サイレントからトーキーに変わる時代の映画界の裏話を描く、製作アーサー・フリード、監督スタンリー・ドーネン、ジーン・ケリー。ドナルド・オコナー、デビー・レイノルズ共演、MGMミュージカルの全盛期の映画史上に残るミュージカルの傑作。 |
・ジーン・ケリー / Gene Kelly / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督
スタンリー・ドーネン
ジーン・ケリー
製作:アーサー・フリード
脚本
ベツィー・コムデン
アドルフ・グリーン
撮影:ハロルド・ロッソン
編集:アドリエンヌ・ファザン
音楽:アーサー・フリード
出演
ドン・ロックウッド:ジーン・ケリー
コズモ・ブラウン:ドナルド・オコナー
キャシー・セルドン:デビー・レイノルズ
リーナ・ラモント:ジーン・ヘイゲン
R・F・シンプソン:ミラード・ミッチェル
ロスコー・デクスター:ダグラス・フォウリー
ダンスシーンのパートナー:シド・チャリシー
ゼルダ・ザンダーズ:リタ・モレノ
アメリカ 映画
配給 MGM
1952年製作 102分
公開
北米:1952年3月27日
日本:1953年4月15日
製作費 $2,540,800
北米興行収入 $1,826,110
世界 $1,864,180
■ アカデミー賞 ■
第25回アカデミー賞
・ノミネート
助演女優(ジーン・ヘイゲン)
ミュージカル音楽賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1927年のハリウッド。
開館間もない”チャーニーズ・シアター”の新作プレミアに、作品の主演スター、ドン・ロックウッド(ジーン・ケリー)とリナ・ラモント(ジーン・ヘイゲン)が現れる。
先に到着していた幼馴染のコズモ・ブラウン(ドナルド・オコナー)に迎えられ、ドンはインタビューを求められる。
そしてドンは、大スターになるまでの、”順風満帆”な道のりを語り始める。
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ドンとコズモは、子供時代、劇場や映画館に忍び込んでは締め出され、その後、安酒場などで下積み生活を続けた。
やがて、アマチュア・ヴォードヴィリアンとして各地を転々とするが人気は出ず、映画製作現場の下働きとなる。 ある日、ドンはスタントマンの代役を努め、それが認められて次々と危険な役をこなし、”モニュメンタル・ピクチャーズ”所長R・F・シンプソン(ミラード・ミッチェル)に認められる。 シンプソンが、ドンを、既にスターだったリナの相手役に抜擢したため、それまでの態度を一変した彼女は、ドンに接近しようとする・・・。 そして、新作サイレント映画”宮廷の反逆児”のプレミアは終わり、会場から大喝采を受け、主演のドンとリナはステージ挨拶に登場する。 ドンの挨拶後、リナは観客に向かいスピーチをしようとするが、ドンはそれを必至に止めようとする。 実は、リナの声は役柄のイメージとはまったく違う金切り声で、宣伝部の要請で、彼女を人前でしゃべらせることは禁じさせられていた。 傲慢なリナは、上辺だけ彼女とカップルを装うドンを上手く操ろうとしていたため、ドンは彼女の行動に頭を痛める。 劇場から、パーティー会場のシンプソン邸に向かう途中、熱狂的なファンに捕まってしまったドンは、何とかそれを逃れ一台の車に飛び乗る。 見知らぬ男が突然、飛び乗ってきたため、車を運転していたキャッシー・セルドン(デビー・レイノルズ)は驚いてしまう。 キャッシーは、それが大スターの”ドン・ロックウッド”だと気付き冷静にはなるが、彼女は、ドンに臆することなく映画界の批判を始める。 自分も同類かと反論するドンだったが、キャッシーが、ただの舞台俳優志願だと知り見下して車を降りる。 そのパーティーで、ドンはじめ映画関係者は、トーキー映画の幕開けをシンプソンから知らされることになる。 パーティーの余興に登場した、ダンサーのキャッシーに気づいたドンは、彼女をからかおうとする。 キャッシーは傷つき、ドンにケーキをぶつけようとするが、それが二人の関係を気にするリナを直撃してしまう。 その場を立ち去っキャッシーを追ったドンは、彼女が気になる存在になってしまう。 その後、姿を消したキャッシーを忘れられないでいたドンは、コズモから映画は一度見れば十分だと、キャッシーと同じ指摘をされてしまう。 益々気が滅入るドンはコズモに励まされるが、キャッシーを締め出したのがリナだと分かる。 怒り心頭のたドンは、新作の役を演じながらリナを非難していたが、そこにシンプソンが血相を変えて現れる。 シンプソンは、即刻、撮影を中止させ、スタッフに自宅待機命令を出す。 トーキー映画「ジャズシンガー」が大成功しているため、シンプソンは、新作”闘う騎士”をトーキー映画に作り直そうとする。 しかし、そこで、リナの拍子抜けした甲高い声をどうするかが大問題となる。 一気に時代が変わり、ハリウッドでは次々とトーキー作品が作られていく。 そんな時、小さな役を得ていたキャッシーに、シンプソンが注目し、人気女優ゼルダ・ザンダーズ(リタ・モレノ)の作品に出演させようとする。 それを知り、ようやくキャッシーと再会できたドンは、パーティーでの態度を謝罪する。 キャシーも自分が言い過ぎたことを謝罪し、自分の気持ちを上手く伝えられないドンは、スタジオのセットに彼女を案内して愛を告げる。 その後、ドンとリナの発声練習が始まるのだが、慣れないトーキー映画作りに、監督ロスコー・デクスター(ダグラス・フォウリー)四苦八苦する。 そして、リナの声はどうにもならず、ようやく完成したドンとリナの新作試写の評価は最悪だった。 6週間後の公開を前に、ドンは一気に窮地に立たされる。 ドン、キャッシー、コズモは、失敗が間違いない新作に頭を抱えるが、”闘う騎士”そのものをミュージカルに作り変えるアイデアを思いつく。 三人は、希望が沸いてきたことで胸膨らむが、リナの声の問題があり、再び意気消沈してしまう。 コズモの思いつきで、キャッシーにリナの吹き替えさせることを考えるが、ドンは彼女に陰の役はさせられないと言い出す。 しかし、新作を救う為だと言うキャッシーとコズモの説得で、ドンはそれを受け入れることにする。 キャッシーとの愛も深まり、高まる期待にドンは、どしゃ降りの雨も気にせず家路に向かう。 翌日、シンプソンにそれを説明したドンとコズモは、リナには吹き替えを秘密にして、作品名も”踊る騎士”というミュージカルらしい題名に変える。 作品の改造は急ピッチで進み、ドンは新しいイメージとして、”ブロードウェー・メロディ”を挿入することをシンプソンに提案する。 作品は完成に近づくのだが、ゼルダがリナに吹き替えのことを話してしまい、憤慨した彼女は、喝采を浴びるためにキャシーを利用しようとする。 さらにリナは、弁護士に相談して契約書を盾に、スタジオを訴えるとシンプソンを脅す。 仕方なくシンプソンは、キャシーの名を隠すよう宣伝部に命じ、リナは今後も彼女を自分の吹き替えとして使い続けることを企む。 そして、よいよ”踊る騎士”公開の日、作品は大喝采を浴び、リナは有頂天となる。 カーテンコールに答えるドンとリナだったが、彼女は今後もキャッシーを吹き替えで使うことを断言する。 それを承知しないドンを振り切り、観客の声援に応えたリナは、ステージでスピーチを始める。 ドン、シンプソン、コズモは、あえてそれを止めようとせず、観客に歌うように要求されたリナの吹き替えを、カーテンの裏でキャッシーにさせようとする。 吹き替えを強要されたキャッシーはドンを見限ってしまい、リナは”雨に唄えば”を唄い始める。 ドン達はタイミングを見計らいカーテンを開き、観客にリナの声が吹き替えだったという事実を知らせる。 観客に大笑いされたリナはステージから逃げ出し、ドンは、泣きながら劇場を走り去ろうとするキャッシーを呼び止める。 キャッシーが、映画の”主役”だということを観客に知らせ、ドンは彼女をステージに呼び寄せる。 そして、ドンとキャッシー、そしてコズモの新しいコンビは、映画界の新しい時代を築き始める。
...全てを見る(結末あり)
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*(簡略ストー リー)
1927年のハリウッド。
新作プレミアを済ませたサイレント映画のスター、ドン・ロックウッドは、パーティー会場に向かう途中、女優志願のキャッシー・セルドンに出会う。
キャッシーは、大スターのドンに気づくが、彼に臆することなく映画界の批判を始める。
その意見に、名も知れぬ女優の卵を見下すドンだった。
パーティーでは、ドンや映画関係者は、トーキー映画の幕開けを、撮影所の所長シンプソンから知らされる。
余興に登場した、ダンサーのキャッシーに気づいたドンは、彼女をからかう一方で、気になる存在になってしまう。
その後、ドンは、子供時代から苦楽を共にしたコズモから、映画は一度見れば十分だと言われ、キャッシーと同じ指摘をされてしまう。
その後、キャッシーのことが忘れられなくなったドンは、彼女を業界から締め出したのが、コンビを組む共演者のリナだと知り憤慨する。
そんな時、ついにトーキー映画「ジャズシンガー」が公開されてr大ヒットとなり、シンプソンは、自社作品もトーキーに作り直そうとするのだが・・・。
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アーサー・フリード作詞、ナシオ・ハーブ・ブラウン作曲の、1929年のMGM映画「ハリウッド・レヴィユー」に登場する曲を基にした主題曲が原題となっている。
アーサー・フリードが、前年の「巴里のアメリカ人」(1951)に続きジーン・ケリーと組んだ作品でもあり、ミュージカル映画の金字塔。
1989年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。
第25回アカデミー賞では、憎まれ役ながら怪演を見せるジーン・ヘイゲンが、助演女優、そして、ミュージカル音楽賞にノミネートされた。
とにかく、古さを感じさせない、今見ても、全てが新鮮に思える素晴らしい作品で、何度見ても飽きることがない。
主人公達の、溌剌とした演技や踊りだけでなく、映画の世界が激変するトーキー映画の誕生の裏話や、古典映画をブロードウェイ・メロディと合体させてしまおうとする、単純明快な、ご都合主義的なストーリーがたまらなく楽しい。
元来、ミュージカルの定義は、”偉大なるナンセンス”ということなので、その王道を往く典型的な作品だ。
話をこじつけて、楽しく唄って踊る、尚且つ物語が面白ければそれでよしなのだ。
それを演じるのが最高のエンターテナーならば、観る者は大満足する。
クライマックス、ジーン・ケリーがブロードウェイ・メロディを独演し始め、更には突然登場する、ゲストのシド・チャリシーと踊るシーンなどは、月並みな表現だが痺れてしまう。
個人的には、有名な、ジーン・ケリーが雨の中で踊るのシーンよりも、この胸躍る約13分にも及ぶブロードウェイ・メロディの方が好きだ。
*尚、雨のシーンでは雨が画面で映えるように、牛乳を混ぜて撮影された。
40歳になる、正に脂の乗り切っている、ジーン・ケリーの躍動感ある歌と踊り、振り付けを兼ねた、スタンリー・ドーネンとの共同監督での演出も、彼の豊かな才能を十分に発揮して、見事なパフォーマンスと共に、見応え十分な仕上がりになっている。
やや地味だが、ジーン・ケリーを上回るほどの素晴らしいステップを披露する、若いドナルド・オコナーも注目して欲しい。
じっくり見ると、ドナルド・オコナーの体の切れが、ジーン・ケリーよりもが良いのが分かる。
13歳の年の差を考えると、生きのよさは彼の方が上なのだが、人を惹きつける魅力はジーン・ケリーの方が数段上だ。
ドナルド・オコナーも一流だが、やはり世界を席巻できる才能とオーラが違う。
踊りのスタイルが違うフレッド・アステアとの比較もおかしいが、個人的には、はち切れんばかりの、アクロバティックなジーン・ケリーの踊りに軍配を上げたい。
撮影時19歳のデビー・レイノルズの、素朴な可愛らしさと抜群の歌唱力は、美女嗜好の当時のハリウッドでも、実力も兼ね備えた新アイドルとして大歓迎された。
シド・チャリシーを、ブロードウェイ・メロディの場面だけに特別出演させている贅沢さもたまらない。
また、その後、「王様と私」(1956)や「ウエスト・ サイド物語」(1961)等にも出演するリタ・モレノも、人気女優の役で登場する。
サイレント映画の大女優で、声を発したら驚きの、アカデミー助演賞候補になったジーン・ヘイゲン、新しい時代に敏感に反応する撮影所長ミラード・ミッチェル、トーキー映画製作に四苦八苦する、映画監督ダグラス・フォウリー等が共演している。