビルグリム(マイケル・サックス)は、人生の過去と未来を行き来できることを回想録に書き込む。

第二次大戦下、部隊からはぐれたビリーは雪原をさ迷い、現在に戻ると、今朝は、トラルファマドール星で映画スターのモンタナ・ワイルドハック(ヴァレリー・ペリン)と過ごしたことをタイプする。

戦場に戻ったビリーは、アメリカ兵のポール・ラザロ(ロン・リーブマン)とロナルド・ウェアリー(ケビン・コンウェイ)に出くわし、敵兵だと疑われる。

トラルファマドール星。
戦時下に行く気持ちをモンタナから訊かれたビリーは、魅力的な彼女に迫られる。

戦場。
モンタナにキスされることを考えていたビリーは、現れたドイツ兵に捕えられる。
...全てを見る(結末あり)

戦後。
妻バレンシア(シャロン・ガンズ)と共にベッドの中にいたビリーは、妊娠したことを知らされる。

戦場。
ポールとロナルドと共に捕えられたビリーは、他の兵士達と共に捕虜となる。

列車に乗せられるビリーは、部隊の司令官だったワイルド・ボブ・コディ(ロバーツ・ブロッサム)から声をかけられ、ワイオミングに来たら自分を訪ねるようにと言われる。

戦後。
帰国して入院していたビリーは、検眼医であるライオネル・マーブル(ソーレル・ブーケ)の娘バレンシアと結婚し、湖畔に家も建ててもらえることを患者に自慢する母(ルシル・ベンソン)の話を聞く。

戦中。
ドイツ兵に靴を奪われて足が凍傷なり生きることを諦めようとするロナルドを憐れむポールは、彼の不運をビリーのせいにする。

ロナルドに話しかけるポールだったが、彼は息を引き取る。

戦後。
ドレスデン爆撃”を目撃したショックで心的外傷後ストレス障害となったと診断されたビリーは、治療を受ける。

戦中。
列車で目的地に到着したビリーら捕虜は、収容所に向かう。

ロナルドの死を悼みビリーを責めるポールだったが、同胞同士で争うなと言うエドガー・ダービー(ユージン・ロッシェ)に制止される。

イギリス兵の収容棟で歓迎されたビリーらは、赤十字のミスで支給された有り余る食料を振る舞われる。

戦後。
湖畔の家でバレンシアとの結婚生活を始めたビリーは、ある夜、上空に現れた光る物体を目撃する。

戦中。
食事を目の前にして意識を失い治療を受けたビリーは、復讐を誓ったポールに脅される。

ポールを追い払ったエドガーはビリーに食事を与え、息子と同じ位の年齢の彼に戦場に来た理由などを話す。

エドガーから妻の写真を見せられたビリーは、母の写真を見せる。

検眼医の学生だったことを話すビリーは、エドガーに親しみを感じる。

エドガーは、ビリーに支給された女性物のコートのポケットに入れ歯とダイヤが入っていることに気づく。

現代。
検眼医として成功していたビリーは、結婚記念日のパーティーの席で、バレンシアにダイヤを贈る。

そのダイヤのことを出席者に話し始めたバレンシアは、ドレスデンで亡くなった戦友の名前をビリーに尋ねる。

エドガーだと答えたビリーは、それ以上、何も答えずに家に戻り、息子ロバート(ペリー・キング)が持っていた男性誌のヌードモデル、モンタナの写真を見て微笑む。

戦中。
捕虜はドレスデンに移動することになり、そのリーダーとして、ビリーはエドガーを推薦する。

現代。
モンタナが気に入り、家族で彼女の映画を観に行ったビリーは、いかがわしい内容だったためにバレンシアに非難される。

戦中。
移動する列車の中で、妻に書いた手紙をエドガーから読んで聞かされたビリーは、目的地のドレスデンが平和的な街だと知る。

ドレスデン
ヒトラーユーゲント”と指揮官(フレデリック・フォン・レデブール)に迎えられたエドガーらは、人々の笑顔に見守られながら美しい街並みを歩く。

その時、歩み寄って来た老人にビリーが殴られてしまい、指揮官が騒ぎを鎮める。

現代。
検眼医大会に出席するため、義父のライオネルと共にモントリオールに向かうビリーは、搭乗した飛行機が墜落することを予知する。

ビリーの話を聞こうとしないパイロットは離陸し、その後、飛行機は墜落する。

戦中。
食肉処理場”スローターハウス5”に連れて行かれたエドガーは、この場での労働は条約違反だと指揮官に訴える。

現代。
機体は雪山に墜落し、ビリーが奇跡的に助かったことを知ったバレンシアは、車を暴走させて事故を起こしながら病院に向かう。

病院の敷地内で事故を起こしたバレンシアは意識を失い、治療室に運ばれる。

重傷を負い搬送されたビリーは、脳の手術を受ける。

戦中。
宿舎に案内されたエドガーらは、その場のルールを指揮官から知らされる。

現代。
手術が成功したことを知らッされたビリーの娘バーバラ(ホーリー・ニア)は、母バレンシアが3時間前に亡くなったことを夫スタンリーから知らされる。

同室になった大学教授ラムフォード(ジョン・デナー)が、ドレスデン爆撃についての本を書くことを知ったビリーは、自分もその場にいたことを伝える。

1945年2月13日、午後3時。
ドレスデンの街は、いつものように静かな午後を迎えていた。

現代。
”スローターハウス5”と呟きドレスデン爆撃の惨事を嘆くビリーに、その犠牲者を遥かに凌ぐ連合国の死者が、どれだけ甚大であったかをラムフォードは語る。

ドレスデン、午後5時。
作業を終えたビリーらは宿舎に向かう。

午後9時55分。
食事をしていたビリーらは、現れた異様な制服を着たハワード・W・キャンベルJr.(リチャード・シャール)から、敵はナチではなく共産主義だと言われ、それと戦う義勇兵を募る彼の話を聞く。

エドガーの制止を振り切りポールが志願するが、空襲警報が鳴り、捕虜達は防空壕に向かい、激しい爆撃が始まる。

現代。
退院したビリーは、一緒に暮らすことを娘バーバラから提案されるものの、湖畔の家に戻る。

ドレスデン
翌朝、外に出たビリーらは、全てが破壊されたその惨状を見て驚く。

ショックを受けた少年兵はその場を離れ、ガールフレンドの家が破壊されていたために絶望する。

現代。
訪ねて来た息子ロバートが入隊してベトナムに向かうことを知ったビリーは、窓の外の夜空の動く光に気づく。

度々、問題を起こし迷惑をかけたことを謝罪するロバートは、これからは自慢の息子になりたいことをビリーに伝える。

母バレンシアの墓参りに付き合ってほしいとロバートから言われたビリーだったが、心の整理ができていないと伝えて、旅立つ息子を見送る。

その後、夜空の光が近づき、ビリーは姿を消す。

トラルファマドール星に着いたビリーは、その場に滞在することになる。

ドレスデン
瓦礫の山から遺体を収容する作業を始めたビリーらは、それが焼却される様子を見つめる。

トラルファマドール星。
裸体で絶叫しながら現れたモンタナは、その場にいたビリーに襲い掛かる。

落ち着いたモンタナにシャツを着させたビリーは、彼女に優しく接して心触れ合う。

ドレスデン
陶器でできた無傷の人形を見つけたエドガーは、それをビリーに見せて、壊れている同じ人形が家にあることを話し、持って帰れば妻が喜ぶと伝える。

それをゲシュタポに奪われたエドガーは、その場で銃殺される。

ゲシュタポに襲い掛かったビリーだったが、押し倒されて意識を失う。

トラルファマドール星
亡くなった妻バランシアの話をモンタナにしたビリーは、彼女と愛し合う。

現代。
トラルファマドール星のことを話す自分のことを心配するバーバラとスタンリーから、医者を紹介すると言われたビリーは、その星のお陰で正気を保っていることを伝える。

医者に診てもらうつもりはなく、行方不明のスター、モンタナが妊娠したと話すビリーの言動を、スタンリーは正気とは思えない。

瞬間移動ができるのなら未来のいつまで行けるのかを尋ねたスタンリーは、フィラデルフィアで星について講演している最中に倒れるまでだとビリーから知らされる。

フィラデルフィア
講演でトラルファマドール星について話すビリーは、かつて自分に復讐を誓った人物がこの場に現れるだろうと語る。

死を恐れないビリーは、トラルファマドール式の挨拶をしながら、ポールに射殺される。

ドレスデン
柱時計を盗もうとするポールに手を貸したビリーだったが、ロシア兵が現れる。

ポールらは逃げたものの、時計の下敷きになったビリーは取り残される。

ロシア兵は去り、空を見つめるビリーは、子供が生まれたというモンタナの声を聴く。

トラルファマドール星。
息子を抱くモンタナに寄りそうビリーは、名前は自分と同じ”ビリー”にすると言われる。

祝福されるビリーとモンタナは、幸せを実感する。


解説 評価 感想

*(簡略ストー リー)
検眼医として成功したビリー・ビルグリムは、人生の過去と未来を行き来でた。
そんなビリーは、第二次大戦下の戦場で辛い思いをしたかと思うと、トラルファマドール星で映画スターのモンタナと気ままに暮らす。
戦後、結婚したビリーは堅実な道を歩み人々から慕われ、大惨事を奇跡的に生き延びながら時代を行き来して、自分の人生を見つめ直すのだが・・・。
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作品は少ないものの着実にキャリアを重ね話題作を手掛けてきたジョージ・ロイ・ヒルが、実際に経験した”ドレスデン爆撃”に着目したカート・ヴォネガットのSF小説を映画化したことで話題となった。

第二次大戦下の一般市民の犠牲者の数では”広島の原爆投下”と比較される”ドレスデン爆撃”なのだが、カート・ヴォネガットの原作が発表された1969年当時は、戦後、四半世紀近く経ったにも拘らず、その詳細は知られていなかったというのは驚きだ。
この原作により爆撃は世に知られることになり、連合国により正当化された行いの再調査の声が広まったという経緯がある。

主人公が体験する過去、現代、未来の出来事が複雑に絡み合う難解な内容なのだが、シンプルな場面展開によるジョージ・ロイ・ヒルの巧みな演出により解り易く仕上がっている。

第25回カンヌ国際映画祭審査員賞、第1回サターンSF映画賞(1972)ヒューゴー賞映像部門(1973)を受賞し、主演に抜擢されたマイケル・サックスが、ゴールデングローブ賞の新人賞にノミネートされた。

タイトルの”スローターハウス5”とは、ドレスデンで主人公らが収容される食肉処理場を意味する。

青年から老人までを演じ、時を移動する主人公を好演するマイケル・サックス、戦友の死を主人公のせいにして復讐を誓うロン・リーブマン、主人公と親交を深める兵士のユージン・ロッシェ、主人公の妻シャロン・ガンズ、主人公が惹かれる映画スターのヴァレリー・ペリン、戦場での主人公の部隊の指揮官ロバーツ・ブロッサム、主人公の義父ソーレル・ブーケ、主人公の娘ホーリー・ニア、息子のペリー・キング、主人公と戦場で出くわす兵士ケビン・コンウェイ、主人公と病室で同室になり、戦争犠牲者の件などで持論を説く大学教授のジョン・デナー、主人公らを共産主義の戦いに引き込もうとするリチャード・シャール、主人公の母親ルシル・ベンソンドイツ兵カール=オットー・アルベルティドレスデンドイツ軍指揮官のフレデリック・フォン・レデブールなどが共演している。


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