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ショック集団 Shock Corridor (1963)

精神病院で起きた殺人事件を取材するために患者を装った記者が体験する異常な世界を描く、製作、監督、脚本サミュエル・フラー、主演ピーター・ブレックコンスタンス・タワーズジーン・エヴァンスハリー・ローデスジェームズ・ベスト他共演のドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ


スタッフ キャスト
監督:サミュエル・フラー

製作:サミュエル・フラー
脚本:サミュエル・フラー
撮影:スタンリー・コルテス
編集:ジェローム・トムズ
音楽:ポール・ダンラップ

出演
ジョン”ジョニー”バレット:ピーター・ブレック
キャシー:コンスタンス・タワーズ
ボーデン:ジーン・エヴァンス
トレント:ハリー・ローデス
スチュアート:ジェームズ・ベスト
パリアッチ:ラリー・タッカー
J.L.メンキン医師:ポール・デュボフ
ウィルクス:チャック・ロバーソン
ロイド:ジョン・クレイグ
L.G.クリスト医師:ジョン・マシューズ
スワンソン:ビル・ザッカート
フォン医師:フィリップ・アーン

アメリカ 映画
配給 Allied Artists Pictures
1963年製作 101分
公開
北米:1963年9月11日
日本:1965年9月28日


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー
精神病院で起きた殺人事件の犯人を突き止めようとする、新聞社”グローブ”の記者ジョン”ジョニー”バレット(ピーター・ブレック)は、今回の取材で”ピューリッツァー賞”を狙っていた。

その方法としてジョニーは、恋人でストリッパーのキャシー(コンスタンス・タワーズ)を妹と偽り、彼女と近親相姦の関係だったことにして、自ら精神患者を装う考えだった。

精神科医のフォン医師(フィリップ・アーン)とその戦友で編集局長である上司スワンソン(ビル・ザッカート)の協力を得たジョニーは、変質者に思われるための訓練を1年間続けていた。
...全てを見る(結末あり)

危険が伴う計画を心配知るキャシーは、患者など周囲に影響されるのではないかと考えるが、ジョニーの考えは変わらなかった。

無謀だと言うキャシーは、こんな計画に関わったことを後悔していることをジョニーに伝える。

普通の記者でいてほしいと言ってジョニーを説得するキャシーだったが、それが無理だと分かり諦めてその場を去る。

その後、4日間もジョニーから連絡がないために心配知るキャシーは、スワンソンに連絡する。

気になるなら協力しろと言われたキャシーは、警察に向かい、兄に強姦されたことを警官に伝える。

兄が精神疾患だと認める書類にサインすると伝えたキャシーは、精神科医に連絡する警官の様子をみながら動揺する。

精神科医J.L.メンキン医師(ポール・デュボフ)の診察を受けたジョニーは、訓練通りに変質者を装いその場で騒ぎを起こす。

症状の重い統合失調症というメンキンの診断結果を聞きメモしたキャシーは、それをスワンソンとフォンに伝える。

フォンはジョニーが精神患者を見事に演じていると考えるが、キャシーの不安は募る。

思い通りに精神科病院に入院することになったジョニーは、看護人のウィルクス(チャック・ロバーソン)に迎えられる。

同僚のロイド(ジョン・クレイグ)にジョニーを紹介したウィルクスは、彼を病棟に案内し、院長のL.G.クリスト医師(ジョン・マシューズ)の治療で治るだろうと伝える。

計画通りに進んでいることに満足するジョニーは、殺人者がいるかもしれない廊下を見つめる。

ジョニーは、殺人の目撃者の患者スチュアート(ジェームズ・ベスト)、トレント(ハリー・ローデス)、ボーデン(ジーン・エヴァンス)のことを考える。

同室の患者である肥満体のパリアッチ(ラリー・タッカー)は、ジョニーを歓迎する。

食堂でスチュアートの横に座ったジョニーは、ロイドに注意され、パリアッチらの席に座るよう指示される。

パリアッチが騒ぎを起こしたため、スチュアートに話しかけたジョニーは、南北戦争時代の南軍少将J・E・B・スチュアートだと思い込んでいる彼に、自分はネイサン・ベッドフォード・フォレスト中将だと伝える。

上官(ジョニー)に敬意を払うスチュアートは、ロイドの指示で病棟に向かう。

その夜、キャシーの夢を見ながら眠っていたジョニーは、オペラ歌手だと思い込んでいるパリアッチの歌声で目が覚める。

殺されたスローンのことを口にしたパリアッチに、彼を殺したのは誰かと尋ねたジョニーだったが、ナイフで殺されたとしか分からなかった。

ジョニーは、パリアッチが犯人を覚えていて、完全には正気を失っていないと考える。

翌日、クリストと話をしたジョニーは、その後、ウィルクスの冷水療法を受ける。

クリストに呼ばれたキャシーは、動揺しながら話をして、ジョニーがダンス療法を受けていることを知る。

ピアノで”ディキシー”を演奏してもらいスチュアートを刺激したジョニーは、その様子を見ながら隣の部屋に向かう。

ジョニーは、その場にいた性依存者の女性患者に襲われ、騒ぎに気づいたウィルクスとロイドが彼を助ける。

怪我の治療を受けたジョニーは、話しかけて来たスチュアートから、朝鮮戦争に従軍して捕らえられ、共産主義に洗脳されたという話を聞く。

ある軍曹に出会い考えを変えたと言うスチュアートは、捕虜交換で帰国するものの懲戒除隊となり、裏切り者扱いされたことをジョニーに話す。

ジョニーは、スローンをキッチンで殺した男を見たかスチュアートに尋ねる。

他の二人とテーブルの下にいたと言うスチュアートは、白いズボンだったことしか覚えていなかった。

面会に来たキャシーと話したジョニーは、犯人は看護人か医師だとだという考えをスワンソンに伝えることを指示する。

それをスワンソンに伝えたキャシーは、ジョニーは病気だと言いながら、彼のことを心配する。

その後、ジョニーに面会したスワンソンは、他の二人からも情報を聞き出すと言っていたことをキャシーに伝える。

犯人捜しがジョニーにとっても解決策になると言うスワンソンの考えを、キャシーは本気とは思えない。

その頃、キャシーが心配していた通り、ジョニーに異変が起き苦しみ始める。

それでも犯人を捜そうとするジョニーは、スチュアートが別の病棟に移されたため、次の行動を考える。

分離された南部の大学が統合された際の最初の黒人学生であるトレントは、ジョニーに”KKK”のマスクを見せながら、自分は白人至上主義者だと伝える。

それをその場で皆に訴え始めたトレントは、黒人患者に襲い掛かり騒ぎを起こす。

ウィルクスとロイドに取り押さえられたジョニーとトレントは、拘束服を着せられる。

大学で起きた騒動などの話をするジョニーは、キッチンでスローンを殺した男のことをトレントに尋ねる。

看護人だと答え、大学のことと白人至上主義について興奮して話し始めたトレントを黙らせたジョニーは、精神的に参ってしまう。

面会に来たキャシーと話したジョニーは、もう少しで犯人の名前が分かったのだが、トレントは正気を失ったと伝える。

ボーデンを問い詰めると言うジョニーの様子がおかしいため、心配するキャシーは彼にキスする。

キャシーを妹だと思うジョニーはそれを拒んで取り乱し、その理由が分からないキャシーも興奮したため、ロイドが彼女を連れ出す。

スワンソンからの電話を受けたキャシーは、クリストに呼ばれて、ジョニーの電気ショック療法の許可を求められたことを伝える。

それを受ければニセ患者だとバレると言われたキャシーは、自分のことを本当の妹だと思っているジョニーが、正気を失いかけていることをスワンソンに伝える。

電気ショック療法を受けたジョニーは、クリストに気づかれずにすんだものの、うまく話しができなくなる。

大陸間弾道ミサイルの研究をしていた原子物理学者ボーデンは、趣味はスケッチで精神年齢は6歳だった。

ボーデンと親交を深めたジョニーは、面会に来たキャシーにそのことを話す。

似顔絵を描かせているボーデンに、誰がスローンを殺したか訊こうとしたジョニーだったが、声が出ない。

何とかそのことを訊いたジョニーは、スチュアートとトレントと共にテーブルの下に隠れていたと言うボーデンから、ウィルクスが犯人だと聞きだす。

ボーデンが描いた自分の似顔絵を見たジョニーは憤慨して取り乱し、ウィルクスとロイドに取り押さえられる。

拘束服を着せられたジョニーはクリストと話し、犯人が分かったことを伝える。

ところが、犯人が誰か分からなくなったジョニーは、自分がスローンを殺したと言いだし、クリストは、このまま拘束するようウィルクスに指示する。

混乱するジョニーは正気を失い、叫び声をあげる。

その後、落ち着いたジョニーだったが、クリストからスローンのことを訊かれても犯人が誰か思い出せない。

拘束を解かれたジョニーは、廊下のベンチに座り休んでいると、嵐の中で雷に打たれる幻覚を見る。

犯人がウィルクスだと思いだしたジョニーは、それをクリストに話し、患者を装ったのは記事を書くための演技だったことを伝えるものの信じてもらえない。

興奮するジョニーは、落ち着くようにと言うクリストの指示に従う。

ウィルクスが冷水治療室にいることを思い出したジョニーは、彼に襲い掛かり格闘になる。

廊下でウィルクスを痛めつけて観念させたジョニーは、スローンを殺したことを白状させる。

ジョニーから、再び記事を書くための演技だったと言われたクリストは、キャシーを呼び寄せる。

この計画の前までは普通に記事を書く記者だったと言うキャシーは、ジョニーが異常になった理由をクリストに尋ねる。

ウソをつき様々な療法を繰り返せば異常になると言うクリストは、緊張性統合失調症患者がピューリッツァー賞受賞者になったことが信じられないとキャシーに伝える。

クリストは、ジョニーは病気でないと言うキャシーの前で、彼に指示を与える。

指示通りに腕を上げるジョニーに抱き着くキャシーは、無意識の彼の前で泣き崩れる。

ジョニーは、その後も患者たちと治療を受けることになる。

”神は滅亡を願う時、まず人を狂わせる”
                                           エウリピデス 紀元前425年


解説 評価 感想

*(簡略ストー リー)
ピューリッツァー賞”受賞を夢見る新聞記者のジョン”ジョニー”バレットは、精神病院で起きた殺人事件の犯人を捜すために、入院患者を装う訓練を受ける。
妹を愛する変質者に扮するジョニーは、恋人のキャシーに妹の役を演じさせようとするが、彼女は危険な計画に不安を感じる。
考えを変えないジョニーのために仕方なく妹を演じたキャシーは、心配しつつ彼を見守るしかなかった。
患者として精神病院に入院できたジョニーは、殺人の目撃者であるスチュアート、トレント、ボーデンと接触し犯人を突き止めようとする。
ところがジョニーは、その異様な環境と様々なショック療法のせいで異常を感じ始める・・・。
________

鬼才サミュエル・フラー自ら製作、脚本を担当した監督作品で。

無謀とも言える精神患者に扮する記者の行動がエスカレートし、目的は達成するものの、その環境やショック療法のために、主人公自身が狂人となってしまうという恐ろしい内容のドラマ。

精神患者として病院に収容されるまでに受けた、精神異常者を装うための厳しい訓練により、見方によっては、冒頭から主人公が正常ではないように思える演出に注目したい。
主人公の恋人の表情は、最初から”異常者”を見る目である。

入院時に既に心に傷を負っている様子の主人公は、逆にその環境に順応していくようにも思える姿を描く内容は、ホラー映画のような恐怖を感じる。

サミュエル・フラー作品の中でも屈指の異色作として非常に評価が高い作品で、1996年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。

上記のように、個人的には冒頭から狂人にしか見えない主人公を迫真の演技で演ずるピーター・ブレック、常に主人公のことを心配する恋人を好演するコンスタンス・タワーズ、主人公が接触する殺人の目撃者である患者、原子物理学者のジーン・エヴァンス、同じく、黒人でありながら白人至上主義者のハリー・ローデス、同じく、朝鮮戦争従軍時に共産主義に洗脳されたジェームズ・ベスト、自分をオペラ歌手と思い込む主人公と同室の患者ラリー・タッカー、精神患者として主人公を診察する医師のポール・デュボフ、精神病院の看護人で犯人だったチャック・ロバーソンジョン・ウェインのスタント・ダブルとして有名)、その同僚ジョン・クレイグ、精神病院の院長ジョン・マシューズ、計画に協力する主人公の上司ビル・ザッカート、同じく精神科医のフィリップ・アーンなどが共演している。


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