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愚か者の船 Ship of Fools (1965)

1962年に発表された、キャサリン・アン・ポーター同名小説を基に製作された作品。
客船の乗客の人間模様をナチス・ドイツが政権を取った時代を舞台に描く、製作、監督スタンリー・クレイマー、主演ヴィヴィアン・リーシモーヌ・シニョレホセ・フェラーリー・マーヴィンオスカー・ウェルナーマイケル・ダン共演のシニカルなドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ

ヴィヴィアン・リー / Vivian Leigh / Pinterest


スタッフ キャスト ■
監督:スタンリー・クレイマー

製作:スタンリー・クレイマー
原作:キャサリン・アン・ポーター
脚本
キャサリン・アン・ポーター

アビー・マン
撮影:アーネスト・ラズロ
編集:ロバート・C・ジョーンズ
美術・装置
ロバート・クラトワシー

ジョセフ・キッシュ
衣装デザイン
ビル・トーマス

ジーン・ルイス
音楽:アーネスト・ゴールド

出演
メアリー・トレッドウェル:ヴィヴィアン・リー

伯爵夫人:シモーヌ・シニョレ
ジーグフリード・リーバー:ホセ・フェラー
ビル・デニー:リー・マーヴィン
ウィリー・シューマン医師:オスカー・ウェルナー
ジェニー・ブラウン:エリザベス・アシュレー
デヴィッド:ジョージ・シーガル
ヒューブナー:ウェルナー・クァンペラー
ペペ:ホセ・グレコ
カール・グロッケン:マイケル・ダン
ティーレ船長:チャールズ・コーヴィン
ジュリアス・ローウェンタール:ハインツ・リューマン
アムパーロ:バーバラ・ルナ
フラウ・フッテン:リリア・スカラ

アメリカ 映画
配給 コロンビア・ピクチャーズ

1965年製作 149分
公開
北米:1965年7月29日
日本:1966年10月


アカデミー賞 ■
第38回アカデミー賞

・受賞
撮影(白黒)・美術賞(白黒)
・ノミネート
作品
主演男優(オスカー・ウェルナー
主演女優(シモーヌ・シニョレ
助演男優(マイケル・ダン
脚色・衣装デザイン(白黒)


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
1933年、メキシコベラクルス
ドイツブレーマーハーフェンに向かう客船ベラを、乗客で小人のカール・グロッケン(‘マイケル・ダン)は、”愚か者の船”と称した。

船長のティール(チャールズ・コーヴィン)は、船医ウィリー・シューマン(オスカー・ウェルナー)が、病気のため、この航海を最後に船を去ることを寂しく思う。

途中、キューバで、 600人ものサトウキビ畑のスペイン人労働者や、彼らのために闘った、政治犯の伯爵夫人(シモーヌ・シニョレ)を乗せる。

ナチス・ドイツの狂信的な信望者ジーグフリード・リーバー(ホセ・フェラー)は、ユダヤ人ジュリアス・ローウェンタール(ハインツ・リューマン)と相部屋になり不満を抱く。

野球選手をクビになったビル・デニー(リー・マーヴィン)は、画家で鉱山の設計係などもしていたデヴィッド(ジョージ・シーガル)、そしてグロッケンと相部屋になる。

伯爵夫人を診察したシューマンは、眠れないという彼女に頼まれ睡眠薬を投与する。

外交官の夫と離婚したばかりのメアリー・トレッドウェル(ヴィヴィアン・リー)は、頭が固いという恋人のデヴィッドの不平を語るジェニー・ブラウン(エリザベス・アシュレー)の話に付き合う。
...全てを見る(結末あり)

シューマンに、昨晩のことで感謝した伯爵夫人は、彼を夜のフラメンコン・パーティーに誘う。

その夜、ジプシーのダンサー、ペペ(ホセ・グレコ)らの、見事なフラメンコなどを堪能した伯爵夫人は、ティール船長から、シューマンが重い心臓病を患っていることを知らされる。

パーティーを楽しみたいジェニーだったが、デヴィッドは気乗りせず、彼女は船員とダンスを楽しむ。

出産のために、遅れて現れたシューマンは、伯爵夫人の席に着き、彼女に誘われてダンスをする。

しかし、気分の優れない伯爵夫人は部屋に戻り、シューマンがそれに付き添う。

乗客から金を巻き上げることを、ぺぺに命ぜられていたダンサーのアムパーロ(バーバラ・ルナ)は、彼の言いなりになることに耐えられなくなっていた。

伯爵夫人を落ち着かせたシューマンは、彼女が政治犯になった経緯などを聞きながら、お互い惹かれ合うものを感じ始める。

どうしても外角のカーブが打てなかったことを、グロッケンに話すデニーだったが、世界の多くの人々が、それが何のことかを知らない現状で、気にする必要はないと彼に励まされる。

デニーは、それに納得してグロッケンに感心し、彼を気に入る。

シューマンは、伯爵夫人の部屋から出てきたことについてをティール船長に聞かれ、船の中は、自分を含めた愚か者の集まりだと嘆く。

翌朝、朝食の最中にもユダヤ人をあからさまに差別するような行動が起きる船内の様子に、シューマンは気分を害して席を外してしまう。

その原因を作ってしまったメアリーは、船員に口を滑らせてしまったことを後悔する。

その後、フラウ・フッテン(リリア・スカラ)の犬が海に落とされ、それを助けようとした労働者が溺れ死んでしまう。

自分よりも、絵を愛しているとしか思えないデヴィッドを理解できないジェニーは、もどかしい思いしか語らない彼との終わりを感じる。

気分の優れないシューマンの様子を見に来た伯爵夫人は、本を読んで彼の心を癒す。

ローウェンタールは、ナチス・ドイツが政権を取ったことについてグロッケンと議論になるが、ユダヤ人ではあるが、ドイツ人としての誇りを語り、今後の情勢を楽観視する。

ジプシー達と踊るジェニーを見て憤慨したデヴィッドだったが、ぺぺに叩きのめされ、二人はそれをきっかけに愛を確かめ合う。

船員ヒューブナー(ウェルナー・クァンペラー)に色目を使っていたメアリーだったが、彼は、自分が振り回されているだけだと知り彼女を見限る。

デニーは、ジプシーの女に言い寄り部屋の番号を聞きだすが、それはメアリーの部屋だった。

テネリフェ島に送られる、伯爵夫人が気になるシューマンは、島に留まり彼女の世話をすることをティーレ船長に伝える。

船長は当然シューマンを引き止め、彼は、夫人に出会い、初めて生甲斐を感じたことを語るが、結局は説得されて船に残ることになる。

メアリーの部屋に押し入ってきたデニーは、彼女と知らずに迫ろうとする。

しかし、メアリーは抵抗し、野蛮人のようなデニーを部屋から追い出してしまう。

久し振りに愛し合ったデヴィッドとジェニーは、自分達が変わったことを実感する。

伯爵夫人の元に向かったシューマンは、何も言わずに彼女を抱き寄せる。

テネリフェ島
労働者は下船し、シューマンは伯爵夫人との別れを惜しみながら、連行される彼女を送り出す。

客船ベラは、ブレーマーハーフェンに向け出航するが、伯爵夫人に付いて行かなかったことを、シューマンは後悔してしまう。

その後、酒を飲みデッキに上がったシューマンは、発作を起こして倒れ息を引き取る。

ブレーマーハーフェン
乗客は下船して、シューマンの遺体は、家族に引き取られる。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
1933年。
メキシコベラクルスから、ドイツブレーマーハーフェンに向かう客船ベラを、乗客グロッケンは”愚か者の船”と称した。
船長のティールは、重い心臓病の船医ウィリー・シューマンが、この航海を最後に船を降りることを寂しく思っていた。
ナチス・ドイツの狂言的な信望者リーバーは自論を説き、クビになった野球選手デニーは女を物色する。
外交官の夫と別れたメアリー・トレッドウェルも、欲求不満気味で男達に色目を使い、画家デヴィッドとジェニーのカップルは、本当の愛を実感できないでいた。
ユダヤ人のローウェンタールは、自分がドイツ人であることを誇りに思い、今後の情勢を楽観視していた。
様々な人々が集う中、船はキューバで、600人ものスペイン人労働者を乗せ、彼らのために尽くし、政治犯となった伯爵夫人が乗船する・・・。
__________

コメディ・タッチで始まるドラマは、世の中の縮図を詰め込んだ登場人物の物語として展開するが、ナチス台頭による、その後の世界の悲劇を案じさせる怖さを秘めた、スタンリー・クレイマー作品らしい、メッセージ性の高い仕上がりとなっている。

ホッとする瞬間である、目的地到着で下船する乗客の中で、ナチス政権下の母国に、不安を感じていないユダヤ人(H・リューマン)が家族と再会する場面は、その後の運命を考えさせられる、印象的なシーンでもある。

新旧の実力派スター競演の、国際色豊かな個性が楽しめる作品でもある。

第38回アカデミー賞では作品賞をはじめ8部門にノミネートされ、撮影(白黒)、美術賞(白黒)を受賞した。
・ノミネート
作品
主演男優(オスカー・ウェルナー
主演女優(シモーヌ・シニョレ
助演男優(マイケル・ダン
脚色・衣装デザイン(白黒)

欲求不満の貴婦人を熱演する、本作が遺作となったヴィヴィアン・リー、政治犯としての逞しさを感じさせながら、満たされぬ愛情に揺れ動くシモーヌ・シニョレ、狂信的なナチス信望者を怪演するホセ・フェラー、野球選手をクビになり、船内の女を物色するリー・マーヴィン、自分を含めた愚かしい者達に、絶望しかけながら命を落とす船医オスカー・ウェルナー、愛を確かめることが出来ないで悩む、画家のカップル、エリザベス・アシュレージョージ・シーガル、船員のウェルナー・クァンペラー、あくどいジプシーのフラメンコ・ダンサー、ホセ・グレコ、乗客を愚か者と皮肉りながら、ものを見る目もあるマイケル・ダン、船長チャールズ・コーヴィン、楽観的なユダヤハインツ・リューマン、男を狙うジプシーのダンサー、バーバラ・ルナ、他、乗客の婦人でリリア・スカラなどが共演している。


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