興味本位で実行される密室での殺人を描く、製作、監督アルフレッド・ヒッチコック、主演ジェームズ・スチュワート、ジョン・ドール、ファーリー・グレンジャー、セドリック・ハードウィック共演のサスペンス。 |
・アルフレッド・ヒッチコック Alfred Hitchcock 作品一覧
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■ スタッフ キャスト ■
監督:アルフレッド・ヒッチコック
製作
アルフレッド・ヒッチコック
シドニー・バーンスタイン
原作:パトリック・ハミルトン”Rope”(戯曲)
脚本
アーサー・ローレンツ
ヒューム・クローニン
撮影
ジョセフ・A・ヴァレンタイン
ウィリアム・V・スコール
編集:ウィリアム・H・ジグラー
音楽:レオ・F・フォーブスタイン
出演
ジェームズ・スチュワート:ルパート・カデル
ジョン・ドール:ブランドン・ショー
ファーリー・グレンジャー:フィリップ・モーガン
セドリック・ハードウィック:ヘンリー・ケントリー
コンスタンス・コリアー:アニータ・アトウォーター
ジョーン・チャンドラー:ジャネット・ウォーカー
ダグラス・ディック:ケネス・ローレンス
エディス・エヴァンソン:ウィルソン
ディック・ホーガン:デヴィッド・ケントリー
アメリカ 映画
配給 ワーナー・ブラザーズ
1948年製作 80分
公開
北米:1948年8月28日
日本:1962年10月20日
製作費 $1,500,000
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
ニューヨーク、マンハッタン。
カーテンの閉まっているアパートの一室。耽美主義者ブランドン・ショー(ジョン・ドール)と友人フィリップ・モーガン(ファーリー・グレンジャー)は、大学のクラスメイトだったデヴィッド・ ケントリー(ディック・ホーガン)を絞殺する。
二人の絞殺の理由は別になく、自分達の優れた能力を試してみたかっただけだった。
デヴィッドの死体をチェストに隠したブランドンは、完璧な殺人に酔いしれるが、フィリップは動揺を隠せない。
二人は、その上のスリルを味わうために、田舎に帰る予定のフィリップの送別会を名目に、パーティーの準備 までしてあった。
さらにブランドンは、死体の入ったチェストを開けさせないために、パーティーの食卓にすることまで考え、フィリップを驚かせる。 そこに、家政婦のウィルソン(エディス・エヴァンソン)が現れ、チェスとを食卓にするセッティングなどの、不自然さなどを指摘する。 焦るフィリップだったが、ブランドンは余裕で、犯行に使ったロープをシンクの引き出しに無造作に入れる。 その後、デヴィッドの婚約者ジャネット・ウォーカー(ジョーン・チャンドラー)と婚約を解消したケネス・ローレンス(ダグラス・ディック)、続いて彼女も現れる。 デヴィッドが来ることを気にする、ケネスがいることに気づいたジャネットは、そのことでブランドンに咬みつく。 そして、ブランドンは、デヴィッドの父親ヘンリー・ケントリー(セドリック・ハードウィック)、夫人が病気だったために、彼が同伴した伯母のアニータ・ アトウォーター(コンスタンス・コリアー)を迎える。 ジャネットは、デヴィッドが姿を現さないことを気にしながらヘンリーと会話を交わし、フィリップは、占いが趣味だというアニータに、手が”名声”をもたらすと言われて動揺してしまう。 そこに、ブランドンらの学校の舎監で出版も手がける、ルパート・カデル(ジェームズ・スチュワート)が現れる。 やがて、勢ぞろいしたゲストと何事もなかったように食事や会話をするブランドンは、”殺人は芸術” だというカデルの言葉をきっかけに力説を始めてしまう。 ヘンリーがそれを制止したため、その場の雰囲気は静まるが、カデルはブランドンの言動が気になる。 気まずい思いをしながら、ケネスと会話を始めたジャネットは、自分とデヴィッドとの関係の始まりなどを彼に話す。 それらを全て知り、ケネスにまだ”チャンス”があるとまで言ったという、ブランドンが何かを企んでいると思い、ジャネットは再び彼に腹を立てる。 そんな二人を気にしながら、カデルは、ブランドンとフィリップの様子が、朝からおかしかったということをウィルソンから聞かされる。 その後ウィルソンは、二人が自分を買い物に行かせて、自分達で準備をしていたことや、食卓には相応しくないチェストを使おうとしたことなどをカデルに話す。 それを見たフィリップが、ウィルソンの話を遮り給仕をするよう命じたため、カデルはそれを不審に思い彼に話しかける。 明らかに動揺するフィリップを牽制するカデルは、デヴィッドの居場所を彼に尋ねる。 カデルは、ブランドンがそれを知っているはずだと言ってフィリップを問い詰め、それに答えない彼に嘘をついていると言い放つ。 興奮しかけたフィリップは、ブランドンがヘンリーに本を貸そうとして、大胆にも犯行に使ったロープでそれを束ねて渡しているのを知り、カデルはその様子を気にする。 カデルは、落ち着かないブランドンとフィリップに探りを入れ、デヴィッドが現れない理由を考えてみる。 その間、ウィルソンが料理を片付け、ヘンリーに見せた本をチェストにしまおうとするが、ブランドンが翌日に片付けるようにと彼女に命ずる。 アニータは、デヴィッドと連絡が付かないヘンリーの妻が、警察への通報を望んでいるという電話を受ける。 それを知ったヘンリーは、デヴィッドが子供ではないことを伝え、警察には連絡せず、妻を心配して帰宅しようとする。 アニータ、そしてジャネットもヘンリーに付き添い、彼女はケネスの同行も歓迎し、ブランドンは二人に予言が当たったと言って皮肉を漏らす。 カデルも帰ろうとするが、ウィルソンが間違えて帽子を渡してしまう。 その時カデルは、その帽子のイニシャル”DK”に気づきながらもその場を立ち去る。 カデルを見送ったブランドンは、完璧な計画の終了を喜ぶが、フィリップはカデルのことを心配する。 アパートを出たカデルが、煙草入れを忘れたため部屋に戻ると知らされたフィリップは、耐え切れなくなり取り乱す。 カデルを迎えるため、フィリップを落ち着かせたブランドンは拳銃を用意する。 現れたカデルは、二人に知られぬようにチェストの上の本の裏に煙草入れを置き、それを探すふりをして箱に近づく。 ブランドンに邪魔されたカデルは、煙草入れを見つけたと言って酒をもらい時間を稼ごうとする。 カデルは、二人がデヴィッドを誘拐した場合の推理を始め、ブランドンが拳銃を持っていることも指摘する。 ブランドンは拳銃をポケットから出し、出かけるために持っていこうとしたと、それをピアノの上に置く。 その後カデルが、持っていたロープを二人に見せると、興奮したフィリップが拳銃を振りかざし、殺人を暴露してしまう。 隙を見て、カデルはフィリップから拳銃を奪い、手を怪我しながらチェストを開け、彼はデヴィッドの死体を見つけて愕然とする。 殺人の理由を説明し始めたブランドンは、劣った者は生きる価値がなく、優れた者はそれを支配できるという、カデルが話していた説を実行しただけだと言うのだ。 カデルはブランドンに、それは、劣者と優者の概念を歪めた友人の夢や愛を奪った、殺人を実行するための口実にすぎないと言い切り、社会が決める裁きに従うようにと、吐き捨てるように語る。 そしてカデルは、拳銃を窓から外に向けて発砲し、警察を呼び寄せる。 教え子の凶行に愕然とするカデル、怯えるフィリップ、しかしブランドンは、未だ平静を装いグラスに酒を注ぐ。
...全てを見る(結末あり)
★ヒッチコック登場場面
今回は、二度登場するヒッチコックだが、彼を確認するのは不可能だと思う。
まず、オープニングで、女性と通りを歩く男性。
二度目は、上映後、約55分、アパートの中から見える、お馴染みのヒッチコックの似顔絵が、赤く点滅する窓越しのネオン・サインとして登場する。
どちらも小さいので、注意して見ていても、彼だとは判別できないだろう。
*(簡略ストー リー)
元学友のブランドンとフィリップは、同じくクラスメイトだったデヴィッドを絞殺する。
自分達の優れた才能を試しただけだった二人だが、ブランドンは、犯行、そして、これから起きる出来事に”期待”して自分の行動に酔いしれる。
しかし、それに対しフィリップは早くも動揺を隠せない。
遺体を部屋の中のチェストに隠し、パーティーの準備をしてあった二人の元に、やがて殺害したデヴィッドに関係する人々が現れる。
大胆にもブランドンは、死体を隠してあるチェストを食卓にして、そして犯行に使ったロープも無造作に引き出しにしまう。
その後、デヴィッドが姿を現さないことを疑問に思い始めた招待客の中で、学友達の出身校の舎監であり出版を手がけるルパート・カデルが、ブランドンとフィリップの挙動を不審に思い始める・・・。
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「ガス燈」(1944)でも知られる、イギリスの戯曲家パトリック・ハミルトンの、1929年に初演された同名舞台劇の映画化。
実際に1924年に起きた、”レオポルドとローブ”事件を元にしているドラマ。
映画の進行時間と、夕方から夜にかけてのドラマ展開の時間が一致する設定になっている作品。
さらに、10分間ずつをつなげたワンシーン撮影も試みている画期的な作品でもある。
非常に凝った手法が話題を呼んだ作品なのだが、時間経過だけを追うと、なんともあっさりした送別会のパーティーだという疑問を持たれるかも知れない。
そのあたりは、現実に戻りあくまでも”舞台劇”として解釈して観たほうが良い。
密室の出来事なのでやや地味に思える作品だが、随所にサスペンスの醍醐味が味わえるシーンが挿入され、さすがにアルフレッド・ヒッチコック作品だと思わせる見事な演出を見せてくれる。
例えば、パーティー終了後、家政婦役のエディス・エヴァンソンが、死体の入っているチェストの上の食卓を少しずつ片付けていくシーン。
男性達の会話が気になりながらも、画面左下に映る死体の入っているチェストが、いつ開けられるか見入ってしまう場面は、死体も見せずに緊張感を煽るいかにもヒッチコックらしい演出だ。
今後、ヒッチコックと何作もでコンビを組むことになるジェームズ・スチュワートは、学友達の大学の舎監という役柄で、まだ40歳だった彼はメイクでかなり老けた男性に見せている。
殺人を犯す二人を中心に展開していくドラマなので、中盤からクライマックス以外は淡々と演じ、ラストでの怒りと落胆を表現する演技はさすがだ。
殺人という行為を犯した瞬間から、全く対照的な行動をとり始めるジョン・ドールとファーリー・グレンジャーの、甲乙つけ難いそれぞれの感情表現なども注目だ。
ヒッチコックの傑作「断崖」(1941)でも存在感を見せてくれたセドリック・ハードウィックは、登場するだけで画面が引き締まって見えるほどの、威厳ある雰囲気が漂う名優だ。
C・ハードウィックの同伴者役のコンスタンス・コリアー、被害者の婚約者ジョーン・チャンドラー、その元婚約者ダグラス・ディック、家政婦役のエディス・エヴァンソン、被害者のディック・ホーガンなどが共演している。