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雨 Rain (1932)

1921年に発表された、サマセット・モームの短編”Miss Thompson”を基にした、ジョン・コルトンとクレメンス・ランドルフの戯曲”Rain”の映画化。
雨が降り続く南海で1人の娼婦と彼女を取り巻く人々との関係を描く、製作、監督ルイス・マイルストン、主演ジョーン・クロフォードウォルター・ヒューストンマット・ムーアウィリアム・ガーガンガイ・キビービューラ・ボンディ他共演のドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ


スタッフ キャスト
監督:ルイス・マイルストン

製作:ルイス・マイルストン
原作
サマセット・モームMiss Thompson
ジョン・コルトン/クレメンス・ランドルフ”Rain”(戯曲)
脚本:マックスウェル・アンダーソン
撮影:オリヴァー・T・マーシュ
編集:W・ダンカン・マンスフィールド
音楽:アルフレッド・ニューマン

出演
サディー・トンプソン:ジョーン・クロフォード
アルフレッド・デヴィッドソン:ウォルター・ヒューストン
ロバート・マクフェイル医師:マット・ムーア
ティム・オハラ軍曹:ウィリアム・ガーガン
ジョー・ホーン:ガイ・キビー
デヴィッドソン夫人:ビューラ・ボンディ
マクフェイル夫人:ケンダル・リー
ホジソン:フレッド・ハワード
グリッグス:ベン・ヘンドリックスJr.
ベイツ:ウォルター・キャトレット
アミーナ:メアリー・ショー

アメリカ 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ
1932年製作 92分
公開
北米:1932年10月12日
日本:1933年9月


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー
サモアパゴパゴ
延々と雨が降り続いていた。

アメリカ海兵隊のティム・オハラ軍曹(ウィリアム・ガーガン)は、ホジソン(フレッド・ハワード)とグリッグス(ベン・ヘンドリックスJr.)と共に、船が到着するため、雑貨店の店主ジョー・ホーン(ガイ・キビー)の元に向かう。

雑貨店兼ホテルに着いたオハラは、ジョーの妻アミーナ(メアリー・ショー)と子供たちに迎られ、ホジソンとグリッグスにジョーを連れて来させる。

オハラはジョーを伴い、ホジソンとグリッグスと共に船に向かう。

アピアに向かう途中で立ち寄った船の乗客である宣教師のアルフレッド・デヴィッドソン(ウォルター・ヒューストン)、その妻(ビューラ・ボンディ)、ロバート・マクフェイル医師(マット・ムーア)、その妻(ケンダル・リー)は、しばらく滞在することを知らされる。

滞在の理由を訊かれたデヴィッドソンは、船員の一人がコレラに罹ったために、他の船員の検査が終わるまで、数日は出航できないと皆に伝える。

ホテルを経営するジョーを知っているデヴィッドソンは、現れた彼にマクフェイル夫妻を紹介し、宿泊を希望する。

デヴィッドソンは、総督と話をするために船を降りる。

ジョーらは、船員のベイツ(ウォルター・キャトレット)から、売春婦のサディー・トンプソン(ジョーン・クロフォード)を紹介され、”ハンサム”と言われたオハラは、彼女が気に入る。
...全てを見る(結末あり)

生まれがカンザスのサディーは、サンフランシスコで働いていたのだが、逃げてホノルルに向かった過去があった。

ジョーは、マクフェイル夫妻とデヴィッドソン夫人を店に案内する。

サディーも、オハラらと共にジョーの店に向かう。

陽気なサディーはジョーにも気に入られ、オハラらと酒を飲み音楽をかけてダンスを踊り、楽しい時間を過ごす。

デヴィッドソン夫人は、日曜日にも拘わらず騒いでいるサディーらを注意する。

気分を害したサディーは、皆を連れて自分の部屋に向かう。

ジョーにサディーの素性を訊いても、まともに答えてもらえないデヴィッドソン夫人は、総督に会いに行き戻って来た夫から、2週間は滞在することになると言われて嘆く。

デヴィッドソン夫人は、娼婦のような派手なサディーのことを気にする。

マクフェイルから問題ないと言われたデヴィッドソン夫人は、礼儀知らずな女性だと彼に伝える。

出航するためにベイツは船に戻り、彼と意気投合していたサディーは別れを惜しむ。

酔ったベイツは船に向かい、彼を見つめるサディーはデヴィッドソンに睨まれる。

サディーが兵士と騒いでいることを妻から知らさたデヴィッドソンは、2週間も続いたら気が変になると言われ、サディーは”病気”だと考える。

サディーらを静かにさせようとしたデヴィッドソンは、オハラらと騒ぎを起し、追い払われる。

翌日、雨の中、戻って来たマクフェイルと話をしたジョーは、デヴィッドソンが気にするサディーは害にはならないという意見で一致する。

ジョーとマクフェイルと話をしたサディーは、デヴィッドソンの態度を批判する。

デヴィッドソンが総督に会いに行ったことを気にするサディーは、ジョーとマクフェイルが、自分に敵意を持っていないことを確認する。

デヴィッドソン夫人は、サディーが迷惑をかけているとは思っていると言うマクフェイルに、寛大な夫をあれほど困らせた人はいないと伝える。

そこにサディーが現れ、部屋代は払っているので自分にも皆と同じ権利があると、デヴィッドソン夫人に伝える。

デヴィッドソン夫人が自分の顔も見ようとしないために、サディーは部屋に戻る。

苛立つデヴィッドソン夫人は、我慢の限界だとマクフェイル夫妻に伝え、夫が解決してくれると考える。

戻ったデヴィッドソンは、また直ぐに出かけると妻に伝える。

妻からサディーの無礼な態度のことを聞いたデヴィッドソンは、彼女を更生させるために話をしようとする。

サディーの部屋に向かったデヴィッドソンは、先日の態度を謝罪する彼女に、救いのチャンスを与えると伝える。

心配いらないと言うサディーは、アピアに友達がいるので仕事をすると伝えて、デヴィッドソンから、ホノルルでは何をしていたか訊かれる。

歌手だと答えたサディーは、その前にいた場所を訊かれ、生まれはカンザスで、両親がカリフォルニアに憧れて牧場を買い、15歳の頃、母が死に、父と喧嘩してサンフランシスコに行ったことを話す。

ホノルルを出た理由を訊かれたサディーは明確には答えず、自分で何とか生きていくとデヴィッドソンに伝える。

デヴィッドソンの気遣いには感謝したサディーは、嘆きや憎しみを捨てて人生を償えば道は開くと言われ、アピアに行かせないつもりの彼を非難し部屋から追い出す。

訪ねて来たオハラと話したサディーは、アピアに行かせようとしないデヴィッドソンの考えには耐えられないと伝える。

オハラからアメリカに戻ることを提案されたサディーはそれを拒み、友達もいないので戻るのは無意味だと伝える。

ホノルルにも戻りたくないと言うサディーに、シドニーに行くことを勧めたオハラは、友人の仕事に誘われているので、自分が面倒みると伝える。

アピアに待っている人がいるのなら止めないと言われたサディーは、シドニーに行く気になる。

そこに総督からの手紙が届き、政府の命令に従い帰国するようにという内容を読んだサディーはショックを受ける。

オハラから総督に会うようにと言われたサディーは、それに従い出かけようとする。

サディーは、戻って来たデヴィッドソンに、総督に何を話したかを尋ね、強制送還を彼の企みだと思い非難する。

それを否定するデヴィッドソンは、総督には義務を果たすようにと言っただけだとサディーに伝える。

納得できないサディーは興奮し、オハラが彼女を落ち着かせてその場を去る。

総督を説得したことをマクフェイルに話したデヴィッドソンは、4日後の火曜に来る船に、サディーは乗ることになると彼に伝える。

戻ったオハラは、サディーの具合がよくないとマクフェイルに伝えて、診てもらおうとする。

サディーはマクフェイルと話したかっただけで、オハラは部隊に戻る。

マクフェイルにシドニー行きの協力を求めたサディーは、それを承知してくれた彼に感謝する。

デヴィッドソンと話したマクフェイルは、総督が許可するならサディーのシドニー行きは自由だと言われるものの、許可しないことを知りながら話す彼の態度を疑問に思う。

デヴィッドソンを説得できなかったことをサディーに伝えたマクフェイルは、総督に会いに行くと言って出かける。

妻と共に祈りを捧げるデヴィッドソンに気づいたサディーは、呪いをかけられているように思う。

戻って来たマクフェイルから、総督を説得できなかったと言われたサディーは戸惑う。

デヴィッドソンに謝罪したサディーは、サンフランシスコ以外ならどこにでも行くと伝えて、その理由を訊かれる。

改心しようとするのを邪魔する者がいると答えたサディーは、自分を苦しめる政治家に会いたくないとデヴィッドソンに伝えるものの、警察に追われていることを見抜かれる。

予定通り船に乗り、反省しているのなら罰を受けるようにとサディーに伝えたデヴィッドソンは、必要な時は助けに行くと言って部屋に戻ろうとする。

デヴィッドソンを呼び止めたサディーは、自分が間違っていたと言いながら、改心するための方法を教えてほしいと伝える。

戻るのが唯一の解決方法だと言われたサディーは納得できず、デヴィッドソンを批判する。

デヴィッドソンは、サディーの話を聞かずに祈り続ける。

それを聞きながら、サディーもデヴィッドソンと共に祈りを捧げる。

その後、船が入港し、デヴィッドソンはサディーの心配をする。

久しぶりに雑貨店に顔を出したオハラはジョーと話し、サディーが祈り続けていることを知り驚く。

サディーと話したオハラは、荷造りのことを確認し、船でシドニーに向かうことを伝える。

罪の償いをすると言うサディーは、シドニー行きを勧めるオハラに、帰国して罰を受けると伝えて、3年間の服役を覚悟する。

サディーは、罪を償う唯一の方法だと言うデヴィッドソンの考えに従うことをオハラに伝える。

それでも荷物をまとめて出発すると言うオハラは、デヴィッドソンを捜しながら涙するサディーを気遣い、現れたホジソンとグリッグスに荷物を運ばせる。

サディーを説得しようとするオハラだったが、デヴィッドソンを信じる彼女は旅立つ気になれない。

そこにデヴィッドソンが戻り、オハラの行為を批判して口論になる。

サディーの考えが変わらないことを知ったオハラは諦め、彼女に別れを告げてその場を去る。

デヴィッドソンは、神の元にたどり着き救われた自分を慕うサディーに、1人の時は祈ることで力が伝わると言いながら、罪の力が弱まり救われる時が訪れると話し、彼女を眠らせる。

その後サディーは、雨と現地人が叩くドラムの音が気になり、眠れないことをデヴィッドソンに伝える。

デヴィッドソンから、帰りたくなるまで帰国しなくていいと言われたサディーは戸惑う。

サディーに神の子となったと伝えたデヴィッドソンは、彼女が部屋に戻ったために祈りを捧げる。

しかし、サディーへの欲望を抑えきれなくなったデヴィッドソンは、彼女の部屋に向かう。

翌朝、雨は上がり、漁をしていた男たちは、網にかかったデヴィッドソンの遺体を見つける。

浜辺は騒ぎになり、その場に向かったマクフェイルは、デヴィッドソンが喉を切って自殺したとことをジョーに伝える。

店に戻ったジョーは、駆けつけたオハラからサディーが関わっているか訊かれ、デヴィッドソンの死は自殺だと伝える。

騒ぎに気づいたデヴィッドソン夫人は、マクフェイル夫人と共に浜辺に向かう。

大きな音で音楽を流すサディーの部屋に向かい声をかけたジョーは、昨夜とは一変し元の姿に戻った彼女を見て驚く。

オハラからデヴィッドソンが自殺したことを知らされたサディーは、ジョーに音楽を止めさせる。

サディーは、気が変わっていなければシドニーに行くとオハラに伝え、その場を去ろうとする。

戻ったデヴィッドソン夫人は、サディーと夫に対してもすまないことをしたと伝える。

サディーは、オハラと共にその場を去る。

2人を見つめながら、デヴィッドソン夫人は涙する。


解説 評価 感想

*(簡略ストー リー)
サモアパゴパゴ
アピアに向かう予定の客船の船員がコレラに罹り、検査のために停泊することになる。
過去がある娼婦のサディー・トンプソンや宣教師のデヴィッドソン夫妻、マクフェイル医師夫妻などは、ジョーが経営する雑貨店兼ホテルに宿泊することになる。
駐留するアメリカ海兵隊のオハラ軍曹に気に入られたサディーは、彼らと共に部屋で騒ぎ始める。
サディーのことが気になるデヴィッドソンは、彼女を聖職者の立場で更生させようとするのだが・・・。
__________

サマセット・モームの短編”Miss Thompson”を基にした戯曲”Rain”の映画化で、製作を兼ねたルイス・マイルストンが監督したことで話題になったドラマ。

MGMからユナイテッド・アーティスツに貸し出されジョーン・クロフォードが、過去がある娼婦を演じ、その美しさと演技力が注目されて作品。

舞台で主人公を演じたジーン・イーグルス、1928年公開の「港の女」のグロリア・スワンソンに比べるとジョーン・クロフォードの演技の評価は低く、作品は興行的に失敗した。

陰鬱な雰囲気が漂う物語の効果として、タイトル通りほぼ全編で雨が降り続く中で、1人の娼婦の心の動きを丹念に描く、ルイス・マイルストンの演出手腕が見どころの作品。

帰国すれば刑期が待っている娼婦を演ずるジョーン・クロフォードと、彼女の心を探りながら神の道に導き、罪を償わせようとする宣教師を演ずるウォルター・ヒューストンの、激しい演技のぶつかり合いが見どころの作品でもある。

誰よりも神に近い存在である宣教師が、主人公への欲望を抑えきれずに間違いを犯すクライマックスと、一度は改心するものの、人間の醜さを知った主人公が、自分を変えずに生きることを決めるラストは考えさせられる。

主人公のことを理解する医師マット・ムーア、その妻ケンダル・リー、主人公に惹かれる海兵隊軍曹のウィリアム・ガーガン、雑貨店とホテルの経営者ガイ・キビー、主人公を嫌う宣教師の妻ビューラ・ボンディ海兵隊員のフレッド・ハワードとベン・ヘンドリックスJr.、主人公と意気投合する船員のウォルター・キャトレットなどが共演している。


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