1936年のソ連映画”The Thirteen”を基にフィリップ・マクドナルドの原案で製作された作品。 第二次大戦下の”北アフリカ戦線”を部隊に、アメリカ陸軍の戦車部隊員とイギリス他連合部隊の勇気ある戦いを描く、主演ハンフリー・ボガート、ダン・デュリエ、ブルース・ベネット、監督ゾルタン・コルダによる戦争映画の秀作。 |
・ハンフリー・ボガート / Humphrey Bogart / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:ゾルタン・コルダ
製作:ハリー・ジョン・ブラウン
原案:フィリップ・マクドナルド”The Thirteen”
脚本
ジェームズ・オハンロン
ジョン・ハワード・ローソン
撮影:ルドルフ・マテ
編集:チャーリー・ネルソン
音楽:ミクロス・ローザ
出演
ジョー・ガン軍曹:ハンフリー・ボガート
ジミー・ドイル:ダン・デュリエ
ウェイコ・ホイト:ブルース・ベネット
ジェイソン・ハリディ大尉:リチャード・ニュージェント
フレッド・クラークソン:ロイド・ブリッジス
オズモンド”オジー”ベイツ:パトリック・オムーア
ピーター・ステグマン:ガイ・キングスフォード
マーティ・ウィリアムズ:カール・ハーバード
ジャン”フレンチー”ルルー:ルイ・マルシア
タンブール曹長:レックス・イングラム
ジュセッペ:J・キャロル・ナイシュ
フォン・シュレットウ大尉:クルト・クルーガー
フォン・ファルケン少佐:ジョン・ウェングラフ
イギリス兵:ピーター・ローフォード
アメリカ 映画
配給 コロンビア・ピクチャーズ
1943年製作 97分
公開
北米:1943年11月11日
日本:1951年4月10日
北米興行収入 $2,300,000
■ アカデミー賞 ■
第16回アカデミー賞
・ノミネート
助演男優(J・キャロル・ナイシュ)
撮影(白黒)・録音賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1942年、第二次大戦下”北アフリカ戦線”。
アメリカ陸軍・第五戦車部隊のジョー・ガン軍曹(ハンフリー・ボガート)は、”M3中戦車”の”ルル・ベル”を修理中に撤退命令を受ける。
ガンは、部下の通信兵ジミー・ドイル(ダン・デュリエ)と機銃兵ウェイコ・ホイト(ブルース・ベネット)と共に、戦車を直してその場を離れる。
途中ガンらは、イギリス陸軍・第8軍の救護部隊に遭遇する。
軍医ジェイソン・ハリディ大尉(リチャード・ニュージェント)に迎えられたガンは、42名もの負傷兵が攻撃を受けて死亡したことを知らされる。
撤退することを知らせたガンは、戦いが続いていると考える兵士に逃げるのかと言われ、”ルル・ベル”をポンコツ呼ばわりされる。 命令に従うだけだと反論して去ろうとしたガンは、ハリデイが同行を求めたため、イギリス、フランス、南アフリカ兵らを乗せて出発する。 その後、戦車は再び故障してしまい、小休止したガンは今後の進路をハリデイと決めるが、問題は飲料水の確保だった。 ガンは、水をがぶ飲みするイギリス兵を非難し、水筒を集めようとするが意見される。 ハリデイは、戦うために生き延びることを考えなくてはならず、今は協力し合うことが大切で、経験豊富なガンに従う ガンに水筒を渡したハリデイに部下は従い、フランス兵のジャン”フレンチー”ルルー(ルイ・マルシア)が全員の水筒を集める。 前進したガンらは、スーダン兵のタンブール曹長(レックス・イングラム)と捕虜でイタリア兵のジュセッペ(J・キャロル・ナイシュ)を見つける。 ガンは、地理に詳しいタンブールが、井戸まで行けることを確認して同行させる。 置いて行かれるジョゼッペは、英語が話せると言ってガンに同行を求める。 家族の話などをしたジョゼッペは、ハリデイに妻子の写真を見せて、置き去りにされれば死んでしまうと訴える。 戦争捕虜の人命を考えるハリデイだったが、ガンは、10人の命がかかっていることを伝える。 ジョゼッペは、水も食料もいらないと言ってガンにすがるが、突き倒されてしまう。 戦車は走り去り、ジョゼッペは、キャタピラーの跡を追い歩き続け、それを確認したガンは、仕方なく停車することを命ずる。 兵士達はジョゼッペに合図を送り呼び寄せ、この件で賭けをしていたホイトはドイルに金を渡す。 その後、ドイツ空軍・戦闘機パオロットのフォン・シュレットウ大尉(クルト・クルーガー)は、敵戦車(ルル・ベル)を発見して攻撃を加える。 ガンは反撃して敵機を撃墜し、脱出したフォン・シュレットウは捕えられる。 余裕を見せるフォン・シュレットウの所持品から、ガンらはトブルクが陥落したことを知る。 フォン・シュレットウの攻撃で負傷した、フレッド・クラークソン(ロイド・ブリッジス)が手当てを受ける。 ガンは、フォン・ファルケンを生かしておく考えをフレンチーに伝え、英語が分かる様に思える敵兵を警戒しながら出発する。 その後、ようやく井戸に到着したガンらだったが、そこが干上がっていることを確認する。 タンブールは、次の井戸が南に80キロの位置だということをガンに伝える。 クラークソンは、恋人の名前を口にしながら息を引き取る。 無線に気づいたガンは、位置を知らせるようにという司令部からの連絡を聴く。 クラークソンを埋葬したガンらは、砂嵐の中を前進し続け、目的地の廃墟に到着する。 建物の中で嵐が収まるのを待ったガンは、周辺のどこかにある井戸を探すようタンブールらに指示する。 タンブールが井戸を発見するものの、石を落してみたガンは水がないことに気づく。 ガンはタンブールに内部を調べさせるが、やはり水はなかった。 岩から水が染み出ていることに気づいたタンブールは、一滴も無駄にしないようにして、それを缶などに溜める。 水は引き上げられ、ガンは、一人三口までだと言ってそれを兵士、そして捕虜のジョゼッペとフォン・シュレットウにも分け与える。 その頃、クラークソンが埋葬された場所の井戸で、水を確保できないドイツ軍・指揮官フォン・ファルケン少佐(ジョン・ウェングラフ)は、次の井戸(ガンらの居る廃墟)に向かおうとする。 フォン・ファルケンは先遣隊を出発させて、その後を追うことを考える。 ガンは、十分な水が確保できるまでは動けないため、戦車の掃除と装備の点検を兵士に命ずる。 井戸の様子を見に行ったホイトは、タンブールと話をして親しくなる。 ガンは、機械工だというジョゼッペに整備を手伝わせる。 その後、敵の偵察隊が近づき、ガンは兵士を配置につかせて警戒する。 英語が理解できていたフォン・シュレットウは、それに気づいたジョゼッペを黙らせる。 ガンらは敵に攻撃を仕掛け、二人を捕虜にして部隊の情報を得ようとする。 何も話さない敵兵に水を見せたガンは、動揺した一人に質問を続ける。 二人が先遣隊であることを知ったガンは、車両部隊がエジプト国境に近づいていることを聞き出す。 もう一人の敵兵は渡された水を捨ててしまい、ガンは、井戸が枯れたことをタンブールから知らされる。 水を欲しさに現れるはずの敵の吠え面を見たくなったガンは、相手を足止めさせて伝令を出すことを考える。 ガンは、捕えた敵兵の二人に、この場に水があると味方に言わせる方法を仲間の兵士に伝える。 全滅の可能性があるため、ガンはこの場に残るかは自分の判断に任せる。 全員残ることで意見が一致し、ガンは、食料と水を交換することを部隊に伝えさせるために、敵兵二人を帰そうとする。 しかし、話を聞いていたフォン・シュレットウが、それを仲間に知らせようとする。 フレンチーがフォン・シュレットウを殴り、ガンは、彼が英語を理解していいたことを知る。 ガンは、敵を迎え撃つ準備を始めるよう指示し、自分に恩を感じているジョゼッペにも手伝わせる。 通訳をしたハリデイは、敵兵二人に交換条件を伝えて部隊に向かわせる。 二人は部隊に戻ろうとするが、口を割った兵士は仲間に殴り殺される。 伝令に指名されたホイトは、味方に情報を伝え援軍を要請するため敵軍の車両で出発する。 やがて敵兵が現れ、先制攻撃を仕掛けたガンらは敵を撤退させるが、南アフリカ兵のピーター・ステグマン(ガイ・キングスフォード)が戦死する。 翌日、フォン・ファルケンは白旗を掲げて近づき、それに対応したガンと交渉を始める。 武器を捨てれば逃がすというフォン・ファルケンに対し、ガンは、銃を捨てれば水を与えると答える。 交渉は成立しないまま双方は陣地に戻り、味方の元に戻ったガンは、ホイトのことを考える。 その頃、車両が故障したホイトは、仕方なく徒歩で前進する。 砂漠の灌漑を考えているというイギリス兵マーティ・ウィリアムズ(カール・ハーバード)は、そのことなどをガンと話して談笑し、ヘルメットを脱ぎ油断している最中に狙撃されて命を落とす。 夜になり激しい戦闘が始まり、フォン・シュレットウは、味方に水がないことを知らせるようにとジョゼッペに指示する。 フォン・シュレットウは、狂人であるヒトラーの言いなりになることを拒み総統を侮辱するジョゼッペを殴り倒してその場を脱出する。 それを知らせたジョゼッペは、背中を刺されていたために息絶える。 タンブールがフォン・シュレットウを追い、彼に襲い掛かって息の根を止めるが、戻る途中で銃弾を受けて倒れる。 瀕死のタンブールは、フォン・シュレットウを殺したことをガンに知らせて息絶える。 飲み水不足が限界に達したドイツ軍のフォン・ファルケンは、再び白旗を掲げて近づき、フレンチーがそれに対応する。 ドイルとハリデイが、豊富な水で体を洗っているように見せかけ、イギリス兵オズモンド”オジー”ベイツ(パトリック・オムーア)が、ハーモニカを吹いて余裕を見せる。 フレンチーは、ガンの条件は変わらないことを伝えて陣地に戻ろうとするが、フォン・ファルケンは部下に銃撃を命ずる。 憤慨したガンは、卑怯な敵に向かい銃弾を浴びせる。 その頃ホイトは、延々と続く砂漠をただひたすら歩き続ける。 弾薬が残り少なくなり、ガンとハリデイは今後のことを考える。 ハリデイは、敵の戦い方に尊厳の様なものが欠けていると意見する。 ドイルが負傷してしまい、ハリデイは彼を建物内に運び治療しようとするが、砲撃を受けた二人は死亡する。 ホイトは這って前進するものの、力尽きて意識を失う。 そこにイギリス軍の偵察隊が現れ、ホイトを発見して水を与える。 井戸が砲撃を受けたことを知ったガンとベイツは、迫る敵を銃撃するものの、相手は撃ってこない。 立ち上がってドイツ兵を徴発するガンは、敵が水を求めて降伏しようとしていることに気づく。 敵は井戸に向い、砲撃により湧き出た水を求めて群がる。 ガンとベイツは、敵兵を捕虜にしてその場から移動し、ホイトの連絡で援護に現れたイギリス軍部隊と合流する。 ホイトは”ルル・ベル”を操縦するガンに駆け寄り、ベイツは仲間達に歓迎される。 ガンは、多くの犠牲者をだしドイルも死んだことをホイトに知らせる。 ホイトは、連合軍が”エル・アラメインの戦い”(最初の戦い)で勝利し、ロンメルの”ドイツ・アフリカ軍団”を撤退させたことをガンに伝え、それを戦死した仲間に知らせたかったと語る。 ガンは砂漠を見つめながら、共に戦った者達を想い名を呼び、”エル・アラメイン”の地で安らかに眠るようにと言って祈りを捧げる。
...全てを見る(結末あり)
のが得策であることを部下に伝える。
*(簡略ストー リー)
1942年、第二次大戦下”北アフリカ戦線”。
アメリカ陸軍・第五戦車部隊のジョー・ガン軍曹は、”M3中戦車”の”ルル・ベル”を修理し、通信兵ドイルと機銃兵ホイトと共に命令を受けて撤退する。
その後ガンらは、イギリス陸軍のハリデイ大尉らの救護部隊に遭遇して行動を共にし、スーダン兵タンブール曹長と捕虜でイタリア兵のジュセッペも同行し、水を確保するため井戸に向かう。
ドイツ空軍のフォン・シュレットウ大尉の戦闘機を撃墜し、彼を捕虜にしたガンらだったが、到着した井戸は干上がっていた。
次の井戸を目指したガンらは、その場で、染み出る水を何とか確保して命拾いをする。
その頃、同じく水不足が深刻な問題となっていたドイツ軍部隊のフォン・ファルケン少佐も井戸(ガンらの居る場所)を目指すことになる。
現れた敵偵察隊に攻撃を加え捕虜をとったガンは、敵を迎え撃つ間に、ドイツ軍の情報を味方に伝えようと考えるのだが・・・。
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本作の撮影が始まるのが、ラストで語られる”エル・アラメインの戦い”の直後であることに注目したい。
戦いが続いていた”北アフリカ戦線”の終盤と共に撮影が進行して状況下で、その戦況の緊迫感が伝わる内容や脚本が実に興味深い。
公開時は、激戦を繰り広げた”北アフリカ戦線”も終了して半年が経過していた時期で、その後、連合軍はイタリアのシチリア島に上陸する時期を考えると、また違った思いで鑑賞できるのではないでしょうか。
”M3中戦車”で単独行動をする、アメリカ陸軍の戦車部隊員と連合軍兵士との交流と友情、近代兵器を捨てても”水”を欲するという、人間の人体機能の特性などが生々しく描かれている。
また、その水不足が極限に達しながらも、兵士としての義務を遂行し、世界を脅かすナチス・ドイツに戦いを挑む勇気、ヒトラーに対する痛烈な批判などの描写も印象に残る。
第16回アカデミー賞では、助演男優(J・キャロル・ナイシュ)、撮影(白黒)、録音賞にノミネートされた。
歴戦の勇士らしく勇敢に戦う主人公を演ずるハンフリー・ボガートは、個性豊かな兵士達のまとめ役として貫録の演技を見せ、少々荒っぽい判断もするが、心理敵に敵を追い込む頭脳戦に打って出る戦車隊軍曹を熱演している。
その部下で通信兵のダン・デュリエ、同じく大柄で頼りになる機銃兵ブルース・ベネット、イギリス陸軍の救護部隊軍医リチャード・ニュージェント、その部下ロイド・ブリッジス、主人公と共に生き残るイギリス兵パトリック・オムーア、南アフリカ兵ガイ・キングスフォード、イギリス兵のカール・ハーバード、フランス兵ルイ・マルシア、スーダン兵レックス・イングラム、イタリア兵の捕虜J・キャロル・ナイシュ、ドイツ軍・戦闘機パイロットのクルト・クルーガー、部隊指揮官ジョン・ウェングラフ、そして、イギリス兵の端役でピーター・ローフォードも出演している。