裕福な未亡人ばかりを狙う連続殺人犯の姪を巻き込んだ逃亡劇を描く、監督アルフレッド・ヒッチコック、主演テレサ・ライト、ジョセフ・コットン、マクドナルド・ケリー、パトリシア・コリンジ、ヘンリー・トラヴァース、ヒューム・クローニン他共演によるサスペンスの傑作。 |
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■ スタッフ キャスト ■
監督:アルフレッド・ヒッチコック
製作:ジャック・H・スカーボール
原作:ゴードン・マクドネル
脚本
ソーントン・ワイルダー
アルマ・レヴィル
サリー・ベンソン
撮影:ジョセフ・A・ヴァレンタイン
編集:ミルトン・カールース
音楽
ディミトリ・ティオムキン
チャールズ・プレヴィン
出演
シャーロット”チャーリー”ニュートン:テレサ・ライト
チャールズ・オークリー:ジョセフ・コットン
ジャック・グレアム:マクドナルド・ケリー
エマ・ニュートン:パトリシア・コリンジ
ジョセフ・ニュートン:ヘンリー・トラヴァース
フレッド・ソーンダース:ウォーレス・フォード
ハーブ・ホーキンス:ヒューム・クローニン
アン・ニュートン:エドナ・メイ・ウォナコット
ロジャー・ニュートン:チャールズ・ベイツ
ポッター夫人:フランセス・カーソン
アメリカ 映画
配給 ユニバーサル・ピクチャーズ
1943年製作 108分
公開
北米:1943年1月12日
日本:1946年12月17日
■ アカデミー賞 ■
第16回アカデミー賞
・ノミネート
原作賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
ニューヨーク。
大金を持ったチャールズ・オークリー(ジョセフ・コットン)は、自分を尾行する二人の男を振り切り街を離れようとする。
姉エマ・ニュートン(パトリシア・コリンジ)を訪ねることにしたチャールズは、ニュートン家に電報を打つ。
カリフォルニア州、サンタ・ローザ。 チャーリーは、自分を救える唯一の人物、叔父チャールズに電報を打とうとするが、彼からの電報が届いていることを知り、自分の思いが通じたのだと感激する。 病人に扮して、列車内で身を隠しながら駅に着いたチャールズは、チャーリーらの歓迎を受ける。 ニュートン家に到着し、姉エマとの再会を喜ぶチャールズは、家族にプレゼントを渡す。 そして、チャールズは、チャーリーにはエメラルドの指輪を贈る。 チャーリーはそれを喜び、指輪にはイニシャルのようなものが刻まれてあったものの、彼女は気にする様子もなかった。 その後チャールズは、”メリー・ウィドウ”の曲に敏感に反応し、新聞を気にして、子供達アン(エドナ・メイ・ウォナコット)やロジャー(チャールズ・ベイツ)に、家を作ると言って記事を破ってしまう。 それが、チャールズの上着のポケットに入っていることに気づいたチャーリーは、彼の記事が載っていたのだと考え、それを取り出してしまう。 悪気はなかったチャーリーだったが、チャールズは動揺して彼女の手を強く掴んでしまう。 チャールズは冷静さを取り戻しチャーリーに謝罪し、友人のゴシップ記事を気にしたことを彼女に話す。 翌朝、チャールズは、エマから国の機関のグレアムという調査員とカメラマンが、家族全員に会いたがっているということを知らされる。 その後、チャールズはチャーリーを伴いジョセフが勤める銀行に向かい、4万ドルを預金しようとする。 銀行の雰囲気が嫌いだと言うチャールズは、それを皮肉るジョークを飛ばし手続きを済ませその場を引き上げる。 帰宅したチャールズらは、調査員ジャック・グレアム(マクドナルド・ケリー)とフレッド・ソーンダース(ウォーレス・フォード)が訪れたのを知る。 チャールズは調査に協力する気はなく、チャーリーがそれをグレアムに伝える。 それを了解したグレアムは、チャールズに貸してあるチャーリーの部屋の写真を撮ろうとする。 部屋には誰もいないはずだと言うグレアムの言葉通り、チャールズは姿を消していた。 ソーンダースが、戻って来たチャールズの写真を勝手に撮ったため、彼はフィルムを渡すことを要求し、グレアムはその指示に従う。 その日の調査を終えたグレアムは、チャーリーに町の案内を頼み、夕方、彼女を迎えに来ることになる。 そして、チャーリーと食事などを共にしたグレアムは、彼女に自分が刑事だということを伝え協力を要請する。 グレアムは、チャールズが殺人の容疑者の一人だということを、チャーリーに率直に伝える。 当然それを信じられずに帰宅したチャーリーだったが、チャールズに気づかれぬよう、家には裏口から入り、彼の部屋のゴミ箱から新聞記事を拾い部屋に戻る。 目当ての記事が見つからなかったチャーリーは、妹アンから図書館に以前の新聞があることを知らされる。 閉館した図書館に、何とか入れてもらえたチャーリーは、”陽気な未亡人(メリー・ウィドウ)の殺人犯はどこに?”という記事に注目する。 それは、裕福な未亡人が三名殺され、警察は容疑者を二名に絞ったという内容だった。 そしてチャーリーは、チャールズから貰った指輪に刻まれたイニシャルが、三人目の被害者と一致することを知ってしまう。 ショックを受けたチャーリーは、翌日からチャーリーを避けるようになる。 しかし、夕食の際チャーリーはチャールズを牽制し始め、彼はその異変に気づく。 そこに、ジョセフと犯罪の作り話を考えるのが趣味の隣人ハーブ・ホーキンス(ヒューム・クローニン)が現れ、二人で殺人の話しを始める。 それを聞いていたチャーリーは居た堪れなくなり、二人を非難して席を外してしまう。 チャーリーを追ったチャールズは、彼女を連れてバーに入り、急変した態度について問い詰める。 チャーリーは、自分の罪を認めるような話しをし始めたチャールズに貰った指輪を返す。 逃げ場のないチャールズはチャーリーに助けを求め、彼女は家族のためにそれに従うことを考える。 翌日、ソーンダースは、チャールズを撮ったフィルムを摩り替えて東部に送り、彼が犯人である可能性が高まったことをチャーリーに伝える。 さらにソーンダースは、チャールズを町から出すようにチャーリーを説得する。 帰宅したチャーリーはチャールズに迎えられるが、ハーブが”メリー・ウィドウ”事件が解決したことを、ジョセフに話しているのを聞いてしまう。 チャールズは、それを知り安堵の表情を浮かべるが、チャーリーに犯行を認めてしまったことで、その対処をどうするか思案する。 グレアムにも事件解決を知らされ、チャールズを町から出さなくてもいいと言われたチャーリーは、彼から愛を告げられる。 今は友達でいたいと言う、チャーリーの言葉に納得したグレアムは、チャールズにも挨拶して東部に帰っていく。 その後チャーリーは、二階の裏口の階段の板が割れて足を踏み外し、それがチャールズの仕業でないかと疑う。 チャーリーは、出て行く理由もなくなったチャールズが町に居座ろうとするのに不快感を表す。 家族を陥れることをちらつかせながら、チャーリーを自分のペースに巻き込もうとするチャールズだったが、彼女は出て行かなければ自分が殺すと言い放つ。 その後、チャールズはチャーリーを車庫に閉じ込めて車の排気ガスで殺そうとするが、ハーブが異変に気づき犯行は失敗に終わる。 家族は婦人会の講演会に出かけ、家に残ったチャーリーは、グレアムに連絡が取れない。 不安が募るチャーリーだったが、チャールズに返した証拠となる指輪を見つける。 帰宅したチャールズは、チャーリーが指輪をしているのに気づき、町を出ることを家族に告げる。 弟チャールズとの別れで、気を落とす母エマの姿を見たチャーリーは、辛い思いを抑える。 翌日、病院に寄付までしたチャールズは、町の人々に惜しまれながら旅立つことになり、チャーリーは、彼が町を出るのを見届けるために列車に乗る。 全てを忘れるよう、チャールズに強く言われたチャーリーだったが、既に列車は走り出してしまう。 チャールズは、口封じのためチャーリーを列車から突き落とそうとするが、誤って自らが転落し、通り過ぎる汽車に轢かれてしまう。 その後、チャールズは町の誇りとして盛大な葬儀が執り行われる。 そして、チャーリーはグレアムに付き添われながら、複雑な思いで葬儀を見守る。
帰宅した銀行員ジョセフ・ニュートン(ヘンリー・トラヴァース)は、悶々とした日々に不満を抱く娘シャーロット”チャーリー”(テレサ・ライト)の愚痴を聞かされる。
...全てを見る(結末あり)
★ヒッチコック登場場面
上映開始後約16分、列車で西部に向かう犯人の個室の傍らで、背を向けてカードをしている男性がヒッチコック。
今回は非常に分かり易い。
*(簡略ストー リー)
殺人犯チャールズ・オークリーは、追手から逃れ東部から西部の姉エマの家に向かい身を潜めようとする。
そんなこととも知らず、チャールズを慕う姪のチャーリーは、最愛の叔父の訪問に感激してしまう。
チャーリーは、チャールズの変わった行動も気にせずに日々を過ごしていたが、やがて国の調査員グレアムとソーンダースが現れる。
彼らを警戒するチャールズだったが、グレアムはチャーリーを呼び出し、家族には秘密で、チャールズが未亡人殺害犯の容疑者だと告げる。
大きなショックを受けたチャーリーは、迫る恐怖と、守らねばならない家族の幸せの狭間で思い悩む・・・。
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卑劣で残虐な犯行とは裏腹に、極力その様子を感じさせないように、スマートで紳士的な犯人に描写し、目を覆いたくなるような犯行シーンも殆どない。
恋心にも近い愛情故に、名前まで叔父と同じ愛称チャーリーと呼ばれる姪が、一瞬にして悪魔を見るような表情に変わる怖さ。
更に、家族を不幸にさせないよう、ことを運ぼうとするお互いの心理戦など、ハリウッド進出間もないアルフレッド・ヒッチコックは、話題作、そして傑作を連発していただけに、既にその演出は円熟期に達している。
追われる容疑者が、どんな犯行を犯したかが明らかになるまで、細かな表現や小道具などで、徐々にそれを観客に知らせていく巧みな演出なども圧巻だ。
”メリー・ウィドウ”と名付けられる殺人事件で、犯人が敏感に反応する優雅なワルツ、”メリー・ウィドウ”が効果的に使われる、ディミトリ・ティオムキンとチャールズ・プレヴィンの音楽も素晴らしい。
1991年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。
大人になりきれない女性にとっては、きつ過ぎる体験にも拘らず、家族を守るために、健気に立ち向かおうとする主演のテレサ・ライト、後半には悪魔のように変貌し彼女に襲い掛かる、追い詰められた犯人を好演するジョセフ・コットン、その特異な”対決”は見応えある。
主人公を愛情で支えるようになる刑事マクドナルド・ケリー、同じくウォーレス・フォード、母親パトリシア・コリンジ、父親ヘンリー・トラヴァース、犯罪フィクションを考えるのが趣味の隣人ヒューム・クローニン、主人公の妹エドナ・メイ・ウォナコット、弟チャールズ・ベイツなどが共演している。