2002年に発表された、オーガステン・バロウズの伝記小説”Running with Scissors”を基に製作された作品。 不仲の両親の元で育った少年が風変わりな精神科医一家と暮らしながら成長していく姿を描く、製作ブラッド・ピット、製作、監督、脚本ライアン・マーフィー、主演アネット・ベニング、ブライアン・コックス、ジョセフ・ファインズ、エヴァン・レイチェル・ウッド、アレック・ボールドウィン、グウィネス・パルトロー、ジョセフ・クロス、ジル・クレイバーグ他共演のコメディ・ドラマ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ライアン・マーフィー
製作
デデ・ガードナー
ブラッド・グレイ
ライアン・マーフィー
ブラッド・ピット
製作総指揮:スティーヴン・サミュエルズ
原作:オーガステン・バロウズ”Running with Scissors”
脚本:ライアン・マーフィー
撮影:クリストファー・バッファ
編集:バイロン・スミス
音楽:ジェームズ・S・レヴィン
出演
ディアドラ・バロウズ:アネット・ベニング
マリオン・フィンチ医師:ブライアン・コックス
ニール・ブックマン:ジョセフ・ファインズ
ナタリー・フィンチ:エヴァン・レイチェル・ウッド
ノーマン・バロウズ:アレック・ボールドウィン
ホープ・フィンチ:グウィネス・パルトロー
オーガステン・バロウズ:ジョセフ・クロス
アグネス・フィンチ:ジル・クレイバーグ
ドロシー・アンブローズ:ガブリエル・ユニオン
マイケル・シェファード:パトリック・ウィルソン
ファーン・スチュワート:クリスティン・チェノウェス
スザンヌ:ダグマーラ・ドミンスク
ジョアン:コリーン・キャンプ
アメリカ 映画
配給 トライスター・ピクチャーズ
2006年製作 116分
公開
北米:2006年10月27日
日本:未公開
製作費 $12,000,000
北米興行収入 $6,754,900
世界 $7,460,800
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1972年。
詩人として有名になれると信じているディアドラ・バロウズ(アネット・ベニング)は、溺愛する息子オーガステンの前で朗読会の練習をする。
雑誌”ザ・ニューヨーカー”に掲載されるとオーガステンに言われたディアドラは、成功する運命を確信する。
朗読会に出かけるために夫ノーマン(アレック・ボールドウィン)を待っていたディアドラは、遅れて帰宅した彼を非難する。
アルコール依存症のノーマンは、ディアドラを慕うオーガステンが自分には似ていないと思う。
会場には一人しか参加者がいないものの、ディアドラは詩を読み上げる。
”ザ・ニューヨーカー”から不採用の通知を受けたディアドラは、オーガステンに慰められながら彼を抱きしめる。 1978年。 ノーマンとの溝は埋まらず諍いが絶えないディアドラは、自分達の争い見て不満を訴えるオーガステン(ジョセフ・クロス)に、夫婦の問題だと伝える。 ディアドラはノーマンを責め続け、激高して襲いかかり頭を打った彼が意識を失っても、芝居をしていると言い張る。 オーガステンは、自分達が普通の家族でないことを嘆き苛立つ。 精神科医のマリオン・フィンチ(ブライアン・コックス)を自宅に呼んだディアドラは、彼から不安の度合いなどを質問され、安定剤を与えられる。 後日、フィンチと話し合ったディアドラとノーマンは、前向きに治療を受けようとしないため、即、離婚の準備を始めることを提案される。 自分を信じようとしないノーマンを、家族に対する危険人物だとフィンチは判断する。 次の診察でオーガステンを伴ったディアドラは、素晴らしい詩人である妻の才能を認めないノーマンと別れるべきだとフィンチに言われる。 ディアドラとオーガステンは、意外にも気さくなフィンチに興味を持ち、プライベート・ルームに案内される。 その場で、助手でもある長女のホープ(グウィネス・パルトロー)がうたた寝をしていたため、フィンチは憤慨して彼女を追い出す。 ノーマンは家を出ることになり、ディアドラは詩に集中できると言って喜ぶ。 オーガステンとフィンチの屋敷を訪ねたディアドラは、悪趣味で荒れ果てた外観に驚き、妻のアグネス(ジル・クレイバーグ)に迎えられる。 ディアドラがフィンチと会っている間、オーガステンは、何年もクリスマスツリーを飾り続け、ドッグフードを食べながらテレビの”ダーク・シャドウ”を観るアグネスに付き合う。 次女ナタリー(エヴァン・レイチェル・ウッド)に話しかけられたオーガステンは、電気ショック装置を使った診察ゲームをする。 オーガステンに装置をつけさせてコンセントを差し込もうとしたナタリーだったが、現れたホープから、父がオーガステンを呼んでいると言われる。 ノーマンがディアドラを殺す可能性があると言うフィンチは、彼女を守るためにモーテルに連れて行くため、この場で待っているようにとオーガステンに伝える。 薬で朦朧とするディアドラは、同行を望むオーガステンに、フィンチを信じるようにと言って説得する。 数日か1週間この場に滞在するようにと言われたオーガステンは戸惑うが、ディアドラに逆らうことができなかった。 オーガステンからのコレクトコールを受けたノーマンは、電話を切ってしまう。 ディアドラは1週間戻らず、風変わりなフィンチ一家と暮らすオーガステンは、週末に母に会えるだけで、その場に滞在し続ける。 1979年。 ニールと映画を観に行ったオーガステンは、フィンチに救われたと言われ、自分もゲイであることを伝える。 二人は関係を持ち、フィンチ一家と付き合うよりニールの方がましだと考えたオーガステンは、彼にディアドラのアパートまで送ってもらう。 ディアドラとファーンが愛し合おうとしている姿を目撃してしまったオーガステンは、ショックを受ける。 オーガステンは、母親が同性愛者だったことと、ファーンのような平凡な女性が相手だということに納得いかない。 自分の問題だと割り切るディアドラは、抑圧に耐え闘ってきたことを理解するようオーガステンに伝える。 5ドルほしいと言うオーガステンに、紙幣とある封筒を渡したディアドラは、フィンチ家との養子縁組の書類だと伝える。 フィンチが法的な後見人になると言われたオーガステンは驚き、最良の方法だと話すディアドラに失望してその場を去る。 ニールの元に向かったオーガステンは、父ノーマンにも見捨てられ、両親を殺したいと思うことがあると話す。 フィンチと話したオーガステンはニールとの関係を伝え、不安定な男だと言う彼に対し正常だと答える。 抗不安薬を渡されたオーガステンは、まともに学校に行っていないことをフィンチに追及される。 学校を休む方法として睡眠薬を飲み、精神不安定状態を装うよう、オーガステンはフィンチに助言される。 その後、睡眠薬自殺を図ったオーガステンは何とか助かる。 アグネスから美容師免許を取るための手引書を渡されたオーガステンは、彼女から夢を持つようにと言われる。 自分は夢もなく必死に働き子供を育てたと言うアグネスに、それが夢だとオーガステンは伝える。 無気力になったオーガステンは、ナタリーには、男に捨てられ大学にも進学できない辛い過去があることを知り、彼女に心を許す。 キッチンの低い天井が気に入らないオーガステンは、ナタリーとそれを壊してしまおうとする。 幼児性愛の病気が治らないニールは、治療の効果がないと言ってフィンチを批判する。 アグネスは、診察を受けに来たディアドラに、夫には会ってほしくないと言って、オーガステンは大切な家族だが、ディアドラが邪魔であることを伝える。 写真の勉強も奨学金を得ることもさせてあげられなかったと冷静に答えるフィンチに、自分を邪魔ものにしている伝えるニールは怒りが収まらない。 診察は終わり、治療が進んだと言われたニールはその場を去る。 アグネスの言葉を無視してフィンチの元に向かうディアドラと出くわしたニールは、オーガステンのことを頼まれる。 フィンチの診察を受けたディアドラは、怒りを爆発させるようにと言われて絶叫する。 同時に、アグネス、ニール、オーガステンとナタリーも絶叫する。 ファーンとは終わったと言われたディアドラは、フィンチから患者のドロシー・アンブローズ(ガブリエル・ユニオン)を紹介され、娘が欲しかった彼女は喜ぶ。 キッチンに向かったフィンチは、わずかな穴を天窓だと言うオーガステンとナタリーの行為を、ユーモアと判断して驚きもしない。 来客に対応するため玄関に向かったフィンチは、内国歳入庁のマイケル・シェファード(パトリック・ウィルソン)の訪問を受ける。 脱税を指摘されたフィンチは、6週間後に屋敷が差し押さえられることになる。 美容学校に入ることを考えるオーガステンは、ニールやナタリーを実験台にする。 成熟した愛を知らないニールとオーガステンと言い合いになったホープは、反論されても相手にしない。 料理をしていたホープはナタリーに味見をさせて、死んだ愛猫が材料だと伝える。 憤慨するナタリーとニール、そしてオーガステンは、ホープを変人扱いしてその場を去る。 冗談だと言うホープは、怒りを吐きだせたことで納得する。 安らぎの時間ということで詩の集いを始めたディアドラは、参加者のジョアン(コリーン・キャンプ)から、男性がいると落ち着かないと言われる。 ニールに詩の朗読させたディアドラは、その怒りの表現を評価する。 オードリーとディアドラとの関係が気に入らないオーガステンは不満を訴えるが、新しい母親を探すべきだとオードリーに言われてしまう。 翌朝、排便を確認して、金運が上昇するという啓示を感じたと言うフィンチは、興奮してそれを家族に伝える。 フィンチは、靴ベラで便をすくい、崩れないようにして天日で乾かすようアグネスに指示し、それを祭る神殿を作ろうとする。 不幸な自分の人世についてを考えるオーガステンは、家族が愛し合っていた頃のことを思い出し、正気を失ったようなディアドラを見て悲しくなる。 精神科医療施設に入れられたディアドラは、1週間後に退院して、その後も、詩人として成功すると言い続ける。 そんなある日、ノーマンと出くわしたディアドラは、彼の婚約者のスザンヌ(ダグマーラ・ドミンスク)を紹介される。 養育費も送ってこないことを批判するディアドラは、ノーマンを罵倒してその場を去る。 ドロシーが姿を消したために、一緒に住むことをディアドラから提案されたオーガステンは、母にお茶を入れてくれと頼まれる。 食器棚には何もなく、ディアドラの言動がおかしいと思ったオーガステンは、彼女から食器は裏庭に並べてあると言われ、それを確認する。 フィンチを憎むディアドラは、彼が触ったものを月光浴で殺菌していると意味不明なことを言う。 ディアドラが回復していないため、オーガステンはホープに電話をして助けを求める。 オーガステンと共にディアドラに鎮静剤を飲ませて眠らせたニールは、フィンチの屋敷に忍び込み、キッチンにあったハサミを持って二階に上がる。 フィンチを殺そうとしたニールだったが、それに気づいたアグネスに声をかけられる。 目覚めたフィンチから息子と言われ、興奮しながらそれを否定したニールは、ホープとナタリーも現れたために我に返る。 ニールが去ったことを悲しむフィンチは、寄り添う家族に慰められる。 翌日、出て行ったというニールの行き先をナタリーから聞いたオーガステンは、彼の乗ったバスを追うものの出発に間に合わなかった。 ディアドラ側に付いたことで、父が憤慨しているとナタリーに言われたオーガステンは、全てを捨ててニューヨークに行く提案を彼女にする。 不安を感じるナタリーは、バイトをしながら自分を大学に通わせるとオーガステンに言われる。 ディアドラに会ったオーガステンは、ニューヨークで暮らすことを伝えて別れを告げる。 バス停で待つオーガステンは、現れたアグネスから、ナタリーが来ないことを知らされる。 止めないでほしいとアグネスに伝えたオーガステンは、世の母親が求める最高の息子だと言われ、彼女が貯めた大金を渡される。 現金のことを家族は知らないと言うアグネスは、再び内国歳入庁が来たために渡そうとしたが、一生に一度くらい納得いく投資をしたいと考えたことをオーガステンに伝える。 本を書いたら送ってほしいと言われたオーガステンは、アグネスに感謝して涙する。 立去ろうとしたアグネスは、今後はどうするのかをオーガステンに尋ねられ、何年も飾り続けたクリスマスツリーを片付けると答える。 フィンチ医師は保険詐欺で有罪となり、医師免許を失い、2000年に心臓病で亡くなる。 アグネス・フィンチは家を出て、介護施設の職を得る。 ナタリー・フィンチは大学を卒業し、心理学の学位を取得した。 フィンチが亡くなるまで助手を務めたホープ・フィンチは、生涯未婚を通した。 ノーマン・バロウズはオーガステンと和解し、再婚をして幸せに暮らし、2005年に肝硬変で亡くなる。 一人暮らしを続けたディアドラ・バロウズは、小規模な文学雑誌に詩が掲載さるが、オーガステンとは疎遠のままである。 ニール・ブックマンは消息不明である。 ニューヨークに移り住んだオーガステン・バロウズは、1冊の本を書き上げた。
...全てを見る(結末あり)
ディアドラは、自宅にファーン・スチュワート(クリスティン・チェノウェス)らを呼んで個人的な詩の愛好会を開く程度の、成功とは程遠い日々を送っていた。
ナタリーにゲイであることを告白したオーガステンは、養子の兄ニール・ブックマン(ジョセフ・ファインズ)も同じで、今は別の場所で暮らしていることを彼女から知らされる。
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*(簡略ストー リー)
1972年、詩人として有名になれると信じているディアドラ・バロウズは、息子オーガステンを溺愛していたが、アルコール依存症の夫ノーマンとの溝は深まるばかりだった。
1978年、精神科医フィンチの診察を撃受けたディアドラは、ノーマンが家族に危険を及ぼすと言われ離婚を決意する。
その後も診察を受けるためフィンチの屋敷に向かったディアドラは、ノーマンに殺される危険性を指摘され、オーガステンをその場に残して一人暮らしを始める。
フィンチの妻アグネス、長女のホープ、次女のナタリー、そして他所で暮らす養子でゲイのニールら風変わりな家族と共に暮らすことになったオーガステンは戸惑う。
ゲイだったオーガステンはニールと関係を持ち、フィンチ一家との奇妙な生活で悩みながら日々を過ごし、やがて、母ディアドラの精神状態も不安定になる・・・。
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テレビ番組製作者としてキャリアを積んでいたライアン・マーフィーの映画初監督作品で、製作、脚本も兼ねている。
原作者オーガステン・バロウズの伝記を原作にしている。
どのあたりまで脚色しているかは不明だが、この物語で描かれているようなことが現実でも、それほど不思議には思えないところが面白い。
あらゆることが起きそうな雰囲気のある、よく言えば”絵になる”社会構造とも言える、アメリカ社会の歪みや問題が切実に描かれている内容に注目したい。
不安や悩みが解消、改善されないままの綱渡り状態で日々を過ごしながらも、逞しく生き抜く力強さ、その術を知っている国民性が窺える奥深いストーリーとなっている。
それを、負の部分ばかりを見せながら表現していくライアン・マーフィーの巧みな脚本、実力派スターそれぞれの個性を見事に生かした演出も見事だ。
詩人として有名人になれることを確信しながら、精神が崩壊していく主人公を熱演するアネット・ベニング、彼女に関わる精神科医を味のある演技で演ずるブライアン・コックス、主人公の息子(ジョセフ・クロス)と関係を持つフィンチ医師(ブライアン・コックス)の養子であるゲイの青年ジョセフ・ファインズ、アルコール依存症である主人公の夫アレック・ボールドウィン、フィンチの長女で助手でもあるグウィネス・パルトロー、思い悩む主人公の息子で原作者のオーガステン・バロウズを好演するジョセフ・クロス、フィンチの次女を演じ、10代とは思えない深い演技を見せるエヴァン・レイチェル・ウッド、同じく、終盤で少年にとって重要な存在であるフィンチの妻を演ずるジル・クレイバーグ、主人公と付き合うフィンチの患者ガブリエル・ユニオン、内国歳入庁の職員パトリック・ウィルソン、主人公と関係を持つクリスティン・チェノウェス、主人公の夫の婚約者ダグマーラ・ドミンスク、詩の会の出席者コリーン・キャンプなどが共演している。