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緋色の街/スカーレット・ストリート Scarlet Street (1945)

平凡で真面目な会社員が美しい女性とその恋人の罠にはまり凋落するまでを描く、製作、監督フリッツ・ラング、主演エドワード・G・ロビンソンジョーン・ベネットダン・デュリエ他共演のドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ


スタッフ キャスト ■
監督:フリッツ・ラング

製作:フリッツ・ラング
製作総指揮:ウォルター・ウェンジャー
原作
ジョルジュ・ド・ラ・フシャルディエール

アンドレ・ムエジー=エオン
脚本:ダドリー・ニコルズ
撮影:ミルトン・K・クラスナー
編集:アーサー・ヒルトン
音楽:ハンス・サルター

出演
クリストファー”クリス”クロス:エドワード・G・ロビンソン

キャサリン”キティ”マーチ:ジョーン・ベネット
ジョニー・プリンス:ダン・デュリエ
ミリー・レイ:マーガレット・リンゼイ
アデル・クロス:ロザリンド・アイヴァン
デヴィッド・ジェインウェイ:ジェス・バーカー
チャールズ・プリングル:サミュエル・S・ハインズ
J・J・ホガース:ラッセル・ヒックス
ヒギンズ:チャールズ・ケンパー
ポップ・リジョン:ウラジミール・ソコロフ

アメリカ 映画
配給 ユニバーサル・ピクチャーズ

1945年製作 103分
公開
北米:1945年12月28日
日本:未公開
製作費 $1,202,007
北米興行収入 $2,948,390


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
ニューヨーク
クリストファー”クリス”クロス(エドワード・G・ロビンソン)は、衣料品製造会社”J・J・ホガース”の出納係として25年勤務を祝うパーティーの席で、社長ホガース(ラッセル・ヒックス)から金の懐中時計を贈られ、同僚達に祝福される。

その場を離れたクリスは、チャールズ・プリングル(サミュエル・S・ハインズ)を、雨の中バス停まで送り別れる。

地下鉄で帰ろうとしたクリスは、女性が男に暴力を振るわれているのを目撃して駆け寄る。

傘で男を殴ったクリスは、無事だった女性キャサリン”キティ”マーチ(ジョーン・ベネット)に警官を呼んでほしいと頼まれる。

気絶して倒れた男ジョニー・プリンス(ダン・デュリエ)は意識を取り戻して消え去る。
...全てを見る(結末あり)

駆け付けた警官はキティに事情を聞き、逃げ去った犯人を追う。

新聞沙汰になるのを嫌ったキティは、その場を離れようとしてクリスに送ってもらうことにな。

クリスは、アパートの前でキティをコーヒーに誘い、地下にあるカフェに向かう。

席に着いたクリスは、キティが女優だと知り、絵画が趣味だった彼は、話のはずみで自分が画家だと偽ってしまう。

時間を聞いたキティは、クリスの金時計を見て、身なりもいい彼が裕福な男性だと確信する。

キティが、カフェのオーナーに”ジョニー”という男のことを尋ねていたことが気になったクリスは、それが同居人のミリー・レイ(マーガレット・リンゼイ)の恋人だと知り安心して彼女と別れる。

若い女性とのひと時に夢見心地のクリスは、翌日、キティのことを考えながら筆を握る。

そこにチャールズが現れ、妻アデル(ロザリンド・アイヴァン)に、あれこれ指示されながら生活していることなどを彼に語り絵を見せたりする。

チャールズは、抽象画とも言えないクリスの絵が理解できない。

その頃、キティの恋人だったジョニーは、届いた恋文の相手が、例の夜の中年男クリスだったことを知らせる。

驚いたジョニーは、クリスが裕福な画家であることに目をつけ、彼から5万ドルを騙し取ろうと考える。

キティは無理だと答えるが、ジョニーを愛している彼女は仕方なくそれに従おうとする。

戻ってきたミリーに、ジョニーに利用されていると言われたキティだったが、彼女は聞く耳を持たない。

クリスと会ったキティは自分を描くことなどを話し、実は一文無しで服もミリーから借りていることを伝える。

キティのために力になろうとしたクリスだったが、彼女は施しを受けることを嫌い、返せる見込みもないと語る。

アトリエを借りて、そこに住んだ自分を描くことをクリスに提案したキティは、彼が妻帯者だと知る。

クリスが妻を愛していないことを知っキティは、500ドルの援助を頼み、その後、彼は会社の金を横領しようとする。

思い留まったクリスは、ローン会社から500ドルを借りてキティに渡そうとする。

口うるさいアデルは、ことあるごとに亡くなった前夫ヒギンズ(チャールズ・ケンパー)のことを口にするため、クリスはうんざりしてしまう。

ヒギンズの保険金のことに気づいたクリスは、アデルが出かけている間に、彼女がその金をため込んでいることを確認する。

ジョニーと共に、アトリエを見に行きそこを借りたキティは、それをばらすと言ってクリスを脅し、再び金を巻き上げるよう彼に言われる。

訪れたミリーは、隠れていたジョニーがいることに気づき、一変した二人の生活についてを話す。

そこにクリスが絵を持って現れ、彼はジョニーとミリーをキティに紹介される。

クリスは、ジョニーと以前に会ったような気がするものの思い出せず、彼とミリーが恋人同士だということも疑問に思う。

キティは、クリスが自分の虜となったことを確認しながら、女優は金がかかると言って、1000ドルをジョニーから借りる話をする。

クリスは、その金を自分が都合すると言って部屋を出る。

部屋に戻ったジョニーはクリスの絵を眺めながら、まともだと思えないその画風に本物の画家とは思えず彼を疑う。

残業をしたクリスは、ついに会社の金に手を付けてしまう。

倉庫に保管したということにして、クリスの絵を売ることを考えたジョニーだったが、クズだと言われて相手にされない。

街頭の画家ポップ・リジョン(ウラジミール・ソコロフ)に絵を見せたジョニーは、買値が25ドルだと言われ、それをその場に置いて立ち去る。

キティの元に向かったジョニーは、クリスのことを偽画家だと言い張り、それを彼女が否定するため、絵を美術館に持っていこうとする。

画家リジョンの元に戻ったジョニーは、著名な美術評論家のデヴィッド・ジェインウェイ(ジェス・バーカー)に絵が売れたと言われて驚く。

リジョンはただでその絵を渡してしまい、ジョニーが現れたためジェインウェイに電話をしようとする。

ジョニーは、結局は絵をただで手放してしまったことでキティに笑われるが、彼女はジェインウェイが絵についてを新聞に書くことを心配する。

身元は知られていないというジョニーは、リジョンがその場にジェインウェイを伴い現れたために驚く。

ジョニーは、絵を描いたのはキティだと言って、彼女はクリスが語った言葉で、絵についての話をジェインウェイにする。

ジェインウェイはキティの話に感心して、ジョニーは条件を決めて絵を画廊に預けることにする。

直後に現れたクリスは、ジョニーがその場にいたためにそれを気にする。

ジョニーは、ミリーに会いに来たと言って絵を見ていたがその場を去り、クリスは彼とキティの仲を疑う。

キティは気分を害して寝室に閉じこもるが、クリスは謝罪して彼女も冷静になり楽しい時を過ごす。

翌日、画廊の前を通りがかったアデルは、飾られた絵がクリスのものだと気づきそれを確認する。

帰宅したアデルは、”キャサリン・マーチ”の絵を盗作したことでクリスを責める。

驚くクリスは、会社の金も盗みかねないとアデルに言われ動揺してしまう。

キティとジョニーは、今後の夢が膨らみ愛を確かめていたが、そこにクリスが現れる。

クリスは、財政難で仕方なく絵を売り、自分の作品とまで偽ってしまったと泣きながら謝罪するキティを許し彼女を描く。

”キャサリン・マーチ”の独創的な絵は評判になり、その後、個展も開かれる。

同じ頃、クリスの前に刑事を名乗り、死んだはずの落ちぶれたヒギンズ(チャールズ・ケンパー)が現れる。

ヒギンズは、刑事だった自分の汚職がばれて自殺を考えたものの、生きていた経緯を話し、このまま姿を消すことを条件にクリスを脅し2000ドルを要求する。

クリスは、アデルのために仕方なく金を用意することを伝えるものの、ヒギンズは生きていた事実が、自分の結婚が無効であることにも気づく。

とりあえず200ドルを渡したクリスは、ヒギンズの保険金の2000ドルをアデルが貯めていることを話す。

クリスは、その金をヒギンズが奪えるように手引きをする考えを伝え、彼を家入れる。

アデルが別の部屋で映画を観ていると言って、ヒギンズを寝室に向かわせたクリスは、二人が鉢合わせになったことを確認し、身支度してあった鞄を手にその場を去る。

アトリエに向かったクリスは、キティとジョニーの関係を知り、ショックを受けて立ち去る。

それに気づいたジョニーは、全てが水の泡だといって責任をキティに押し付け、縁を切るといって部屋を出る。

キティの元に向かったクリスは、ジョニーの愛を信じる彼女の間違った考えを正そうとする。

アデルの前に、死んだはずの夫が現れたことをキティに伝えたクリスは、彼女に結婚を迫る。

キティは、クリスの提案を笑い飛ばし、気味の悪い老人だと言って彼を罵倒し追い払おうとする。

クリスは憤慨し、キティをアイスピックで刺してその場を去ろうとする。

酔ったジョニーが戻ったことを知ったクリスは、彼に気づかれないようにして建物を離れる。

アイスピック殺人は大きく報道され、出社していたクリスは、現れた警官を見て姿を消そうとする。

社長のホガースに呼ばれたクリスは観念するが、ヒギンズの通報による会社の現金の横領が知られたのだった。

ホガースは不足金があることをクリスに確認し、告訴しないことを警官に伝えて引き取ってもらう。

女が原因かと聞かれたクリスは頷き、ホガースは、告訴しない代わりに解雇することを伝える。

キティ殺害容疑で逮捕されたジョニーは、起訴され裁判の末に死刑が確定する。

列車内で記者に話しかけられたクリスは、殺人者の心の苦悩は消すことができないと言われる。

その夜、ジョニーは無実を訴えながらも処刑される。

ホテルに戻っクリスは、記者の話していたようにキティの言葉が聞こえてしまい、苦悩の末に首を吊る。

クリスは管理人に助けられるものの、その後もキティの声は聞こえ続ける。

数年後、クリスは殺人を自白するものの、妄想だと言われて信じてもらえず浮浪者となる。

画廊の前を通りがかったクリスは、自分が描いたキティの絵が、ある富豪に買われたことを知る。

クリスは呆然としながら歩み去るが、キティの言葉は聞こえ続ける。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)

勤続25年を祝うパーティーで祝福された、真面目な会社員クリストファー”クリス”クロスは、通りで男に暴力を振るわれていた女性キティを助ける。
クリスは若いキティに惹かれてしまい、女優だという彼女に、趣味だった絵画の話をしたはずみで、自分が画家だと偽ってしまう。
数日後、暴力を振るった男でキティの恋人ジョニーは、彼女を救ったのクリスが裕福な画家だと知る。
ジョニーは、クリスから金を巻き上げることをキティに指示し、彼女は仕方なくそれに従う。
キティが服も買えないと知ったクリスは、自分が妻帯者だということを話しつつ、彼女に援助しようとする。
クリスは金を工面しようとして、出納係だったために会社の金を横領しようとする。
しかし思い留まったクリスは、借金をしてまでキティに金を渡し・・・。
__________

アンドレ・ムエジー=エオンの戯曲と、ジャン・ルノワールの”La Chienne”(1931)を基に製作された作品。

フリッツ・ラングが、前年の「飾窓の女」(1944)に続き、エドワード・G・ロビンソンジョーン・ベネットダン・デュリエと組んだフィルム・ノワールの秀作。

絵を描くことだけが楽しみな真面目な会社員が、詐欺師の罠にはまっていく姿は、戦勝の喜びと共に豊かさを実感する人々と、終戦直後の苦しみが残る社会を映し出しているようにも思える。

夢や希望を感じさせる明るさ、苦悩を伝える光を失った部屋、フリッツ・ラングのモノクロ効果を生かした映像表現は冴えわたる。

悪党のボスか強かな男の印象しかない方も多いと思われるエドワード・G・ロビンソンだが、温厚で優しい紳士を実にいい味で演じ、なんとエプロン姿まで披露してくれるという、ファン必見の映像も注目だ。

主人公の優しさに触れて改心するのかと思いきや、次第にエスカレートしていく悪女を熱演するジョーン・ベネット、その恋人で、小者のチンピラ風が正にハマり役ダン・デュリエ、ヒロインの友人マーガレット・リンゼイ、主人公の妻役ロザリンド・アイヴァン、その死んだはずの夫役チャールズ・ケンパー、美術評論家ジェス・バーカー、主人公の同僚サミュエル・S・ハインズ、主人公の勤め先の社長役ラッセル・ヒックス、画家のウラジミール・ソコロフなどが共演している。


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