第二次大戦中に実際に起こった実話を基に製作された作品。 4人兄弟の3人を失った母親の元に生存の可能性のある息子帰還させる命令を受けた兵士達の戦いを描く、製作、監督スティーヴン・スピルバーグ、主演トム・ハンクス、トム・サイズモア、エドワード・バーンズ、バリー・ペッパー、ヴィン・ディーゼル、マット・デイモン、ジョヴァンニ・リビシ他共演による戦争ドラマの秀作。 |
・スティーヴン・スピルバーグ / Steven Spielberg 作品一覧
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■ スタッフ キャスト ■
監督:スティーヴン・スピルバーグ
製作
イアン・ブライス
マーク・ゴードン
ゲイリー・レヴィンソン
スティーヴン・スピルバーグ
脚本
ロバート・ロダット
フランク・ダラボン
撮影:ヤヌス・カミンスキー
編集:マイケル・カーン
美術・装置
トム・サンダース
リサ・ディーン・カヴァノー
メオクアップ
ロイス・バーウェル
ダニエル・C・ストリーピーク
コナー・オサリヴァン
音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演
トム・ハンクス:ジョン・H・ミラー大尉
トム・サイズモア:マイケル・ホーヴァス軍曹
エドワード・バーンズ:リチャード・ライベン一等兵
バリー・ペッパー:ダニエル・ジャクソン二等兵
アダム・ゴールドバーグ:スタンリー・メリッシュ二等兵
ヴィン・ディーゼル:エイドリアン・カパーゾ一等兵
ジョヴァンニ・リビシ:アーウィン・ウエイド伍長
ジェレミー・デイヴィス:ティモシー・E・アパム伍長
テッド・ダンソン:フレッド・ハミル大尉
デニス・ファリーナ:ウォルター・アンダーソン中佐
ポール・ジアマッティ:ウィリアム・ヒル軍曹
マット・デイモン:ジェームズ・フランシス・ライアン一等兵
ハリソン・ヤング:ジェームズ・フランシス・ライアン(退役軍人)
ハーヴ・プレスネル:ジョージ・C・マーシャル 陸軍参謀総長
デイル・ダイ:大佐
リーランド・オーサー:デウィンド少尉
アメリカ 映画
配給
パラマウント・ピクチャーズ(世界)
ドリームワークス(北米)
1998年製作 169分
公開
北米:1998年7月24日
日本:1998年9月26日
製作費 $70,000,000
北米興行収入 $216,119,490
世界 $481,840,910
■ アカデミー賞 ■
第71回アカデミー賞
・受賞
監督・編集・撮影・音響・音響編集賞
・ノミネート
作品
主演男優(トム・ハンクス)
脚本・作曲(ドラマ)・美術・メイクアップ賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
フランス、ノルマンディー。
第二次大戦の退役軍人ジェームズ・フランシス・ライアン(ハリソン・ヤング)は、 家族を伴い”アメリカ人記念墓地”を訪れる。
ライアンは、ある人物の墓の前で泣き崩れ、第二次大戦中に参加した、ノルマンディー上陸作戦を思い起こす。
__________
1944年6月6日、オマハ・ ビーチ、ドッグ・グリーン地区。
最大の激戦地区で、第2レンジャー大隊ジョン・H・ミラー大尉(トム・ハンクス)は、多くの部下を失いながら、幸運にも生き残ることができる。
その頃、アメリカ本土では、戦死者名簿の中に4人の内3人が死亡した兄弟がいることがわかる。
陸軍参謀総長:ジョージ・C・マーシャル(ハーヴ・プレスネル)は、4兄弟の末の弟である第101空挺師団・第506パラシュート歩兵連隊所属の、ジェームズ・フランシス・ ライアン二等兵(マット・デイモン)を救出し、母親の元に帰す命令を出す。 オマハ・ビーチ、Dデイから3日目。 ヌーヴィルに向かうことになったミラーは、C中隊の生き残りマイケル・ホーヴァス軍曹(トム・サイズモア)、リチャード・ライベン(エドワード・バーンズ)、エイドリアン・カパーゾ(ヴィン・ディーゼル)、スタンリー・メリッシュ(アダム・ゴールドバーグ)、スナイパーのダニエル・ジャクソン(バリー・ペッパー)、衛生兵アーウィン・ウエイド(ジョヴァンニ・リビシ)、フランス語とドイツ語が話せる実戦経験のないティモシー・E・アパム(ジェレミー・デイヴィス)を選び任務に向かう。 穏やかな田園地帯を前進するミラーの小隊は、ある村でドイツ軍と交戦中の部隊に遭遇する。 ミラーは、合流したウィリアム・ヒル軍曹(ポール・ジアマッティ)らと共に戦闘に加わる。 しかし、廃墟で生き残っていた、フランス人家族の子供を助けようとしたカパーゾが、敵の銃弾に倒れてしまう。 カパーゾを撃ったスナイパーを、ジャクソンが狙撃し、ミラー達は潜んでいたドイツ軍を撃退する。 ミラーは、村にいた部隊の指揮官フレッド・ハミル大尉(テッド・ダンソン)に、ライアンのことを尋ねる。 その村にいたライアン二等兵に、ミラーは兄達の戦死を告げるが、結局は人違いだった。 第101空挺師団兵の情報で、ライアンがヴィアヴィル付近に降下した可能性があることを知ったミラーは、その村の教会で休息を取る。 ホーヴァスは、イギリスを出てから時々手が震えるミラーを気遣う。 カパーゾを含めて多数の部下を失ったミラーは、その何倍もの兵士を救ったと割り切って考えていたが、救い出すライアンにその価値があるのかを自問する。 アパムは、戦前の職業をミラーに尋ねるが、彼はそのことで部下らが賭けをしていることを知り、掛け金が500ドルになったらそれを教えることを約束する。 翌日、空挺部隊と遭遇した小隊は、一人の准将のせいで22人の同僚部下を失った、グライダー部隊のデウィンド少尉(リーランド・オーサー)に出会う。 ミラーや部下は、自分達も一人の二等兵のために命を懸けていることをデウィンドに伝える。 ライベンやジャクソンらは、デウィンドから戦死者の認識票を預かり、同胞空挺部隊員の前で、無造作にライアンの名前を捜す。 それを見たウエイドは、無神経な同僚らの行為を止めさせ、ミラーは兵士からライアンの情報を得る。 そしてミラーは、30キロ離れたメルデル川沿い南西方向のラメル付近に、ライアンが降下したことを突き止める。 その後、レーダー基地で敵に遭遇したミラーは、無駄な戦闘は避けるべきだと言う、部下の意見を無視して攻撃を仕掛ける。 戦闘は終わり、後方で待機していたアパムは、衛生兵ウエイドの負傷で駆けつけるが、仲間達の必死の治療も空しく彼は息を引き取る。 ウエイドを撃ったドイツ兵を捕らえ、墓穴を掘らせ銃殺しようとする仲間をアパムは制止しようとするが、ミラーは敵兵に連合軍に投降するよう言い渡して解放してしまう。 ライベンは、ライアン捜索の犠牲になっていく、仲間達の復讐が果たせない怒りをミラーにぶつける。 任務を放棄しようとするライベンに、ホーヴァスは銃を向けて、隊員は興奮状態になる。 それを見たミラーは、自分が作文の教師で、妻の元に胸を張って帰ることだけを願い、任務に就いていることを初めて口にする。 それを聞いた隊員、そしてライベンは平常心を取り戻し、小隊は再び前進を始める。 その後、敵装甲車と遭遇し、第101空挺師団員に出くわした小隊は、偶然にもライアンを見つけることができる。 ラメルに到着した小隊は残留兵と合流し、ミラーはライアンに兄全員の死と、自分達が彼を帰還させる任務を命ぜられていることを説明する。 ライアンは兄達の死を知り落胆するものの、仲間を見捨てて本国に帰還することを拒否する。 ラメルの橋を死守せよという命令を受けているライアンの部隊を残し、ミラーはあくまでライアンを連れ帰ろうとする。 ライベンらは、わがままとしか思えないライアンに、この任務で犠牲になった兵士達のことを知らせる。 思い悩むミラーは、自分達も残って戦い生き残り、誇りを持って帰国するのも一案だとホーヴァスから言われる。 そしてミラーは、前線部隊の指令に従い、限られた兵力と武器弾薬で知恵を絞り、敵を迎え撃つ準備を始める。 激戦を前に、実戦経験のないアパムは緊張するが、そんな彼を尻目に他の隊員達は開き直り、他愛ない話で盛り上がる。 兄達の顔を思い出せないライアンも、ミラーに何かをした場面を思い出せと言われ、兄達との最後の日々のことを語る。 そこに、敵軍戦車のエンジンとキャタピラー音が、地響きと共に迫る。 尖塔で監視していたジャクソンから、タイガー戦車、対空機関砲Falk 30共に2両と、歩兵50名強が近づいているという報せがミラーに入る。 敵を十分引き付けたミラーは、通りの爆破と共に攻撃を開始して、ライアンの身を守りながら速攻を仕掛ける。 そして、タイガーのキャタピラーを爆破し一両を走行不能にし、Falk 30を火炎瓶で爆破させる。 奇襲に遭ったドイツ軍は甚大な被害を被るが、圧倒する装備と兵力で反撃を開始する。 ジャクソンは尖塔から次々と敵兵を狙撃するが、タイガーの砲撃で命を落とす。 その頃、アパムは恐怖で動けず弾薬補給が遅れてしまい、メリッシュが敵兵に刺し殺され、ホーヴァスも負傷する。 メリッシュを刺したドイツ兵がアパムの前に現れ、それがレーダー基地で解放された兵士だと分かるが、彼は自分を助けたアパムに手を出さず、その場を立ち去る。 もはや、橋を爆破するしかなくなったミラーは爆破準備をするが、援護したホーヴァスが敵の銃弾に倒れる。 タイガーの砲撃でダメージを受けたミラーは、爆薬の起爆装置に手をかけようとして、自分が解放した敵兵に撃たれてしまう。 意識が薄れるミラーは、迫るタイガーに向け拳銃を乱射するが、その時、味方の戦闘機(マスタング P-51)が飛来し敵軍を撃退する。 川の対岸に残っていたアパムは、退却しようとする敵兵に銃を向け、ミラーを撃ちメリッシュを刺し殺した兵士を射殺する。 戦闘は終わり友軍が到着する中、生き残ったライアンは瀕死のミラーから語りかけられる。 「人生を無駄にするな、しっかり生きろ・・・」。 そして、ミラーの手の震えは止まり、ライベンの傍らで息を引き取る。 年老いたライアンは、ミラーの墓前に向かい、彼の言い残した言葉を励みに精一杯生き抜いたことを報告し、そして墓に向かって敬礼する。
...全てを見る(結末あり)
ウォルター・アンダーソン中佐(デニス・ファリーナ)に呼び出されたミラーは、行方不明のライアン二等兵を捜す命令を受ける。
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*(簡略ストー リー)
ノルマンディー上陸作戦の初日、激戦を生き抜いたジョン・H・ミラー大尉は、数日後、4人兄弟の3人を失い、行方不明となった末の弟で、第101空挺師団員として作戦に参加した、ライアン一等兵の救出を命ぜられる。
数人の部下を率いたミラーは、犠牲者を出しながら、一人の兵士を救うために命を懸けなければならない任務と、それに疑問を持ち始めた部下らの狭間で苦悩する。
その後、ようやくライアンを発見したミラーだったが、本国帰還を拒むライアンの部隊と共に、反撃に出たドイツ軍を迎え撃つ決心をする・・・。
__________
第二次大戦に従軍した、ナイランド兄弟の4人の内の3人が死亡したことが分かり、その内の一人フレデリック・ナイランド(1920-1983)が、第三次ソロモン海戦で撃沈された巡洋艦ジュノーの乗員サリバン5兄弟が死亡した悲劇で制定された、ソウル・サバイバー・ポリシーに基づき、フレデリックが本国に送還された話を題材にしている。
*
実際には、フレデリックを救出に行った部隊がいたという事実はない。
戦場に送り出される若者達の異常な精神状態、味方の一等兵1人を救出するだけの任務ではあるが、国家の威信や正義の為に戦う意義を、スティーヴン・スピルバーグは、リアルな映像と繊細な演出、そして人物描写で克明に描いている。
第71回アカデミー賞では、作品賞以下11部門でノミネートされ、監督、編集、撮影、音響、音響編集賞を受賞した。
・ノミネート
作品
主演男優(トム・ハンクス)
脚本・作曲(ドラマ)・美術・メイクアップ賞
北米で約2億1600万ドルの興行収入を上げ、全世界では約4億8200万ドルを超す大ヒットとなった。
冒頭の、ノルマンディ上陸作戦での大激戦区オマハビーチの、20分間にも及ぶ実戦さながらの戦闘シーンは、目を覆いたくなるほどの凄まじさだ。
よく言われることだが、実際作戦に参加した退役軍人の体験談では、映像とは比較にならない悲惨な状況だったようで、当時の戦場の惨劇は想像を絶していたという。
その凄まじい映像とは対照的な、美しいジョン・ウィリアムズの音楽も印象に残る。
スピルバーグとトム・ハンクスが監修したテレビ・ドラマの「バンド・オブ・ブラザース」(2001)同様、作品中、兵士はただ任務の為に行動した事を強調し、武器を捨てたドイツ兵を容赦なく射殺するアメリカ兵など、ドイツ側を一方的に悪役には描いていないところも注目だ。
戦争の悲惨さや、犠牲の意味を考える上では、「バンド・オブ・ブラザース」も是非見ておきたい作品。
職業軍人でもなく、命令と部下の任務への不満の狭間で苦悩する、ミラー大尉を演ずる主人公トム・ハンクスは、沈着冷静でありながら、自分では制御できない恐怖と闘う将校を見事に演じている。
終盤、形勢不利な防衛戦を前に”シュールな展開”と表現するなど、ミラーの作文教師としての一面を垣間見せる場面なども、なかなか細かい演出だ。
人間味のある忠実な軍曹トム・サイズモア、任務に不満を隠せないライベンのエドワード・バーンズ、精悍な面構えの、冷静沈着で頼れるスナイパーのバリー・ペッパー、陽気なユダヤ人アダム・ゴールドバーグ、タフガイ振りが印象的なのだが、呆気なく狙撃されてしまうヴィン・ディーゼル、命を落とす衛生兵のジョヴァンニ・リビシ、戦場の恐怖に怯える通訳ジェレミー・デイヴィス、前線部隊の指揮官テッド・ダンソン、ライアン救出命令を出す中佐デニス・ファリーナ、前線の軍曹ポール・ジアマッティ、そして、小隊の犠牲により生き残るライアン一等兵マット・デイモン、ミラーの墓前にたたずむ年老いたライアン、ハリソン・ヤング、 マーシャル・陸軍参謀総長のハーヴ・プレスネル、その側近で軍事アドバイザーでもあるデイル・ダイ、グライダー部隊の少尉でリーランド・オーサーなどが共演する。
P.S.
マット・デイモンは既に「グッド・ウィル・ハンティング」(1997)で主演していたのだが、本作への出演交渉はそれ以前ということだったらしく、ギャラは非常に安かったらしい。