サイトアイコン That's Movie Talk!

バファロー大隊 Sergeant Rutledge (1960)

法廷(軍法会議)を舞台とした異色の西部劇である監督ジョン・フォードの晩年の秀作。
主演ジェフリー・ハンターコンスタンス・タワーズウディ・ストロード他共演。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


西部劇

ジョン・フォード / John Ford 作品一覧


スタッフ キャスト ■
監督:ジョン・フォード
製作
ウィリス・ゴールドベック
パトリック・フォード
脚本
ジェームズ・ワーナー・ベラ“Captain Buffalo”‘
ウィリス・ゴールドベック
撮影:バート・グレノン

編集:
音楽
ハワード・ジャクソン

マーク・デイヴィッド“Captain Buffalo”‘
ジェフリー・リヴィングストン”Captain Buffalo”‘

出演
ジェフリー・ハンター:トム・キャントレル少尉
コンスタンス・タワーズ:メアリー・ビーチャー
ウディ・ストロード:ブラクストン・ラトレッジ曹長
ビリー・バーク:コーデリア・フォスゲート
カールトン・ヤング:シャタック大尉
ウィリス・ボーシェイ:オーティス・フォスゲート大佐
ジャドソン・プラット:マルクィーン少尉
メエ・マーシュ:ネリー・ハケット
ファノ・フェルナンデス:マシュー・ルーク・スキッドモア軍曹
フレッド・リビー:チャンドラー・ハブル
ジャック・ペニック:軍曹
クリフ・ライオンズ:サム・ビーチャー
ハンク・ウォーデン:ラレード

アメリカ 映画
配給 ワーナー・ブラザーズ
2000年製作 111分
公開
北米:1960年5月18日
日本:1960年8月


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
アメリカ陸軍第9騎兵隊トム・キャントレル少尉(ジェフリー・ハンター)は、殺人容疑で軍法会議にかけられる、直属の部下ブラクストン・ラトレッジ曹長(ウディ・ストロード)の弁護のため、陸軍の南西地区本部に到着する。

裁判は始まるのだが、その事件の内容から、興味を抱き法廷に押しかける町民を、裁判長オーティス・フォスゲート大佐(ウィリス・ボーシェイ)は追い出してしまう。

事件に興味津々の、大佐の妻コーデリア(ビリー・バーク)を含めて、裁判と無関係のものは退席させられる。

兵士から絶大なる信頼を置かれているラトレッジは、16歳の少女を強姦して殺害し、彼女の父である砦の司令官をも射殺したという疑いで訴えられていたのだ。

まず、ラトレッジは無罪を主張し、検察側の担当シャッタック大尉(カールトン・ヤング)は、証人としてキャントレルの知人メアリー・ビーチャー(コンスタンス・タワーズ)の証言を求める。

メアリーは弁護側の証人であるため、キャントレルはそれに異議を申し立てるが、シャッタックにそれを押し切られる。
...全てを見る(結末あり)

証言席に座ったメアリーは、殺人現場から逃亡したと思われるラトレッジに、アパッチから命を救われた経緯を語り始める。
__________

12年ぶりの里帰りのために汽車に乗っていたメアリーは、車内でキャントレルに出会う。

キャントレルはメアリーに心を寄せ、彼女がスピンドル駅で下車する際に、はずみでキスをして、”君のような美しい女性は初めてだ”と言って気持ちを伝え別れる。

駅に、父サム(クリフ・ライオンズ)の姿がないことを不審に思ったメアリーは、駅員が先住民の矢で殺されているのに気づく。

驚いたメアリーは建物から飛び出すが、そこにラトレッジが現れ、彼女は襲われるのかと恐怖に怯える。

メアリーに、自分が騎兵隊員であり危害は加えないことを伝えたラトレッジは、アパッチが襲ってくることを彼女に知らせる。

現れたアパッチを倒したラトレッジは、メアリーとで状況を整理し、休息をとろうとする。

ラトレッジは銃撃されて傷を負いっていたが、黒人である彼は、白人のメアリーと一緒にいると、トラブルが避けられないことを語りながら気を失いかける。

そして、メアリーは嵐が強まる中、ライフルを手に警戒しながら長い夜を過ごす。
__________

その後、法廷ではフォスゲート大佐夫人コーデリアが証人として呼ばれる。

動揺した大佐は”酒”で気持ちを落ち着かせ、1人では入れないと言って、夫人はネリー・ハケット(メエ・マーシュ)らを伴い法廷に現れる。

シャタックに、被害者の写真を見せられたコーデリアは、少女がチャンドラー・ハブル(フレッド・リビー)の雑貨店で、ラトレッジと親しくする姿を見た時のことを話す。

そして事件の夜、銃声を聞いたコーデリアは、建物から銃を抜いたラトレッジが現れ、馬で走り去ったことを証言した後、退席させられる。
__________

その後、現場を検証した医師が、犯人は被害者の少女を絞殺し、彼女の父である司令官も殺したことを証言する。

そして、犯人は少女の身につけていた、十字架のネックレスを奪っていたのが判明する。

現場に立ち会ったキャントレルは、ラトレッジを呼び出すが、その場にいたマシュー・ルーク・スキッドモア軍曹(ファノ・フェルナンデス)が、彼の消息が分からないことを伝える。

そして、スキッドモアは、ラトレッジが事件発生時に、所用で少女の家を訪ねていたことをキャントレルに告げる。

ラトレッジは、アパッチ襲撃を知らせるために、司令官の元に向かったということだった。

次に、検察のシャタックの要請で証言席座ったキャントレルは、アパッチの偵察隊を編成し、途中でラトレッジを捕らえたことを証言し始める。
__________

スピンドル駅。
ラトレッジはキャントレルに捕らえられるが、黒人兵の彼は公正な裁判は受けられないと嘆くのだった。

しかし、その場にいたメアリーは、ラトレッジが自分を守ってくれた勇敢な兵士だと言って彼をかばう。

キャントレルは、ラトレッジの傷がアパッチのものではないことを確認し、少女と司令官を殺したのかを彼に尋ねる。

ラトレッジはその回答を拒否し、キャントレルは彼を拘束して、アパッチを居留地に戻すために出発の準備を始める。

キャントレルは、ラトレッジを連行するための人員に余裕がないと判断し、彼を同行させる。

部下達は、手錠をかけられたラトレッジに従おうとするが、彼は兵士の経歴を考え、自分を囚人として扱うよう命ずる。

事件について、沈黙を守るラトレッジに苛立つキャントレルは、この状況下で、誰も自分を信ずる者がいないこと嘆く彼を慰める。

キャントレルから、自分を信じていると言われたラトレッジは、ようやく、閉ざした心を開こうとする眼差しで彼を見つめる。

その後、アパッチを追うため出発したキャントレルは、虐げられている、自分を含めた同胞の現状を嘆くラトレッジから、不条理な”自由”を語られる。

途中、キャントレルの部隊は、アパッチに襲われた牧場主の娘と恋仲だった、雑貨店主ハブルの息子の惨殺死体を見つけるが、十字架は出てこなかった。
__________

シャタックは、ラトレッジに個人的な感情を持ち接していると、キャントレルが弁護人として好ましくないことを、フォスゲート裁判長に訴えるが、彼はそれを問題なしとして却下する。

そしてシャタックは、スキッドモア軍曹を証人に呼び、アパッチ追跡のその後の様子を聞く。
__________

偵察隊はアパッチに襲われ、手錠をはずされたラトレッジは、部隊のために加勢する。

しかしラトレッジは、斥候に出て負傷した部下の元に向かい、彼を助けられずに逃亡してしまう。

キャントレルはラトレッジに警告し、彼をライフルで狙うが、メアリーがそれを阻止する。
__________

そして、証人席に呼ばれたラトレッジは、逃亡後の事実を語り始める。

__________
ラトレッジは、アパッチがメアリーの実家の農場を焼き払い、彼女の父親サムを惨殺するのを目撃する。

待ち伏せするアパッチのことを知らせるために、ラトレッジは逃亡を諦めて偵察隊に戻る。
__________

シャッタックの厳しい追及に、騎兵隊が自分の家で、自分が”一人の人間”だと、ラトレッジは泣き崩れながら無実を主張する。

節度を失った、シャッタックの尋問を批判するキャントレルは、ラトレッジが囚人でなければ、武勇を称え表彰するとまで言い切る。

フォスゲート裁判長は、弁護人尋問の前に休廷を告げ、控え室でポーカーを始める。

その後、町民に開放された法廷は再開し、キャントレルはメアリーを証人席に呼び、川原で野営した様子を語ってもらう。
__________

メアリーはそこで初めて、父が殺されたことをキャントレルから知らされ、そして、ラトレッジの無実を確信する。

部隊員達は、尊敬してやまないラトレッジを、理想の戦士、伝説の巨漢”バファロー大尉”として称えて歌う。

翌朝、アパッチの死体から、十字架のペンダントと”CH”の文字が入った上着を見つけたキャントレルは、軍規に従い再びラトレッジに手錠をかけて本部に戻る。

それを見たメアリーは、昨夜は隊員達とラトレッジを称えたにも拘らず、軍規にこだわるキャントレルを非難する。
__________

キャントレルは、アパッチの死体から見つけた十字架が被害者の少女の物で、血の付いた狩猟用の上着の”CH”の文字は、雑貨店の息子の頭文字だと言って二つを提出する。

アパッチ襲撃を報せに行ったラトレッジは、少女の遺体を見つけた瞬間に、彼女の父である司令官に撃たれ、已む無く彼を射殺した正当防衛だったことをキャントレルは告げる。

そして、キャントレルは多くの状況証拠から、雑貨店の息子が少女を強姦し殺害したとものとして、ラトレッジの無罪を主張する。

シャッタックは、いくつもの同じ十字架を提出し、上着が証拠にならないことを証明するが、同時にキャントレルは、小柄な少年と大きなコートが、結びつかないことに疑問を感じていた。

あからさまな人種偏見も口にする、シャッタックの発言を許す法廷を批判したキャントレルは、裁判長フォスゲートから警告を受ける。

裁判長は、弁護人と検察側双方の発言を遮り下がらせる。

その時、息子を殺された雑貨店の主人ハブルが、証拠としてキャントレルが提出した十字架の傷を指摘し、自分が店で売った物だということを証明する。

事態は急変し、ハブルが証人席に座りキャントレルが尋問を始め、息子の犯行の経緯を聞き出そうとする。

しかし、自分の名前の頭文字も”CH”で、息子に罪を着せようとしていると、キャントレルに追求されたハブルは取り乱し、ついに少女殺しを自白する。

場内は騒然となり、ハブルは拘束され、法廷は閉廷する。

メアリーはキャントレルに対してとった態度を謝罪し、彼は、”君のような美しい女性は初めてだ”と、メアリーに始めて会った時と同じ言葉を告げ彼女にキスする。

そして、無実となったラトレッジは、部隊員達と共に二人に敬礼し、その後、部隊を率いて偵察を続ける。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
部下や上官からも尊敬されるアメリカ陸軍第9騎兵隊のラトレッジ軍曹が、殺人容疑で軍法会議にかけられる。
ラトレッジの無実を信ずる弁護人トム・キャントレル少尉は、同じく軍曹に身を守られた、証人メアリーと共に裁判に挑む。
検察側の厳しい追及に対抗しながら、ラトレッジの弁護に尽力するキャントレルだったが、この裁判の奥底には、黒人兵として絶望的な立場に立たされた男ラトレッジの、悲しい現実があった・・・。
__________

同じジョン・フォード作品「黄色いリボン」(1949や「リオ・グランデの砦」(1950の原作でも知られるジェームズ・ワーナー・ベラの”CaptainBuffalo”を基にした、法廷(軍法会議)を舞台にした異色の西部劇。

物語の舞台は法廷内だけに留まらず、フラッシュバックで見せるアパッチとの戦いや、見事なモニュメントバレーの景色なども堪能できる、超一級の娯楽作品に仕上がっている。

人種差別を絡めた少女の暴行殺人という、現代にも通ずる社会問題を、ユーモアを交えた、ジョン・フォードらしい切れのいい見事な演出で描く、彼の晩年の作品の中でもベストと言っていい傑作だ。
当時、日本でも大ヒットした勇猛果敢な”バファロー大尉”、そして第9騎兵隊を称えるハワード・ジャクソンの主題歌である”Captain Buffalo”も素晴しい。
捜索者」(1956)でもフォードの期待に応えた主演のジェフリー・ハンターは、その時とは全く異なる実直な将校役を熱演している。

本作の9年後に42歳の若さで癌で亡くなったのは残念でならない。
ヒロイン役のコンスタンス・タワーズは、前年の「騎兵隊」(1959)に続きフォードに起用された。
前作同様、美しさに加えて、ラトレッジの男気に惚れ込み、彼をなんとか救おうとする女性を好演している。

特筆すべきは、本来、主役と言っていいウディ・ストロード存在だ。
キャリア最高の演技を見せてくれる彼は、とにかく素晴しいの一言だ。

長身(194cm)に引き締まった肉体と鍛え抜かれた筋肉は40代半ばとは思えず、美しささえ感じる。

ドラマの中で、彼を尊敬し称え”バファロー大尉”に見立てて歌われるように、”山のようで大木よりデカい、鉄の拳で雄牛をも倒す、どんな豪傑も歯が立たない”という歌詞の表現にぴったりの、実に見栄えのする役者だ。
いつもは脇役の彼が、本作では、差別され涙しながら、人間として扱ってほしいと訴えるシーンなど、演技者としての確かな実力も見せてくれる。

また、ブロードウェイやサイレント映画でも大活躍したビリー・バーク(右)と、フォード作品に欠かせない名優メエ・マーシュ(左)の出演も嬉しいばかりだ。

ビリー・バークは「オズの魔法使」(1939)で、北の魔女/グリンダ役で出演したのが有名だ。
前年の「騎兵隊」(1959)にも出演している裁判を仕切る大佐役、フォード一家の一員のウィリス・ボーシェイは、フォード作品によく登場するタイプのキャラクターであり、ガミガミ言いながら法廷内で酒を飲み、休廷した途端に裁判を忘れてポーカーに興じるあたりの脚本と演出も、いかにもフォードらしい。
この役は、本来ならウォード・ボンドあたりの役柄だが、彼はこの年の11月に亡くなっている。

もちろんお馴染みフォード一家、法廷の軍曹ジャック・ペニック、馬商人ハンク・ウォーデン、ヒロイン、メアリーの父クリフ・ライオンズなどの出演も嬉しい。
クリフ・ライオンズは、アパッチに惨殺される場面で登場するのだが、ウディ・ストロードが覗く双眼鏡の中に映し出されるだけなので、彼と判別出来る人は、超一級のフォード作品通だ。
またフォード一家の一員で、厳しい追及を続ける検察官カールトン・ヤング、前年の「騎兵隊」(1959)にも出演した、人を食ったような裁判長の補佐ジャドソン・プラット、部隊員の老兵ファノ・フェルナンデス、犯人で雑貨店主フレッド・リビーなどが共演している。


モバイルバージョンを終了